異世界から帰ってきた魔神ですが、ダンジョン攻略を始めます   作:Revak

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第13話

 

 ディノクが配信した数日後。

 東京の国会では暴言が飛び交っていた。

 

「ダンジョンスキルは国で管理すべきだ!」

「いやあんな超常現象、国一つで管理できるわけがない。だがダンジョン組合に任せるのも駄目だ。国連で管理すべきだ!」

「ダンジョン入るだけで手にしてしまう異能をどうやって管理するんだ!」

「それならばダンジョンそのものを国の管理下に──」

「その場合ダンジョンがスタンビードを起こした場合国の責任になるぞ! その責任はだれが取るんだ!」

 

 その他多数のダンジョンやダンジョン組合、ダンジョンスキルに関する暴言が飛び交う。

 それを見て、この国の首相──日本初の女性の総理大臣は胃が痛くなる思いをした。というか胃薬はお供になっている。

 

 日本にダンジョンが生まれた年に総理大臣をしていたのが仇となった。総理──伊藤綾子は己の運の無さを呪った。

 

 本来日本の総理大臣は四年程で変わるのが普通だ。だが伊藤は異例の五年目の総理大臣をしている。

 理由は単純で、誰も総理大臣になりたくなかったからだ。

 そう。誰もダンジョンなんて言う下手こいたら人類滅ぶ代物がぽこじゃか湧いて出て来て人類に謎の異能が芽生えてしまった世界の総理大臣になどなりたくないのである。

 故にまぁ元から総理大臣だったし大丈夫だよねと投票され伊藤は総理大臣を続けさせられていた。

 

 伊藤は更に胃が痛くなった。これから更に胃が痛くなる事を言わなければならないのだから。

 

「首相がお話します」

 

 議員の一人がそう言う事で一時的に国会が静寂に包まれる。

 

 伊藤は台にあがり、マイクを手に取った。

 

「重大な発表があります。それはわが国で問題となっているダンジョンや魔法についての話です。それらに対しダンジョン組合だけに任せる訳にはいかないと判断し……来年の四月に魔法大学を設立することを決めました」

 

 その言葉によって国会がざわついた。

 議員の一人が立ち上がって問いかける。

 

「総理。それは具体的にはどういった物なのでしょうか?」

 

 あらかじめ決めていた質問だ。

 

「はい。ダンジョンに入った者が習得できる二つの異能の内の片方、魔法について研究開発する大学となります。メインは魔法ですがサブとしてダンジョンスキルの鍛錬をすることも可能にする予定です」

 

 魔法に関する研究開発と聞いてそれは危険ではないか、という言葉が聞こえてくる。

 魔法はダンジョンスキルと同じく何が出来るかわからない力だ。

 だが、夢のある力ではある。

 例えば炎の魔法を使えば火力発電の代わりになるだろうし、何なら念動力の魔法でタービンを直接回せば発電になる。

 そして回復魔法を習得できれば医療は大きく変わるだろう。

 

 伊藤は続けて言う。

 

「そしてさらに、学長をダンジョン組合の円卓の一人、魔王ディアブロ殿に務めてもらうつもりです」

 

 その言葉に更にざわつく。

 円卓──単独で国すら滅ぼせる、実際に滅ぼす寸前まで持って言った怪物たちの称号。

 その一人が学長に就くとなれば反対など出来るわけがない。

 

「それはダンジョン組合側は了承しているのでしょうか?」

「勿論了承しています。こちらが魔法大学を作りたいという話を持ち込んだ際、向こう側から『では魔王を学長にするのはどうか』と提案がありました」

 

 それならば……と国会は一種の納得した空気が流れる。

 

「既に大学の建設は進んでいます。東京世田谷区に建設しています。これは来年の二月には建設が終わる予定です……我々人類は新たなる時代に適応しなければなりません。魔法とダンジョンスキル。そしてダンジョンに対し適応し、さらなる繁栄を掴むのです!」

 

 力強く伊藤はそう言い切った。

 

 

 

 ■

 

「なんか大変なことになってんなぁ」

 

 ディノクは自宅の居間のテレビでその国会を見ていた。

 昼飯として近所の弁当屋で買ったから揚げ弁当を食べていた。

 

 ニュースやってないし国会でも見るか、と適当にテレビをつけて見ていたらまさかの大学の発表である。

 大学の発表って国会でするっけ、と疑問に思いながら最後のから揚げを食した。

 

 そしてディノクは弁当を燃えないゴミの袋に捨てる。

 居間に戻ると其処には魔法陣があった。

 

「は?」

 

 突然の非日常にディノクは一瞬固まった。

 

 魔法陣は黒と青が混ざった物だ。

 ディノクはすぐ警戒し拳を構えた。

 

(何かしらの魔法? あるいはダンジョンスキルによる攻撃か?)

 

 そう警戒していると魔法陣から男が飛び出して来た。

 眉目秀麗な男だ。だが顔の左半分は白い骸骨の様な仮面でおおわれている。

 黒髪赤目の男で執事服を着ている。

 

 その男にディノクは見覚えがあった。

 

「お前、ティードか? 何故ここに?!」

 

 そう。男の名はティード。かつて魔神ディノクの腹心を務めていた男である。

 と言っても生物ではない。怨界兵(えんかいへい)という魔神の眷属だ。

 怨界兵(えんかいへい)は魔神の持つ魔力があって維持活動が可能になる。ディノクが無限の魔力を持つがゆえに量産、活動が可能な眷属兵である。

 元はクロノマスターという時空間を操る神々が残した秘宝であった。

 それを魔神の権能と【全意思疎通】の力で眷属化させたのがティードになる。

 

 ティードはディノクを見て膝をついて忠誠のポーズを取った。

 

「この私、魔神様が世界からいなくなってから数百年……! 貴女様を探し続けておりました! そしてついに異世界に追放されたと知り、世界を渡る秘術を生み出し──ついに! この時! また再び会えたのです!」

「そ、そうか、うん。すごいな」

 

 眷属はいわば自立した魔法の様な物で、創造主に盲目的に絶対的に従う。

 飛ばされた矢が『なぜ自分は的に向かって飛ぶのか』と疑問を抱く事は無いように盲目的に従う存在なのだ。

 いわば自我ある道具で術者が死ねと言えば死に、豚と性行為しろと言えば喜んでするだろう。

 

 ディノクはティードを見てもやった。

 というか正直死んでいると思った。

 

 勇者との決戦は世界に残った戦力全て対ディノク全配下の軍勢の総力戦だった。

 ディノク配下の者たちも強いが、ディノクのように星を壊すなんてことは出来ない。出来て精々人類殲滅程度だろう。

 そしてその程度の規模なら同程度の能力を持つ人類陣営も居た。

 故にディノクが追放された結果それらは駆逐されたと思っていた。

 更に言えばディノクは配下たちに何の思い入れも無い。

 自分一人で人類滅ぼすのは手間だから量産しただけの存在であり、ぶっちゃけ居ても居なくても変わらない。

 

 そして現代日本で戸籍なしの存在は扱いが面倒である。

 消すか……と一瞬思ったがそれだともったいない、とも思った。

 

「あー、少し待て。知り合いに連絡する」

「畏まりました」

 

 ディノクはスマホを取り出し電話をする。

 繋げる相手はディだ。

 

「もしもし、ディか? 今少しいいか?」

『いいけど何の様だい? こっちは少し忙しくなってね』

「ん、そうか? じゃあ簡潔に用件だけ言うと異世界時代の部下が世界を渡って俺のところに来てな。どうしたもんかと……」

『……あぁ、なるほど。こっちで掴んだ反応と同じだね。君は愛知県在住で、今も愛知県内に居るよね?』

「いるが……用事っていうのは異世界からの事か」

『そうだよ。突如異世界からこっちに何か来たのを感知してね。それに対し対応しようと思ってたんだけど……そうか。君の部下か』

「あぁ。こいつの処分どうしたもんかと思ってな。なんか使い道あっかなと」

『──それならうちで働かせるのはどうだい? 勿論給料も出すよ』

「……そっちで働かせるのか。仕事内容は?」

『君の部下の能力次第だけど……魔法は使えるかい?』

「使えるぞ。全属性使えるし、時間系の魔法は特化している」

『属性云々は置いておいて……そうだね。それじゃあ面接をしてもらって──それ次第で超人か、あるいは魔法大学の教授として働いてもらおうか』

「魔法大学の教授? 俺の部下眷属……あー、人間とかじゃないんだがいいのか?」

『能力さえあれば人種、種族問わないよ。明日にでも本部に君の部下を送って欲しい。君本人は来ても来なくてもどっちでもいいよ』

「なら部下だけ送るわ。ありがとな」

『困ったときはお互い様さ。それじゃあ』

 

 そして電話が切れた。

 ディノクはティードを見て言う。

 

「お前にはこれからある組織で働いてもらう。この世界の知識を入れるから適応しろ」

「畏まりました」

 

 ディノクはティードの頭に指を入れた。

 そして自身と同期させる。

 眷属だからこそできる荒業であり自身の知識を眷属に直接入れる事が出来るのだ。

 と言っても眷属側の耐久度が低いと入れたら壊れることもあるので要注意だ。

 

 ティードはディノクが創造した眷属の中では最上位種なのでこの程度で壊れる事はない。

 何せ最終決戦で人類の英傑と戦ってなお生き残った精鋭兵なのだから。

 

 記憶を受け取ったティードは立ち上がっていった。

 

「私のこれからの予定はわかりました。ですが──我が主はこの世界で何を成すつもりですか?」

 

 知識を受け取っているので知っている事だが、言外に言葉として聞きたいと問いかけた。

 

「平穏だ。毎日楽しく暮らせれば、それでいいさ」

 

 その言葉にティードは微笑み「畏まりました」と返すのだった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 翌日。

 ティードをダンジョン組合に放り込んで自由を得たディノクは午前中そのまま材木の店である買い物をしてから渋谷のダンジョンに来ていた。

 

 そして配信を開始する。

 

「こんちは~今日もダンジョン配信していくぞ~」

 

 ・こん

 ・エッチコンロ点火! エチチチチチボッ

 ・マイクロビキニだと……?! 

 

 そう。ディノクは今渋谷のダンジョンに来ていた。

 渋谷ダンジョンは海辺のダンジョンだ。

 白い綺麗な砂浜が延々と続くダンジョンで、一応階段が探せばある。

 

 海辺なので出てくるモンスターも海辺に居そうな物しかいない。

 

 そしてディノクは今、普段着を変え海用の装備──マイクロビキニを着用していた。

 

 陰部だけ隠せばいいだろ見たいなエロイ格好であり、実際乳輪が少し見えている。

 

「今日はこのダンジョン攻略すっぞー」

 

 ・異例の二連続ダンジョン攻略かぁ

 ・こんなエロ装備で大丈夫か? 

 ・大丈夫だ、問題ない

 

「この水着も材木さんのところで買った物だから結構防具としては優れてるし、俺は素の防御力がクソ高いから問題ないぞ。では行こう」

 

 そうしてディノクは砂浜を歩き始めた。

 

 歩く事五分。敵が出現する。

 このダンジョンには砂浜に居そうな魚類系モンスターが多くいる。

 

 出現したのはマッドクラブという泥色の三メートルほどの巨大な蟹だ。

 肉は美味で殻もだしがよく取れる。

 

「ん、"死ね"」

 

 即死技によってマッドクラブは生命活動を停止……死んだのだ。

 

 ・開幕即死は強い

 ・無敵かぁ~? 

 

 マッドクラブの死体は放置して先に進む。

 ダンジョン内で死んだ物は時間経過でダンジョンに吸収されるので死体は放置しても問題ない。

 

 更に進んで行くと今度は四体のモンスターが出現した。

 マッドクラブにクラーケンにシーサーペントが二体だ。

 

 クラーケンは二十メートルほどのイカの化け物。シーサーペントは頭に角が生えているリュウグウノツカイの様な魚型モンスターだ。五メートル程ある。

 

「今度は近接で行こう」

 

 そう言ってディノクは拳でマッドクラブに殴り掛かった。

 超高速移動。そのままマッドクラブの顔面をぶん殴り消し飛ばした。

 

 ・エッッッッッ

 ・おっぱいばるんばるん! 

 ・エッチだ……W

 

 クラーケンが二十の触手でディノクを拘束する。

 

 ・いけっ! そこだクラーケン! 

 ・ビキニをはぎ取れ! 

 ・海辺のエロモンスターの代表格の力はそんなもんじゃないだろ! 

 

「エロ売りはしないわ! ふん!」

 

 ディノクは全身から魔力を放出させる事で触手を吹き飛ばし、空を蹴ってクラーケンに急接近。

 そのままぬめぬめな胴体を殴って吹き飛ばした。

 

 それと同時にシーサーペント二体が水のブレスを放った。

 

 ディノクに直撃し全身がぬれる。

 

「ええい! "魔神の閃光"!」

 

 ディノクは右手を突き出し魔力を貯め、そこから漆黒のレーザー砲を放った。

 レーザー砲にがシーサーペント二体を巻き込み消し飛ばした。

 

「ドロップは無いが、まぁいい。下層のドロップ狙いだからな。この調子で行くぞ!」

 

 ・クソ! エロモンスターの風上にも置けないやつらめ! 

 ・水着ポロリ期待します

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