異世界から帰ってきた魔神ですが、ダンジョン攻略を始めます 作:Revak
七月になった。
それまでの間。ディノクは楽しく過ごした。
毎日の用に配信をして、たまにはコラボして、とダンライバーとして活動を続けた。
そしてある日、ディから電話で呼び出されまたもディノクは東京のダンジョン組合本部に来ていた。
「スタンビード?」
ディノクは客室でコーヒーを啜りながらオウム返しをした。
離す相手はディ・フランケリヒだ。
ディが口を開く。
「そうだ。北海道のサロベツ原野にあるダンジョンでスタンビードが起こると予知でわかってな。スタンビードに対処するための人材を集めている」
「そもスタンビードってなんだよ。モンスターが溢れてくる感じか?」
「そうだ。ダンジョン内のモンスターが深層のモンスターも含め地上を攻めてくる。放置すれば地上にモンスターが蔓延る事になる」
「先手を打ってダンジョン壊すのは駄目か?」
「サロベツダンジョンは結構良い肉が取れるダンジョンだから、潰したくはない。そこを専用の狩場にしているワーカーも居るからな。だから潰すのは無しだ」
「ふぅん。まぁいいが……それで俺にも対処してほしい、と」
「そうだ。報酬は二千万。倒したモンスターの素材は別途買取。これでどうだ?」
「あー、配信もしていいか?」
「いいが……配信、ハマったのか?」
「……まぁ、そこそこ」
「……そうか」
という訳で、数日後。
北海道サロベツ原野にディノクは来ていた。
「おー、結構いるな」
同じ箱の紅蓮ヒバナ、日野朱音やアビスの夜刀神クロウも居る。
更に有名な個人勢であるアウレリウスも居た。
そのほか十数人の最上位勢のダンライバー、あるいはただのワーカーが居た。
配信用ドローンもふわふわ浮いている。
「よく来てくれたね」
影からにゅっとディが出て来た。
「うお、お前そんなことも出来るのか……いきなりなんだ?」
「そろそろ始まるけど、連携とか出来そうかい?」
「無理だろ。ワーカーなんて我が強い連中でソロプレイばっかしてるやつらだ。連携もくそもないだろ」
「まぁ、そうだね。それじゃあその穴を埋める為私も戦おうかな」
そう言ってディは影から刀を取り出した。
ディ専用に材木が創り出したアイテム。名を紅椿だ。
効果としては不壊に窃盗無効、攻撃した相手の 体力とスタミナ吸収を持つ。
ディが空に飛び上がる。
「あと五分でスタンビードが起こる! 準備をするように!」
ディがそう叫ぶとワーカーたちは構え始める。
ディノクも取りあえず剣出すかと解放の剣を異空間から出した。
そして配信を始める。
「こんぱろ~。今日は事前告知したようにスタンビードを迎撃する配信すっぞー」
・こんちゃ
・こん
・スタンビードの迎撃とか高レベルじゃないと出来ないのに配信一年未満が参加できるのか……
・俺たちも鼻が高いぜっへへっ
そして五分経ち──スタンビードが始まった。
ダンジョンの入り口、ただの洞窟への入り口に見えるそれからモンスターが湧き出した。
最初に出て来たのはドルブというウシ型モンスターだ。
角を持っている牛で突撃は速く軽自動車並みのスピードが出せる。
普通に轢かれると死ぬ。
アウレリウスが最初の一撃を放った。
見るからにそれは某龍玉漫画の主人公の代表的な必殺技だった。
エネルギー破によってモンスターの群れは消し飛んだ。
だがそのあとからもモンスターは湧いて出てくる。
キルカディ。鎌を持つ蜘蛛。オーク。二足歩行の豚。
ジャイアント蟷螂。でかい蟷螂。巨大な鹿に翼が生えたペリュトンなどなど。二十種類を超えるモンスターが出てくる。
「さぁ行くぞ──鏖殺だ」
ディノクが凶暴な笑みを浮かべた。
異世界で虐殺鏖殺を繰り返してきた悪しき魔神として、弱者の蹂躙は楽しい事なのだ。
誰だって馬鹿みたいな身体能力があればそれを駆使して暴れたい。スーパーマンになって暴れる妄想をしたことぐらいあるだろう。
それが現実に出来るのだから、これを上回る快楽は麻薬でだってないだろう。
解放の剣を構え、突撃する。
「ヒィーハァー!」
やたらめったらに剣を振るい、モンスターを斬り飛ばして行く。
どんな相手も斬れる呪われた魔剣、それが解放の剣だ。相手の防御能力の一切を無視できる。
そのためそれこそ紙のようにすぱすぱ斬れる為、敵は全て雑兵だ。
更にディノクの馬鹿げた身体能力をもってすれば、向かうところ敵なしである。
・ひぇ
・いい笑顔してらっしゃる
・オリジナル笑顔
・ディノクさんが楽しそうで何よりです
コメント欄も若干引いていた。
ずんどこ進みモンスターをなぎ倒していくと巨大なモンスターが出て来た。
所々棘が着いた骸骨の上半身だけのモンスターだ。
名をスパルトイ・ロード。能力として自身の眷属を無限に製造できる。
「死ねい!」
だが出現と同時にディノクが飛ぶ斬撃を放ち、真っ二つに斬った事で能力を一切発揮できず残骸と化した。
・ボスキャラ呆気な!
・ディノクネキ強すぎるッピ!
コメント欄も強敵(仮)が一瞬で死んだことでわいわい盛り上がる。
他のワーカーたちも負けていない。
アウレリウスは漫画の技を再現し死神漫画の主人公の技をやたらめったらぶっぱしまくり、夜刀神クロウはダンジョンスキル【支配】で大気を支配し押しつぶし、更にモンスターたちも支配し殺し合わせている。
日野朱音は単純な高火力の炎で敵を殲滅している。
単純な殲滅力なら、手加減しきったディノクにも引けを取っていない。
勿論ディノクはその気になれば地球をぶっ壊せるので範囲攻撃力なら一位だが、それは置いておこう。
「うぉぉぉお俺がキルリーダーになってやる!」
ディノクはそう叫びひゃっはー! と敵陣に突っ込んだ。
そのままモンスターを斬っていく。
スパルトイ。骸骨。斬られて死んだ。ドルブ。牛。縦に斬られた。
その他巨大な蟷螂やゴミ箱みたいなダストボックスというそのまんまなモンスター、リザードマンなどもディノクは切り飛ばし、途中で面倒になって殴り飛ばしまくった。
そして二体目のボスモンスターが出てくる。
全長二十メートルほどの巨大な蜥蜴。だが足が六本ある。
トサカがついており、どこか王冠のようにも見える。
蛇のように瞳孔が割れた金の瞳を持つモンスター、ギガント・バジリスクだ。
視線内の相手を石化状態にする能力を持つ強敵である。
この石化は単純な力量差によるレジストぐらいしか対策がない。
一応高位の回復魔法なら石化直後なら解除させれるが、十分以上経つともう回復は不能だ。
そのまま死亡となり、遺体でもなく物質判定になるので通常の蘇生術は効かない。
ディノクとて石にされたら石を材料に形だけそれっぽい形で眷属化させれるが、魂──人格や記憶はどうにもできずモドキにしかならない。
体が完全に石になると魂が天に昇ってしまうからだ。
「邪魔くせぇ!」
ディノクは蹴りをいれ、ギガント・バジリスクの頭を蹴り飛ばした。頭がぽーんとギャグマンガみたいに飛んで行った。
しかし悲しいかな。ディノクは圧倒的力を持つ超越者。見た者すべてを石にする怪物だろうが敵ではない。
何ならディノクは地球上の生物全て石にする魔術ぐらい使える。ギガント・バジリスクの上位互換である。
・ボスモンスター二体目ぇ!
・ボスキャラ倒すの爽快感あるけど、苦戦してくれないの少し悲しいな
・↑わかる。敵との苦戦も配信のだいご味なのにここないからな
・まぁどんなモンスターもすかっと一撃で吹っ飛ばすのがここの配信の売りってことで
ワハハハハ! と笑いながらディノクは配信も忘れ暴れ続けた。
一時間後。
「スタンビード終了! みんな、お疲れ様!」
ディがそう叫ぶ事で全員やっと終わったか、と疲労感を露にした。
しかしディノクとディだけは一切の疲労を見せない。
ディノクは魔神であるがゆえに。ディは吸血鬼というアンデッドであるが故に疲労を無効化している。精神的な疲れはともかく肉体的疲労は二人には無い。
「今回のMVPは……君だ、アウレリウス君!」
そうディはアウレリウスに向かって拍手をした。
「俺は?」
ディノクは自身を指さしながら問いかけた。
・ディノクっちはね、うん
・討伐数ならダントツ一位だけど他を一切気にせず暴れてたから若干他にも被害いってるし……
・それらのカバーをしてくれたアウレリウスさんが一位で間違いないっしょ
コメントから養護は去れずディノクは悲しんだ。
「まぁ、討伐数一位のディノクさんにも後で特別景品を渡そう! そして今回、他のみんなにも特別報酬を出す! 色は付けたから是非とも期待してくれ!」
その言葉に全員色めき立った。
いくつになっても現ナマは欲しい物である。ワーカーという安定しない職業ならなおさらだ。
「うし、それじゃあ俺も配信終わるかね。いつもよりグロかったけど配信見てくれてありがとうな! またな!」
そう言ってディノクは配信を終わらせた。
これからもディノクは活躍するだろう。モンスターを倒し、ダンジョンを攻略し、いつしか天から来た者とも遭遇するかもしれない。
だが、ここでディノクの話は終わりだ。
ディノクは──不破泰葉はこれからも幸福に生きることが出来た。
この世界線では。
最終話。完結です。
ご愛読ありがとうございました。