異世界から帰ってきた魔神ですが、ダンジョン攻略を始めます 作:Revak
二人がダンジョン入口の役所の外に出ると其処にはリムジンがあった。
高級車を見てディノクは日本に帰って来たな、と謎の実感をしていた。
時刻は夕方の四時。四月の上旬だ。
リムジンの傍には執事が立っており、執事がリムジンのドアを開けた。
「さぁ、どうぞこちらに」
そう執事がいい、ディアブロが軽く礼を言ってから乗り込んだ。
そしてディノクは固まった。
「? どうしたんだい?」
そう言ってディアブロがリムジン内から問いかけた。
「俺が乗っていいのか? ……俺素足なんだが」
ディノクは靴を履いていない。
どんな荒地だろうと問題なく踏破出来る強靭な足を持っている為、素足でも問題ないのだ。と言っても犬の糞などを踏む可能性があるので素足だと駄目だが。
「気にしないからいいよ。それに衣服もこちらである程度揃えられるからね」
「そうか? ……ならいいが」
そう言ってディノクはリムジン内に乗り込んだ。
リムジンの中はちょっとした小部屋の用だ。ソファの様な椅子があり、小さい冷蔵庫もある。
ディアブロが「出して」というとリムジンは走り出した。
「飲み物は……ワインとウィスキーどっちがいい?」
「……じゃあウィスキーで」
「ん、わかった」
そう言ってディアブロは冷蔵庫からウィスキーを取り出し、コップに注いだ。
「何年かぶりの地球の酒だろう。存分に味わうといい」
「……あぁ」
ディノクはウィスキーを飲んだ。
ディノクはあまり酒は飲まないたちだが、ウィスキーや焼酎は極まれに飲んでいた。
だからか、地球の酒に感動した。というか普通にこれまで飲んだどの酒より美味かった。
魔神の体は毒を無効化する。酒も毒判定なので無効化されるので酔えないが、味はわかる。
「それじゃあ、君の聞きたい事なんでも答えよう。何が知りたい?」
「──ダンジョン組合は異世界から帰還した人間の集まりか?」
いきなり核心に近い事をディノクは尋ねた。
その問いに対しディアブロは「そうだよ」と答えた。
「この世界に元はダンジョンなんて物はなかった──今私たちはダンジョン組合と名乗っているが、正確な名を名乗るなら異世界帰還者組合、と言った方が正しいだろうね」
「やはりな。ダンジョンは反作用の代物か?」
「……そこまで知っているのか。そうだよ。千年前の日、異世界から侵略を企てた神が居てね。それを迎撃するのに神が力を行使した結果──今になってダンジョンが出て来たのさ」
反作用はいつ出てくるかわからない。
宇宙誕生時の反作用が西暦二千年代に来る、なんてこともあるのだ。
「異世界からの帰還者は結構な数いる。元はそう言った者たちが集まった相互扶助でね。だが、二十年前に【予知】の異世界スキルの持ち主がダンジョンの出現を予知したんだ。それに備えた組織が、ダンジョン組合という訳さ」
「なるほどな……元は異世界帰還者同士の寄り合い所帯だったのか。それで異世界から来たという俺をすぐ受け入れた、と」
「そうなるね。他に聞きたいことは?」
「俺の戸籍とか労働とかはどうなる?」
「うちで戸籍ぐらい作れるから安心して欲しい。何なら、行方不明を解除してもいいしね。仕事だと……異世界で戦ってきた君には嫌かもしれないが、手っ取り早く稼ぐならワーカーになるのが一番だろうね」
「ワーカー? ……ダンジョン攻略をする職種か」
「そう。ワーカーならダンジョン素材で一攫千金だ。ただ──そういうのが嫌なら年金暮らしというのもあるよ」
「……年金?」
異世界では危機なじみのない単語にディノクは疑問符を浮かべた。
「そう。異世界を救ったんだ。その報酬としてのんびりスローライフってのもいいだろう?」
ディノクは口をへの字にした。
異世界を救ったのではなく滅ぼしに行ってたのだ。
その表情を見てディアブロは問いかけた。
「……異世界を救った訳ではないと? まぁ、異世界生活で失った社会的信用や社会で得られたであろう金銭の補填の様なものだから、世界を救ってないのだとしても気にしなくていいよ」
「……あー、俺世界滅ぼす側だったんだが、この場合どうなる?」
その言葉に流石のディアブロも目を点にして驚いた。
「……世界を滅ぼす側かぁ、まぁ、稀に居るんだけど……その場合は必要最低限の保障だけで……あとはこの世界でも何かやらかさないか監視が着くよ」
「俺を排除する訳ではないと?」
「──君クラスが暴れると地球が荒地になるから、それは出来ないだろう?」
「……そこまで見抜くか。やるな。まぁ、そう言う事なら大人しくワーカーにでもなるとするか」
「そうしてくれると助かる。ワーカーは常に人手不足だからね」
そうディアブロは微笑んだ。
「それで、他に聞きたいことは?」
「──俺には家族が居たんだが、それには会えるか?」
「……君が異世界に行ったのは西暦何年だい?」
「二千十七年だ」
「そうか……それなら、まだ生きて居る可能性が高いだろう。家族の名は?」
「……不破優子、生きて居るなら今年五十四歳のはずだ。住所は愛知県の──」
不破は実家の住所を言った。
不破は元は大学生だったが、母子家庭で資金難だったため上京など出来ず、地元──名古屋の大学に通っていた。
そこまで言ったのはディノクの力で相手に悪意などがないとわかったからだ。
「わかった。うちの者に調査させよう」
ディアブロはそう言った。
「……頼む」
ディノクは頭を下げた。
「異世界への召喚という拉致監禁をされた者に対する援助さ。と言ってもこの程度しかできないのが歯がゆいけどね」
そうディアブロは苦笑した。
「それで、今後の生活は少しの間はホテルで暮らしてもらう。そのあと戸籍の調整が終わったら、後は……君の場合は監視が着くが、自由になる」
「……そうか」
ディノクは異世界を滅ぼそうとした。
それは地球への帰還手段を持たなかった異世界の人間に対する恨みであり、たかが自分たちが滅ぶぐらいで拉致監禁洗脳をしてこようとした人類への怒りだ。
だがそれはある程度張れている。宙の星々を消し去り、生物の八割が滅んだあの異世界は何もしなくとも滅ぶだろう。
何せ生物の八割──植物だとか家畜だとかも含んで滅んでいるし、大地を穢し荒野に変えたので発展の使用が無いだろう。
精々出来て数万人の国家が一つ存続できるかな、程度だ。魔法が会っても出来る事には限りがある。
そうして話していると東京にあるダンジョン組合の本部に辿り着いた。
ディノクが車から降りるとそのでかさを前に畏怖した。
「……でかいな」
「こういった組織は本部のデカさも権威になるからね」
そういうダンジョン本部はでかかった。
東京の新宿の一等地に建てられている大きなビルだ。
都庁よりでかいのでは、と思わず思ってしような巨大さを持つビルである。
ディアブロが降りると運転手と何か話し、車は去っていった。
「さ、行こうか」
そう言ってディアブロが先導し、ビル内に入る。
中の一階は会社のラウンジの様な作りだった。
受付にはいかず、エレベーターに向かう。
エレベーターで最上階の六十階に上がる。
「しかしこんだけデカいと組織として問題はないのか?」
「円卓の一人が腐敗とかは阻止してくれてるから問題ないよ。こういう時異世界スキルは便利だよ」
「そうか……」
そして最上階に着く。
エレベーターを出て社長室に入る。
「ようこそ、同胞」
そこには一人の美女が居た。
身長百九十八センチと女性としては非常に高身長。
顔はダウナー系というのだろうか。少しだるそうな感じをしているが美人そのものだ。つり目である。
傾国の美女とはこの人物を表すのだろうと思えるほどに美人である。
胸はでかい。一メートルを超える爆乳に片足突っ込んでいるサイズだ。
半面腰は細いが、尻も百センチ超えというデカ尻。安産型である。
細い手足は箸すら持てなさそう。
黒い腰まで届く艶めいた髪だが内側は赤い。右目は赤く血のようで左目は闇のように真っ暗である。
胸元を大きく露出しているドレスを着用している。腰にはコルセットがついている。
または開かれており股部分が丸見えだがちゃんと血でパンツを作っているので丸見えでも問題ない。
深いスリットのあるドレスである。
また足にはハイヒールを付けている。手には長手袋を着用し指先は開いている。
どれも真紅色をしている。
名をディ・フランケリヒ。このダンジョン組合のトップの女だ。
「はじめまして。俺はディノク。異世界から帰って来た……魔神だ」
魔神、という言葉にディは微笑んだ。
「ふふ、魔神か。恐ろしいね。私は吸血鬼だよ」
「吸血鬼か。珍しいな」
地球に吸血鬼なんていうファンタジーの住人がいるとは思わずディノクは驚いた。
「純粋な吸血鬼じゃないけどね。私は【吸血鬼】の異世界スキル──ダンジョンスキルに目覚めた人間だからね。吸血鬼だけど人間でもあるんだ」
「……ほー、そういうのもありなのか」
面白いな、とディノクは納得した。
「それじゃあ、聞きたいことはないかい? あるいはしたい事とか」
「……今家族を捜索してもらってる。それ以外は、まぁ特にはないな」
ディノクとしてはのんびり仕事して休日はアニメなり外食なりでのんびりできたらいいな、と思うタイプの人間だ。
だから自身が理不尽な目にあわない限りは大暴れなんてしない。
「……燃え尽き症候群だね。わかった。それじゃあ、手配しているホテルを案内させようか」
ディがパン、と手を叩くと「失礼します!」と言いながら少女がはいって来た。
入って来たのはまさしく元気溌剌! と言った女性だった。
金髪碧眼の恐らくはアメリカ系の女で、容姿は優れている。
「サラ・アグネス・アラン、ただいま参上しました!」
そうサラはでかい胸を揺らした。
ディが口を開く。
「これからサラが君の監視と、護衛に着く。異世界で悪逆を成した君を放置する事は出来ないからね」
「……まぁ、妥当だな」
即殺しに来たり、あるいは監獄にぶち込まれないあたりまだ温情があるとディノクは感じた。
まぁ監獄にぶち込まれるのなら兎も角、殺しに来るなら殺し返していたが。
「ていうか、男の監視に女っていいのか?」
俺はもう男でもないが、とディノクは呟いた。
ディノクは外見こそ男性に近いが、その実無性に近い。
生殖器は無く、乳首も無いしへそも無いのだ。魔神を取り込んだことで性別の垣根を超えたのである。
「問題ない。サラは超人……何があっても対処できるさ」
「超人?」
「ダンジョン組合に登録し、一定以上の戦闘力──単独で国を滅ぼせるレベルの者を超人と呼んでいるんだ。サラ一人でもアメリカ軍ぐらいなら壊滅させれるよ」
「そりゃ強いな」
ディノクは一瞬魔眼で見ようかと思ったが辞めておいた。
「あぁ、それとこれを渡しておこう」
そう言ってディは棚からスマホを取り出した。
「これは君用のスマホだ。最低限のアプリと、私とディアブロ、サラの電話番号が登録されている。壊れたら私に連絡してくれ」
「わかった。感謝する」
そう言ってディはスマホを渡し、ディノクは受け取った。
「それじゃあ、後はサラに任せる」
「わっかりました! お任せください! さ、ディノクさん、行きますよ!」
「あぁ」
そうしてディノクはダンジョン組合本部を出て行った。