異世界から帰ってきた魔神ですが、ダンジョン攻略を始めます 作:Revak
「しっかし、本当に危険人物なんすかねー」
名古屋市のある住宅街の屋根上で。サラが呟いた。
サラは今、ディノクの監視任務をこなしている。
これはディノクも承認している。旗から見れば異世界を滅ぼそうとした怪物なので監視されてもやむなしとわかっているのだ。
サラは【制作】の円卓──材木が作った隠密者のローブという黒いローブを着ている。
これを着る事であらゆる探知に引っかからない、という能力を得られる。
視界には映らず己が発する音や臭いも認識されず監視カメラにも映らず赤外線センサーにも探知されないというあらゆる探知を無効化出来るのだ。
と言っても同系統のスキル勝負──出力勝負になると負ける事が多いので探知系相手には過信は禁物だが。
サラはディノクの家──集合住宅の一階を望遠鏡で監視する。
サラは感知機能も鍛えているのでこんなの無くても見れるが気分の問題であった。
サラはダンジョン組合が表に出てからダンジョンに入り、そこで活躍し始めた元ワーカーであった。
保有するダンジョンスキルは【砕く】という物だ。
サラはこれを拡大解釈し、己の才能の壁、限界の壁も砕けると解釈し砕き──際限なく強くなれる超人と化した。
音速を超えて走り、音を超えたパンチで都市を消し飛ばし、【砕く】のスキルでどんな敵も砕いて見せる超人である。
だが、円卓には及ばない。
円卓の一人、ディアブロならば即死の【魔法】でサラに何もさせず殺せるし、それ以外も基本の速度が桁違いなのでやはり何もできず死ぬだろう。
円卓と超人の間にはそれだけのデカい壁がある。
だが、それもサラにとってみれば何れ砕けるだろう壁だ。何せ【砕く】がダンジョンスキルなのだから。
さて、この監視はいつまで続くのだろうか──とサラはあくびをかみ殺しながら監視を続けた。
■
「……意外と伸びたな」
ディノクは自宅のパソコンで編集作業の休憩にSNSを開き、それを見ていた。
観ればダイブライブでのディノクのチャンネル、ディノクの探索チャンネルの登録者が百人を超えていた。
ダイブライブ自体のアカウント数は十億を超えるという巨大な配信サイトだ。
そのサイトで登録者数が百人を超えるのは一応凄い事である。
まぁ斬姫ルナは登録者数二十万人を超える大手ダンライバーだが。
ダイブライブではダンジョン配信とダンジョンに関する動画投稿は認められている。
そのためディノクは登録者数と知名度を得るために配信の切り抜き作業をしていた。
そして途中で気づいた。
「……眷属作ってやらせた方がいいのでは?」
ディノクの異世界スキル【全意思疎通】はあらゆるモノに意思を通すことが出来る。
そのため異世界時代は眷属を乱造していた。己が暮らしていた城も眷属であった。
「試してみるか……"従え"」
ディノクがパソコン──デスクトップ型パソコンの本体にそう命令をした。
瞬間パソコンが眷属化した。
本体から口と牙が生え、校内には赤い目玉が付いている。
「おぉ、出来た……お前動画を良い感じに切り抜きする事出来るか?」
『お任せを。マイマスター』
「お前喋れるのか……」
眷属の事はようわからんと首をひねっているとすぐに編集が終わる。
『出来ましたBoss。投稿しますか?』
眷属として電子機器を人間以上に使えるという強みと魔神の眷属として魔神が持つ無限の魔力から魔力を無尽蔵に供給される事による魔力を使ったブースト。
それにより編集が一瞬で終わった。
「……マスターかボスかどっちかで統一しろ。俺が確認するからそれ待ってろ」
『Yes.マスター』
そしてディノクは編集された動画を再生させる。
十五分ほどの動画で起承転結がきちんとされており、そして何よりも顔と胸のアップがあった。
ディノクも元は男なので胸のアップは必須か……と謎の納得をして無視した。
(普通に面白いな)
ふむ、とディノクはそう感想を抱いた。
一応参考までに斬姫ルナやフロンティアの他配信者の動画や配信を見ていたので動画や配信がどういうものかわかっている。
その上で面白いという感想を抱けた。
「よし、投稿してくれ。SNSで告知もしておけ」
『わかりました』
そして動画がアップロードされた。
「さて、今日はどうするかな……」
ディノクは消費者側のオタクだったのでアニメや漫画、ゲームは人並み以上に嗜む。
自室にはラノベや漫画が入った本棚が二つ程ある。
十七年ぶりの自室だったがきちんと手入れされていたため問題なく使える。
今日は最新の漫画でも読むか、とネットサーフィンに興じるのだった。
「──ん?」
そして朝から二時間程電子版の漫画を買って読んだりしていると電話がかかって来た。
はて誰だろうかとスマホを取り画面を見る。
そこには斬姫ルナ──本名桐生莉子の名があった。
スワイプして電話に出る。
「もしもし?」
『あ、泰葉さん! チャンネル観ましたよ! ダンライバー始めたんですね!』
テンションよく莉子が言った。
莉子には既にディノクの本名は伝えてある。
「あぁ。手っ取り早く金を稼ぐならワーカーだし、どうせなら配信もしてみたかったからな」
ディノクは昔ゲームの配信をしてたことがある。
その時は視聴者数は多くて五人程度だった。そのため配信欲とでもいうのだろうか。それはあった。
『それじゃあうちに所属しませんか?! 今新規募集してて、うちの推薦なら通ると思うんすよ! 泰葉さんビジュ良いし戦闘力もあるしでバズるの間違いなしっす!』
「個人勢が企業勢に成れるのか?」
『なれるっすよ。うちじゃないすけどアビスのヴァルハルトさんとか元個人勢だし』
「あぁ、あの画面が五月蠅い奴か」
ヴァルハルト──本名橘蓮司のダンジョンスキルは【軍勢】という物だ。
蓮司のイメージに『闇の軍勢』というイメージが強かったためモンスターを生み出し使役するスキルとなった。
ドラゴンだったり暗黒騎士などが配信画面を埋め尽くしモンスターを蹂躙する。
この手のスキルにありがちな本人の戦闘力も非常に高いという欠点が少ないダンライバーである。
『うちでも見どころのあるダンライバーはスカウトして企業勢になって貰ってるんで、泰葉さんも絶対企業勢に成れると思うんすよ!』
「……企業勢か。確かにいいかもしれない」
企業勢になれば税金の扱いもしてくるだろうし、とディノクは考える。
ワーカーが得た報酬──ダンジョンの素材を売却する時には既に税金分引かれているのでそこから更に税金は取られない。
だが配信で得た金銭は別だ。スパチャや動画の広告などで得た金銭は確定申告して処理しないといけない。
「そうだな……そちらと相談とか出来るか?」
『出来るっすよ! じゃあ明日来ますか?!』
明日、という急展開にディノクは驚きつつ了承することにする。
「よし。明日行こう。本社はどこだ?」
『本社は東京の丸の内にあるっすよ! 明日の九時に予約しま──あれ? 泰葉さん愛知県在住だとこっち来るのどうやっても昼過ぎますよね?』
「あぁ、それなら問題ない。空間転移出来るからな」
『転移魔法使えるんすか?! すごいっすね……わかりました! 明日の九時に予約しときますね!』
「あぁ。それじゃ」
そうして電話は切れた。
「企業勢か……楽しくなってきたな」
ディノクは微笑むのだった。
■
翌日の朝の八時五十分。
東京の丸の内にディノクは来ていた。
ディノクは多少の注目を集めていた。
褐色肌という日本ではあまり見ない肌色に二百二十センチという圧倒的身長。更にその美貌も相まって注目を集めているのだ。
そしてディノクは本社でけぇなぁ、と思いつつビル内に入った。
ビルの一階はラウンジで受付もある。
ディノクは受付に進み話す。
「今日の九時に面談を予約していた不破泰葉です。桐生莉子さんは居ますか?」
「少々お待ちください」
そう言って受付嬢は連絡ツールを操作する。
五分と待たず連絡が終わる。
「ご確認しました。ご案内しますね」
「よろしくお願いします」
そうしてディノクは案内される。
エレベーターに乗り七階にまで上がる。このビルには地下二階まであった。
そして七階のある部屋に着くと其処には見たことない男性が居た。
どこかやつれているが優男と言った雰囲気の男でスーツを着ている。
受付嬢が去るとディノクは挨拶をする。
「失礼します。不破泰葉です。本日はお時間をいただきまして誠にありがとうございます」
そう言ってディノクは小さく頭を下げた。
「初めまして、不破さん。私は武内誠と申します。本日はお越しいただきありがとうございます」
そう誠も頭を下げた。
誠が「どうぞおかけになってください」と言ったのでディノクは「失礼します」と一言言ってから椅子に座った。
「それで……本日は斬姫ルナ──桐生さんからの推薦で個人勢から企業勢になりに来たと聞きましたが……なるほど。素質はありますね」
そう誠は言った。
続けて誠が言う。
「こう言っては何ですが、ダンライバーもユーチューバーと同じくビジュアル……外見が重視されます。その点不破さんは容姿端麗です。第一段階はクリアできています。そして次の問題……戦闘力ですが、此方も問題ないと思います。動画の方拝見させてもらいました。そちらではダンジョンボスを一方的に倒していましたね」
「まぁ、あの程度は敵ではないので……」
「……自信家なのですね。ダンライバーにとって重要なのは二つ。その容姿と、強さです。容姿は優れているとわかりました。戦闘力も──ある程度は高いとわかりました……ではここで、ちょっとした試験を受けて貰いたいと思います」
そう誠は微笑んだ。
「試験? ──ダンジョンに実際に潜って戦闘でも?」
「いえ。ヴァルハルトさんに来てもらっています。彼の【軍勢】と戦い、その力を示して貰います」
こうして試験を提示するのはやはりダンライバーに求められるのは戦闘力だからだ。
弱いダンライバーが無様に死ぬのもそれはそれで絵になるが、企業勢がすぐ死にました、だと企業側も痛手を負うのである。
「ほぉ……腕がなりますね」
そうニッとディノクは笑みを浮かべた。
「では地下に行きましょう。そちらでヴァルハルトさん──橘さんに待機して貰っています」
「……地下で戦って大丈夫ですか? 私結構強いので余波とか出ますが……」
「ご安心を。専用のスキル持ちが結界を張っているのでたとえ核爆発が起きても無傷です」
「なら安心ですね」
では行きましょう、と二人は立ち上がった。
部屋を出て廊下を進みエレベーターに入って地下二階まで降りる。
「おぉ、広い」
そこは白い空間だった。
縦にも横にも広く、大人数を収納できる広さがあった。
「あ、泰葉さん!」
そこには莉子の姿もあった。
「おう、来たぞ……そちらの人が橘──さんか?」
ディノクは莉子の隣に立つ男に視線を向けた。
そこには黒い軍服を着た男が居た。どこかナチスドイツに似ている軍服だ。
頭には黒い軍帽を被っている。
青い髪に黒目の容姿端麗の男だ。腰にはサーベルを差している。
ワーカーは特例として武具の携帯が許可されている。
と言っても所持と運用には専用の資格試験に合格し、資格証を得ないといけない。
また、ダンジョンでは武具の携帯は難しいと考えられている。
何せ普通に重いし、コスパも悪い。
剣にしたって振るうと疲れるし、敵を数体斬れば血と油で切れ味は落ち研がないと行けなくなる。
銃はもっと最悪だ。一発撃つたびに金を消費し、銃弾費用でモンスター素材を得ても赤字になった、なんてことがある。
勿論それらの武具に習熟し達人ともなればコストよりも得られる金銭の方が多くなるのだろうが、素人が手にしてもその程度であった。
それに普通に敵を倒していけば剣だろうと摩耗し壊れるし、防具は現代人には着てると重くて碌に身動きできない。
後全身鎧なんて着よう物なら排泄時に非常に困る。
だからこそ、ダンジョンスキルが重視される。
【切断】や【炎】のようにわかりやすく強力なスキルなら武具に頼らずともモンスターをバッタバッタとなぎ倒し無双ゲームを展開できる。
だからワーカーで武器を装備してるのは珍しいと言っていいだろう。
「おう。俺はヴァルハルト。本名橘蓮司だ。よろしく頼む、不破さん」
「こちらこそよろしくお願いします。橘さん」
そうディノクも微笑み返した。
「それじゃあ、二人で模擬戦をしましょう。と言っても橘さんが召喚するモンスターと戦ってもらうだけですが」
「いえ。大丈夫です。私の強さを見せつけてあげます」
そうディノクは微笑んだ。
そして蓮司とディノクは対峙する。
「では行くぞ。来い、暗黒騎士!」
蓮司がスキルを駆使する事で闇から暗黒騎士が召喚された。
真っ黒な闇の騎士と言った装いの全身鎧。フルフェイスの兜。両手で大剣を持っている。
それが四体現れた。
暗黒騎士は熟練の戦士と同程度の戦闘力を持つ。
オークやオーガ程度なら片手間に殺せるほどの力だが、ダンジョンスキルの様ないかれた力は持っていない。
「雑兵だな」
ディノクはそう言い高速移動。ソニックブームで周囲が滅茶苦茶にならない程度には速度を落としたが、常人では視認できぬ速度での移動だ。
それを持ってして一体一体に急接近。腹を一発ぶん殴る事でばらばらに吹き飛ばしていった。
かかった時間は一秒にも満たない。
「……凄まじいな」
蓮司は冷や汗を流した。
先ほど召喚した暗黒騎士は蓮司が召喚できる中でも最弱の存在だ。だから一度に四体出してみた。
それを難なく倒せるとは思っていたが、自身の目にもとまらぬ速度で動いて倒すとは思っていなかった。
暗黒騎士の残骸が消える。
「よし、なら今度は中位の奴を召喚しよう──来い、ブラックドラゴン!」
いちいち蓮司はポーズを取った上で叫んでるが別にそんなことしなくとも召喚できる。
今度召喚されたのは十メートルほどの巨体を持つ竜だ。
蜥蜴を黒くし巨大化させ、背中から翼を生やした怪物である。
「ドラゴンか」
腕がなる、とディノクは笑みを浮かべた。
異世界時代、竜は腐るほど殺してきた。
世界の調停者を気取る竜王と敵対し、配下の竜も全て殺してきた。
殺した数は百や二百では効かないだろう。
ブラックドラゴンが口を開け、ブレスを放った。
放たれたのはアシッドブレス。酸属性のブレスだ。
その直撃をディノクは受ける。
「ちょ、無事か?!」
蓮司はボケっと突っ立って防御行動すらしなかったディノクを心配して声を出した。
「この程度じゃ傷もつかん」
「いや服?!」
そう。ディノクは頑丈だ。全盛期である今はたとえ星の爆発にだって耐えられる。
だが──服はそうはいかない。
着ているのは所詮服屋で売ってる量産品の服だ。
「あ、しまった」
つまりは酸で服が溶け、全裸になった。
ディノクはどうせ女の体なら、と乳首や女性器も再現している。綺麗なピンク色である。
それが晒された。
男である蓮司と誠はあわわと顔を手で覆った。蓮司の方は指の隙間からチラ見していた。
「仕方ないな……」
ディノクはそう呟くと魔法で服を生成した。
胸と股間だけ隠せばいいだろ、みたいな服だ。外見の癖に地球上に存在するどの鉱石よりも防御力が高く、本体の魔力を使う事で自動で修復される。
「よし、やるか」
そういうと接近していたブラックドラゴンに向かって蹴りを放った。
その一撃で充分。ブラックドラゴンは消し飛び、消えた。
「……強いな、ほんとに」
先ほどのブラックドラゴンは蓮司が召喚できる中でだいたい中間程度の力を持つ。
「……じゃあ、こいつはどうだ? 来いっ魔将兵!」
そして今度は魔族が召喚される。
頭は黒い山羊の物で背中には蝙蝠の翼。手には巨大な戦槌を持っている、三メートルほどの巨体を持つモンスターだ。
「さぁ行け! 蹂躙しろ!」
蓮司の指示に従い魔将兵が突撃する。
魔将兵は蓮司が使役できる中でも最強の群れだ。
個で言うと上がいるが、数を用意できるとなれば魔将兵しかいない。
そして当然強く、アビスでも上位のダンライバーである橘蓮司が使役する魔将兵の戦闘力は並みの階層主──いわゆるボスモンスターなら単独で殺せるほどには強い。
「ふん!」
だが、ディノクの前には雑兵である。
ディノクが近づいて一発ぶん殴った。それだけで魔将兵は無残な肉片に変わり死亡し、消えた。
「……えぇ……」
最強の群れとしての強さを一切発揮できず殺されたことに流石の蓮司も引きつった笑みを浮かべるしかなかった。
所詮は人の世界の常識での強さに過ぎないのだ。
例えるならば子供の喧嘩で素手でぽこぽこ殴ってるところに核兵器を持ってきたような無法な強さ。それがディノクだ。
「……いいだろう。ならば俺自身の手で測ってやろう!」
そう叫ぶと蓮司はサーベルを抜いて構えた。
そのことに誠は焦り始める。
「ちょ、橘さん? 強さはもうわかったのでもう充分──」
「御託は無用! 行くぞ!」
蓮司はドン、と地を蹴り疾走した。
(速いな)
その速さを見てディノクは少し警戒した。
速度はわかりやすい強さの指標になる。
生きる時間軸が違えばそもそも戦闘が成立しないことが多い。
ナメクジと豹が戦ったとして、そもそも移動速度が違いすぎるのだから戦いなど成立しないのと同じだ。
だが速いと言ってもディノクの様なイカれた速度ではない。
時速にして八百キロ程度だろう。
サーベルによる斬撃が来る。
それに対しディノクは腕を上げ、受け止めた。
「──ノーダメージかっ!」
受けたダメージはゼロ。再生能力すら起動していない。
ならばとすぐさま蓮司は連続攻撃に移る。
上下左右全方向からの斬撃だ。
橘蓮司のダンジョンスキルは【軍勢】だが、軍勢を率いる本人が弱くてどうするという考えが蓮司にはあった。
故に蓮司は自身より強い存在を従える事は出来ない。だが、その代わり本人の戦闘力も高くなっていく。
ダンジョンに入ればダンジョンと同時に魔法に目覚める。
魔法に目覚めた人間は俗にいうレベルアップをし、モンスターと戦い続ける事で身体能力が上がっていく。
それだけでなく、身体能力強化魔法なんてものを覚えればそれだけ身体能力は上昇して行く。
蓮司も身体能力強化魔法を覚えてる純戦士の構成をしている者だ。だからモンスターテイマー的な能力の癖に本人の戦闘力が高い。
だが、それでもディノクは遠く及ばない。
(……これほどとは……!)
ディノクとは比べるのもおこがましいだけの差があった。
「今度はこっちが行くぞ──耐えろよ」
そういうとディノクは雑に腕を振るった。
見え見えのテレフォンパンチ。雑な攻撃だ。
だが──回避も防御も不能だ。
動作がそれというだけで速度はアニメの倍速以上に速い。故に回避も防御も不可能であった。
蓮司の腹に拳が当たり、蓮司は大きく吹っ飛んで行った。
「あっやべ」
そして壁に激突し、大きなクレーターを残してダウンした。
慌てて莉子が蓮司に駆け寄る。
「大丈夫ですか?!」
それに対し蓮司は口から血を吐きながら答えた。
「肋骨が全部折れたぜ……」
「致命傷じゃないですか?! えぇッとどうしましょう?!」
この時代、解りやすい回復のポーションなんて物はない。
そのため医療は普通の科学の範囲で済ますしか基本はない。
「私が治します!」
そう言って誠が駆け寄りダンジョンスキルを行使した。
誠のダンジョンスキルは【回復】自己他者問わず回復させることが出来る。
やろうと思えば欠損すら治せるが、それは大きく消耗するので基本はしない。
回復のスキルで蓮司の傷が綺麗に治る。
「すまん、大丈夫か?」
ディノクがそう近づきながら言った。
「大丈夫だ。問題ない……いやしかし滅茶苦茶強いな」
蓮司は立ち上がりながらそう返した。
「まぁ、これでも色々人生経験あるからな」
流石に異世界云々は言えないのでごまかした。
ダンジョン組合側から異世界に関しては隠すよう伝えられている。
「そうか……それで武内さん。試験の結果は?」
そう蓮司が問いかけた。
武内は笑顔で言った。
「企業勢として問題ない──いえそれ以上の素質があるでしょう。戦闘力の高さは想像以上でしたが……後は、キャラ付けですかねぇ」
「キャラ付け? ……あぁ、俺様系とかそういう?」
ディノクはそう問いかけた。
「えぇ。と言ってもそこまで深く考える必要はまだないかと。ダンライバー自体まだ千人を超えていないので、変わったキャラ付けをしなくとも見られるますから……それではまた後日、契約書などを用意します。本日はありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
こうして面談は終わった。