マインドサーチ&ダイレクトで人生無双~社内の嫌われ者から世界の黒幕へ~ 作:黒川よふね
40歳の誕生日。佐藤健司(さとう けんじ)は、終電間際のオフィスで一人、カップ麺をすすっていた。
「佐藤さーん、明日のプレゼン資料、全部データチェックし直しておいてね。あ、俺これから接待(という名のアフターファイブ)だからよろしく~」
年下の生意気な後輩・課長代理の吉村が、嘲笑を浮かべながら健司のデスクに大量の書類を叩きつける。 15年勤めて平社員。真面目さだけが取り柄の健司は、いつもこうやって人のやりたがらない仕事を押し付けられ、手柄だけを奪われてきた。
(……もう、疲れたな)
健司が溜め息をつき、書類を手に取ったその時だった。 頭の中で、奇妙な『ノイズ』が響いた。
《システム適応完了。能力【マインド・コマンド】が発現しました》
「ハ……? 疲れて幻聴か……?」
翌朝。出社した健司を、吉村課長代理がさっそく怒鳴りつける。
「おい佐藤! 昨日頼んだ資料、フォントのサイズが一部違うぞ! だからお前はいつまで経ってもうだつが上がらないんだよ!」
フロア中の視線が健司に集まる。いつもの見慣れた、哀れみと蔑みの視線。 いつもなら申し訳なさそうに頭を下げる場面だった。しかし、健司の目には異様な光が宿っていた。試しに、吉村の目をじっと見つめてみる。
1秒、2秒、3秒。
(……あ、見えた)
吉村の頭の中が、手に取るように理解できた。 『クソが、今日も適当にストレス解消してやったぜ。こいつは言い返せないから楽でいいわ』
(なるほど。じゃあ、こうしてみたらどうだ?)
健司は心の中で強く命じた。 ――【吉村。今すぐ大声で自分の不正を白状し、俺に土下座しろ】
次の瞬間、吉村の顔色がガラリと変わった。 まるで何かに取り憑かれたように目が泳ぎだし、次の瞬間、フロア中に響き渡る大声で叫んだ。
「すみませんでしたぁぁぁ!! 実は先月の経費、全部自分の飲み代に付け替えてました! 佐藤さんの手柄も全部自分のものにしてました! 本当に申し訳ありませんでしたぁぁ!!」
ドッシーン! と音を立てて、吉村が床に額をこすりつける。 静まり返るオフィス。社員たちが目を見開いて固まっている。
「……吉村くん、ちょっと会議室に来なさい」 奥から顔を出した部長が、鬼のような形相で吉村を連れて行った。
健司はデスクで静かにコーヒーを一口すすった。苦いコーヒーが、今日はなぜか最高に美味い。
(……フッ、なるほど。こういうことか)
40歳。人生の折り返し地点で、佐藤健司の「欲望どおりの人生」が幕を開けた。