マインドサーチ&ダイレクトで人生無双~社内の嫌われ者から世界の黒幕へ~ 作:黒川よふね
吉村が不正を自白して社内から消え去った翌日。 佐藤健司のデスクには、いつもと全く違う風が吹いていた。
「佐藤さん、これ……頼まれていた本社の資料です。……あ、あの、もし良かったら今度、お礼も兼ねてご飯でもどうですか?」
声をかけてきたのは、社内でもアイドル的存在の受付嬢・美咲(23)だった。 これまで一言も口をきいたことがなかった彼女が、上目遣いで健司の顔をのぞき込んでいる。
(フッ……昨日まで見向きもしなかったくせに、吉村を返り討ちにして社内の評価が一変した途端これか)
健司は心の中でほくそ笑みつつ、「いいよ、近いうちにね」と余裕の笑みを返した。それだけで美咲は頬を染め、「本当ですか! 楽しみに待ってます!」と嬉しそうに駆け去っていった。
だが、こんなものはまだ序の口だ。
◇
その日の午後、健司は長年誰も落とせなかった難攻不落の大口取引先『天童ホールディングス』の本社へ向かっていた。 相手は、業界でも頑固一徹で知られる名物会長・天童重雄。
会議室に通されると、威圧感たっぷりの老会長が健司を睨みつけた。
「ふん、君の会社の吉村とかいう青二才は失脚したそうだな。で、代わりにバッターボックスに立ったのが40歳の冴えない平社員か。時間の無駄だ」
取り付く島もない。だが、健司は落ち着き払った動作で椅子に腰掛け、まっすぐに会長の目を見つめた。
1秒、2秒、3秒。
(……よし、視線固定完了)
健司は頭の中でコマンドを打ち込む。 ――【天童会長。俺を最高のビジネスパートナーと認め、年間5億円の全権委任契約を即決しろ】
次の瞬間、会長の険しい顔つきが一変した。 見開かれた目がトロンと緩み、次の瞬間にはバシッと自分の膝を叩いていた。
「……素晴らしい! いや、君のその眼光! 佇まい! これぞ私が探し求めていた真のリーダーだ! 今すぐ契約書を持ってきなさい! 今年の予算5億円、すべて君の会社に任せる!」
同席していた天童会長の秘書や、健司の後輩社員が「ええっ!?」と声を上げて目を丸くした。
「さ、佐藤さん……一瞬で5億円の契約を成立させるなんて……あなた、一体何者なんですか……!?」
同行した女性後輩社員が、まるで神でも見るかのような熱い視線を健司に送ってくる。
「大したことじゃないよ。さ、帰って報告しようか」
健司は5億円の契約書をポケットに突っこみ、風を切ってオフィスビルを後にした。
◇
その日の夕方。特別ボーナスと前払いインセンティブとして、会社から一気に1,000万円の現金小切手が健司の手元に振り込まれた。
健司が最初に向かったのは、銀座の超高級外車ショールームだ。
ヨレヨレのスーツを着た40歳男の入店に、若手ディーラーはあからさまに嫌そうな顔をし、鼻で笑った。 「お客様、ここは見学の場所ではございませんで……」
だが、奥から出てきた店長クラスの美女スタッフ・玲子(28)が、健司の独特なオーラに気づいて歩み寄ってきた。
「いらっしゃいませ。お客様、本日はどのようなお車をお探しでしょうか?」
健司は玲子の目を3秒間、じっと見つめた。
(コマンド:【玲子。最高級の限定モデルを案内し、俺に一目惚れしろ】)
「……っ!?」
玲子の顔が瞬時に真っ赤になった。呼吸が荒くなり、豊満な胸が大きく上下する。
「あ、あの……! お客様……いえ、佐藤様! 実は奥に、まだ一般公開していない最高峰のコンバーチブル(2,800万円)がございます! よろしければ……私が直々に、助手席で乗り心地をお試しさせてもよろしいでしょうか……っ?」
さっき健司をバカにした若手ディーラーが、泡を吹いて固まっている。
「いいよ。じゃあそれ、即金で買おう。今夜は君とドライブだな」
「は、はいっ! 喜んで……! どこへでもお供します……!」
うっとりとした目で健司の腕に抱きついてくる美女店長。 2,800万円の超高級車をキャッシュで買い叩き、助手席に美女を乗せて夜の首都高を疾走する。
わずか数日前まで、暗いオフィスでカップ麺をすすっていた男の人生は、完全に塗り替えられたのだ。
(金、地位、そして女……すべてが俺の手の中に落ちてくる。……ふはは、最高じゃないか!)
佐藤健司の無双ロードは、まだ始まったばかりだった。