マインドサーチ&ダイレクトで人生無双~社内の嫌われ者から世界の黒幕へ~ 作:黒川よふね
同窓会でかつての同級生たちを完璧に蹂躙した翌日。 佐藤健司は、天童ホールディングス本社の最上階にある会長室に招かれていた。
年間5億円の契約を取り交わした健司を、天童会長は笑顔で出迎えたが――部屋の隅に立つ一人の女性が、健司を射殺さんばかりの鋭い視線で睨みつけていた。
天童会長の孫娘、天童 華蓮(てんどう かれん)。22歳。 海外の名門大学を卒業し、圧倒的な美貌と財力を背景に「世の男はすべて私の足元に跪くゴミ」と本気で信じ切っている傲慢な令嬢だった。
「おじい様、正気ですの? こんな庶民臭い中年男に5億円もの案件を丸投げするなんて。どうせ怪しい新興宗教か手品で騙したに決まっていますわ」
華蓮はシルクのドレスを揺らし、健司の前に歩み寄ると、心底汚いものを見るような目で蔑んだ。
「いい? 勘違いしないでちょうだい。おじい様が騙せても、この私は騙されないわ。あなたみたいな冴えないオジサンが私の視界に入るだけでも不快なの。今すぐ契約を辞退して、私の前から消えなさい」
天童会長が「これ華蓮、無礼だぞ!」と咎めるが、華蓮はフンと鼻を鳴らして高飛車に胸を張る。
健司は腹を立てるどころか、楽しそうに口元を歪めた。
(なるほど……プライドだけは一人前の高飛車なお嬢様か。……実に喰いがいがある)
「天童さん、君は自分の美しさと立場に絶対の自信があるようだが……人の心を甘く見ない方がいい」
「は? 何を気取ったことを――」
健司は華蓮の顎をスッと指先で持ち上げ、その艶やかな瞳を正面から見つめた。
1秒、2秒、3秒。
華蓮が「気安く触らないでっ!」と撥ね退けようとした瞬間、視線が固定された。
(コマンド:【天童華蓮。傲慢なプライドをすべて捨て去り、俺に逆らえない身体になれ。俺の承認なしでは生きていけない忠実な奴隷となれ】)
「――ッ!?」
華蓮の身体がビクッと跳ね上がった。 次の瞬間、彼女の誇り高き瞳からスーッと光が消え、代わりに底なしの熱情と服従の光が宿っていく。
(な……なにこれ……!? 頭の中が熱い……! この人に逆らっちゃダメ……私、この人の足元に跪きたい……っ!)
プライドが音を立てて崩壊していく快感に、華蓮の膝がガクガクと震えだした。 ドサリと、高級絨毯の上に両膝をつく令嬢。
「か、華蓮!? どうしたのだ!?」と慌てる天童会長を余所に、華蓮は健司の靴の先をつまむように握りしめ、上目遣いで震える声を漏らした。
「あ……あぁ……健司様……っ! 私……私、なんて恐ろしいご無礼を……! お願いです、どうかお許しください……! 私を……私を健司様の所有物にしてください……っ!」
さっきまでの高慢な態度は跡形もなく消え去り、涙を浮かべて健司の足元で懇願する華蓮。
「いい心がけだ、華蓮。これからは俺の言うことだけを聞けばいい」
「はいっ……! 健司様のご命令なら、何でも……何でもいたしますわ……っ!」
完璧な服従。絶大な権力を持つ大財閥の令嬢が、健司の指先ひとつで転がる忠実な愛犬へと変貌した瞬間だった。
◇
その日の夜。 港区のペントハウスで華蓮とクリスティナを従え、極上のワインを味わった健司は、一人バルコニーに出て夜景を眺めていた。
(金、地位、そして世界最高峰の女たち……すべてが手に入った。だが――)
健司はふと、背後に漂うかすかな殺気に気づいた。
「――動かないで」
ひんやりとした金属の感触が、健司の首筋に押し当てられた。 振り返ると、そこには漆黒のパンツスーツに身を包んだ、凛とした美貌の女性が立っていた。
鋭い眼光、引き締まった身体、そして手に握られた警察用の拳銃。 警視庁特務捜査課の捜査官、桐生 葵(きりゅう あおい)(29)だった。
「佐藤健司。あなたの周囲で起きている不自然な自白、怪しい資金移動、そして政財界の重鎮たちの異常な心変わりにについて説明してもらいましょうか」
葵は冷徹な声で告げた。彼女は健司の急激な台頭を不審に思い、単独で捜査を進めていたのだ。
「警察の捜査を甘く見ないことね。どんな手品を使っているのか知らないけれど、私の目は誤魔化せないわ」
ピストルを突きつけられても、健司は眉一つ動かさなかった。 むしろ、この意志の強そうなクール美女の登場に、胸の奥から湧き上がる興奮を覚えていた。
「へえ……警視庁の優秀な捜査官様か。俺を追ってきた度胸は褒めてやるよ」
「口を閉じなさい。手を上げて――」
「桐生葵捜査官。……俺の目をよく見てごらん」
健司はゆっくりと振り返り、葵の漆黒の瞳を正面から見据えた。
1秒。葵の眉がひそめられる。 2秒。銃口がわずかに揺れ始める。 3秒――。
(コマンド:【桐生葵。俺を捜査対象ではなく『絶対の主人』と認識しろ。俺を脅かす全ての危険から守る無敵の盾となれ】)
「――ッ!?」
葵の引き金にかかった指が固まった。 脳裏に強烈な衝撃が走り、彼女がこれまで培ってきた警察官としての正義感が、一瞬で「健司への絶対的な忠誠」へと書き換えられていく。
「くっ……何……これ……!? 私の……意識が……っ!」
必死に抵抗しようとする葵だったが、能力の絶対的な力には抗えない。 ゆっくりと銃を下げた葵は、頬を紅潮させ、荒い息を吐きながら健司の前に直立不動で敬礼した。
「……警視庁特務捜査課、桐生葵……只今より、佐藤健司様の直属の護衛・および裏工作担当として着任いたします……っ!」
「よく言えた。頼むぞ、俺の可愛い警察官」
健司が葵の頬を優しく撫でると、クールだったはずの特務捜査官は甘い吐息を漏らし、うっとりとその手に頬を寄せたのだった。