マインドサーチ&ダイレクトで人生無双~社内の嫌われ者から世界の黒幕へ~ 作:黒川よふね
佐藤健司の急速な台頭は、日本の政財界を裏から牛耳る巨大プライベート・ファンド『ヴァルハラ・キャピタル』の目を引いていた。
「冴えない40歳の平社員が、数か月で15億を稼ぎ、天童ホールディングスを動かしているだと? ……不愉快だ。潰せ」
帝王のように冷酷な指令を下したのは、ヴァルハラ・キャピタルのCEO、黒岩 征十郎(くろいわ せいじゅうろう)。 政財界に太いパイプを持ち、これまで数々の企業を罠にハメて倒産に追い込んできた「陰のフィクサー」だった。
黒岩は健司を罠に嵌めるべく、健司の資産口座の凍結工作と、メディアを使った大規模なインサイダー取引疑惑の捏造キャンペーンを開始した。
◇
数日後。健司のペントハウスに、テレビのニュース番組が緊急速報を流した。
『実業家・佐藤健司氏に重大な金融商品取引法違反の疑い! 警察が家宅捜索へ――』
一見すると、健司は社会的に完全に詰んだように見えた。 しかし、ペントハウスのソファでワイングラスを傾ける健司の顔には、微かな焦りすらなかった。
「健司様、黒岩の手先である悪徳検事と不法捜査チームが、このマンションの地下駐車場に到着いたしました」
黒髪のスーツ姿も凛々しい桐生葵が、甘い眼差しを向けながら健司に報告する。
「葵、警察内部の揉み消しと裏工作の手配は終わったか?」
「はい。私の警察権限と特務捜査課のデータを用いて、黒岩一派が過去に行ってきた不正融資、インサイダー取引、汚職の全証拠を警視庁・検察庁のトップへ直接送信完了いたしました。さらに――」
葵はうっとりと微笑んだ。
「黒岩が送り込んできた捜査チームも、私がすべて『説得』し、今や全員が健司様へ忠誠を誓う手下となっております」
「上出来だ。……華蓮、そっちはどうだ?」
健司の足元で甲斐甲斐しくワインを注いでいた天童華蓮が、花が咲くような笑顔で顔を上げた。
「はい、健司様♡ おじい様(天童会長)と天童財閥の全人脈をフル活用し、ヴァルハラ・キャピタルの株を裏で買い占めさせましたわ。さらに、黒岩の主要な出資者である海外投資家たちにも私が直接連絡を入れ……健司様の『素晴らしい魅力』をお伝えして、全員こちら側に寝返らせました!」
「フッ……二人とも完璧だな」
黒岩が仕掛けた完璧なはずの罠は、健司の命令一つで動く「警視庁の特務捜査官」と「日本最大の財閥令嬢」の手によって、開始数分で完全に解体されていたのだ。
◇
同日夜。大手ホテルの超高級スイートルーム。 黒岩征十郎は、健司が逮捕され社会的に抹殺される瞬間をワイン片手に心待ちにしていた。
「くくく……40歳で調子に乗った愚か者が。我がヴァルハラ・キャピタルの力を思い知るがいい」
そこへ、部屋の扉が静かに開いた。
入ってきたのは、警察に連行されているはずの佐藤健司。 そしてその両脇には、忠実な護衛のごとく寄り添う桐生葵と天童華蓮の姿があった。
「な……!? なぜお前がここに……!? 警察はどうした!?」
黒岩が立ち上がり、驚愕で目を見開く。 健司は余裕の笑みを浮かべ、黒岩の目の前のソファに深く腰掛けた。
「黒岩、お前が裏でコソコソ集めていた捏造資料だが……あいにく検察は、お前自身の過去10年分の脱税と汚職の証拠の方に夢中らしいぞ」
「なに……!?」
黒岩のスマホが激しく鳴り響いた。画面を見ると、出資者たちからの相次ぐ契約解除通知と、自社の株価暴落、そして検察の特捜部が本社に家宅捜索に入ったという絶望的なニュースだった。
「ば、馬鹿な……! 我がヴァルハラ・キャピタルが……長年築き上げた私の帝国が、一瞬で破滅だと……!?」
崩れ落ちる黒岩。健司はゆっくりと立ち上がり、絶望に打ちひしがれる黒岩の顔を持ち上げ、その目をじっと見つめた。
1秒、2秒、3秒。
(コマンド:【黒岩征十郎。自らの罪をすべて告白して出頭し、残ったすべての資産と人脈を俺に差し出せ】)
「あ……あぁ……っ」
黒岩の眼光から野心が消え去り、虚無と絶対的な服従の色が広がる。
「わかり……ました……佐藤様……。私のすべてを……あなた様に捧げます……」
かつて日本の陰の支配者と恐れられた男が、涙を流しながら健司の靴に額を擦り付けた。
◇
数か月後――。
港区の一等地に立つ超高層ビルの最上階。 そこは、日本の政界、財界、そして裏社会のすべてを支配する新たな組織の本部だった。
窓の外に広がる東京の絶景を見下ろす健司の隣には、トップモデルのクリスティナ、令嬢の華蓮、そして捜査官の葵が、うっとりとした表情で健司に寄り添っている。
「健司様、本日の政財界サミットの出席者全員、すでに健司様のご意向通りに動くよう準備が整っております♡」
「健司様を守る警備体制も、国家レベルで完全無欠ですわ」
健司は手元にあるグラスを掲げ、夜景に向かって静かに微笑んだ。
40歳、冴えない平社員だった男は、いまや世界の運命すら掌の上で転がす「絶対なるフィクサー」として、頂点に君臨したのだった。