「おや?ここで人間に会うなんて、珍しいこともあるものですね」
富士樹海ダンジョン35階層。
梟はゆっくりと振り返りながら口元に笑みを張り付ける。
周りにはトカゲの死体が多数散らばっており、胸を裂かれていることから、魔石が抜かれていることがわかる。
梟が言葉を投げた場所には誰もいない。
ゆっくりと誰もいない空間に向かって梟は歩いていく。
突然足を止め…
「……違うな。……もっと…こう…。」
小走りで元の場所に戻り通路に背を向け首だけで振り返る。
「ん?ちっ!この狩り場も終わりですね!他が来てしまうなんて……」
「……トガリすぎか…キャラブレてね?」
梟はダンジョンの天井を見上げながら今、まさにここへ向かって来ているであろう探索者合同パーティーを思い「くふっ」と口を綻ばせた。
マンガ。アニメ。小説。ドラマ。映画。子供の頃から色んな創作を見てきたが、俺が好きなのは強キャラだけど正体不明。
しかし周りに強いことは知られており、一目置かれ、影で噂をされるそんなキャラ!
ダークな感じだと尚の事良い!
三世の人やXYZの人。
13の人や吸血鬼の旦那。
1番好きなのは大隊指揮官殿だけどカリスマも人を使うことも出来ない俺にはちょっと無理だしな…コミュ症舐めんなよ!
小3のころにそんなキャラ達に憧れた俺はこっそりとダンジョンに潜り、強キャラごっこに明け暮れた。
ダンジョンで10年間、強キャラに相応しい強さ、優雅さを研究し続け、幸い才能があったのか実力がメキメキと伸びる中、ふと思った
(これなら本当に謎の強キャラになれるんじゃね?)
そこから俺は謎の強キャラとして格好を整え、キャラ作りに没頭した。
黒コートは外せないよな。
丸メガネは…実際メガネって危ないんだよな。
丸メガネだと保護具として機能してないし。
けど…本気を出す時にメガネを外す演出はありだろ!
キャラは…尊大な感じか?
オラつくか?
やれやれするか?…いや、ボロが出る。
基本ダンジョンに潜り続けて人付き合いがないんだ。
陰キャ、コミュ症の俺にはハードルが高い。
やっぱり敬語キャラだな。
ですます口調ならボロも出にくいし、めっちゃ強いのに、なんか丁寧なのは俺に刺さる!
格好とキャラが決まったら1番大事な能力、戦い方だっ!
これは最初から特訓してたやり方と俺の才能が一致した瞬間移動に決めた。
本当なら異空間に物を置いたり、アジトを作ったりとしたかったが、そこまで便利な魔法でもないのは残念だが…。
異空間って本当になんにもないんだもん…。
空気と重力くらいはあっても良くね?
後は地面も欲しかった。
まあ、無いもの強請りをしても仕方ないな。
瞬間移動で1番気に入っているのは攻撃に応用することだな。
入口と出口を0距離に展開し、不可視で空間ごと切断する!
普通は移動に使う魔法を攻撃に使ってるのがまさに強キャラって感じがあり最高に気持ち良い!
手加減とか出来ないからまぁまぁ酷い結果になるがそれも強キャラの味だろう。
ここまでは順調に行けたのだが、次のステップが最難関だった……。
(政府依頼や裏の依頼ってどうやって来るんだろ?)
探索者なんて名前だが、実際の所、炭鉱夫とやってることは変わりない。
ダンジョンから資源を持って帰って来るだけ。
持ってる物がツルハシか剣か、岩を掘るかモンスターを狩るかの違いだけだ。
ランクが上がると護衛や難関依頼が来ると聞いたことがあるから協会から仕事を受けて、ちまちまランクを上げるか?
強キャラが?下積み?コツコツと?
ありえない!
いや、探索者登録時の魔力判定で
「測定上限を振り切りました!」
「バカなっ!Sランクでも不可能だぞっ!」
みたいな流れはどうだ?
いや、謎なのは最初だけで後は普通の強キャラじゃないかっ!
無しだ!無しよりの無しだっ!
どうする?どうすれば良い?依頼さえ来れば俺なら達成出来る。
………待てよ?依頼人がいないなら俺が俺に依頼したことにして適当に仕事っぽいことをすれば良いんじゃないか?
ターゲットは誰でも良い。
仕事はなんでも良い。
適当な金持ちや悪党。
政府の機関や武装勢力。
標的にするのはこの辺りか。
噂になれば仕事を依頼してくれるのも彼らだろう。
違法物の強奪や美術館の襲撃はどうだ?
手に入れた物は足がつかないように燃やせば良いだけだし候補に入れよう。
意味深なセリフを生存者に残せば凄腕の仕事人がいると噂になるだろう。
「たっ…助けてくれっ!」
「残念です。仕事ですから。」
「ん?あぁ。貴方は逃げて構いませんよ。」
「見逃してくれるのか?」
「貴方はリストにありませんから」
みたいな感じでどうだ?
…ありだな!
思い立ったが吉日、早速仕事にかかるとしようか。
「初めまして。梟と申します。さようなら。」
「絵画は頂いて行きますね。ん?あぁ貴方帰って構いませんよ。」
「仕事ですから。」
「いえ。殺しませんよ。契約はケースの中身だけですから」
様々な仕事をこなし2年と少したったころだっただろうか?
男が3人、目の前に現れた。
…いや角に2人、車に3人、計8人か。
綺麗な監視包囲だな。
軍で訓練を受けた人間だろう。
この頃にはたくさんの組織から標的にされているのか襲撃が絶えない毎日で、俺の計画が順調に進んでいる実感に浮かれていた。
また襲撃者だろう。
「梟さんですね。」
「ええ。何処かでお会いしたことが?」
「仕事を頼みたい。依頼ルートがわからず直接伺ったことをお詫びする。」
…………キターーーーー!!!っしゃぁ!おらぁ!
やっとだっ!やっと依頼が来た!苦節2年ちょっと!俺の計画が達成されたっ!
まて。落ち着け。達成されたのは計画の前段階だ。
今から始まるんだ!謎の強キャラが仕事をこなし表裏で噂される伝説がっ!
ヴヴヴ……ヴヴヴ……ヴヴヴ……
ん?通信機のバイブで現実に引き戻される。
初依頼の時からもう6年か…久しぶりに思い出したな。
考えごとをしてる間に結構時間が経っているが探索者チームはまだ来ていないな。
ヴヴヴ……ヴヴヴ……
「はいはい。今でますよ〜」
新庄さん?依頼かな?残念だけど今日は無理だな。
もうすぐ探索者チームが35階層にやって来るだろう。
ドローンを連れてなっ!
そう、1つ懸念はあるが、今日は俺の謎の強キャラデビューの日なのだから!
依頼はひっきりなしに来るようになったが噂は一向に聞こえて来ない。
お前ら口固すぎだろ!
俺が黙っていて下さいね。って言ったら「ここだけの話だがな」って噂しろよっ!
黙れよ!絶対黙れよ!ってことだよ!
お約束を知らないのか!?
梟でエゴサしたら鳥と映画と狂言しか引っかからないよ!
ヴヴヴ……ヴヴヴ……
しつこいな…急ぎか?しゃーない。直接断るか。
「はい。梟です。…新庄さん。……依頼ですか…今日はプライベートでOFFを満喫している所でしてね………えっ?娘の救出?」
「富士樹海ダンジョンですか?………ええ。……まぁ、良いでしょう。報酬次第ですね。……至急案件ですよね?0が1つ足りてないのでは?………では契約成立で。」
「依頼内容は娘。新庄静香の回収でお間違えありませんか?………ええ。生きて、欠損箇所無しを条件にですね。ん?ドローンカメラ?Liveですか?……はい。まぁ必要なら破壊しても?………はい。」
「新庄さんのことは信用していますよ。前金無しの全額後払いで結構です。」
「時間ですか…まぁ1時間もあれば対象の所に行けるでしょう。………ん?いえいえ、偶然ですよ。…では仕事に入ります。」
ツー…ツー…ツー…
新庄さん!わかってらっしゃいますね!!
最後の懸念が消えて、俺の計画は完璧になった!
35階層にいた俺が探索者チームと偶然出会う計画だったが、これだけ大々的に宣伝されている公開攻略Liveを、俺が知らなかったなんてことが、周りは納得するだろうか?
「あいつカメラに映りに来たんじゃね?」
みたいなコメントがつくことが唯一の懸念だったが依頼なら堂々とカメラの前に登場出来る!
それに、新庄静香さん。
彼女からは俺と同じ香りがする。
わかるよ。貴方の苦しみが。心の中にいる14才の少女が悲鳴を上げてるんだろ?
同類にだけわかるようにほんの少しだけ香る小さな痕跡。
薔薇十字(ローゼンクロイツ)
絶対に厨二病だっ!
あぁ。彼女を回収する時にほんの1言だけ言ってあげたい。
「お迎えに上がりましたよ。美しいフロイライン。」
これだけで彼女ならわかるだろう。
自分は1人じゃないんだとっ!
けど…俺は彼女を見捨てることになる。
カメラがあるんだ!デビューなんだ!完璧に謎の強キャラを見せなければ!
厨二なセリフを残すわけにはいかない!
おっと、そろそろ行くか。
待て。その前に身嗜みを整えなきゃ。
髪型ヨシ!コートは…ちょっと叩いとくか。…ヨシ!メガネヨシ!靴は…汚いな。念入りに拭いとかなきゃ…ヨシ!っと。
じゃあ仕事に行きましょうか。
32階層って言ってたか?俺の予想ではもうちょい行けると思ってたんだけどな。
ちっ!この辺りは本当にトカゲが多いな。
身嗜みを整えたばかりだぞっ!
うっとおしい!しまっちゃいましょうね〜。
そういや、異空間に入れた生物ってどうなってるんだろ?
まぁ、どうでも良いや。
ん?角の先に人間の気配か…そろそろ足音をたてて接近を知らせなきゃな。
回収に来たのに遭遇戦なんて笑えないわ。
カメラもあるしなっ!
コツッ…コツッ…コツッ…コツッ…
いっぱいいるな。何人くらいいるんだろ?
「お前は!何をしにきたっ!」
えっ?荒巻さんじゃん!メンバーまで確認してなかったからビックリしたわ。
………えっ?なんで黙ってんの?荒巻さん…もしかして俺のこと覚えてなさげ?
こっちから声をかけるべきかな?いや、お前誰だよってなったらダサ過ぎないか?
気まずい…どうすんのさ、この空気。
カメラ回ってるんだぞ!放送事故だよ。
あっ…武器下げた…まぁ今は荒巻さんはどうでも良いし、同志静香を探さなきゃ。
ん~~どこ?あっ。
「見つけた。」
同志静香だ!
ふふっ。右手は疼いてないかな?家では眼帯とかする派?武器に自分を侵食されたりしてね?
「待てっ!」
!っ………あっ…俺にじゃない感じね。
荒巻さんって言葉が足りないよな。
普通に仕事の邪魔すんのかと思ったわ。
「えっ?あの…?」
はーい。怖くないよー。おいでー。
「あっ」
あらら?コケちゃった。大丈夫そ?行けそうだね。同志静香よ。
おっと、テンション上がってたわ。
真面目に仕事しなきゃね。
謎の強キャラは仕事を完璧にやらないと、カメラ画角大丈夫?
「新庄静香さん。薔薇十字のリーダー。探索者ランクはS。ダンジョン庁長官、新庄新一氏の長女。お間違えはありませんか?」
おっと、危ないポッケないないしたままだったわ。
ビジネスマナーはしっかりしないとただの失礼なキャラになっちゃうからな。
「待って!待って下さい!貴方は誰なんですか!?」
ビジネスマナー………出来てないじゃん!自己紹介忘れるとかないわー。
「あぁ。失礼。梟と申します。それでお間違えはありませんか?」
焦って早口になってないよな?余裕を持って、笑みを絶やさず、強キャラの振る舞いを忘れるな。
20年かけて目指して来た謎の強キャラデビューなんだ!失敗は許されない。
「はい。そうですが…。」
「はい。確認しました。新庄静香さん。お父上であるダンジョン庁長官。新庄新一氏から依頼を受け、お迎えに上がりました。」
対象発見。依頼人が対象に説明をし回収。
仕事自体はつつがなく行きそうだな。
待て!カメラを見るな!あくまで自然に、カメラなんて意識してませんよって感じにしなきゃ格好悪い。
「新庄さん?梟です。………はい。対象を確認しました。………はい。………では依頼を対象にお伝え下さい。」
「静香さん。どうぞ。お父上に繋がっています。」
同志静香に通信機を渡しちょっと距離を取り視線を外す。
目の前の人がTELしてる時のマナーってさ、目の前に人がいるのにTELする方がマナー違反じゃね?ってなるわ。
口に出すとマナー警察に怒られるな…黙っとこう。
ん?終わった?静香から通信機を受け取り手を引き歩き出す。
小さな失敗はあったが、まぁ及第点だな。
「あの。重傷者がいます。ここまで1人で来られたのですから実力は疑っていませんが皆も疲労が激しいですし…大丈夫でしょうか?」
なにが?えっ?新庄さん、依頼の説明してないの?
「私は静香さんを連れて帰るのが仕事ですから?」
良くあるすれ違いだよね。
これだから緊急依頼は面倒なんだわ。
「待って下さい!私だけが帰ることは出来ません!貴方は人(ひと)の命を何だと思っているんですかっ!」
帰らない?私だけが?依頼は生きた状態で欠損箇所無しだったか……あっ!あれをやるチャンスじゃね?やるか……タイミングを見計らえ………。
「ひとの命ですか?もちろん他人(ひと)の命だと思っていますよ。」
今だっ!首筋に恐ろしく速い手刀っ!
「はぁ…私としては自分の足で歩いてくれた方が楽だったのですが…」
「なにをっ………」
ミスったっっっっっ!!絶対に見えてるじゃん!
1フレームの手刀なんて無理じゃん!
0.033秒だよ!後で動画でわかるくらいが良いのに!
あのスピードなら誰も見逃さないよ!
魔法なら行けたのに…駄目だ!手加減出来ないから首飛んで行っちゃうわ。
依頼失敗になっちゃうからやっぱ魔法は無しだな。
あーカメラさん今のカット行けます?Liveだよね~。
はぁ……致命的な失敗だわ……いや、カメラで見た人間はどう感じた?
帰るのを嫌がった同志静香を、俺が意識を奪い連れて帰る……クレバーな仕事人っぽいか?まだ行けるな!
思考を回せ!さげぽよになってたわ…ザギンでパイオツカイデーなチャンネーとシースー決めたい気分になってたわ。
まだリカバれる!
「相変わらずだな!梟。」
「あぁ。荒巻さんじゃないですか。網走以来ですね。右足は綺麗にくっついたんですか?おめでとうございます。」
「めでたかねーよ!めちゃくちゃしやがって!まだ痛てーんだぞ!」
「まぁまぁ。それは不幸な事故であったとお互いに合意したじゃありませんか?なにか不満が?」
「わかってるよ!文句ぐらいは言わせろ!」
なんだよ荒巻さん、ちゃんと覚えてたんだね。
しかし、この人はいつもキレ気味に話すのはなんとかならんのか?
足一本切られたくらいでいつまでもしつこいよね。
肉とワカメ食べなよ、セロトニンドパドパだよ。
カルシウムはイライラに意味ないらしいね、アーモンドフィッシュ食べてたわ。
俺の魔法で切断したら断面がめっちゃ綺麗なんだから、くっつけるのも簡単だったでしょ?
ケーキ切っても刃物ロス0だからね。
しかし煮物なんかには向かない、断面が綺麗過ぎると味が染み込まないからね。
相変わらず、暑苦しい人だな。
アメリカンな感じで両手広げてるけどハグとかしないよ。
汗臭いおっさんとハグとか正気の沙汰じゃない。
そういや肩に担いでる同志静香も、探索してたから………待てっ!踏みとどまれっ!新たな扉を開くんじゃないっ!
ギーーーッバタンッ
危なかった…新たな癖に目覚める所だったわ。
「お前はこんな所まで仕事かよ。」
「はい。荒巻さんもですか?お互い大変ですね。」
「長官から嬢ちゃんの救出依頼か?」
「……………。」
「俺らの扱いはなにか聞いてるか?」
「いいえ。なにも。荒巻さんたちは今回の仕事には関係していませんよ。」
「ダンジョン庁や協会からはなにか聞いているか?」
「……………。」
今の流れ、イイね押しちゃう!
プロとプロの会話っぽいよね。
「そうか…わかった。ついでの仕事を頼みたい。1人1億。計29億だ。30階層のベースキャンプまでで良い。頼めるか?」
追加依頼か…面倒だな。
ぶっちゃけカメラに映って、謎の仕事人像をアピールし終わってるからさっさと帰りたいんだが…。
いや、待てよ?今カメラに映った情報だけでどんな噂になる?
新庄さんから依頼を受けて単身、未踏破領域に来た謎の強キャラくらいか?
……………もうひと押し欲しいな。
金にシビアなプロのイメージもあれば更に噂は踊ることになるだろう。
受けるか!
けど30階層か…帰りはダンジョン庁近くのマーカーまでゲートで行くつもりだったからマジで面倒くさい。
地上まで行くからと値上げして、受けるとするか。
プロは自分を安売りしないって姿もカメラ映えするだろう。
荒巻さんは網走でゲートを見てるし、意味深な感じでぼかせば行けるかな?
駄目なら蹴れば良いだけだしね。
「ん~~。まぁ大した手間ではありませんが寄り道になりますね。荒巻さんからの依頼ですし、地上まで1人1億5千万なら受けましょう。」
「高けーよ!30階層までで良いって言ってるだろうがっ!」
「荒巻さんは知っていますよね?私の……………。」
「ちっ。わかったよ。43億5千万だな。」
「お支払いは地上に着いたら荒巻さんが?他の方が個人で?」
「とりあえず俺が払う。仕事は受けてくれるってことで良いんだな?」
「はい。私は梟と申します。仕事が終わるまで皆さん、よろしくお願いします。」
これで終わりかな?ゲート使うし後はカメラを止めてさっさと帰るか。
割と弱点の多い魔法だし、ちょっと見られるくらいなら問題ないだろうけど、映像で繰り返し研究されるのは避けるべきだ。
「おや?今日は旧知の顔を良く見る日ですね。今は…上原明美さんでしたか?ご両親のことは残念でしたね。」
おっ?俺が俺に依頼出してた時の仕事で会ったことあるよね?
「どうも…。」
この反応は…陰キャだっ!
わかるよ…いきなりちょっと距離感のわかんない人から声かけられたら「どうも…。」くらいしか出ないよね。
俺なら「あっ…どうも…。」で「あっ…」までついちゃうよ………小ば…いや、止めとこう。
「あの!姉になにか?!」
コイツは陽キャの匂いがプンプンするな。
お姉ちゃんは人見知りだから私がいないと駄目なんだから〜。とか平気で思ってるタイプだわ。
は?似てるって?全然違うわ
「目が違います」
……………
「これで帰れますね。助かって良かったです。後は…。」
荒巻さん、カメラ止めれる?無理?あー、新庄さんと必要なら破壊するって契約してるし壊すか。
「お前なぁ〜。まぁ良いけど。上から文句が来たら…いや。さっさと帰ろうぜ!」
「ええ。では帰りましょう。」
「ここで見た魔法は他言無用でお願いしますね」
ゲートを霞が関のアジトに繋げる。
今回で場所が割れるからアジトは破棄しなきゃならんが、新庄さんから20億、追加依頼で43億5千万、ポーションが利ざや9000万で64億4千万か…デビューのついでの仕事にしては良い臨時収入になったな。
「では、この中に入って下さい」
いや、見てないでさっさと入れよ。
めっちゃ燃費悪いんだぞっ!魔力がゴリゴリ削られるわ!
見た目がベンタブラック並に真っ黒な渦だから引くのはわかるが。
「先ずは俺が入る。危険はないから俺に続いてこい」
荒巻さんやっぱり使えるな。
ふふっ。今頃外はどんな騒ぎになってるんだろうな。
「さて……家に帰ったらエゴサするか」
梟は満足げに頷いた。
今日の自分は完璧だった。
謎。
強い。
丁寧。
そして何より、格好いい。
「……ふふ」
今日から俺も、噂の強キャラだ。
ほんの瞬き程度で地上か……………
相変わらず馬鹿げた…恐ろしい魔法だな。
地上へ戻った探索者たちの間に、ざわめきが広がる。
「荒巻さん。あの男は?」
「忘れろ!」
「え?」
「聞かれても、何も話すな!」
「見ただろう」
「……」
「あいつには距離も障害物も関係ない」
「その気になれば、俺達がどこに居ようと、何をしていようと――」
「あっさりと背後を取って、首を狩るぞ」
「だから忘れろ。あいつのことは、何も知らない。それが一番いい」
荒巻はそう言って、右脚を引きずりながら歩き出した。