ズッタンズツタン!
今日は桂香が一人でドラムを占有していた。
「…………」
というのも、音祢は相変わらずクロエとデートなどしており、弟子たる亜季に関しては、
『今日はちょっと用事があって行けません!』
とのこと。
故に、思う。
最近亜季の様子がおかしい、と。
ドラムを教わる時は真剣そのものなのに、それ以外の時がどうも、よそよしい、と。
いやよそよそしいというか、なんというか、仲良くはしてくれる。してくれるのだが、なんというか、認めたくはないのだが、なんというか、その、目を合わせてくれなかったり、近付くと距離を取られたり。
「嫌われたのかしら……」
正直ガチへこみしていた。
「……あのさ、フレちゃん」
「はい」
そんな桂香に対し、ヨッパが心底呆れた、という表情で声をかける。
「本気で言ってる?」
「えぇ……何か気に障ることをしてしまったのかと……」
「バカなの?」
「バッ⁉︎」
なので当然、桂香は一刀両断された。
「いやさ、どう見てもあれ慌ててるだけだよ」
「慌ててる?」
そして、苦笑しながらそう結論づけた。
だが桂香としては何のことか分からない。
「えー? 言って良いのかなぁ」
「……?」
桂香はヨッパの言う事すべてが理解出来ない。
そんな彼女に対し、一応悪いと感じたのだろう。ヨッパは謝りながら話し始めた。
「あー最初にさ、外野から見た憶測っていう前提ね?」
「はぁ……」
「まずフレちゃん。アキちゃんのこと、好きだよね?」
「え? まぁ……その、はい」
「え、そこは素直に認めるんだ」
「……あれ、ヨッパさんに相談してませんでしたっけ?」
「されてないよ⁉︎」
桂香的には頼れないヌコなんぞよりも、頼れるお姉さんには既に話していたつもりだったのである。無論話していない。
「えぇぇ……ま、まぁいいや。で、だよ?」
「は、はい」
「フレちゃんはアキちゃんの事が好きなわけで」
「は、はい」
「あんな風じゃなかった?」
「……?」
あんな風。
よそよそしい。
目を合わせられない。
近付くと距離を取ってしまう。
「……⁉︎」
心当たりが、あった。
「はい答え」
「い、いや、そんな、いや、そんなまさか」
信じ難かった。むしろ信じられなかった。
何故ならば、
「キミ達性格ぜんぜん違うのに行動が似過ぎてて凄いよね」
「い、いえ、こんなの、たまたま……!」
そう。そうとしか思えない。
「でもそうとしか見えないよねー」
「……っ」
だがそう。そうとしか思えない。
「もう告白したら?」
「い、いやしかし……」
「やーいチキンー」
「んなっ⁉︎ なんてこと言うんですか⁉︎」
「悔しかったら寺で勝負だぺろぺろぺろぺろぺろー」
「くっ! 絶対こっちが勝てないからって……!」
だから、桂香には少しだけ考える時間が必要だった。
自分の中の好きをもう少しだけ整理して、亜季のその可能性をもう少しだけ整理して。
そうすればきっと、お互いの距離の取り方も自然と落ち着くだろう。
そうすればきっと、告白なんてせずとも、急がずとも、落ち着く筈。
自分達はまだまだこれから、ゆっくり育んでいく。
だから亜季も、きっと。
そう、思っていた。