あかね1/2 作:直人猫
指摘してくださった方ありがとうございます。助かってます。
あかねちゃんの如くツンデレっぽく伝えようと試みましたが、普通にグロかったのでやめます。やっぱり、あかねちゃんぐらいでないとツンデレは使いこなせませんね。
あ、あと、女の子同士で匂わせる描写があります。ご容赦ください。
シャンプーはもう一度風呂に入り直し、髪を乾かした後にあかねの部屋へ向かった。
すでに部屋の用意はしてもらっており、あかねのベッドの隣に暖かな布団が敷かれている。
シャンプーはその布団を使わせてもらいながら、少し考える。
なぜ、あかねが泣いてしまったのか分からなかった。
後で、あかねの父である早雲は乱馬とあかねが許嫁であると教えてくれた。
女傑族は恋でも戦いでも負けはない。
あかねが許嫁ならば奪い取ってみせるまで。
そう思っているのに、シャンプーの心は不思議と晴れなかった
何よりあかねは乱馬を取られるから泣いた訳ではなさそうだった。
まるで、掟自体に対して怒っているような、シャンプーに怒っているような不思議なものであった。
シャンプーにとって、あかねは不思議だった。
優劣をつけない武術の鍛錬など、初めてであった。
それが少しだけ心地よく、またやっても良いと思わせた。
シャンプーに友達はいない。幼馴染や顔を合わせる度に殴る相手はいるが彼らにはない自分と戦える強さを彼らは持っていた。
今まで全く興味はなかったが、これがいわゆる『友達』というやつなのだろう。
「(ひいばぁちゃん。私、友達と夫できたよ)」
シャンプーは、自分の師匠でもある曽祖母のことを思い出していた。
女傑族の掟も武道の技も全て祖母から教わった。
シャンプーにとって彼女の言うことは絶対だった。
「(待ってて、女乱馬を殺したら中国に戻って…)」
戻ったら、どうだと言うのか。
女傑族の村に戻れば、また昔と同じだ。
曽祖母の跡を継ぎ、族長となって一族を導いていく。
だが、そこにあかねはいない。
乱馬は一族のために村に連れ帰る。それは絶対だ。
だが、あかねは一緒に来てくれるだろうか?
分からない。
そして、どうやってあかねにともに来てもらうか悩んでいると、ようやく彼女が戻ってきた。
「あっ、シャンプー…まだ起きてたんだ」
いつも結んでいる髪をほどき、パジャマに着替えたあかねは風呂に入ったのか少し頬が上気している。だが、やはり泣いていたためか目が厚ぼったくなっていた。
そして、その腕の中には黒い子豚がいる。
その豚は何を思ったのか、シャンプーがいるのを見ると身じろぎしあかねの腕から降りてしまう。
そのまま、部屋の隅に置かれているバスケットに入り込んで目を閉じた。
「あ、Pちゃん…ぺっとなんだけど、抱っこして寝ようと思ったのにな…」
Pちゃんがこちらに来る気がないと察したあかねは、
いそいそと自分のベッドへ近づくとそっと電気を暗くする。
「おやすみ、シャンプー」
あかねの声と共に、ぎしりと彼女のベッドが軋む、、
横になったようだ。
二人の間には、言葉がなかった。
夕食を共にしたときは尽きることなく話題が出てきて、気がつけばシャンプーも多くのことを話していた。しかし、それが嘘のように静まり返っている。
「…」
ぷくーっと、シャンプーは布団の中で頬を膨らませた。
そして、なにを思ったのか彼女はそのまま隣のあかねのベッドへ潜り込んでいく。
「わ、わ!? な、なになに!?」
「詰めるよろし」
ぎゅむぎゅむとあかねのベットへ潜り込み、完全に自分のスペースを確保したシャンプーは真っ暗中隣に眠るあかねを見つめる。
あかねもシャンプーを見つめていたのか、二人の目が合う。
シャンプーは改めて膨れて見せる。
「ん」
「え? なに? 見えないよ」
「ん!」
シャンプーはそのまま布団の中のあかねの手を取ると、そのまま自分のほっぺたまで誘導する。
膨らんだそれを見て、あかねが少し笑った気配がした。
「わぁ、ぽんぽんに膨れてるね」
「あかねが私無視して寝た、おこてる」
「あ、そ、そんなつもりじゃなかったんだ。ごめんね、シャンプー」
「ん、謝った許す」
あかねの謝罪を受け入れつつ、シャンプーは自分の頬にあてたあかねの手を離さない。
そして、そのまま言葉を続けた。
「でも、あかねもおこてる」
「それは…」
「私が乱馬口説いたからか?」
「えっ?」
「あかね乱馬の婚約者。私が乱馬口説いて取ろうとしたからおこてるか?」
シャンプーの問いかけに、あかねは苦笑した。
怒っていると言い当てられたときはドキリとしたが、そのあげてくれた理由の見当違いに微笑ましくなったのだ。
「ちがうよ。乱馬くんとは、婚約者だけど親同士が勝手に決めたことだし…友達みたいなものかな」
「友達…私もか?」
思わず問いかけたシャンプーは、言ってからしまったと思う。
これでは、誇り高き女傑族の女である自分が友達を欲しがっているようではないか、と。
そして、シャンプーの言葉を聞いてあかねは目を見開いていた。その瞳は暗闇でもよくわかるほど輝いていた。
「とも、だち…うん、そうだね。僕は、シャンプーを友達だと思ってる。その、シャンプーは?」
「…お前がなりたいなら、友達でいいね」
その言葉にあかねは布団の中で目を輝かせて満面の笑みで笑った。
「うん!」
「ふん、それでなににおこてたか?」
「あっ、それは…」
シャンプーが照れ隠しにそう告げるとあかねは口元でもごもごと話し、はっきりしない。
だが、シャンプーがギュッと手を握ってやればあら不思議さらに顔を真っ赤にして白状し始める。
「シャンプーに怒ったわけじゃないんだ。
ただ、いろいろ整理がつかなくなっちゃって泣いちゃっただけで。
僕ね、掟で女だから男だからってなんでも決まっちゃうの…嫌なんだ」
シャンプーの眉がピクリと反応する。
その目は真っ直ぐにあかねを捉えていた。
その様子に慌てたようにあかねは弁明する。
「あ、ご、誤解しないでね。僕が嫌なだけでそれが良いとか悪いとかは言うつもりないよ。
でも、乱馬くんだったから良かったけど…もし、本当に嫌な悪い男にシャンプーが負けちゃってたら、シャンプーはそいつを夫にするんでしょう?」
「…私、負けないね。それに、もう私は乱馬の妻ね」
「もし、だよ」
「…負けたら、夫にするね」
「シャンプーが、それで苦しんでも?」
「うん…」
「それが、嫌だったんだ。友達が不幸になるのが嫌だった」
あかねは、ごめんねと小さく謝った。
「これは決めつけだと思う。シャンプーはそんな風に思ってないのかもしれない。でも、一度そう思ったら、自分の立場に置き換わって気がついちゃったんだ。
乱馬くんもそう思ってたはずだって……だから、泣いちゃったんだ」
「え?」
シャンプーは驚き目を見開く。
乱馬とあかねの許嫁関係が上手くいっていないのかと言う驚きと、あかねほどの美少女に言い寄られて嫌がるとか正気かという驚きから、思わず漏れてしまった言葉だった。
確かにその胸は抉れていると言った方がマシなほど全く存在しておらず、水平線を望めるほどだ。
それでも、それを補って余りあるほどの美少女だと言うのに…!
「乱馬、そんなこと言うか?」
シャンプーの問いかけに、あかねは首を振った。
「ううん、優しいから直接は言わないよ…でもね」
あかねは少し息を吸い込み、そっとシャンプーの手を離した。
「僕は、変な子なんだ。生まれた時から、自分が男の人で生まれ育った記憶があるんだ」
「…え?」
「その男の人はずっと一人で、一人のまま死んじゃったけど…。僕はその記憶があったから、自分が男かも女かも分からなくなっちゃってる。
…気持ち悪いよね、シャンプーと仲良くなれた時も、僕は『可愛い子と仲良くなれて』喜んでる自分がいるんだ」
そっと、あかねはベッドから身を起こした。
その顔は自己嫌悪に歪んでいる。
「僕は、そういう生き物なんだ」
その言葉を聞いた時、シャンプーの心を支配したのは嫌悪感でも悲しみでもなかった。
ただ、その感情に突き動かされるように、それでいて頭は冷静にシャンプーは言葉を選んで話した。
「あかね、いくつか思い違いしてる」
シャンプーはあかねの襟首を掴み、無理やりベッドへ押し戻す。あかねは驚いて目を見開いている。
「まず、掟に従う嫌ちがう。その掟があっても自由に生きられること、これ誇り。
どんなに嫌な強いやつにも勝って、気に入った相手と結婚できるの女傑族の強い女だけ。
私、乱馬気に入ってる。誇り、守れてるね」
「…そっか」
「それと、友達になれて嬉しい当然ね。私、超絶傾国的美少女」
「……」
「私もあかねそこそこ綺麗。友達として、自慢したい」
「ぷっ、なんだよ、それ」
あかねはシャンプーの言葉でついに笑った。
シャンプーは、思わず彼女を抱きしめていた。その拍子にわぷっとあかねが胸で息ができなくなっているようだが気にしない。
シャンプーは、歓喜していた。
目の前のあかねという存在が、乱馬という許嫁よりも自分を優先し好意を抱いているという事が嬉しかった。
この繊細で可憐でありつつ力強い人間が、自分に弱い部分を見せて嫌われても誠実であろうとする姿。
そのいじらしさが、ゾクゾクとした何かをシャンプーの心の底から湧き出させていた。
心が男に近いのも良い。
そんな少女のとここまで通じ合う事が出来たのは、家族を除いて自分だけだという優越感もあった。
だから、シャンプーは決めた。
必ずあかねも中国に連れ帰ると。
「く、くるひぃ、シャンプー…」
「あ、わるかたね」
苦しそうにもがくあかねが、ぐいと顔を出したのを見てシャンプーは謝罪した。
謝罪はしてもあかねを抱きしめる腕の力は緩めない。
「豊かな胸に埋もれると、こう…平たい胸をした自分がちょっと惨めになる」
「そこは女の意識か」
少し照れたようにいうあかねに、シャンプーは吹き出した。そして、ぐいと顔を近づける。
闇になれた自分の目に、あかねの赤くなった顔が見えた。
女傑族の女は欲しいものは全て手に入れるのだ。
「あかね、中国くるよろし」
「え?」
「女の乱馬殺したら、男の乱馬連れて中国帰る。
その時、あかねも中国にくるね」
「それは…」
「あかねさえ良ければ、乱馬シェアするね。
そして、女傑族の里をより栄えさせる」
完璧な夢であった。シャンプーの望みを100%叶えられる。
それにあかねは申し訳なさそうに笑った。
「ごめんね、シャンプー。僕の夢はここで天道道場を継ぐ事なんだ」
「道場を継ぐか…? でも、乱馬のことはいいか?」
「…こんな、僕と結婚するよりシャンプーと結婚した方が幸せになれると思うんだ」
「…ライバルにやる気がなくても全力で戦うのが女傑族ね」
「ふふ、僕は応援しているよ」
あかねはシャンプーにそう言った。
その瞳に迷いはなく、シャンプーは乱馬が全く意識されていないことを理解した。
ともあれ、貰えるものは貰っておくのがシャンプーだ。
乱馬の確保を考えながら、あかねの夢を反芻する。
天道道場を継ぐと言っていた。
余程のことがなければ、それを諦めることはないだろう。
例えば、誰かと子供を作ってしまった、とか。
「(あかね、体も男だたら…)」
だが、もしそうならこれほど魅力的な存在にはならなかっただろうとも思う。
だから、今のままのあかねが欲しいとシャンプーは微笑んだ。
「取り敢えず、明日から乱馬を口説くの手伝って欲しいね」
「うん。それは良いんだけど…女の乱馬の方は許してあげるわけにはいかないの?」
「…負けた相手殺す、掟ね。つまり、負けた相手にも次に勝つこと大事」
「なるほど…それ半殺しじゃダメなの?」
「よく分からないけど、殺すなら構わないね」
「ん〜、それなら良いか」
あかねは少し悩んだようだが、最後は頷いた。
二人きりのベッドの中、あかねは漸く肩の力を抜く。
彼女のその秘密を話すことに、かなり気を使ったのだろう。
眠そうに目を擦っていた。
「…おやすみ」
「うん、おやすみぃ…」
気の抜けた声が聞こえてしばらくすると、あかねの寝息が聞こえ始める。
「……」
じっとあかねの顔を見つめるシャンプー。
あかねの穏やかな寝顔を見ていると不思議と胸が高鳴った。
そして、同時に……ムラァっ!!と何かが湧き上がってくる。
「試してみるだけ、試してみるだけある」
そっと顔を近づけていくシャンプー。
どんどんと距離が近づいていったその時、
「はっ!?」
あかねの肘が跳ね上がった。
咄嗟に回避するシャンプーであったが、追いすがるように繰り出された膝を避けられなかった。
ズン!! とシャンプーの柔らかなももに膝が突き刺さる。
「ぬ、うっ!?」
思わずうめくシャンプーに、そのままあかねの腕がその喉を締め上げようとする。
思わずシャンプーは、ベッドから転がり出て難を逃れた。
「な、なんね…!?」
見れば、ベッドの中であかねは絶え間なく動いていた。まるで実際に戦っているような動きだ。
だが、恐るべきなのは
「ね、寝てる」
全ての動きをあかねが眠っている状態で行なっていことだ。
まるで酔拳ならぬ睡拳。
これでは、あかねに悪戯をしようがない。
なんだか、お預けを食らったような気分になったシャンプーは、恨めしげにベッドの上で動き回るあかねを見つついつの間にか眠りについたのだった。
シャンプーちゃん、原作ではストレートでしたが、あかねちゃんに狂わされました。
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