あかね1/2 作:直人猫
しかし、そう言った喧嘩で先に大人になるのはあかねちゃんのイメージです。女の子の方が早熟とは良く言いますが、乱馬くんはその点女の子になれてもかわらないんですね。
ちょっとお姉ちゃんなあかねちゃん、ディッモールトベネですね。
早乙女玄馬は驚愕した。
自身の隣で眠っている乱馬の胸元にシャンプーが収まっていたからだ。
幸い、行為には及んでいないようで衣服の乱れはなく、独特の匂いや濡れている様子はない。
そして、玄馬はじっとシャンプーを見つめる。
あかねのサイズの合わない寝巻きに身を包んだ彼女は目に毒で、確かに美しい娘ではあるが、天道道場に寄生し続けるためには彼女の存在は邪魔であった。
そして、やはり彼女を排除するには乱馬を絆されるわけにはいかないのだ。
玄馬は心を鬼にする。
そっとバケツに水を汲み、そっと乱馬にだけかけた。
達人の無駄遣いと言えるほど非常に精密な水のコントロールでそれは成された。
「ぶわっ!?」
顔面に水を浴びた乱馬は、女に変わり慌てて目を覚ます。そして、バケツを持った玄馬へ食ってかかる。
「ぶわっ!? 何をしやがるんでいクソ親父!」
「乱馬よ、父はお前をそのような色魔に育てた覚えはないぞ!」
「何言ってやがんだ、おめー?」
それに対して、玄馬は男泣きをして見せた。
乱馬は何のことかわからず、眉を顰めたがふと自分の半身がやけに温かいことに気がつく。
恐る恐る視線を巡らせれば、そこにはスヤスヤと濡れることもなく穏やかに眠りにつくシャンプーがいた。
「な、な、な、なんでここにシャンプーが!!」
「朝目覚めたら抱きついておったぞ…まさか、手を出したわけではあるまいな?」
「するかー!?」
「んんん…愛人」
乱馬の大声で目が覚めたであろうシャンプーは、そのまま起き抜けに乱馬の唇を奪おうとする。
しかし、その直前に隣にいた相手が女となった乱馬と察するとぽやぽやと熱を帯びていた目が座る。
「女的乱馬、殺す!!」
恐ろしい拳速の一撃が乱馬に放たれる。
ギリギリで乱馬が回避したその一撃は、乱馬の枕を瞬く間に細切れにした。
威力は大きくはないが、凄まじいまでの鋭さをもった攻撃。
女性ではどうしても筋力が足りず、破壊力はないが故の工夫。
あかねの柔の拳に対して、女性ならではの剛の拳と言える。
これだ、と乱馬は確信した。
あかねとは違った女性的拳法へのアプローチはこれを使うしかないと。
つまり、シャンプーは乱馬がそれを取り入れるための絶好の対戦相手であった。
女性を殴ることに乱馬は抵抗がある。
しかし、良牙と違って一切それをしないという訳ではない。
むしろ、今の乱馬は女だ。
女が女を殴って何が悪いのだろうか。
「やろうぜ、シャンプー!」
「殺す!!」
シャンプーは凄まじい殺気を放ち、乱馬と対峙する。
その殺気が心地よい。
だが、ふと乱馬はシャンプーと対峙したことであることに気がつく。
シャンプーの頭に凄まじい数のたん瘤があったのだ。それだけではない。なんだか全体的にシャンプーはボロボロな感じになっていた。
「…おめぇ、なんかあったか?」
「お前に関係ない、殺すね」
ふと乱馬は思い出す。
シャンプーは、昨夜はあかねと共に眠るという話だった。
「…! おめー、あかねはどうした!?」
「ふん。あかねは男的乱馬の許嫁。いつかは倒さなければいけなかった相手ね」
そう冷酷に告げるシャンプー。
その顔はどこか挑発的で、酷薄な印象を受けた。
乱馬は、ぞくりと悪寒が走った。相手は女傑族。
自分たちが負けた相手を追いかけて殺す風習をもって相手だ。シャンプーの性格や雰囲気に騙されてしまった。
なにより、キスをして自分をハニートラップにかけようとしてくる相手を信用するのが間違っていた。
「てめぇ!!」
「ふっ!!」
乱馬がシャンプーへ攻め込みシャンプーがそれに応じようとした時、とてとてと軽い足音共に乱馬と玄馬の部屋をあかねが訪れた。
「あ、シャンプーやっぱりここにいた」
「えっ、あかね?」
あっさりと現れたあかねに驚愕する乱馬。
あかねは、そのままシャンプーに近づいていく。
「もー、一緒に寝てたのに朝起きたらいないんだもん、びっくりしたよ」
「ふん、あかねが寝坊助だから乱馬おこしにきただけね。文句あるか?」
「ないよ、でも朝起きた時にシャンプーに一番に挨拶したかっただけ」
「殊勝な心がけね。それなら、私より早く起きるよろし」
「む、普段はもっと速いよ。明日は見ててよ! あ、乱馬くんもおはよう、ご飯できてるよ」
そう言い切ると、あかねは居間へ戻っていく。
そして、しばらく沈黙が流れた。
乱馬はじっとりとした目でシャンプーを見る。
「で、倒さなければいけない相手がなんだって?」
「だ、だまれ、昨日は風呂や食事の世話になったね!
だから、ちょっとぐらい…」
「で、なんでおめーはあかねのベッドから抜け出したんだよ?」
「…あかねの寝相で地獄を見たね」
その言葉で乱馬はおおよその事情を察した。
あかねの寝相にボコボコにされたのだろう。シャンプーほどの達人が撤退を余儀なくされるほどの暴力に乱馬は顔を引き攣らせた。
もし、将来的にあかねの隣で眠った場合それに晒されるのは自分なのだから。
「なるほど、やるなら徹底的に抱き潰さなけりゃなんねぇか」
「お前が何言ってるね!」
乱馬の呟きにシャンプーの拳が走る。
それを回避した乱馬を見て、シャンプーは訝しげに拳を止めた。
「おまえ、なんね」
「え?」
「動き、それ男的乱馬と同じ。名前も同じ…それに、寝てたとはいえ抱きついてた入れ替わる気がつかない、ない」
「あっ、それはぁ〜」
シャンプーの鋭い追求に、思わず目を逸らす乱馬。
流石に何も工夫せずに騙せる相手ではないだろう。
元々、殺意と怒りでジャンプーの目が曇っていたからこそ気がつかれなかっただけであり、達人の本来の眼力をもってすれば見抜くことは容易いはずだ。
ただ、男が女に変わることなど想像もつかないので、その発想ができなければ答えには辿り着けないはずだった。
シャンプーは、じっとりとした視線を乱馬に向ける。
「な、なんだよ」
女のまま構えを取る乱馬を一瞥し、シャンプーはそのまま濡れている布団を触れる。
そして、もう一度今だに水滴が残る乱馬を見ると微笑んだ。
「なんでもないね、朝ごはんいってくる」
彼女はあろう事か、女となった乱馬に触れる事なく部屋をさっていった。
乱馬は嫌な汗が垂れるのを感じた。
「も、もしかして…バレたか?」
「そのようだぞ、情けないぞ乱馬」
顔を引き攣らせる乱馬に玄馬がため息交じりに告げる。
容赦のない乱馬の拳と膝が閃き、いけしゃぁしゃぁと宣った玄馬へそれらが突き刺さった。
「き、貴様、この父に何をする!?」
「やかましい、てめぇが余計なことしたからだろ!」
「何を!? それは、元から貴様が許嫁以外に鼻の下を伸ばしているからだろう!?」
「なっ、そんなんじゃねーよ!」
「だいたい、そんなにでかい胸が好きなのなら貴様が婚約者のものを育てれば良いだろう!」
「うるせー!? あかねはあれで良いんだよ!」
乱馬は顔を赤くしその場を離れたため知る由もないが、玄馬はその後に小さく呟いていた。
「なら、右京のものを育てるのか?」
幸いにして、乱馬は未来の自分の受難を知ることはなかった。
乱馬が女のまま居間に戻ると、用意された朝食の席に玄馬以外が座っていた。
乱馬とあかねの席の間には、当然のようにシャンプーが座っている。
ニコニコと笑いながら手に水の入ったコップを持って乱馬を手招きしている。
「来来、来来」
「…な、なんだよ」
怯えた乱馬はゆっくりと警戒しながら座った。
すると、シャンプーはそのまま乱馬へ水を差し出した。
訝しみながらそれを取ろうとする乱馬。
すると、シャンプーは目にも止まらぬ早業でそれをひっくり返し、乱馬に中身を浴びせかけた。
「わぷ!? な、何しやがる!?」
「ちがたか、次ね」
シャンプーはじっと乱馬の姿が変わらないの確かめると立ち上がり居間から出ていった。
乱馬はそれをゲンナリした様子で見送る。
「う、うわぁ…あれ、バレてるよな?」
「バレてるねぇ」
「むしろ、今まで誰にもバレていないのが奇跡よ」
「うるせー…」
のほほんとした様子であかねに指摘されて、なびきには厳しい言葉を投げかけられ乱馬は頭を抱えた。
男女の乱馬が同一人物とバレた場合、どうなるのか乱馬には読めなかった。
それと同時に、昨日取り乱したあかねが落ち着いているのを見て少しだけホッとする。
シャンプーとはどうやら友達になったようだし、そのことが精神を安定させるきっかけとなったのだろう。
自分のことは棚にあげ、一先ずあかねに声をかける。
「…シャンプーと友達になれたのか?」
「え? うん…昨日ちょっとあってね」
照れたように微笑むあかねが可愛い。しかし、少しだけ乱馬は嫉妬した。どうにも自分の時といいあかねは女性に対して非常に好意的である。
それは、男性の記憶があるからという事ではないと乱馬は睨んでいた。
そもそも、男は常日頃から性欲と共に彼女を求める生き物だが、なんだかんだ同性と馬鹿をすることを好む生き物でもある。
女性の場合は、同性でつるむ生き物だと乱馬は認識していた。
つまり、あかねは自分が思っているほど男性的な意識と認識に傾いていないのだ。
「そっか、良かったよ。昨日とかすごい不安定そうだったからな」
「うう、ごめんね。ご心配をおかけしました」
「いいよ。そういうのたくさん話してくれる方が嬉しい。ほら、俺たち許嫁じゃないか」
「…乱馬くん」
乱馬がそう言って笑うと、あかねは意外そうにそして少しだけバツが悪そうに笑った。
今はこれでいい。
むしろ、下手にここで乱馬も友達枠に収まると彼女は異性を意識せずに関係も進展しない。
だから、しっかりと婚約者としての立場をアピールしてあかねのそばであかねに寄り添うことが大事なのだ。
乱馬はあかねに微笑んでいると、やはりバツが悪そうなあかねが口を開いた。
「その、後ろ…」
あかねの言葉の直後、乱馬に熱湯が注がれた。
「ぅあっちぃぃぃぃいいいい!?」
悲鳴をあげつつその場で飛び上がり、男に戻る乱馬。
転がりながら、彼は自分にお湯をかけた相手を睨んだ。
「何しやが…! …る」
「大歓喜!」
直後、乱馬の胸元に飛び込む柔らかい感触。
乱馬にお湯をかけたのは、シャンプーであった。
冷たい水がだめなら、温かいお湯で変わるのではないかと推測をした彼女が台所から煮湯を持ってきたのだ。
乱馬が男に戻ったのを見て、シャンプーはひしりと乱馬に抱きついていた。
「やぱり、男的乱馬と女的乱馬同じだた! これで乱馬殺さなくて済む! 中国に一緒に帰るね!」
「ま、まて、シャンプー! 俺は実は元から女で…!」
「嘘つく良くない。乱馬、女と重心ちがう。私にはバレバレね」
乱馬の言い訳も即座にシャンプーに否定される。
そのままシャンプーは乱馬へキスの雨を降らせた。
「あーあ、やっぱりバレてた」
「うん、武道家なら分かるよねそりゃ」
「あら、そういうものなのね…どうしましょうか。でも、これで命は狙われないのかしら?」
なびきやあかねは納得したように頷き、ただかすみはだけはどうしようかとのんびりと思考しつつ、首を傾げる。
乱馬は必死にシャンプーを教え込もうとし、必死に周囲は助けを求める。
「だー!? やめろ、俺にそのつもりはねーんだよ!」
「乱馬男だたら命狙われないね。だから、乱馬夫にするね!」
そう乱馬とシャンプーが戯れていると、流石の早雲がじっくりとタバコを吸い、凄まじい覇気を放ちながら乱馬を睨みつけた。
「ら〜ん〜ま〜く〜ん!? いつまでそうしてるつもりかね!?」
「ち、ちげーんだ、おじさん!! あ、あかね、助けて…」
「えっと…良いんじゃない?」
あかねの返しに、乱馬はピシリと固まった。
そのあんまりな態度に、なびきとかすみはヒソヒソと話し合う。
「うーわ、言いやがったわよ、あかね」
「これは乱馬くんが可哀想かも…」
「お父さんも、ちょっと可哀想になってきたかも…」
最後には早雲も混ざり、あかねの傍若無人っぷりにちょっと引いていた。
そして、そんな傷心状態の乱馬躊躇いのない追い打ちが放たれる。
「その、シャンプーみたいな可愛いこと付き合ったら、ちゃんとした女の子の可愛さがわかるかなって」
「…は?」
「それにシャンプー、とっても良い子だよ! すっごい優しいし!!」
「あかね…私のことそんなにオススメしてくれるか! 大歓喜!!」
そのまま、ぎゅっとシャンプーはあかねに抱きつく。
そしてまるでマーキングするかのように頬を擦り付けた。
そして、あかねには見えない角度でニヤリと邪悪に笑った。
その顔を見て即座に早雲はかすみに目配せ。
かすみも即座に応じてあかねを呼ぶ。
「あかね、ちょっと…」
「え? なになに?」
「あのね…乱馬くんは許嫁なんだから…」
そして、かすみは少し説教のように話し始める。
その隙にぐぬぬとなった早雲はシャンプーへ問いかける。
「き、君、シャンプー君! どういうつもりだ!?」
「? どういうつもり?」
「乱馬くんを奪うためにあかねに近づくつもりなら、私は君を許さないぞ!?」
早雲がびしりと指を突きつけてシャンプーに宣言するが、彼女はそれに不快そうにした。
「なんね、それ。私はそんなつもりであかねに近づいた違うね!」
「なら、いったいどういうつもりで…」
「乱馬もあかねも両方とも貰うね」
「「は?」」
「ぶわーっはっはっ!」
乱馬と早雲は目が点になり、なびきは爆笑した。
シャンプーは得意げに胸を張り、そしてファサリと髪を靡かせる。
「乱馬は私に勝った、夫にするね。あかねは『私が好き』ね。だから、向こうでも愛でてあげるね」
「待て待て待て!? あかねは中国になんてやらんぞ!? 乱馬くんと結婚して道場を継ぐのだ!」
「それを選ぶのはあかねね。それに、あかねは別に乱馬のこと好いてないね!」
「ふぐぅ!?」
「あらら、乱馬くん砕けちゃった」
シャンプーの言葉についに心を壊された乱馬は、思わずちゃぶ台に突っ伏す。
「このままあかねを口説いて、絶対に中国に連れてくね!
それに、良いこと思いついたよ」
シャンプーはちらりと乱馬を見て微笑んだ。
「乱馬みたいな体質あることがわかたね。
もし、あかねが男になれるなら私の夫にしてもいいね。あの子、男の意識強いならそれが幸せね」
その言葉に早雲も乱馬も目を見開いた。
「だから、私がーーーー」
「うーん。不合格」
口を挟んだのは、なびきであった。
その顔には笑みが張り付いているが、その目は一切笑っていない。シャンプーは戦闘力もないなびきが自分に挑むようにそう言ったことに驚いた。
「な、なんね、お前」
「あかねが男とか女とか、どっちでもいいのよ。あの子はあの子。
だから、ありのままのあの子を好きになるのは素敵なことだと思うわ。
でもね、あの子を無理やり捻じ曲げて在り方を変えるのは違うんじゃない?」
「?? ねじ曲げてないね。男になった方が、あかねも幸せね」
「本当にそうかしら? 確かにそれは楽かもね。
でも、あの子が本当に欲しいものじゃ決してないわ」
言い切ったなびきに、早雲は穏やかな笑みを浮かべた。
「…なびき、良いことを言うね」
なびきは肩をすくめ、話すことはないとそっぽを向く。乱馬は銭ゲバのなびきの意外な面を見れて少しだけ感動した。
そして、そっぽを向いたままなびきはシャンプーへ告げる。
「あかねが本当に欲しいものを知りたいなら、5000円」
早雲と乱馬はすっ転んだ。
せっかく良い話だったのに台無しだ。
「お、お前という奴はー!」
「な、なびき…たまには綺麗にまとめて良いんだよ?」
「乱馬くんも、5000円」
「誰が払うか!?」
そんな天道家のやりとりを見つつ、シャンプーは少し呆然としたようになびきを見る。
「…? 意味がわからないね」
シャンプーには、本当に意味がわからなかった。
なびきが言ったことに『何の意味があるのか』も理解できなかった。
それを見て、乱馬は改めて顔を上げて宣言する。
「あのな、シャンプー。
俺は確かに今はあかねの眼中にない。だけど、いつか絶対に振り向かせて見せる」
「そか、その時は私も一緒に可愛がってね愛人」
乱馬のキメ顔にそっと擦り寄るシャンプー。
乱馬の相好がだらしなく崩れる。
「あの、だから…」
「ふふ、乱馬…可愛い」
そのままシャンプーは乱馬の胸元にしなだれかかる。
それを受けて、どんどんと乱馬は顔を赤らめていった。
「い、いや、だから…俺たち、もっとお互いのことを知り合ってからぁ…」
「いいね、たくさん教えてあげるね…ベッドの中で」
「何をやっとるのかね、乱馬くん」
「居候の分際で良い身分ね」
乱馬の耳下に囁けば、それだけで腰砕けになる乱馬。
早雲やなびきの視線の温度がどんどんと下がる中、乱馬は右手を振り上げた。
すわ、シャンプーを殴るのかと思いきや、その右手は彼自身の顔面に叩き込まれた。
「ら、乱馬何で自分を…」
シャンプーは慌てて乱馬を介抱しようとするが、乱馬は鼻血を噴き出しつつそれを手を挙げて制する。
「だから、決めたぜシャンプー! 俺はお前の誘惑に負けねぇ! 俺はあかねの婚約者だ!!」
シャンプーは頬を膨らませた。
流石にこれほどハッキリとした拒絶はシャンプーも傷ついたのだ。彼女のプライドは女傑族であることを加味しても異常に高い。
頑なな乱馬の態度にハッキリと怒りを覚えていた。
「いいね、そしたら何としても私に惚れさせてみせるね!」
「悪りぃが、俺は一途で硬派な男なんでね」
「そうね、ならこれは?」
そう言い放った乱馬であったが、シャンプーがそっと服の前部分をあけてぎゅっと胸を押し付けて出来た谷間に視線が吸い込まれていく。
シャンプーは、悪戯っぽく笑った。
「自分も女の体になれるのに、乱馬女に慣れてないね」
「う、うるせぇ!!」
そして、なんとなく今の空気がまとまりかけた時、あかねとかすみが連れ立って居間に戻ってくる。
あかねはどこかしょんぼりとした様子で、心なしか目元も赤い。
甘えるようにかすみの服の裾を掴んでいた。
しかし、かすみは普段のように優しい笑みを浮かべているがあかねが服の裾を掴んでいても全く相手にしていない。
どうやら、かすみがあかねを叱ったようだった。
かすみはそのまま普段の自分の席に座ると優しく乱馬に話しかけた。
「ごめんね、乱馬くん。あかねの言葉に傷ついたでしょう?」
「あ、いや。そんな…」
「あかねが謝りたいって言うから、聞いてもらってもいいかしら?」
「え?」
乱馬は驚いたようにあかねを見た。
あかねはその言葉にかすみを見るが、かすみは乱馬に視線を向け続けあかねを省みない。
やがて、あかねは観念したように口を開けた。
「えっと、乱馬くん…その…」
「お、おう」
「……」
「?」
あかねは一度声を上げたものの、黙り込んでしまう。
そして、しばらく悩むようにした後に、ゆっくりと口を開く。
「やっぱり、乱馬くんはシャンプーと付き合った方が…」
「あかね」
かすみが少し強い語調であかねの言葉を遮った。
そして、ゆっくりとあかねを振り返り、そっと手を上げる。
そのまま、彼女はあかねの額をツン、と突いた。
「めっ。さっきも言ったじゃない」
「か、かすみが怒った!?」
「お、おねーちゃんのマジギレ!?」
早雲となびきが慄く中、乱馬とシャンプーはずっこけた。
まるで怒ったうちに入らないような、優しい叱り方にさすがの彼らも絶句してしまう。
しかし、常日頃微笑みを浮かべるかすみが怒ると言う行為をするのは確かに珍しかった。
そして、その叱りを受けたあかねはジワジワと目に涙を溜めていく。
そして、ついにそれは決壊しボロボロと泣き始めた。
「おねーちゃんのバカ! 僕だって考えて話してるもん!!」
そう言うと、泣きながら走り出して行ってしまう。そのまま廊下を駆け抜け、玄関から外に出た音が響く。
「もう、あかねったら…少し怒り過ぎたかしら?」
「あかねもびっくりしたんだろうね…」
「私もおねーちゃんのマジギレはビビるもん」
「アホかぁ!? 甘やかしすぎだろ!?」
天道家の面々に思わず乱馬が叫んだ。
そして、そんな面々をよそにシャンプーは乱馬の裾を引いた。
「乱馬、勝負ね。あかねを慰めて連れて帰ったら勝ちよ」
「はぁ!? 何を…」
「その程度出来ずに、あかねに好いてもらうつもりか?」
「うぐ…い、良いじゃねぇかその勝負乗ってやる!!」
「じゃあ、今から開始ね!」
その言葉と共に、シャンプーは駆け出していった。
それを見送りつつ、乱馬は天道家の面々は向き直る。
「あの、俺聞いてくるんで。あかねが、なんでそんな風に思ったのか。
だから、そんなに叱らないでやってください」
「乱馬くん…あかねを頼んだよ」
乱馬の言葉に感涙し、早雲は涙をハンカチで拭いながら乱馬を激励する。
二人の間にどこか良い雰囲気が流れるも、それはなびきの一言で瓦解した。
「どうでも良いけど、急がないとシャンプーが慰めちゃうんじゃない?」
「げっ!? じゃ、じゃあ、いってきます!!」
そのまま、乱馬は慌てて天道家を飛び出していった。
それを見送りながら、早雲はちらりとかすみを窺った。
かすみは、まるで気にしていないように皆が食べきらなかった朝食を片付けていく。
しかし、その所作の端々から早雲はかすみが本気で怒っていることを察した。
母が死んでから、かすみはその母のように常に笑顔を絶やさなくなった。
だが、元々のかすみは言いたいことをズバッと言う性格であった。
居間に戻ってくるまで、あかねにチクチクと言葉を投げたことは想像に難くない。
早雲が見ていることに気がついたかすみは、首を傾げる。
「お父さん、どうしたの?」
「かすみは母さんに似てきたなぁ」
母は躊躇なく夫である早雲を言葉でボコボコにする女傑であった。
かすみは、その言葉に嬉しそうに微笑んだ。
かすみちゃんは、あかねちゃんの髪の毛が切られた時の回想とかを見る限り結構ズバズバ言う感じでした。
しかし、後半になるにつれ優しく怒らないという方向性でキャラ立てされていきました。
ただ、火車王編とかでは早雲さんに怒ってるので、作中唯一かすみちゃんに怒られたのは早雲です。
もし良かったら、感想・評価お願い致します。
あと、なんだかんだ毎日更新していますが不定期になるかもです。ご了承ください。