あかね1/2 作:直人猫
いつも助かっています。
あかねちゃんは、原作を見ている限りスタイルが悪くなさそうなのに寸胴って言われてていつも不思議でした。
乱馬のトランジスタグラマーやシャンプーのスタイルがおかしいだけなのに…。
乱馬はあかねの行き先に心当たりがあった。
それは、小乃接骨院だ。
東風はあかねを小さい頃から知っている様子だったし、本人もあかねのことを良く気にしていた。
なにより、乱馬に意味ありげに「同じ男としてあかねと仲良くするように」話してきた。
つまり、東風は乱馬よりも先にそれこそあかねが幼い頃から事情を知っていたのだろう。
なにやら、かすみに惚れている様子もあることから、もし接骨院にあかねがいなくとも一度彼に話を聞く価値はある。
その判断で、乱馬は走り出した。
シャンプーは何やら競争と言っていたし、乱馬より先に出た彼女があかねに先に出会うことは考えられる。
「(急がねーと!)」
乱馬が大きく跳躍し、そして隣家の屋根に登るとヒョイっと体に重さが掛かった。
大した重さではないため、そのまま気にせず走り続けるがその正体に乱馬は目を見張った。
「なっ、シャンプー!?」
「さあ、行くね乱馬! あかねの居場所に!」
「おめぇ、なんで…」
「正々堂々、やりたいからね…早い者勝ち違うよ」
シャンプーは穏やかに微笑んだ。
その微笑みを見て、乱馬は笑みを返す。
「おめー、さては居場所がわかんねーんだな?」
「…見失っちゃったある」
「素直にそう言え!?」
しくしく泣くシャンプーに乱馬は思わず突っ込んだ。
一見すると切れ者のイメージがあるシャンプーだが、どうやらかなりドジかつポンコツであるようだ。
そして、むしろシャンプーがあかねの位置がわからないのなら乱馬にとっては好都合だ。
「よし、おめーも場所がわかんねーなら手分けして探そうぜ。見つけたら、早い者勝ちだ」
「む、手分けすか?」
「場所がわかんねーんじゃ仕方ねーよ。まずはあかねを見つけなきゃ話になんねー」
「乱馬も居場所わからないか?」
「ああ! さっぱりだ!!」
「……怪しい」
シャンプーのジトっとした視線が乱馬に向けられた。
おかしい、乱馬はしっかりと否定したのに信じてもらえていない。
だが、乱馬もこのアドバンテージを手放すつもりは毛頭なかった。
「な、なんの話だ?」
「乱馬、まったく焦ってないね。それに走ってる時、周りを探してなかた。
あかね居場所、心当たりあるね?」
「ば、バカ言っちゃいけねぇよ! それに知ってても競争なんだろ? 教えねぇよ!」
そう焦ったように告げる乱馬へ、シャンプーは少し冷めた目を向ける。
「ふーん、やっぱり心当たりあるね。教えてくれないか?」
「だ、だから知らねぇって」
「そうか」
必死にシラを切る乱馬へシャンプーは、短くて告げるとそっと彼の背中へ抱きつく力を強めた。
同時に彼女の豊かな頂が押し付けられ、潰される。
自分で乳を持っていても味わえない感触であった。
「ふぐ!?」
思わず足が止まりかける乱馬。
シャンプーはその体勢のまま、乱馬の耳元に口をよせて囁きかける。
「ね、お願い愛人♡ 私にも、あかねの居場所教えて?」
「お、教えねーし!」
「む、強情あるね」
「残念だったな!! 俺は自分の体のおかげで、女の体の扱いには慣れてんだ!」
強気に言い切った乱馬であるが、その言葉に反して彼の跳躍はヘロヘロと力が入っていない。
その情けない姿を晒しつつも、乱馬は足を止めなかった。
そして、背中にかかる幸せな圧力に屈しかけつつも、気を紛らわせるためとシャンプーの真意を測るために口を開く。
「なあ、シャンプー。おめーは本気で俺に惚れてんのか?」
「ん? そうよ、愛人」
「なら、ちょっと聞きたいんだけどよ…俺って美形だよな?」
「はぁ?」
「いや、自覚はあるんだ、美形だって…!
でも、最近それが通じなさ過ぎてちょっと自信がなくなってきたんだ…」
「…正直、私は顔とかどうでもいいね。そこに惚れた違うよ」
シャンプーはそうため息交じりに返した。
事実、シャンプーとしても強ささえあるのなら、多少の美醜はどうでも良いと思っており、もちろん乱馬の顔にもこだわりはない。
そう告げれば、乱馬は露骨にションボリし始める。
「そっか…そういうもんか」
「あかねなら尚更ね」
「シャンプーは?」
「ふぇ?」
気がつけば乱馬の足は止まっており、彼はどこか真剣な熱っぽい表情でシャンプーを振り返っていた。
そして、乱馬はそっとシャンプーを背中から下ろす。
そのまま熱い瞳のまめシャンプーと見つめ合った。
思わず、シャンプーの頬が赤くなってしまう。
「な、なんね、急に!」
「シャンプーは、俺の顔嫌いか?」
「ふぇっ」
そして、乱馬はそのままシャンプーへ近づきその顔を覗き込んだ。
乱馬はそのままそっとシャンプーに顔を近づけた。
シャンプーの胸はドンドンと高鳴っていく。シャンプーは、乱馬に合わせてそっと目を閉じた。
そして、気持ち顔を上げて受け入れ態勢を整えるのだ。
「…」
シャンプーは、乱馬からの行動を待った。
そして、ついに彼女の体を覆うように乱馬の手が回された。いや、手にしては感触が細い。
シャンプーそっと目を開けた。
そして、自分の体を見ると全身がロープでぐるぐる巻にされていたのだ。
「は? なんね、これ」
「悪いな、シャンプー! ちっと待っててくれ!」
シャンプーを固く絞り上げると、乱馬は爽やかに手を上げて走り出した。
「ら、乱馬ー!!」
シャンプーは怒りの声を上げたが、固く結ばれたロープは解けなかった。
そして、乱馬は一切の躊躇をすることなく走り抜けていった。その後ろ姿を見送りながら、シャンプーは歯噛みするのであった。
シャンプーを封じた乱馬は、もう迷わずに小乃接骨院へ走って向かう。
まだ、朝早い時間であるからか接骨院には誰も並んでいない。
だが、接骨院の扉が開いていたのを乱馬は見逃さなかった。
自分の読みが正しかったことを自覚して、乱馬は中に入っていく。
「東風先生、あかね来てねーか?」
「ーーーー」
乱馬の呼びかけに応える声はないが、中から話し声が聞こえた。
乱馬は、そのまま奥に進んでいく。
声が聞こえてきたのは、一番奥にある診察室の中からだった。乱馬が近づいていくたびにその声は明瞭に聞こえてくる。
「あかーー」
「つまり、あかねちゃんは乱馬くんにシャンプーさんと結婚して欲しいのかい?」
その東風の声にどきりと心臓が跳ねた。
中には東風とあかねがいるようで二人で話しているようだ。
「その言い方はずるいです、先生」
「でも、君の言葉を僕はそう受け取ってしまったな。
だって、君は乱馬くんにシャンプーさんと付き合って欲しいんだろう?」
「それは…そうですけど」
「乱馬くん、傷ついたと思うよ。彼は君の事情を知っても許嫁でいたいと言ったんだろう?」
「それは…」
「誠意を見せた相手にその仕打ちは、あかねちゃんらしくないなぁ。で、そのことをかすみさんに叱られて逃げてきたんだね」
「おねーちゃん、わりと容赦なく言ってくるから」
乱馬は扉の前で固まってしまう。
自分はこの話を聞いていて良いのだろうか?聞かなかった事にして離れるのが正解なのではないか、と。
何度か拒絶された乱馬は少しだけ気後れしていた。
だが、乱馬はそこに残ることにする。
あかねが本当にどう思っているのかを知りたかった。
「でも、本当にいい事だって思ったんです。
乱馬くん、優しいから」
「優しい?」
「僕の事情を知った時に、乱馬くんはまず戦おうって言ってくれたんです。そして、本当に本気で戦ってくれました。
男とか女とか、そういうのを全部飛び越えて僕を対等な武道家として立ち会ってくれた」
あかねの言葉に乱馬は胸を締め付けられるように感じた。
乱馬はそんな人間ではない。
あの時は必死だったし、今はあかねを殴りたくないために力をつけようとしている。
早乙女乱馬という男どこまでも利己的なのだ。
乱馬の気持ちをよそに、あかねの言葉は続く。
「だから、そんな良い人を僕の都合で人生を使い潰させるような真似はしたくないんです。
僕と結婚するっていうことは、僕の事情に巻き込み続けることだから」
「.ふぅむ」
「だから、普通の恋愛をシャンプーとして欲しかったんです」
「そのシャンプーさんもかなりおかしいと思うけどね?」
「…うるさいなぁ、先生も。というか、シャンプーはいい子ですよ。とっても可愛いし、おっぱい大きいし」
「おっぱいについては、君の趣味じゃないか」
「良いんです! もう、話の腰を折らないでください」
「そうは言っても、君の好みを押し付けるのは良くないよ」
「いーんです! だって、僕の知り合いだとあと小太刀ちゃんぐらいしかいないし…。あの子はちょっと…」
話を聞いていた乱馬は悩む。あかねの気持ちはわかる。わかるのだが…。
乱馬の胸中はもやもやとし始めた。
「ともかく、乱馬くんは僕との許嫁関係なんか気にしないで青春して欲しいんです。普通に可愛い女の子を知ったら僕なんか相手にしなくなっちゃうかもだけど…」
「うーん、拗らせてるなぁ」
そこまで話を聞いて、乱馬は我慢ができなくなった。
そのまま、あえてドアをノックして顔を出す。
それにあかねは座っていた椅子から飛び上がるほど驚いた。
「よう、あかね。迎えにきたぜ」
「ら、ららら、乱馬くん!? ど、どうしてここが…」
「お前のいきそうな場所を考えたら当たった。
みんな心配してたから戻ろうぜ」
「あぅ…」
「や、いらっしゃい乱馬くん」
泣いて出て行った手前、戻りにくいのだろうあかねは顔を真っ赤にして小さくなった。
一方、東風は乱馬に気がついていたのだろう、いつも通りに挨拶をした。
乱馬はそれに手を振り返しつつ、あかねに向き直る。
「あ、そうだ、あかね」
「な、何かな乱馬くん」
「お前、めちゃくちゃ重いなー」
ぴしりとあかねが真っ赤になって固まった。
乱馬の言葉にぷるぷると震えながら意味をなさない言葉を紡ぐ。なんとも愛らしい。
「なっにゃっ、なっ…」
「いや、色々聞かせてもらったけどよ。俺たちまだ16だぜ? 結婚とか人生と背負うだのなんだの考えすぎだろ」
「えっえっ…き、聞いて…?」
「あと、女のお世話とか余計なお世話すぎるわ。なんだ、俺が女と付き合えないとでも?」
「あ、や、ち、違くて」
「というか、マジで気を使いすぎなんだよ。俺と親父は居候だぜ?
そんなに気を使わなくて良いんだよ、気楽に接してくれ。あと何より…お前の女の好みを押し付けるな」
「あっはいっ、そうですね…」
「おっぱいがでかいのは良いもんだけどな、俺の場合自分の体を思い出しちまうんだよ。
揉もうと思えば、いつでも自分の揉めるしな…。だから、そんなわけで俺の好みはうっすい胸なんだ。
体のラインが綺麗に見えるし、華奢な感じがして守ってやりたくなる。あとーー」
「わ、わかった、わかったってば! ごめん、謝るから!」
そうあかねが叫びながら降参すると、乱馬は少しだけ溜飲を下ろした。
それはそれとして、一つだけ意趣返しをすることを決める。
「あのな、あかね」
「な、なんだよぅ」
「優しい奴がいてな。いきなり許嫁だのなんだのと騒がしくやってきた奴らを温かく迎えてくれて、それで男か女かもわからんやつの事情を大したことがないって言ってくれるような奴がいるんだわ」
「…あっ」
「しかも、そいつはめんどくせー性格だけど一丁前に俺の幸せまで考えてくれてる。
そいつのお節介も、正直いらねーと思うこともあるけどそんなそいつを魅力的だと思ってる」
「はわっ、はわわ…」
「性別とかどっちでもいいよ、俺も『要望には答えられるし』」
あかねは林檎のように真っ赤になっていた。
言葉を紡ぐこともできず、パクパクと口を動かしている。
「俺は、そんなお前だから許嫁になろうと思ったんだ」
乱馬はそれだけ言い切ると、東風へ一礼してその場を離れていく。
あかねは真っ赤になったまま動かなかったが、そのうち戻ってくるだろう。
乱馬は充足感とともに、天道道場への道を戻り
「ーーーーなにスッキリした顔してるね」
今までに見たこともないほど満面の笑顔のシャンプーと出会った。
彼女は笑っているが、顔の血管が浮かび上がっている。凄まじいまでの怒りを押し殺した笑顔。
これぞ、『微笑み三年殺し』。
押し殺した怒りを溜め込み、あとあと返すしょうもない技であった。
「あかねと会えたみたいね、私を置いて」
「あー、やー、そうだな」
「しかも、たぶんあかね口説いたの上手くいったね?」
「あーーーー…ふひっ」
シャンプーの指摘に乱馬は顔がにやけるのが抑えきれなかった。
シャンプーは、微笑んでいた表情から一転して怒髪天をついた。
「ずるいね!!!! 乱馬ばっかりイチャイチャして!! 私もあかねと仲良ししたかたよ!」
「なんでそーなんだよ!? というか、俺の許嫁だ!
イチャイチャして当然なんだよ!」
「あと、乱馬騙したね! 私にチューするフリしたね! 許せないよ!」
「やかましい! 騙される方が悪いんだ!」
「でも、もう覚えたね。乱馬、自分からチューする度胸ないよ」
「なんてこと言うんだてめぇ!?」
乱馬への怒りが収まらないシャンプーは、彼に罵詈雑言の限りを尽くす。
言われたい放題の乱馬は、流石にシャンプーを睨みつけた。
しかし、シャンプーは怒りのままに胸を張り、びしりと乱馬へ指を突きつけた。
「いいか、乱馬! 乱馬のファーストキスは、あかねじゃない、私ね!!」
「悪役らしいことを言うんじゃねぇよ!? 泥水で口を洗ってやろうか!?」
「…あ、それね」
ふと、シャンプーは手を叩く。
まるで、典型を閃いたかのように。
「あかねの初めても、貰ってしまえばいいね」
「な、なんて事を思いつきやがるんだお前は!?」
「見てるよ、乱馬!! あかねの唇を奪うのは私ね!!」
そう告げると、シャンプーは乱馬へあっかんべーをしつつ屋根の上に飛び上がった。
そのまま、天道道場の方へと駆けていく。
それを見送りながら、乱馬は遅れてじわじわと達成感がやってきた。
あのあかねに、意識をさせることと励ますことができた、と。
今からあかねが戻ってきた時の反応が楽しみである。
そして、乱馬も天道道場へ戻っていきーー。
あかねは、その日帰って来なかった。
「あれぇ!!??」
「ら〜ん〜ま〜く〜ん?」
「ま、待ってくれ、おじさん!? 俺は確かにうまいことやったんだよ!?」
「あのおぼこにうまくやり過ぎたら…」
「ねぇ?」
乱馬はその日、天道家で針の筵で過ごすことになる。
全ての元凶である玄馬は、のんびりと我関せずと食事をとるのであった。
玄馬さん、活かしきれなくてごめんね…!
次から漸くあかねちゃん攻略に取り掛かっていきます。
落ちてないかって?意識0%から10%になったぐらいです。
これから言い訳を潰していきましょうね。
あと、重ねて言いますが不定期投稿になります、ご容赦ください。