あかね1/2 作:直人猫
武道家ということもあり、新しい技の修行やすちゃらか格闘競技への取組などを習熟するパートもたいへん自然で面白いのは、素晴らしいと常々思っています。
あかねちゃんの修行パートも、その内に入れたいです。
あ、ストックがあるうちは毎日投稿していきます。
早雲の言葉の後、あかねはゆっくりと言葉を続けようと、口を開け閉めする…が、言葉はなかなか出てこない。
かすみは、気にした様子もなく皆にお茶を入れ直し、なびきはどこか詰まらなそうに、ギョッとした乱馬と玄馬の様子を観察している。
早雲は、あかねを見守るように彼女の言葉を待った。
しばらく、居間に沈黙が満ち、遠くで犬がわんわんと吠えていた。
かすみから、お茶を手渡されたあかねは、それを飲むわけでもなく湯呑みを手で包み込み暖をとる。
そして、その暖かさに勇気をもらう様に、口を開いた。
「急に言われて、びっくりしたと思う。でも、事実なんだ。
あんまりハッキリ思い出せないんだけどね、僕には男性として少し先の時代を何年も生きた記憶があるんだ。
そのせいで、小さい頃から教えられてないことを知っていたし、未来の出来事も知っていた」
一度言葉を切るあかね。少し、お茶で唇を潤す。
「勿論、全てが全てその男性の記憶を覚えているわけじゃないし、その記憶と名称などが違うこともある。
だけど、僕は凡その世界の流れを言い当てることができるし、これから作られる新しい物やこれから起こる出来事も熟知している。
そうだね、少し大袈裟に言えば…全部知ってるんだ。全部一度体験したことがあって、全部初めてじゃないんだ」
「それは…すっげーつまんなそうだな」
乱馬は、気がつけばそんなことを言っていた。
まだ、目の前の一家が語りだした荒唐無稽なことを信じたわけではないし、何かの振興宗教か?と疑ってもいる。
しかし、目の前の少女の瞳に宿る凪いだ色に思わずそう言っていた。
そして、少女はその言葉に嬉しそうに笑った。
「そうだね。そうかもしれない。
でも、お父さんが教えてくれる無差別格闘天道流は、全く知らないから面白いし、おねーちゃんたちの行動も予測ができないから、本当になんでも知ってるわけじゃないんだよ」
「…なんだよ。身近なことでちゃんとわからないことがあるなら、つまらないことばっかりじゃないじゃねーか」
「うん。それは、勿論。
でも、僕はもの心がつく前から男性だったし、色んなことを知っていて不気味な子供だった。
そして、それは今も変わらない…幸い、おとーさんもおねーちゃん達も信じてくれているけどね。
普通なら、心を病んでると思われても仕方ないような人間なんだ、僕は」
あかねは、だから、と続けて。
「だから、君の許嫁には僕は相応しくないと思うんだ。
乱馬くんもいやだろう? 自分を男だと言う女なんて」
「…」
乱馬は困った。
正直、会ったばかりでいきなり相手の事情の深すぎるところまで話されてしまい、困惑の極致にいた。
困惑は彼に沈黙を強いた。
直ぐに、そんな事はない、などと嘘は言えなかった。
そもそも、彼が、この天道家に連れてこられた時には、許嫁がいるから会いに行く程度の認識だった。
それどころか、許嫁との面通しが済んだのならすぐに中国に蜻蛉返りし、呪泉郷の呪いを解くすべを探そうと思っていたぐらいで、許嫁というものに全く興味がなかった。
これは、玄馬も同様で、早雲との昔の約束を守るために乱馬を連れて帰国したが、早雲の娘にこれほど厄介な事情があるとは予想もしていなかった。
玄馬はクズであるが、人の心はある。
そして、すぐさま信じ切れるわけではなかったが、あかねという少女を哀れに思う程度には人の嘘を見抜けた。
同時に、己の息子にこれを受け止め切れる度量を求めるのも今は難しいと理解していた。
突然女の体に変わるようになり、まだ乱馬は強がってこそいるが、不安定であったからだ。
だから、彼女との婚約を結んでは、互いのためにならない。そう思った彼は、代わりに口を開いた。
「まあ、あかね君が乗り気でないのなら、無理強いは出来まい」
「そう、ですね」
玄馬のその言葉に、込められた言葉の意味を察したようにあかねは微笑んだ。
どこか、老成したようでいて、悟りきれぬ若さを残したような笑みだった。
乱馬は、それを見ていられなかった。
だん、と彼は気がつけば立ち上がっていた。
周りは、驚いたように乱馬を見ている。何かを考えて立ち上がったわけではなかった。
しかし、周囲が驚いたように彼を見つめる中、様々な考えが彼の中を巡る。
どうする? 何を言えば良い? 何をしたら良い?
そして、あかねはそんな彼に心配げに声をかけた。
「ら、乱馬くん? どうしたの?」
その、こちらを窺うような態度が嫌だった。
道場の立ち合いで見せたような静かな底知れなさでもなく、激発した感情でもないどこか卑屈な感情を『自分と同列』のあかねが浮かべているのが、許せなかった。
「道場、行くぞ」
「え?」
「決着、ついてねぇし、何よりお前も俺も本気じゃなかった。だから、行くぞ」
そう言うと、乱馬目の前のあかねの手首を取り立ち上がらせる。いきなりの事に、咄嗟に動けないあかねは、乱馬のなすがままだ。
そのまま、乱馬はずんずんと歩き出した。
「ら、乱馬くん…!」
「なんだよ、止めても聞かねぇぞ」
乱馬は迷いない足取りで、家の奥を目指していく。
そんな乱馬に、あかねは焦った様子を見せる。
「えっと、止める気はないんだけど…。僕も決着つけたいし」
「じゃあ、なんだよ」
「その、道場…逆なんだけど」
そのあかねの一言で、乱馬はひどく赤面し、立ち止まった。
ひゅー、と空気が寒々しく鳴った気がする。
「そー言うことは、早く言え!」
照れ隠しで怒鳴ったが、あかねはその彼の様子をおかしそうにくすくすと笑った。
その笑顔に、乱馬の心臓はドキリと跳ねた。
不可思議なことをいう少女であるし、自分が男だという少女であるが、不思議とこう言った時折見せる仕草が、乱馬の琴線に触れるのだった。
あかねは、優しく乱馬の手を手首から外すと反対方向に歩き出す。
「道場は、こっちだよ」
それにバツが悪く追随しつつ、乱馬は口を開いた。
「別に、わかってたさ」
「ほんとぉ?」
揶揄うような、あかねに加えどやどやと他の者たちも道場へ向かう乱馬に続くように居間から出てくる。
「うむうむ、早速仲が良さそうで何よりだ」
「いやぁ、あの乱馬がなぁ」
「ねぇ、乱馬くんなんで自信満々に逆方向に行ったわけ?」
「あらあら、仲がいいのは良いけれど、組み手で怪我をしないようにね」
「ええい、やかましい!」
口々に好き放題言い始めた彼らに怒鳴り返しつつ、乱馬はあかねの誘導に従って道場へと足を進めた。
道場は、先ほどと同様に静謐な雰囲気で、彼らを迎え入れる。
しかし、人数が多いためか明かりをつけた道場内はすぐさま笑いと活気で満ちていく。
「というか、許嫁になるかならないかの話で、なんで道場で立ち会う事になるわけ?」
「武道家たるもの、互いを理解し合うためにはまず拳を交えるものだよ、なびき。
かく言う我々も、よく拳で語り合ったものだな、早乙女くん!」
「ああ! ところで、わしから拳で奪い取った肉のことは忘れとらんよ!」
「何おう! 君だって、私からーー」
「お父さんも、早乙女のおじさまも、喧嘩はダメよ?」
そんな、騒々しい外野を他所に道場で向かい合った乱馬と、あかね。
互いに、始めこそ戦意は強くなかったものの、いざ向かい合うと先ほどの立ち会いを思い出す。
二人は、どちらからともなく、自然と構えを取り、向き合った。
あかねは、構えを取る乱馬にはた、と思い出し謝罪を口にした。
「ごめんね、乱馬くん」
「? 何がだ?」
「さっき、酷い立ち会いをしちゃって…禁じ手も使おうとしちゃったから」
「ああ、あの、いやな感じがしたやつか。そんなに、やばい技なのか?」
「うん…正直、体を破壊するような技だから…。頭に血が昇って使うようなものじゃなかった」
「ま、俺は強いから。また、使わなきゃ勝てないかもしれないぜ?」
あかねの謝罪に尊大に返す乱馬。
その尊大な返しには、謝罪はいらないと言う彼なりの不器用な気遣いがあることに、短時間ながら共に過ごしたあかねは気がついていた。
彼の優しさ報いたい。
異常性こそあれ、心根は優しいあかねはそう思った。
許嫁の話はさておき、彼と一度正面から立ち会ってみようと。
その戦いで何が見えるかはわからないが、まずは彼と向き合う必要があると感じていた。
何より、先の勝負は無効とは言えほぼあかねが追い詰められ、負けかけていた。
武道家として、そのままではいられない!
「無差別格闘天道流、天道 あかね」
「無差別格闘早乙女流、早乙女 乱馬」
いざ、参る!
最初に仕掛けたのは乱馬だった。
「だだだだだだ!!」
「おお! 息をつかせぬ乱打!」
「なるほど、あかねくんは受けや投げを得意とする謂わば、柔の拳の使い手!
それで対処しきれない乱打を叩き込んで飽和させようと言うのか!?」
早雲と玄馬の分析は正確で、乱馬は先ほど勝利に近づいたその戦法を再度そのまま実行していた。
だが、今度のあかねは先ほどとは一味違った。
無差別格闘天道流『円環』
「ほいっと」
「で!?」
乱馬の攻撃は、恐ろしいほど手応えなく、また円を描くようなあかねの受けにより無効化された。
そればかりか、乱馬の拳の力すら利用され、体勢を大きく崩されてしまう。
そして、それを見逃すあかねではない。
ぬるり、と乱馬にさらに近づき、乱馬の手を取り己側に引く。
乱馬は咄嗟にそれに抵抗するべく、体の後ろ側に力を入れーー。
その瞬間、あかねはパンダ姿の玄馬へそうしたように、耐えようとする足を自身側に払った!
当然、後ろに力が掛かった状態で、足を前に払われた乱馬はバク転のように体が宙に浮く。
あかねは、そのまま頭を掴み押し込むように乱馬の頭を床へと叩きつける!
無差別格闘天道流『餓者天槌』
餓者髑髏がその手を叩きつけるごとき猛撃!
しかし、床に叩きつけられる前に乱馬は宙に浮いたまま、あかねの体にしがみつく。咄嗟に伸ばした右手にぐにゅり!と柔らかい感触を感じるが気にせず掴み、揉みしだき、なんとか勢いを殺す。
そして、なぜかあかねが一瞬止まった隙に体勢を立て直し、大きく距離をとった。
「あ、あぶねぇ」
「ぬぅ! 円を描くように攻撃を受け流す技、『円環』からの体制を崩した相手を地面に叩きつける『餓者天槌』! この技の連携を避け切るとは!
流石、早乙女くんの息子だ!」
「なるほど、パンダの時のわしがやられたのはこれか…荷物と乱馬を抱えていたとはいえ、よく練られた見事な技だ。
流石、天道くんの娘なだけはある」
「「……でへへへ! それほどでも!!」」
冷や汗をかく乱馬をよそに、互いの自慢の娘息子を褒め合い気持ち悪く笑うおじさんたち。
一方で、乱馬は追撃を仕掛けてこないあかねを注意深く観察する。おそらく、この間すらも意味があるはずなのだから。
乱馬は、あかねを観察し…そして、気がついた。
あかねの顔が、真っ赤に染まっていた。
もう、耳まで染まり気のせいか涙ぐんでいるようにも見えた。
「ど、どうかしたか?」
「い、いや、なんでもない…よ?」
「いや、なんでもないって感じじゃねーだろ。なんだ、体調悪くなったのか?」
「ちが…くて…」
「じゃあ、なんだ…どうしたんだ?」
なぜか、ハッキリしないあかねの反応に首を傾げる乱馬に真実をつげたのは、なびきであった。
「なんだもどうしたも、あんたがあかねの乳を揉みしだいたからビックリしたんでしょうが」
「え"っ」
固まる乱馬は、はたと右手を見つめ、気がついた。もしや、先ほど叩きつけられまいと必死に掴んだ柔らかいものとはもしかしてー!?
「ち、ちが、俺は揉んでなんか!」
「も、揉まれてないもん! 手があたっちゃっただけでしょ!」
「いや、ガッツリ揉んでたし揉まれてたでしょ」
必死に否定する二人に呆れたようになびきは指摘する。
そして、ますます赤くなり固まる二人に告げた。
「やっぱり、許嫁はあかねで決まりね。息ぴったりだし、胸も揉まれてるし」
「揉まれてない、おねーちゃんの意地悪!」
「はいはい。ところで、あかねの写真5枚1セット2000円(優待価格)なんだけどいる?」
「僕で商売するなー!」
あかねが怒声をあげようと、気にせず乱馬相手にそろばんをもち擦り寄るなびき。
「えっ、いやっ、あのっ」
戸惑う乱馬はあかねの手前、拒否しようとしたがなびきの手元で広げられた写真に目を奪われる。
そこには、乱馬の見たことがない満面の笑みを浮かべるあかね。
ドキリと乱馬の心臓が、跳ねる。
その笑顔から視線を逸らせない。
「乱馬くん?」
なびきの手元を抑えようとしつつも、自分の力が強すぎることから怪我をさせてしまうため、周りでオロオロするしかなかったあかねが、乱馬の様子に不思議そうに首を傾げた。
はっと我に返った乱馬は、ぞくりと寒気を感じる。
彼の目の前にいたなびきが、邪悪な笑みをニタリと浮かべていた。
「やっぱり、1枚2000円ね?」
「もー、おねーちゃん。乱馬くんもそんなのいらないってば」
「どうかしら?」
「そーなの。もー、なんだか、勝負する雰囲気じゃなくなっちゃったな」
あかねは、なびきを押しのけて少し困ったように微笑む。
「それで…どうしようか、乱馬くん」
「ど、どうって? あれは不可抗力だろ! 柔らかかったけど必死だったから感触も覚えてねぇし!」
「えっと…婚約の件だけど」
自分で墓穴を掘った乱馬であった。
なびきの邪悪な笑顔は天元突破し、父である玄馬の呆れたような顔も腹立たしい。
何より、乱馬にとって一番嫌だったのは、困ったような諦めたようなあかねの顔だ。
「俺が勝った」
乱馬はそう言った。
あかねの困ったような笑顔が固まった。
乱馬は、偉そうに胸を張りながらあかねに滔々と語りかける。
「最初の時、おめーは俺に禁じ手ってのをかけようとしたんだろ?
つまり、反則負けってことだ。だから、一回目は俺が勝ってる」
「む…そう言われればそうなのか?」
早雲は、少し困惑したように同意した。
玄馬は、乱馬のしたいことがわかったのだろう。処置なしと言った様子で首を振る。
これに納得しないのは、あかねであった。
顔は笑顔のまあまであるが、額に青筋を浮かべて唇を引き攣らせている。
「は、はぁ? ま、まけ、まけ、まけて…ないけど?」
「いいや、俺の勝ちだね。だから、俺はこの天道道場をもらっていくぜぇ!」
「そ、そんな事させないよ! もう一度立ち会ってよ、乱馬くん!!」
乱馬は、どこか悪い顔でそう告げた。
その瞬間に、他の天道家の面々は乱馬の意図を察し、生温い笑顔になる。しかし、あかねには伝わらなかったらしく途端に慌てた顔になった。
彼女にとって、それだけ天道道場は重いのだ。
「いやだね、すぐにやっても同じ結果だろうさ。
だけどよ、俺も全力のお前とやったらどうなるか分からない。だから、今度は正式に決闘しようぜ。
この天道道場を賭けて!」
「臨むところだよ! いつやるの!? 明日!?」
「だから、もっと時間かけるんだよ!
その間は、俺は許嫁としてここに居座らせてもらうぜ!」
「わ、わかった! おとーさん、見ててね! 僕が道場を取り返してみせるから!」
「ああ、うん。あかねが良いなら、そうすると良い」
まんまと自分が丸め込まれたことに気がつかないあかねは、意気軒昂とし先程までの諦観に満ちた表情から打って変わった戦意に満ちた笑みを浮かべている。
乱馬が本当に見たかった表情とは違ったが、それでもあかねの諦めた顔よりはましであった。
「おとーさん、今から走り込み行ってくるね!」
「おお、気をつけてな。暗くなる前に帰りなさい」
あかねは、そのまま元気よく駆け出して行った。
その後ろ姿を見送った後、乱馬はぺしょりとその場に崩れ落ちる。
違うのだ! あかねの笑顔を見たかったが、こんな下衆な真似をしたかった訳ではないのだ!
婚約者になるのなら、もっとラブラブな感じたかったのだ! 乱馬も男の子なのだから!
そんな乱馬の肩へ、早雲は優しく手を置いた。
「ありがとう、乱馬くん。あの子のために、悪者になってくれて…あの子を頼んだよ」
「おじさん…」
「私からもお願いするわ。でも、苦労すると思うわ」
「えっと、かすみさん…でしたっけ? それはいったい」
「あの子…恋愛方面の情緒は、赤ちゃんなの」
「えっ」
「ほら…男性の記憶があるって言ってたでしょう?
そのせいか…『自分が誰かに好かれるわけが無い』って思ってるみたいで…」
苦笑するかすみに、乱馬は少し早まったか?と考える。
しかし、それでも乱馬は、自分が最善手を取ったと確信していた。
「な、なんとか、してみます」
「そう…頑張ってね。応援してるわ」
かすみは、乱馬の言葉に優しい笑顔を浮かべ居間へ戻って行く。それを見送った後、早雲は乱馬の肩に置いた手に力を込めていく。
「ところで、乱馬くん」
「は、はい? おじさん?」
「高校生の間は、清いお付き合いで頼むよ」
「ぎゃぁぁぁぁあ!?」
気がつけば万力のようなそれで、乱馬は肩を絞られていた。
早雲は、本来の性格は責任さえ取ってもらえるのなら、娘に手を出されることはウェルカムな男である。
しかし、あかねに関してだけは、それも我慢ならなかった。
その気持ちを全力で乱馬の肩へ込めていた。
一頻り握り終えた後に、早雲は居間へと戻っていく。玄馬もそれについて行きつつ、口もとの動きと視線だけで乱馬へ言葉を送った。
『よくやった、乱馬よ! このまま、居候を勝ち取るぞ!』
『そんなんじゃねぇよ!』
そして、その背中を見送った乱馬は、ゾクリと再び背中に悪寒が走る。
「ら〜ん〜ま〜くん♪」
なびきであった。
悪魔のような笑顔を浮かべているその手には、一枚の写真が握られている。
彼女のその様子に、乱馬の顔は引き攣った。
「な、なびきさん、だっけ?」
「なびきで良いわ。それより、この写真1枚2000円なんだけどね?」
「い、妹の写真で商売するのはどうなんだ!?」
「あら、要らないのね。良いのよ? 別に知り合いで欲しがる奴はいくらでも居るから」
そういうと、彼女はひょいと写真を引っ込める。
そして、一言つぶやいた。
「あーあ、もっと過激な写真もあったんだけどな…太ももとか」
気がつけば、乱馬はなびきの肩を掴み留めていた。
無意識の反応である。
やってしまったと乱馬が後悔しても、もう遅い。
なびきは、とびっきりの笑顔を浮かべて振り返り、乱馬に手を差し出した。
「1枚、2000円」
乱馬の財布から夏目漱石が4名消えた。
なびきちゃんの写真で、あかねちゃんの分が凄い猛々しいのはそれだけちゃんと女の子してるあかねちゃんに隙がないかと思うと、ドキドキします。もしかしたら、なびきさんの姉心かも…?
ないですね。