あかね1/2   作:直人猫

8 / 9
あかねちゃんは、良牙くん相手にだけ鈍感力が正気ですかというほど上がりますが、あかねちゃんの気持ちが揺れると読者も辛いので手法として上手だなと思いました。
めぞん一刻の経験が生きている。
それはともかく、今回はオリジナル設定ありです。ご注意ください。


7話

 

「早乙女乱馬、覚悟ー!!」

 

朝の風林館高校の風物詩となりつつある九能の乱馬への襲撃。

飛びかかってきた九能の一撃を、乱馬が回避しつつその顔面に強烈な蹴りを見舞った。

 

ただの一撃。

 

あかねですら昏倒するほどの威力の蹴りを叩き込まれた九能は、当然耐えられるはずもなく意識を失っていた。

その技のキレは凄まじく、一般人には九能と乱馬がすれ違い、その後に九能が倒れたようにしか見えないだろう。

この一週間、九能は毎日のように乱馬に挑み、そして敗れていた。

時間にすれば、ほんの一瞬のその試合は、しかし試合時間に反して少しずつ乱馬をすり減らせていた。

 

「くそ、九能の野郎。毎日毎日挑んできやがって」

 

「すごいでしょ、九能先輩って根性あるから」

 

共に登校してきたあかねが、何故か少し誇るように胸を張る。

乱馬が現れるまで、彼の襲撃を受けていたのはあかねなのだから乱馬の気持ちがよくわかるようだった。

 

「しかも、毎回毎回襲撃の仕方が変わってきてて、嫌らしいぜ」

 

さしもの乱馬も、一週間続く襲撃に辟易しているようだ。

九能は、乱馬に道場の権利とあかねの婚約者の立場を賭けて毎日挑んできていた。

乱馬にとって利点はないため、一切無視すれば良いものなのだが、乱馬はプライドがとても高かった。

それこそ、少しでも煽られようものなら、それに容易く乗ってしまう程に。

つまり、毎日乱馬は煽られていた。

そんな乱馬であったが、絶対に乗らない勝負があった。

 

「ねぇ、乱馬くん」

 

「ん?」

 

下駄箱に向かう途中、目の下にクマができている少年がじっとあかねを見ているのを睨みつけ追い払いつつ、乱馬は生返事をした。

そして、乱馬にとっては聞かれたくない質問があかねの口から飛び出した。

 

「いつ、再戦する?」

 

乱馬の下足箱から靴を取り出す動きが、固まった。

天道道場を賭けた勝負をいつするのか、ここ数日あかねはキラキラとした目で問いかけてきていた。

最初のうちは、まだ早いと突っぱねることであかねも納得していた。

しかし、最近では断られるたびに少ししょんぼりするあかねの姿と、その後にしょんぼりを隠しつつ、乱馬との再戦が楽しみだと語る純粋な瞳が乱馬の心をすり減らしていた。

むしろ、九能とあれほど戦っているのにあかねと戦わない理由を作るのが難しくなってきていた。

 

「…だから、まだはえーっての。一週間ぐらいしか経ってねーぞ」

 

「えっ、でも男子三日会わざればって言うじゃない?

それに、乱馬くんあんまり修行してないから余裕なのかなって」

 

「うぐっ!?」

 

乱馬は、確かにここ数日修行ができていなかった。

指導者である玄馬がバイトを始めたことで、修行を見てもらえなかったことや生来の気質として彼は追い込まれなければ本気になれない。

つまり、今の安寧としたぬるま湯に使った状態を堪能してしまっていたのだ。

乱馬とて、あかねの実力は知っている。そして、あかねは日々の努力を怠らず毎日厳しい基礎鍛錬をこなし、休日には遠方までロードワークをする日々。

端的に言えば、その練習量を見て乱馬は自信を失っていたのだ。

 

「ま、まあ、もう少し経ったらにしようぜ?」

 

結局、乱馬はそう誤魔化したのだった。

 

「そっか…でも、戦って良くなっならいつでも言ってね? 僕はいつでも良いから」

 

あかねは、少し寂しそうにそう言うのだった。

 

 

 

「どうすりゃ良いんだ…!」

 

乱馬は、小乃接骨院にたどり着き東風の執務室に着くなり、頭を抱えた。

 

「いきなり現れて、女々しいことを言うんじゃない! 情けないぞ、乱馬!!」

 

「おや、いつも自信満々な乱馬くんが弱気なんて珍しいね」

 

大袈裟な乱馬の様子に、父である玄馬は心底呆れたように叱りつけるが、執務室の主人である東風は、急に現れた乱馬を無碍にすることなく、なんならお茶を出してやりながらそう相槌を打つ。

ここ数日、乱馬はなんだかんだ東風の下を訪れることが増えていた。

それは、玄馬がこの小乃接骨院でバイトを始めていたからだ。

話してみれば、東風は人体のことはもちろんのこと格闘技などにも精通しており、乱馬にさまざまなことを教えてくれた。また、一目で乱馬女体化のことも見抜いており、姿勢の矯正なども行なってくれている。

その結果、乱馬は彼によく懐いていた。

 

放課後に乱馬は迷うことなく小乃接骨院は赴き、屯するほどなのでその懐き具合は凄まじい。

 

「なんにせよ、戦ってあげるしかないんじゃないかな。

あかねちゃん、楽しみにしてるんだろう?」

 

「でも、負けたら婚約者の話も無くなって、俺たちは根無草だぜ?」

 

ウジウジと悩む乱馬に、玄馬は嘆息する。

我が息子ながら、なんと女々しいことかと。この調子では妻に合わせることができるのは当分先になりそうだ。女だし!!

そう思いながら、乱馬のためにと口を挟んだ。

 

「だから、あの時あかねくんに惚れたからと言っておけば良かったのだ。今からでも行ってこい」

 

「だ、だだだだだれが惚れたんでぃ!?」

 

「お前だろうが!」

 

「ち、ちげーよ! 誰があんな、可愛げ…はあるな、寸胴…でもねーな胸はねーけどスタイルはいいし、不細工…美少女だぜ、凶暴…いや、確かに好戦的だけど普段は穏やかだし…」

 

乱馬は、もじもじとあかねの悪いところをあげようとするたびに失敗していく。

正直、もっと否定される場所はあるのだが、そこまで目がいっていない様子だ。

 

「ともかく! まだ、負けて追い出される訳にはいかねーんだ」

 

「うーん。乱馬くんが気になっているのは、負けたら追い出されるかもしれないということかな?」

 

そういう乱馬に、東風は優しく問いかけた。

 

「それは…そうなんだけど」

 

「それなら大丈夫だよ。あかねちゃんは優しい子だし、なんなら僕からか、か、かすみさんに頼んでみよう」

 

「それは、先生がかすみさんにいいところ見せたいだけだろ」

 

「な、なんのことだい!?」

 

乱馬が東風になついている理由の二つ目は、彼がかすみに惚れていて、あかねに恋愛感情を抱いていないからだ。

そう言った点からも乱馬が素直に相談できる相手であった。

 

「ごほん。ともあれ僕から言わせてもらうと、大人しくあかねちゃんと戦うべきかな。何より、乱馬もあかねちゃんと戦いたいんだろう?」

 

「それは…」

 

もちろん、戦いたかった。

 

あの時、同年代で初めて自分とまともに張り合える彼女との戦いは、楽しくて楽しくてしょうがなかった。

もっと、もっともっと徹底的に戦いたかったし、それで彼女のことを知りたいと思っている。

 

だが、それには大きな問題があった。

 

「だって…可愛いんだもん!!!!」

 

あかねが、可愛いことだった。

あかねの顔を前にすると、本気の打ち込みなど今は出来はしない。

 

「あいつに怪我をさせるわけにはいかねーし、気がつかないうちに手加減しちまう! それで勝てればいいけど、あかね相手にそんな余裕はねぇんだ!」

 

二人の実力はそれほど拮抗していた。

 

「なら、基礎鍛錬をこなすしかあるまい。あかねくんはそうしているぞ」

 

「わーってるよ! でも、あいつと同じことをしてても勝てるとは思えねーんだ」

 

乱馬は、悔しそうに唇を噛んだ。

強さと自分の容姿に絶対の自信を持つ乱馬がここまで思い悩むのを見るのは、玄馬にとっても初めてのことだった。

そんな乱馬へ、東風は少し考え込んだ後に一つの提案をする。

 

「じゃあ、同じ修行じゃなければいいんだね?」

 

「へ?」

 

「む、心当たりでも? 東風先生」

 

「ああ、簡単だよ、乱馬くんこっちへ」

 

東風は、訝しそうな乱馬を診察台にあげると、そのまま上着を脱ぎうつ伏せになるように指示する。

乱馬がその背中を晒し、診察台に横になると彼は鍼を取り出した。

そして、手早くその首から下に鍼を刺していく。

痛みもなく、ただ的確に素早く処置を済ませていく東風。

最後に首筋に鍼を打ち込むと、そっと全ての鍼を抜いた。

 

「これでよし」

 

「東風先生、俺に何をしたんだ?」

 

「ん? 修行の効率を上げるためにね、『精斗部神時屋のツボ』を着いたんだよ」

 

「『精斗部神時屋のツボ』〜?」

 

東風が告げたそのツボの名前に、玄馬は目を見開いた。

 

「それはまさか、伝説の!? 一突きし一日修行をするだけで、一年分の修行を熟したと同じ成果が得られるという、あの!?」

 

「ええ、たまたま人体ツボの奥義書を見る機会がありまして」

 

「な! なんだって!?」

 

乱馬は、がばりと起き上がって目を輝かせた。

まさか、そんな都合のいいものが存在していたとは!!

 

「じゃあ! このまま、修行すれば本当に一年分の成果が!?」

 

「うん、それとね…」

 

「こうしちゃいられねぇ! 親父! 今すぐ稽古をつけてくれ!」

 

「その意気やよし! 続け、乱馬!」

 

東風の説明が終わる前に、早乙女親子は連れ立って出て行ってしまう。

それを見送った東風は頬をかいた。

 

「…大変なことになるんだけど、行っちゃった」

 

どうやら、まだ大切な説明が抜けていたらしい。

どうしたものかと、東風は天井を仰いだ。

 

一方、乱馬と玄馬は二人で共に走り出し、凄まじい速度で山へと向かって行った。

まず、山までの走破で基礎の体力鍛錬を兼ねているのだ。

続いて、山の中でひたすらに組み手。

早乙女流は、走、攻、考で成り立っている。

そのため、全ての基礎として走り、相手を攻撃するための技を磨き、相手の技を打ち破るために考える。

そういう流派で、最も効率的な修行は組み手であった。戦い続けることは、高い耐久力と体力の鍛錬を兼ねるほか、時には相手の隙をみつけたり弱点を考えることにも繋がるのだ。

極限状態での思考が柔軟な考え方にも繋がり、乱馬は相手の技を見切り攻略していくタイプの武道家に成長していた。

今回もその修行である。

 

相対する玄馬は、それこそ百戦錬磨の達人。

普段はすちゃらかぐうたら下衆ムーブが目につくが、

無差別格闘早乙女流をまとめ上げ凄まじい必殺技を持っている。

また、乱馬と違い経験豊富であることから、乱馬との組み手で様々なタイプの武道家を模倣することもできる。

今回の模倣は、投げ主体の柔術タイプ。

 

あかねが使用する無差別格闘天道流の動きに近いものだ。

天道流は相手の攻撃を誘い、それを利用して相手を仕留める技が多い。

玄馬に言わせれば、『元祖』に忠実ではあるが自由度が足りない流派だという。

 

「そら! あかねくんが、お前が仕掛けるのを待ってくれると思うな!」

 

「この!」

 

木々の間を飛び回り跳ね回る中で、玄馬は乱馬が攻撃を仕掛ける前に自ら進んで距離を詰めていた。

柔術家が仕掛けてくるという状況に、乱馬は面くらい防御に回ってしまう。

玄馬はあえて拳を打ち、それに乱馬が対抗しようと手を動かした瞬間にその腕を掴み、極め、投げる。

 

「ぎゃっ!?」

 

何度目かの浮遊感の後に、乱馬は地面に投げつけられた。

直後、それを逃さず玄馬の蹴りが乱馬を蹴り上げ、吹き飛ばす。

そのまま木に叩きつけられた乱馬は痛みに呻く。

 

「立て、乱馬! お前が倒れても、待ってくれんぞ!」

 

玄馬は心を鬼にして乱馬へと、再び襲いかかる。

 

「投げ技の起点は、掴みだ!」

 

倒れる乱馬への踵落とし、乱馬はそれを転がるように回避。

次いで、顔を顰めながら殴りかかってくる玄馬の拳を受け流した。

 

「掴まれなければ投げられず、投げられなければ負けはない! だから、あかねくんは何としてでも掴みにくるぞ!!」

 

「くっそ!!」

 

殴りながら、乱馬の服や体を掴もうとする玄馬。

必死にその動きを目で追いながら、乱馬はあることに気がつく。

 

空中を駆け回る玄馬であったが、投げる時は大地を踏みしめていた。

 

「なるほど! 投げとはつまり、相手の力と地面を利用した技法!」

 

「む!?」

 

「ならば、こうだぁ!」

 

乱馬は玄馬へと接近してあえて組み技に持ち込む。

玄馬へと抱きつくように腕を回す乱馬。

 

「おろかな! 投げ飛ばしてやるぞ!!」

 

「かかったな!!」

 

玄馬が投げ飛ばそうと足に力を入れた瞬間、乱馬は玄馬を抱えたまま大きく真上に跳躍した。

これには、さしもの玄馬も目を見張った。

 

「な、なにぃ!?」

 

「早乙女流飯綱落とし!!」

 

飛び上がった頂点で体勢を入れ替え、乱馬は玄馬を背後から抱えるようにする。

そのまま、頭から地面へと真っ逆様に落ちていく。

 

「なるほど、空中では投げられない…考えおったな乱馬!」

 

「へへへ、仮に投げられても地面に叩きつけられなければ、痛くもねぇ!」

 

「うむ、正解の一つと言えるだろう! ところで、乱馬」

 

「なんだ!?」

 

「そろそろ止めてくれないと地面に突き刺さりそうなんだが?」

 

「親父ぃ! よくも散々蹴ったり殴ったりしてくれたな!!」

 

乱馬は着地の衝撃そのままに、玄馬を地面に叩きつけた。

玄馬は犬神家のように、地面に埋まったのであった。

 

「へへへ、これならあかねを殴らなくて済むぜ」

 

大地に突き刺した玄馬を気遣うそぶりなく、乱馬はすくっと立ち上がった。

 

「よぉし、待ってろよあかね!」

 

そして、そのまま玄馬を助けることなく荷物をまとめて走りだした。

後には、大地に突き刺さったままの玄馬が残された。

 

 

天道家へ戻った直後、乱馬は真っ直ぐ道場を目指した。

そして、がらりと戸を開けると中で鍛錬をしていたあかねが驚いたように振り返る。

 

「わ、びっくりした。どうしたの、乱馬くん?」

 

「ふっふっふっ、あかね決闘だ!!」

 

「え? 僕は嬉しいけど、いいの? 急にやる気になったんだね?」

 

急にやる気になった様子の乱馬をあかねは不思議そうに見るが、乱馬は自信満々に頷き返す。

 

「ああ! 今の俺ならお前より先に進んでるはずだ!」

 

「えっと、じゃ、じゃあお父さん呼んでくるね」

 

あかねは、早く早くとせかす乱馬へ頷きを返すと、一度道場を出て天道家の居間へと向かっていく。

今の時間であれば、早雲は居間で新聞を読んでいるはずだ。

 

「おとーさん、今いいー?」

 

あかねが顔を出すと、そこにはなにやら不機嫌そうな早雲といつも通り微笑みを浮かべているかすみ、そして油が切れたブリキ人形のように鈍い動きの東風がいた。

 

「あれ? 東風先生、いらっしゃい。珍しいですね」

 

「ああ、あかね。乱馬くんたちを知らないかい?

なんでも、彼らに伝えたいことがあるらしい」

 

「乱馬くん? さっき帰ってきて、急に決闘しようって道場で待ってるけど」

 

その言葉を聞き、かすみにデレデレしていた東風が目を見開き、キリリとした表情で立ち上がる。

 

「いけない! 一刻も早く『精斗部神時屋のツボ』を解かなくては!?」

 

「あら? 東風先生、それはなんですか?」

 

「あっ、いえっ、そのぉ〜」

 

だが、かすみにやわらかく微笑みかけながら問いかけられると、途端にもじもじとし赤くなり座り込んでしまう。

その様子に頭を抱えた早雲は、そっとかすみを部屋の外は追い出す。

 

「すまない、かすみ。少し外してくれないか?」

 

「はぁい」

 

かすみが去っていくと、東風はようやく再起動される。早雲は、そんな彼に改めて問いかけた。

 

「それで、先生…その『精斗部神時屋のツボ』とは?」

 

「古文書から見つけ出した伝説の秘孔です。

そのツボを突けば、一日の修行で一年分の効果を得られます」

 

「な、なんと! そんなツボが実在するとは!? それを乱馬くんへ?」

 

「はい…すでに、かなりの時間が経っています…早く解除のツボを解く必要があります」

 

「え? そんなにすごいツボを解かなきゃいけないんですか?」

 

感心する早雲に、東風は難しい表情を返す。

あかねは、東風の表情に疑問を持ち、言外に解かなくても良いのでは?と告げる。

すると、東風は首を振った。

 

「いや、一刻も早く解かなくては…『精斗部神時屋のツボ』は修行の成果を一年分にしてくれるが、『疲れ』も一年分になるんだ」

 

「な、それじゃあ!?」

 

「しかも、数時間経つとドンドン疲労が溜まっていって後半には動けなくなるんだ!」

 

「そんな、早く止めなきゃ!」

 

 

『ぎにゃーーーー!!??』

 

 

東風の言葉の直後、乱馬の悲鳴が響いた。

全員が顔を見合わせて、慌てて道場へ駆け込むとそこには疲労のあまり動けなくなっている乱馬がいた。

 

「ち、畜生、体が…」

 

「乱馬くん!?」

 

動けなくなりへたり込む乱馬にあかねが駆け寄る。

東風は、そのまま乱馬に近づくと、そっと背中のツボを押し直す。

 

「『精斗部神時屋のツボ』、解除完了」

 

そして、何日もの疲労を受けた乱馬は、体をぴくりとも動かせなくなる。

そんな乱馬の様子を見て、あかねは悲しげに問いかけた。

 

「乱馬くん、なぜ突然こんなことを…」

 

「…」

 

答えない乱馬に、あかねは優しく問いかける。

 

「もしかして、僕が決闘を催促したから? それで、追い出されると思ったの?」

 

乱馬は、バツが悪そうに視線を逸らす。もっとも、体動かないため視線だけでしかそれを出来なかったが。

そんな乱馬を、撫でながらあかねは小さく微笑んだ。

 

「大丈夫だよ、乱馬くん。たとえ、僕が勝っても君を追い出すなんてしないから…だって、僕たちは」

 

あかねと乱馬の視線が交わる。

どこか、熱を帯びたそれにあかねは頬を上気させた。

乱馬は、疲れで倒れ伏しながら、その顔に見惚れていた。

 

「僕たちは、永遠のライバルで友達だもんね!

ずっと友達でいようね!!」

 

だから、あかねの即死クラスの攻撃に備えができていなかった。

乱馬は、そのままさらさらと灰になって消えていく。

 

「わー!? 乱馬くーん!?」

 

慌てたように散っていく乱馬の灰をかき集めるあかねに、早雲は遠い目をした。

 

「あかね…そりゃないよ」

 

「む、むごい」

 

思わず呟いた、東風の言葉が状況を表していた。

今日も天道道場は平和であったが、青少年は心の傷を負ったのだった。




そりゃ、拙作のあかねちゃんならこうなる(こなみ。
精斗部神時屋のツボについては、そのまんま精神と時の部屋です。デメリットありなのが、乱馬ワールド。
乱馬のこういうケースのお話は、調子に乗った後しっぺ返しに合うのでこんな具合かなと。
評価や感想いただけると嬉しいです。

次回、おさげの女。
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