私の前世は明日を救えなかったスーパーロボット   作:狼二世

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24.銀の閃光、海を割る

 銀の光が海を貫く。

 光の筋に沿って海が割れ、左右に波が巻き起こった。

 

 ヴェスキュリアスは正面に展開したフィールドを盾に特異体シーサーペントを押し出すと、そのまま島から遠く離れた地点へと吹き飛ばす。

 黒い球体が海面に叩きつけられる。

 衝撃で巻き上がった海水が滝のように降り注ぐ中、アンゲルスはゆっくりと浮上する。

 黒い球体にすいついていた海水が下に延びる。黒い頭を持ち、海水の肉体を持つ海蛇は、ゆらりとヴェスキュリアスを眺めているようであった。

 

「さあ、あなたの相手は、この私とヴェスキュリアスです!」

 

 ヴェスキュリアスの背面ユニットが展開する。最上部の翼から細かいビームが放たれると、海蛇へ向かって直進する。

 海蛇が身震いをしたように震えた。体を構成する海水を分離させると、黒い粒子で覆う。それらは、質量弾となってヴェスキュリアスへと向かってくる。

 ビームと黒い粒子が接触する。

 

 ヴェスキュリアスは海蛇を中心として一定の距離を保ちながらビームを放つ。海蛇もまた、無限とも言える海水から弾をつくり、迎撃を続ける。

 無限とも言える攻撃の応酬は、無限とも言えるリソースを持つ海蛇が徐々に押し始めていた。

 

「広域ビームによる攻撃では貫けない」

『ムァン! 分析結果が出たわ!』

 

 コンソールに指令室からの解析データが送信されてくる。海水と球体。それに、驚くべき密度の数字が表示されている。

 

『海水を超高密度にして利用している。ただのビームでは倒せないわ』

 

 なるほど、とムァンは頷いた。

 

 ただのアンゲルスであればビームを受ければ消滅をする。だが、敵は海水を利用していた。

 一見すると数メートルの水球であるが、アンゲルスは驚くべき密度で水を利用している。それが防壁とり、ビームそのものの粒子運動を殺していた。

 海蛇も、その優位性を理解していた。

 再び海蛇が身震いをし、海水の塊を生み出す。黒い粒子を纏うと、誘導弾のようにヴェスキュリアスに迫って来る。

 

「ならっ!」

 

 すぐさまムァンは行動を切り替える。

 最上部のユニット停止。同時に、下部のスラスターにエネルギーを集中、速度を上げる。 

 

「見せてあげます、これが回避に集中したヴェスキュリアスの機動です!」

 

 急加速したヴェスキュリアスが飛翔する。

 それを追いかけるように海水の塊が追いかけるが、まったく追いつくことは出来ない。

 大きく迂回するように回り込む。海蛇を中心として180度回り込む。

 

 迫りくる海水の塊、そして、海陀が一直線に並ぶ。

 

「ビームドライブユニット展開!」

 

 最上部の羽が動く。肩部まで移動すると、頭を挟み込むように直線に覆いかぶさる。

 同時に、翼に取り付けられた砲門が一斉に敵へと向かう。

 

「続けて、砲門軸合わせ!」

 

 銀色の光が翼の先に集中する。粒子が集中し、強烈な閃光を放つ。

 

「ハイ・ブラスト!」

 

 全ての砲門の軸を合わせた一撃が放たれる。光の波は一直線の長大なビームとなり放たれた。

 光は海の塊を飲み込み、一撃で消滅させる。それだけにとどまらず、海蛇の体を貫く。

 

(急展開だったので、直撃はさせられなかった)

 

 海蛇の核たる黒い球体が揺れる。

 急下降すると、海へと潜り込んだ。

 

『ムァン、気を付けて。海の中から狙ってるわ!』

「わかってます」

 

 ムァンはコンソールを切り替える。アクティブになっているビームユニットへのエネルギーの供給を減らす。

 最上部の翼は再び背に戻る。代わりに、中層のバリア発生装置が動く。

 背面のジョイント部分が伸びると、機体の前面に展開する。それを、ヴェスキュリアスの腕は掴む。

 

(さあ……いつでも来なさい)

 

 海が揺れた。黒い塊が見えた。

 ヴェスキュリアスの眼下、海がせり上がると海蛇の顎が迫る。

 だが、その攻撃は予想出来ていた。

 

「フィールドブレード、セット!」

 

 バリアユニットが光を放つ。普段はバリアとして利用されている粒子が、剣の形になる。

 両腕に装着されたバリアユニットを交差させる。その交点が海蛇と接触する。

 

 海水が弾ける。バリアの出力を集中させたバリアが、海水で出来た表皮を切り裂く。

 

「海水を防壁としているなら、それと切り離す!!」

 

 飛行ユニットが光を放つ。

 外皮を沿うようにヴェスキュリアスが飛翔する。

 

 皮を切り裂き、そのまま首へ――フィールドブレードの一閃が放たれる。

 黒い球体と海面が切り放たれる。同時に、黒い球体を守っていた海水が弾ける。

 剥き出しになった核――それが好機であると、ムァンは即座に理解する。

 

「終わりですっ!」

 

 フィールドブレードが黒い核に突き刺さる。

 

「バースト!!」

 

 ムァンの意志に応じて、ブレードを覆っていたフェールドが膨張する。

 その一撃は、特異体を爆発させた。

 

 空間に黒い粒子がまき散らされる。

 その一つ一つが、海へと消えていく。

 

 これで特異体は倒した、だが、まだ戦いは終わっていない。

 

「穴は!?」

 

 空に穿たれた穴は、まだ健在である。

 だが――

 

『そっちは任せて』

 

 トキハの声とほぼ同時に、空の穴に亀裂がはしる。

 やがて、穴は砕け、再び青空が見える。

 

 遥か遠く、戦域の中央――二機のヴェスレギオンが、穴を閉じたのだった。

 

『出力じゃヴェスキュリアスには及ばないけど、捨てたものじゃないでしょ?』

 

 コンソールに表示される情報が切り替わる。

 敵対する存在の消滅。出現点の破壊。

 気がつけば、海の波も穏やかになっていた。

 

「そうですね。頼もしい、仲間です」

『ええ、もちろんよ』

 

 遥か遠く、島へと帰還する白い巨人が見えた。

 その先の街は、何も欠けていない。

 ようやく、ムァンは操縦桿から手を離した。

 

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