私の前世は明日を救えなかったスーパーロボット   作:狼二世

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33.問題提起

 憧れの大いなる存在を前にした時、萎縮するものも居れば、興奮で我を忘れるものもいるだろう。

 トット=マガラケスという男は後者であった。

 先祖が何代にも渡って記録し続けた物語。受け継がれる間に重なっていった空想と言う憧れ。

 

 ――それじゃあ、二人は――

 

 トキハとムァンへの質問は止まらなかった。

 

 そう、本当に終わらなかった。自分では終わらせなかった。

 

 資料館のスタッフが戸締りのためにやって来た時、ようやく(強制的に)終わりを迎えた。

 

◆◆◆

 

 疲れ切った顔のトキハが外に出た時、夜の風が迎えてくれた。

 空には煌々と月が輝き、街には魔力の光が満ちている。

 

「またお会いしましょうね~」

 

 最後まで笑顔のトットは、全力で手を振って二人を見送った。

 トキハは力なく手を上げ、ムァンは小さく手を振り返した。

 

 そのまま、二人で予約をしていた宿へと向かう。

 暫くの間、トキハは無言であった。

 

「善い方でしたね」

「……ちょっとマイペース過ぎるけどね」

 

 ムァンの言葉に、疲れ切った顔で返事をする。

 

「彼が書くのは、どんな物語なのでしょうか」

「……分からないけど、あれだけ取材熱心なら、ちゃんとしたものを書くんでしょうね」

 

 トキハ大きく息を吸うと、伸びをする。

 ようやくムァンに振り返ると、困ったように笑っていた。

 

「今度、探してみましょうか。なーんか、嫌いになれないのよね、ああいうタイプ」

「はい、楽しみにしています」

 

 二人、星空を見上げながら道を行く。

 世界が変わっても、空の色は変わらない。

 それは、人の営みも変わらない。遠い世界でも、地球と同じように、物語を綴る人が居る。

 

◆◆◆

 

 翌朝。朝日と共に城壁の跳ね橋が降りる。

 二人は朝の仕事に出る人々に混じって都を出ると、基地への入り口がある木こりの小屋へ戻った。

 

 許可は取っているものの、トキハはアマツシマの責任者とも言える立場である。そう、長く島を開けるわけにはいかなかった。

 

 幸いにして、小屋の周辺には人はいなかった。

 二人は警戒しながら中に入ると、厳重に鍵をかけて奥へ。

 木造の小屋に似つかわしくない機械のエレベーターに乗ると、地下へと向かう。

 

 そのまま帰還――しようとしたところで、基地に常駐しているスタッフに呼び止められる。

 

「グソウ博士がお呼びです。研究室まで来ていただけますか?」

「いいけど、お爺ちゃんまだ居たんだ」

「ははは、普段はすぐに旅立ってしまいますからね」

 

 珍しいこともある、と零しながら、トキハとムァンは研究室へと向かった。

 

◆◆◆

 

「お爺ちゃん、来たわよ~」

「同じく、どのようなご用件でしょうか」

 

 二人が研究室に入ると、グソウ博士は向かっていた机から立ち上がる。

 

「すまんな。二人とも、少し話がある」

「珍しいわね、どうしたの急に」

「まあ、まずは座ってくれ」

 

 博士は奥にある休憩スペースを指さす。

 ソファーとガラスのテーブルが置かれたスペースには、今は誰も使っていない。

 博士は研究室に備え付けられている冷蔵庫からお茶を取り出すと、紙コップをもっていった。

 

 三人、テーブルを挟んで座る。紙コップにお茶が注がれると、それぞれの前に置かれた。

 

「一つ、気になってな」

 

 博士は、飲み物に手を出す前に話を始めた。

 

「異形体が出たそうじゃな」

 

 真剣な声と顔。トキハとムァンも顔を引き締める。

 

「……うん、この世界に来てから初めて出た」

 

 ――特異体の出現。

 地球で何度も対峙した相手であるが、異世界においては観測されたことはなかった。

 それが、突然観測された。異常な状態であることは間違いなかった。

 

 博士は、続けて状況を並び立てる。

 

「……ヴェスキュリアスの再起動。本来は出現しない、大陸の上でのアンゲルスの出現」

 

 それらを並べる。それはまるで――

 

「ちょっと待って、何を言おうとしているの?」

 

 トキハは身を乗り出していた。グソウ博士を睨み、噛みつかんばかりに顔を険しくしている。だが、博士はまったく動じない。眉一つ動かさずにトキハの敵意を受け止めると、淡々と自分の考えていることを伝える。

 

「異常値が立て続けに観測されている。一連の出来事に、関連性はあると思わないか?」

 

 ――異常な現象が続いている――そこに、因果関係があるのではないか、と。

 

 トキハは小さく唸ると、視線を逸らす。

 

「それは……因果関係は分からないけど」

「そう、因果関係があるか「わからない」。ならば、「因果関係があるか」を調べる必要があるのではないか?」

 

 本当に、そこに因果関係があるかは分からない。けれど、現象として複数の異常事態が観測されている。それも、同時期に。

 異常という現象が確認されたのなら、何故異常が発生したのか考える必要がある。

 そして、分からないのなら、調べるしかない。

 

 そう告げる博士は、ムァンに視線をおくった。

 

(今、私を見た……)

 

 その意図が『自分』に対して疑問が向けられている。

 ムァンは、即座に気がついた。

 

 

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