私の前世は明日を救えなかったスーパーロボット   作:狼二世

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45.防戦

 黒い巨人の腕が上がる。白銀の巨人が銀のバリアを纏い、飛翔する。

 振り下ろされる腕を回避しながら、ヴェスキュリアスはアンゲルスの周囲を飛び回る。

 

(当たれば無事ではすまない。ともかく、機動性で勝負するしかない)

 

 操縦桿を握りしめ、ただ機動に集中する。背部ユニットの調整や、情報の整理はエテニアに任せて、自身はただ当たらないこと、そして、攻撃を当てることに集中する。

 

 バリアを張ったままのヴェスキュリアスは、銀色の弾丸のようであった。

 超高速で飛行し、攻撃をかいくぐり、時に突撃をする。

 

 一撃一撃は大きなダメージにならない。むしろ、ヴェスキュリアス自身にもダメージは行く。

 それでも、攻撃に使える手段はこれだけであった。

 

『お姉さま、ビームはどうしますか?』

「弾かれるなら無駄です。なら、バリアを張って直接殴ります」

『分かりました!』

 

 ムァンはもちろんのこと、エテニアにもそれは理解できている。

 同時に、それだけでは撃破が難しい、とも理解していた。

 

(とは言っても、いつまで続けられるか)

 

 腕が薙ぎ払われる。高度を変更して回避をするが、攻撃が掠る。

 それだけなのに、コクピットが揺れる。コンソールには機体の損傷状況が表示される。

 

『お姉さま、ビーム砲がやられました』

「どうせ使いません!」

 

 戦力差は明白であった。なにせ、相手は地球である。

 地母神に導かれてたどり着いた地球。そこで見届けたなれの果て。

 

 それは、トキハたちも知ることになる。

 先ほど、エテニアから指令室にムァンが地球で得た情報が転送された。

 それは、即座に共有されているのだから。

 

『ムァン、レポートを見たわ……』

 

 トキハから通信が入った。にがにがしい声であった。

 

「私が交戦している相手の正体、分かっていただけましたか」

『ええ。地球そのものが変質したアンゲルス……それがここまで来たっていうのね』

「はい、直接対峙している私も確信しました」

 

 圧倒的な情報の質量。その巨体、禍々しい黒、すべてが地球で見た時と同じものである。

 

『ムァン、無茶を承知でお願い。こいつ止めて!』

 

 だからこそ、トキハは言う。

 地球という存在を、ここで止めなければならない、と。

 

「当然です!」

 

 ムァンは強く答える。

 ヴェスキュリアスは飛翔する。機体の各部から悲鳴があがるが、それを物ともせずに立ち向かう。

 

『目標、コード:アース・アンゲルス! ヴェスキュリアス、頼んだわよ!』

「はいっ!」

 

 ムァンの決意に応えるように、ヴェスキュリアスは白銀のバリアを纏い、アンゲルスに突撃する。

 今度は顔に直撃をする。衝撃で、わずかに巨体がのけぞる。

 ――同時に、ない筈の、巨人の目が光ったように見えた――

 

 コクピットの中で、ムァンは怖気を覚える。

 そして、それは間違いではなかった。

 

『アース・アンゲルス、分離します!』

 

 黒の巨人の表皮から、赤ん坊が浮き出てくる。

 通常のアンゲルスの個体。翼をもった赤子。泣き叫ぶ代わりに、黒い粒子をまき散らす化け物。

 

 それらが、一斉にヴェスキュリアスを見た。

 そして、光を発した。

 

『お姉さま、回避を!』

「やってます!」

 

 スラスターを吹かして回避行動。それでも回避しきれない攻撃をバリアで受け止める。

 銀色の粒子がはがれていく。黒く塗り替えられていく。

 

「っ……」

 

 そして、致命的な一撃が来る。

 ビームの粒子に混じり、アース・アンゲルスが腕を振り下ろす。

 その一撃が、バリアに直撃をした。

 

「エテニア、スラスターに出力を回して!」

『は、はい!』

 

 受け止めきれない。そう判断したムァンは即座に回避運動をする。

 バリアがはじける。腕が迫る。だが、間一髪でヴェスキュリアスは回避をできた。

 だが、黒いビームが追撃をしてくる。休む暇もなく、ヴェスキュリアスは飛翔を続ける。

 

(……どうすれば……)

 

 黒い嵐の中、ムァンは考える。

 どうするか――どうすればいいか――

 

「何か、手はありませんか?」

 

 思わず、問いかけていた。

 そんな都合のいいものは――

 

『ここにある!』

 

 あった。

 

◆◆◆

 

 アマツシマより東の海域、飛行船が飛んでいる。

 飛行船の胴体部分が開くと、そこには『翼』があった。

 

『トキハ、ムァン、今から秘密兵器を送る!』

 

 グソウ博士の声が、ヴェスキュリアスに届いた。

 

「グソウ博士?」

『ワシとて遊んでいたわけではない。施策兵器で悪いが、それでも! この状況を突破する力になる』

 

 そして、その名を呼ぶ。

 

『複合背面翼型兵器、ハイロウ・ウイング』

 

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