私の前世は明日を救えなかったスーパーロボット   作:狼二世

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48.バイバイ、アース

 黒い巨人の胴体に、白銀の光球が突き刺さる。

 その一撃を受け止めるべく、巨人の部位から触手が出現し。光球を包み込んだ。

 白い光が飲み込まれる――

 ――だが、それは一瞬であった。

 

 巨人の体から一条の光が吹き上がる。

 それは徐々に増えていき――やがて、世界を切り裂き閃光となり、巨人そのものを構成する黒い情報粒子を吹き飛ばした。

 

 閃光は巨人だけでなく、海も、空も照らしつくす。その余波によって空に穿たれた穴に亀裂が走る。

 一瞬であった。黒く塗りつぶされた世界が割れ、青空が再び姿を見せた。

 

『やりました、敵、頭部を残して消滅です!』

 

 エテニアは高らかに報告をする。

 その報告は正しい。既に空は解放され、残っているのもアンゲルスの頭部のみ。それも、バインド・ハイロウにとらわれて身動き一つとれない。

 仮に拘束がなかったとしても、構成していた情報粒子の殆どを吹き飛ばされた今、形を保つだけで精一杯であろう。

 

『さあさあ、残ってるのは頭部だけです。倒してしまいましょう』

 

 コンソールにターゲットが表示される。

 武装はすべて使用可能であり、ビームを一発撃つだけでも終わるだろう。

 しかし、ムァンは指一本動かさなかった。

 

「……」

 

 無言で、モニターにうつる黒い塊を眺めている。

 

『お姉さま? どうしたんですか? あとはアイツだけですよ』

「……いえ」

 

 ムァンは首を横に振る。

 

(……あれは地球の残滓……私たちが守ろうとしたもののなれの果て……それを、倒さないといけない)

 

 かつて、トキハと一緒に戦い、守ろうとしたもの。

 黒く染まった情報の集合体――それは、地球という惑星が存在していた証拠そのものである。

 それを撃つことに、迷いがあった。

 

(分かっています。もう、すでに手遅れだということも。私は、明日を救うことが出来なかったのですから。それを繰り返してはいけないのですから)

 

 操縦桿を握る。ビームドライブユニットにエネルギーを流し、照準を合わせる。

 

「すみません、無意味な感傷でしたね」

 

 もう終わったしまったことなのだから――

 ――そう、割り切ろうとしたとき。

 

『ちょおおおおおおおおっと待ったあああああああっ!!!!!!!!!』

「!?」

『げ』

 

 目の前に、ヴェスレギオンが割って入った。

 ムァンは慌てて照準を変更する。銀色の光線が空へ向かって放たれた。

 当然である。味方機を撃つわけにはいかない。

 なにより、その手には、トキハが乗っていたのだから。

 

『ムァン、コクピットを開けて!』

 

 白衣をはためかせながら、手に必死にしがみつくトキハは訴える。

 

『ええ~、こんな上空で開けるんですか? あ姉さま大丈夫なんですか?』

「エテニア、トキハの言うとおりに」

「は~い」

 

 ヴェスキュリアスのコクピットを開放すると、すぐさまトキハが乗り込んでくる。

 それを確認すると、乱暴にコクピットが閉じられた。

 

『まったくも、このタイミングでお姉さまとの愛の巣――じゃなくて、秘密の小部屋に乱入してくるなんて、非常識ですよ』

「うっさいわ。あーもう、こいつが今まで寝てたの絶対性格悪いからでしょ」

『寝てたんじゃありません、半覚醒で~す』

「余計悪いわ!」

『うるさいですよ若作りオバサン』

「黙ってろクソガキAI」

 

 途端に騒がしくなるコクピット内で、ムァンは露骨に咳ばらいをする。さすがに二人とも黙ってムァンを見た。

 

「トキハ、どうしてここに?」

「このまま終わらせないためよ」

 

 そして、力強く言い放つ。

 

「アース・アンゲルスを拘束して。そのうえでアースポイントまで移動して」

「なぜ?」

「神様に聞きにいくのよ、こいつが地球で……地球の情報の塊なら、それを濾過する方法がないかって」

 

 途端に、ムァンは目を見開く。

 その考えは、自分にはなかったからだ。

 

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