【検証】ダドリーが女の子だった場合でも物語は成立するのか? 作:ウィーズリーの双子絶対TSさせろ委員会
毎朝の郵便をリビングに運ぶのはハリーの役目だった。
宛名を読んで、それぞれに配るだけで時間を潰せるから、朝の仕事のなかではいちばん気に入っていた。
ダーズリー家に届く手紙のほとんどはバーノン宛てだった。ドリル会社からの分厚い封筒を手渡すたび、ハリーはほんの少しだけ叔父のことを見直すのだった。
このごろはダリア宛ての可愛らしい封筒も少しずつ増えてきている。もちろん、ハリーに何かが届いたことは一度たりともなかった。
その日のハリーも、ふだんと全く変わらない調子で郵便を仕分けていた。バーノン、バーノン、ペチュニア、バーノン、この封筒はきっとダリア――
『サリー州リトル・ウィンジング、プリベット通り4番地、階段下の物置内 ハリー・ポッター様』
ハリーの手が、黄ばんだ封筒のところで止まった。
いちど裏返してから、念のため宛名を読み直した。やっぱりハリー宛だった。
いつもに増して目立たないようにしながら、ハリーは手紙を配ってまわった。バーノンとペチュニアにそれぞれ渡して、最後にダリアがいつも座る場所――本人はまだ2階で眠っているようだ――に淡いオレンジ色のかわいらしい封筒を置いた。
残った封筒を手に、ハリーはそしらぬ顔で物置に戻ろうとした。
「おはようございます」
リビングを出てすぐにダリアと出くわした。
たとえ相手がハリーでも、挨拶だけは欠かさない。ペチュニアの教育のおかげだった。
「お……おはようございます」
すかさずハリーは手紙を背中に隠した。
ダリアは眉をひそめた。
「……何か持ってるの?」
「いや、ぜんぜん」
「いま背中に隠したじゃない」
ダリアは、自分につかれる嘘が何よりも嫌いだった。
「見せなさい。あたしの物だったら承知しない」
「違う。僕のだよ」
「だったらいいでしょ? 取り上げたりしないわ」
しぶしぶハリーは手紙を差し出した。彼女は両面を確かめると、あっさり手紙を返した。
「あなたに手紙を送る友だちがいるなんて、知らなかった」
「僕も心当たりがないよ」
「あら、そう」
ダリアはそれ以上何も尋ねてこなかった。ハリーは物置に引っ込もうとしたが、リビングのドアが乱暴に開かれた。
「小僧! ダリアに何をしとるんだ!」
このごろバーノンは、娘に
すぐに手紙は没収された。
「おじさん! 返してよ! 僕の手紙だってば!」
「おまえに手紙を書くやつなんぞおらん!」
飛びつくハリーの手が届かないように封筒を高く掲げ、バーノンはペチュニアのもとへ向かった。
ダイニングの椅子に座っていたペチュニアは、うるさそうに夫を見上げた。それから
「こんな――まさか!」
ペチュニアがただならぬ様子でいるのを見て、バーノンの顔色も少しずつ悪くなっていった。妻がここまで取り乱す理由など、たったひとつしか思い当たらなかった。
子どもたちを放ったらかしに、夫婦はリビングの隅でこそこそと喋りはじめた。
「――忌々しい――――イカれた一家の―――」
「――――リリーが――――――やっぱり――」
「ねえ。何? この手紙が何なの? パパ、ママ?」
自分抜きで話をしていることが我慢ならず、ダリアは声を上げた。
ペチュニアは娘を手で制すると、すぐに内緒話へと戻っていってしまった。こんな扱いをされたことは、めったになかった。
ダリアはペチュニアの肩ごしに覗き込もうとするが、背たけがあと少し足りない。
バーノンの分厚い背中をぽかぽかと叩いても、振り返る様子すらない。
「ねえ! この手紙のこと、なにか知ってるんでしょ!」
ダリアの矛先はハリーへと向かった。
もちろんハリーも何も知らないから、どうしようもなかった。ダリアは地団駄を踏みそうないきおいだった。
「じゃあ読めばいいでしょ! あなたの手紙なんだから!」
「おじさんが返してくれるわけないよ!」
「そんなの知らない! 取り返してよ!」
ハリーは困り果てた。立ち向かったところで、バーノンに吹き飛ばされる未来しか想像できなかった。ためらっているうちにダリアがひとりで両親に詰め寄っていった。
「パパ! ハリーに手紙を読ませてあげてよ!」
「駄目に決まっとる! なんでおまえが小僧の味方をするんだ!」
「だって、おかしいでしょ! 勝手に隠すなんて!」
「こいつの手紙を取り上げてもダリアは困らんだろう! これは大人の話なんだから、おまえは知らなくていいんだ!」
ダリアは一瞬、言葉に詰まった。そしてバーノンをはげしく睨みつけた。
「だったら――あたしはパパの手紙を隠してやる!」
さすがのバーノンも顔色を変えた。
「無茶苦茶なことを言うんじゃない!」
「パパも無茶苦茶じゃない!」
「それとこれとは話が違う!」
「どう違うっての!?」
白熱する父娘けんかを前に、ハリーはぽかんと口を開けた。そして、同じ表情をしているペチュニアと目があった。最後に、バーノンの手から落ちそうになっている白い封筒を見つけた。
「僕の手紙だ!」
ハリーはぶくぶくに太った手から封筒をかすめ取ると、風のように物置へと飛び込んだ。
◇◇◇
「小僧! 早くその手紙をよこせ!」
「ぜったいに渡すもんか! 僕の手紙だ!」
「ダリアちゃん! おやめなさい! 怪我をしたらどうするの!」
物置の扉をはさんで、ダーズリー家の4人はめちゃくちゃになっていた。
ハリーは封筒をかかえ込んで丸くなってしまった。バーノンは彼を物置から引きずり出そうとしたが、ダリアが腕にしがみついて邪魔をするせいで、ますます手こずっていた。
ダリアはなぜ参戦しているのか自分でもよくわかっていなかった。けれども、もう引っ込みがつかなかった。
それでも、やせっぽちの少年と大人とでは力の差があった。
ハリーはついに物置の寝床から引きはがされてしまった。
「いやだ! 渡すもんか!」
「黙れ! これ以上はただでおかんぞ!」
バーノンはハリーを
ハリーはどこかに逃げ場はないかと見回した。
少し離れたところで見守っているダリアと目があった。もう、他の手段はひとつも思いつかなかった。
ハリーは封筒をつかんだ手をダリアに差し出した。
彼女は目をぱちぱちと
ダリアは封筒をひったくると、階段を駆け上がって2階へと消えていった。子ども部屋の扉が勢いよく閉じる音がして、それから、がちゃんと鍵のかかる音がした。
あまりにも予想外の出来事に、ダーズリー夫妻はしばらく固まっていた。
「ダリア! パパが悪かった。もう意地悪は言わないから出てきておくれ」
「ダリアちゃん、今日のお昼は大好きなチキン・キエフを作ってあげるわ。だから降りていらっしゃい?」
2人はダリアの部屋の前に立ち、必死になって娘の機嫌をとりつづけた。
バーノンは、ドアにとりつけられた鍵を忌々しそうに睨んだ。もともとは、彼がダリアのためを思って設置したものだった。
「バーノン。外から開ける方法はないの? 合鍵は作らなかったのかしら」
「……どこにしまったか忘れた」
「しっかりしてくださいな。元はといえばあなたが悪いんですよ」
「それよりも、あの手紙をどうするかだろう」
ドアはうんともすんとも言わなかった。無理やりこじ開けてしまえば、ますます娘の怒りを買ってしまうに違いない。けれども、このまま放っておくわけにもいかなかった。
「ダリアちゃんがそんなにお手紙を読みたかっただなんて、ママ知らなかったわ。もう怒ってないから、どうか出ておいで」
ペチュニアが猫なで声で語りかけると、はじめてドアの向こうでダリアが動く気配がした。
「ママ。間違えないで。この手紙はハリーのよ」
「……そうだったわね! お手紙はあの子のものよ。だからお部屋から出てきて、返してあげましょう?」
「嘘ばっかり。パパもママも取り上げようとしてた」
「そうじゃないぞ、ダリア。危ないもかどうかをパパが先に確かめようとしたんだ」
「危ない手紙ってなによ? 爆発でもするの?」
「いや、爆発はせんだろうが……」
「この手紙が来てからパパもママも嘘ばっかり。そんなに手紙が大事なの? ……今ここで開けちゃおうかしら」
「いかん、ダリア!」
すこしの間、ドアの向こうが静かになった。
「……じゃあパパ、約束してよ。嘘も隠し事も一切なし。手紙はハリーに読ませてあげるって」
「……約束する」
不機嫌なお姫様がそう言ってしまえば、家来たちは従うほかなかった。
「決まりね。ハリーを連れてきてよ。近くにいるんでしょ」
「小僧は散歩に行っとる」
ハリーは物置に閉じ込められていた。
「だったら帰ってきたらでいいわ。それまであたしはここで待ってるから」
すぐさまハリーは
◇◇◇
「ハリー。この手紙はあなたのものよ」
本当にこの少女はあのダリアなのだろうか。ハリーは思った。昨日の晩にそっくりの別人と入れ替わったと言われたほうが、まだ信じられた。
「あ、ありがとう」
「開けないの?」
ダリアは封筒の中身にも興味があるようだった。ハリーは封蝋に爪を立て、なんとか剥がそうとした。
ダイニングにはダーズリー夫妻も同席していたが、2人とも黙りこくって封筒を見つめていた。バーノンはこの世の終わりのような顔をしていた。
「下手ね」
「開けたことないんだ、手紙なんて」
「貸して」
たちまちダリアは封をあけ、中身をハリーに差し出した。ハリーが手紙を読んでいるあいだ、彼女はしげしげと封蝋の紋章を観察していた。
「……わからない」
手紙を何度も読み直していたハリーが、ようやく言葉を口にした。
ダリアは封蝋をできるだけ細かくばらばらにするのに熱中していたが、顔を上げた。
「ハリー、文字は読めるのよね?」
「読めるよ。でも、意味がわからないんだ」
「どういうこと?」
ダリアは手紙を覗きたそうにうずうずしていた。
「見てみる?」
「小僧。それだけは絶対に許さんぞ」
すぐさまバーノンが唸った。しかし、すぐに遮られた。
「……パパ」
ダリアだった。底冷えするような声だった。
「この手紙はハリーのもの。つまり、ハリーが許すならあたしも読んでいい。違う?」
「ダリア。どんな理屈でも、だめなものはだめだ」
「……じゃあ、今からハリーと2階に行って、ふたりで隠れて読もうかしら」
バーノンは顔を真っ青にして黙ってしまった。どこでそんな脅し文句を覚えたのかさえ、尋ねる勇気が出なかった。
「読んでもいい?」
「いいよ」
ハリーの承諾を得てから、ダリアは手紙に目を通しはじめた。読み進めていくうちに、表情はころころと変わっていった。そして険しい顔になった。
「……いたずら?」
「僕もそう思った」
2人は目を見合わせた。
「魔法学校とか、フクロウ便とか、まるで子供向けのおとぎ話じゃない」
ダリアは手紙をハリーに突き返すと、ため息をついて立ち上がった。
「あなた、お友だちは選んだほうがいいわよ。こんなくだらない事をしない、ふつうの人をね」
ダリアは自分の部屋に戻ろうとして――両親の姿が目に入った。
どちらも、心の底から安心した表情だった。
彼女の中で、何かがつながった。
◇◇◇
「知ってたんでしょ、この事。パパもママも」
縮こまっているダーズリー夫妻の前で、ダリアは仁王立ちしていた。
「この手紙は一体なに? あたしに何を隠してるの?」
「……くだらないイタズラの手紙だ」
「また嘘。いい加減にしてよ」
バーノンの苦しい言い訳を、ダリアはぴしゃりと切り捨てた。
「嘘も隠し事もなしって約束したのに、全然教えてくれないじゃん」
ダリアの目元が赤くなりはじめた。
怒りなのか、悲しみなのか、もっと他のものなのか、ダリア自身でもよく分かっていないようだった。
「……ねえ、ダリア」
ダーズリー夫妻はぎょっとした表情で、ずっと黙っていたハリーを見た。
「きっと何かの間違いなんだよ。だって僕、魔法なんて使えないし」
「でも、蛇と喋ってたじゃない」
「あれも何かの間違いだよ。……たぶん」
「間違ったら蛇と喋れるの?」
気休めになるどころか、かえってハリーまでよく分からなくなってしまった。
「なんでみんな、あたしに嘘つくのよ……」
ついにダリアの目から涙がこぼれた。
ペチュニアはとっくにハンカチを取り出していた。けれども、立ち尽くすことしかできなかった。
「バーノン」
ペチュニアは夫を見た。
「もう、隠し通すのは無理なんじゃないかしら」
「……!」
駄目だ、と跳ねつけるのは簡単だった。
今までだったら、そうやってバーノンは問題を先送りにできた。事実であっても、目をつぶってしまえばよかった。
しかし、とうとう現実が手紙となってやってきたのだ。
バーノンは妻を見た。芯の通った目だった。
次にダリアを見た。そして、ハリーのいる方を見た。
奥歯を噛みしめた。
「わしのいない所でやってくれ。もう知らん」
乱暴な足音を立ててバーノンは2階へと去っていった。
寝室のドアが閉じる音がした。
ペチュニアは、2人の子どもを呼びよせた。
「いいかい? よくお聞き――」
◇◇◇
「ずるい!」
ダリアはまっさきに叫んだ。
「あたしも魔法使いになりたい!」
ダリアの目は、どんなプレゼントを貰ったときよりも輝いていた。
「ねえ、ハリー! いつの間に入学を申し込んだの! どうやったのよ!」
「ち、違うよ……! 僕は何もしてない! 勝手に手紙が来たんだ!」
「そんなわけないじゃない! あたしだって、セント・ミルドレッドにご挨拶しに行ったのに!」
「ダリアちゃん、乱暴はいけません」
ペチュニアはできるだけ早く、娘の手をハリーの肩から引き剥がした。
「ママ。あたしもホグワーツに行きたい」
「だめですよ、ダリアちゃん。セント・ミルドレッドに行くのが決まったでしょう?」
「そんなの知らない。あたし、行きたいなんて一度も言ってない」
「ダリアちゃん!」
「やだ! ホグワーツがいい!」
ハリーは夢中でホグワーツからの手紙を読み返していた。
9月から学校が始まることと、返事の期限以外は、ぜんぶデタラメにしか思えない内容だった。
「あの……ペチュニアおばさん」
「おだまり。絶対に入学なんてさせませんからね」
「じゃあハリーのかわりにあたしが行く! それならいいでしょ?」
「おい! 僕がもらった手紙だぞ!」
「ふん。でもママはハリーを入学させないみたいよ?」
「……ダリアちゃん」
ペチュニアは言いづらそうに切り出した。
「ダリアちゃんは、ホグワーツに入れないのよ」
「うん。でも、ハリーのかわりだったらいいんでしょ?」
「違いますよ。……いいこと、ダリア。魔法は、生まれつきです」
ダイニングは、しんと静かになってしまった。ダリアはきょとんと母を見つめている。
「生まれつき?」
「ええ。生まれつき魔法使いの人にだけ、お手紙が来るんですよ」
「じゃあ、ハリーはもともと魔法使いで、あたしは……」
ペチュニアは何も言わず、娘を抱きしめた。ダリアの気持ちは痛いほどにわかった。
「……やだ」
ダリアの声は震えていた。
「なんで、あたしじゃないの」
「……」
もっと強く抱きしめてやるしか、ペチュニアにはできなかった。
ハリーが身の置き場に困っていると、ダリアと目があった。彼女の視線はホグワーツからの手紙と、ハリーとの間を何度も行き来した。
ダリアの瞳は、底なしの羨望と、少しの憎しみに染まっていた。
【業務連絡】
リアル都合のため次までちょっと間が空きます
フレッド&ジョージのTSを漁りながら気長にお待ちください