【検証】ダドリーが女の子だった場合でも物語は成立するのか? 作:ウィーズリーの双子絶対TSさせろ委員会
「あたしも魔法使いになるの! ママがお願いしてよ!」
ペチュニアが何度言い聞かせても、自分が魔法使いになれないのを認めようとしなかった。ひとことで言えば、ダリアはすっかりムキになっていた。
「だって、ハリーに魔法が使えてあたしに使えないわけがないじゃない! あたしの分を送り忘れたとか、宛先を書き間違えたとかに決まってる」
ダリアはハリーをにらんだ。まだ目が赤いままだった。
「そろそろ怒りますよ、ダリア。もうホグワーツの話はおしまいです」
「勝手にママが決めないで!」
ダリアにとって両親は何でも与えてくれる人だった。そうでなくとも、気が済むまで方法を探してくれるのが当たり前だった。
「そのダンブルドアって人がいちばん偉いんでしょ? 聞いてみるまで分からないじゃない」
「いい加減におし。返事は書きませんし、誰も魔法学校なんかに行かせません。話はこれっきりです。分かったかしら」
「でもママ――」
「分かったかしら!」
ダリアは肩を跳ねさせると、もう何も言わなくなった。
ダイニングに放ったらかしになっている手紙を睨んでこぶしを握りしめた。こんなことなら、パパとママが嘘つきだった方がずっとよかった。
じっと手紙を見つめて黙っていたハリーにも、ペチュニアは声をかけた。
「あなたも、入学は断じて許しません。もうこの話は忘れなさい」
「――いやだ」
「忘れなさい。次はありませんよ」
「いやだ!」
ハリーの瞳は燃えていた。
ペチュニアは思わずたじろいだ。誰かの瞳を思い出した。それがますます、ペチュニアの気にさわった。
「お黙り! まったく、親が親なら子も子ね。まるで野良犬よ」
「黙れ!」
「黙れとはなんですか!」
9月にはダリアがセント・ミルドレッドの寮に入る。ハリーだけこの家に残されるのは、まっぴらごめんだった。
しかしハリーの原動力は、ただダーズリーの家から逃げたいという気持ちだけではなかった。この手紙を諦めたら、自分が何なのか永遠にわからなくなる。そんな予感があった。
ダリアはぽかんとした顔で様子を見守っていた。
ペチュニアがここまで強くハリーを叱る姿をはじめて見たのだ。普段ならもっと冷たくあしらうか、さっさとバーノンに押し付けてしまうかだった。それに、ハリーがこんなに歯向かうとも思っていなかった。
ダリアはこれをチャンスだと思った。今のハリーに便乗すれば、ひょっとするとママに言うことを聞かせられるかもしれない。
「ママ、ハリーを――」
そこでダリアの言葉は止まってしまった。
手紙が来たのはハリーだけだった。それが頭をよぎった。
「言うことを聞けないなら物置に閉じ込めますよ!」
「やってみろ!」
「このっ……バーノン! バーノン! この子をなんとかしてちょうだい!」
寝室に引っ込んでいたバーノンは、とんでもない速度で階段を駆け下りてきた。
「小僧! きさま――妻と娘に何をした!」
「何を言っても聞かないのよ! 物置に閉じ込めてちょうだい!」
バーノンはハリーの胸ぐらをつかんだ。
「立場をわきまえたほうがいいぞ、小僧。この家で暮らすならな」
「僕をホグワーツに入学させて」
「なに? おまえ、まだそんな事を言ってるのか」
バーノンはせせら笑った。
ハリーを物置に閉じ込めるよりもずっと面白いことを見つけたという顔だった。
「ハリー。おまえの両親はイカれた奴らだった。おまえまで同じにならないよう、うちに居させてやると言ってるんだぞ?」
「父さんと母さんを悪く言うな。僕をホグワーツに行かせろ」
「そもそも、どうやって入学する気だ? うちは1ポンドも出してやらんぞ」
「関係ない。僕はホグワーツに行くんだ」
静かな声でハリーは言い切った。バーノン相手だというのに一歩も引こうとはしなかった。
毎日いじめられている少年とは思えない、強い芯のある目だった。
ひょろひょろに痩せていて、外で遊ぶような友達もいない。そんな男らしさの欠片もないハリーにまるで対等かのように張り合われて、バーノンはむしょうに腹がたった。
「小僧――」
「バーノン!」
バーノンは拳を振り上げた。ペチュニアが止めるひまもなかった。
おろおろと見守っていたダリアも、さすがに目をつぶった。
どすん。
重い物が落ちるような音がした。
ダリアはおそるおそる目を開けた。
「……え?」
ハリーは変わらずそこにいた。頭を手でかばいながら縮こまっていた。
バーノンはいつの間にか椅子に座っていた。ダイニングの反対側に置かれていたはずの椅子だった。拳は当たっていなかった。
まだ殴られないので、ハリーもゆっくりと目を開けた。そして目をまん丸にして座っているバーノンと目があった。ちょうど目線の高さが一緒だった。
ハリーは思わず笑いそうになってしまった。
「小僧! これは一体何のまねだ!」
バーノンが立ち上がろうとすると、椅子がひとりでに動いて膝の裏を叩いた。膝の支えを失ったバーノンは、ふたたび椅子へと座り込んだ。どすんという音がまぬけに響いた。
なんどもバーノンは立ち上がろうとしたが、そのたびに椅子がついてきた。少しずつバーノンはその場から移動していった。
「これは――なんだ、これは――おい、ペチュニア! なんとかしてくれ!」
「なんとかって、どうすればいいのよ!」
ペチュニアが椅子を引っ張ろうとしたが、びくともしない。かえって引きずられそうになる有様だった。
「頼む! だれかこの椅子を……なんでもいいから助けてくれ!」
ダリアは最初のうちは怯えていた。目の前で起きている出来事は、あまりにも自分の常識からはずれていた。
けれども、椅子ごと廊下の方へ消えていく父親の姿を見ているうちに、無性におかしくなってきた。
「ふふふ。――あっははははははは!」
ダリアは腹を抱えて笑いはじめた。
ひとしきり笑うと、ハリーのところに行って肩を掴んだ。
「ねえハリー! あなた、本当に魔法使いだったのね!」
まぶしい笑顔にハリーは思わずどきりとした。
憧れや尊敬だけのまなざしではないことに、彼は気づけなかった。
◇◇◇
けっきょく、ダリアはハリーの味方についた。
「ハリーのと一緒にあたしの手紙もホグワーツに送ってよ。それだけでいいから」
かんかんに怒っていたバーノンだが、ペチュニアから何かを耳打ちされると、もう止める気を失ったようだった。
「好きにしなさい。どうせ――いや、何でもない。手紙を出すだけだぞ!」
もちろんバーノンには分かっていた。ダリアが『それだけでいい』とお願いして、本当にそれだけで済んだためしはない。しかし、何もかも禁止してしまう方が、よっぽど今後に響きそうだった。
そのぶんバーノンの矛先はハリーへと向いた。
その日の夜遅く。ダリアが寝たのを確認したバーノンは、ハリーを物置から引きずり出した。
「入学はさせん。断りの手紙をペチュニアに書かせる。おまえはそれにサインをするだけだ。いいな」
夜の静かなリビングで、ハリーは壁際に追い詰められていた。ペチュニアも厳しい顔でその場にいた。時計が秒を刻む音がよく聞こえる。
しかしどれだけ脅されようと、ハリーの気持ちは変わらなかった。
「いやだ」
「言葉だけではわからないようだな、小僧」
「殴ったって、僕はあきらめない」
バーノンはすぐに拳を握り、振り上げようとした。ペチュニアが喉の奥で小さく悲鳴を上げた。
しかしバーノンは動けなかった。つい、ダイニングの端にある椅子を目でうかがってしまった。もちろん椅子がひとりでに動くはずがない。そんなこと、バーノンは当たり前に分かっていた。分かっていてもだった。
しばらく迷っている様子だったが、バーノンは何もせずに拳をおろしてしまった。
「……ふん。こんな気味の悪い小僧、もううちには置かん。イカれた学校でもどこでも行くがいい。ダリアも寮に入るから厄介払いにはいい機会だ」
「いいの!?」
「ただし、だ。小僧。入学の準備は一切手伝わん。金も1ポンドたりとも出さんぞ」
バーノンはにやりと笑った。
「それで入学ができなくとも、9月にはおまえを追い出すからな。そうなったらイカれた連中に引き取ってもらうがいい。お似合いだ」
せいせいしたという表情で、バーノンは立ち去ろうとした。
「……バーノン」
しかし、ペチュニアがそれを止めた。
「この子は、追い出しません」
「なに?」
「この子はうちの子よ。いつでも帰ってきていいようにしてあげましょう」
「……どうしたんだペチュニア。おまえもあれだけ嫌ってたじゃないか。情でも湧いたのか」
「いいえ。……理由があるの。バーノン、わかってちょうだい」
ペチュニアは目を伏せた。
どうしてもバーノンには理解できなかった。
この小僧さえ追い出してしまえばダーズリー家は平和になるのだ。ダリアもきっと、まともじゃない事に首を突っ込まなくなる。わざわざ説明しなくてもペチュニアはわかるはずだ。
「……」
しかし、妻に頼み込まれてもなお突っぱねることは、バーノンにはできなかった。
それは男らしくなかった。
「だったら、そうしてやる。ただし一切手伝わんからな。入学できなければ9月からストーンウォール校だ。わかったな!」
バーノンはどすどすと2階へ引っ込んでいった。
ハリーは、信じられないという顔でペチュニアを見上げた。目があったが、すぐ気まずそうに逸らされてしまった。
「もう寝なさい。寝坊は許しませんよ」
「……はい。ペチュニアおばさん」
ハリーはホグワーツからの手紙を大切に抱えて、自分の物置に戻った。
◇◇◇
次の日、ハリーとダリアは揃って手紙を書いていた。
ハリーはうんうん悩みながら文章を書いたのに対し、ダリアはその半分ぐらいの時間でサラリと書き上げてしまった。
「ハリー。これ、一緒に入れなさい」
ようやくペンを置いたハリーに、ダリアが自分の手紙を差し出した。
「2枚も書いたの?」
「ええ」
ハリーはびっくりして少しだけ手紙を読んだ。
「なんだか……大人みたいな手紙だね」
「悪いかしら」
「いや、別に」
あわててハリーは手紙を読むのをやめた。
3枚をまとめると、ペチュニアからもらった封筒に入れようとした。そこでハリーは固まった。
「僕、宛先知らない」
「入学の手紙に書いてなかったの」
「それだ」
ハリーは急いで物置へと向かった。そして、すぐに戻ってきた。
「書いてないよ。ふくろう便で送ってくれって」
「ふくろう便?」
ダリアは怪訝な顔をした。速達の一種だろうか。
「聞いたことないわ」
「ふくろうに送ってもらうのかな?」
「バカね、ハリー。それを言うなら鳩よ」
そう言ってから、ダリアは考え直した。魔法使いならふくろうぐらい使えるのかもしれない。
ハリーが使い物にならないと判断したダリアは、すぐにソファでくつろいでいるペチュニアの方へ向かった。
「ママ。ホグワーツに手紙を送る方法、教えてよ」
知らなかったとしても調べさせるつもりだった。
「……知っています。ええ、知っていますとも」
ペチュニアはうらめしそうに封筒を見た。まるで長年にわたる因縁があるようだった。
が、そんなものダリアには知ったことではない。小さく首をかしげるだけで、すぐに気にするのをやめた。
「じゃあお願い。あたしの手紙、こっそり抜き取ったら怒るから」
「……ええ」
ペチュニアは疲れ果てたようなため息をつくと、しぶしぶ宛先を書いた。
手紙を出してからたったの2時間ほどで、ダーズリー家の郵便受けにホグワーツからの返事が飛び込んできた。
大きな鳥が羽ばたくようなバサバサという音がかすかに聞こえた。
「ま――まともじゃない」
バーノンは顔を青ざめさせ、ソファに沈み込んでしまった。できるだけ手紙を視界に入れないようにしていた。
ハリーがおずおずと手紙を開くと、ダリアもすぐ横に来て覗き込んだ。
ハリーはこっそりと従姉の様子をうかがった。癇癪を起こしたら、すぐ物置に逃げ込むつもりだった。
しかしダリアは少し目を細めただけで、特に何か言うわけではなかった。
「バーノンおじさん、ペチュニアおばさん。今日の4時に、ここにホグワーツの先生が来るみたいです」
「なに?」
バーノンは目を剥いた。
「お断りだ! 入学は許しても、うちにイカれた連中が来るのは許さん。別の場所にしろと書くんだ!」
そう言ってバーノンは壁時計を確認した。
3時59分だった。
「ペチュニア! ダリアを連れてマージの家に行くんだ。今すぐに!」
「やめてパパ。あたしも先生に会うの」
「おまえに何かあっちゃいかん! もう時間が……」
そこで、玄関の呼び鈴がなった。
ダリアがぱたぱたと玄関に向かう背中を、バーノンは絶望的な表情で見守った。
「ホグワーツのマクゴナガルです。手紙でお知らせした通り、ポッターさんの入学について説明にうかがいました」
ダーズリー家にやってきたのは初老の女性だった。背筋はぴしりと伸びており、眼鏡の奥には聡明な瞳がのぞいている。
この先生は厳しいに違いない。ハリーは直感した。
「あなたがポッターですね」
「はい。僕がハリー・ポッターです。……マクゴナガル先生」
「大きくなりましたね」
マクゴナガルは一瞬だけ優しくほほえむと、すぐに表情を引き締めた。それから、ダイニングで身を寄せ合っているバーノンとペチュニアに向き直った。
「ダーズリーご夫妻ですね。ホグワーツ魔法魔術学校から遣わされました、ミネルバ・マクゴナガルです」
「……うむ」
「急な訪問になってしまったこと、お詫び申し上げます。あまり時間はかけませんのでご容赦ください」
「ああ……わかった」
バーノンは素直にこたえた。
イカれた学校でイカれた連中を育成している教師なんて、非常識で傍若無人な輩に違いないと考えていた。しかしこの人物は、拒絶するにはあまりにも
「これからポッターさんに入学の手続きを説明しますが……こちらのテーブルを使っても?」
「う、うむ」
「感謝申し上げます。ご夫妻は同席されますか」
「……」
「……夫はあまり聞きたくないようですので、私だけでも構いませんか?」
「ええ。問題はありませんよ」
「……その」
おずおずとバーノンは切り出した。
「本当に、イカれた連中の仲間なのか? あなたは、何と言うか……普通すぎる」
「バーノン、妙なことを言うのはやめてちょうだい。……ごめんなさい先生。夫はあまり魔法が好きではなくて」
マクゴナガルは、ふむと小さく声を漏らした。
「こんな事でよければ」
そう言うと、マクゴナガルの輪郭が曖昧になった。たちまち姿は小さくなり、猫の形になってテーブルの上に飛び乗った。
目の周りに眼鏡のような模様がある、銀色のトラ猫だった。
猫はくるりと一周してたっぷり全身を見せつけると、テーブルから身軽に飛び降りた。着地する頃には、元のマクゴナガルの姿に戻っていた。
「……すっごぉい」
ダリアの目はキラキラに輝いていた。
「わ――わかった! 疑ったわしが悪かった。だからもう二度とやらんでくれ!」
バーノンは必死に頼み込んだ。
自分まで猫に変えられてしまうわけではなさそうだと気づくと、バーノンはさっさと別室に引っ込んでしまった。
驚きに息が止まっていたハリーは、ようやく呼吸のことを思い出してから口を開いた。
「あの、マクゴナガル先生。僕もホグワーツに行ったらこんな事ができるようになるんですか?」
「ホグワーツでは変身術も学びます。ただし、今のは簡単にできる魔法ではありませんよ。さあ、座ってください。順にお話ししましょう」
マクゴナガルはハリーをうながすと、席についた。
ペチュニアもおくれて座った。そしてダリアも、当たり前のように同席した。
「あなたがお手紙をくれたミス・ダーズリーですね」
「お初にお目にかかります。ダリア・マージョリー・ダーズリーと申します」
ダリアはいちど席を立ち、優雅に一礼した。
「本日は遠いところからありがとうございます。今日の説明には同席してもいいとお手紙にありましたので、ぜひ一緒に聞かせていただこうと思います。……気になる事があれば、私から質問してもいいですか?」
「もちろん構いません、ミス・ダーズリー。ただしミスター・ポッターへの説明が先です」
「……はい。もちろん」
ダリアの返事には、ほんの少しの間があった。
「えっと、ハリー・ポッターです。今日はよろしくお願いします。マクゴナガル先生」
ハリーは見よう見まねで立ち上がり、ぎこちなく挨拶をした。きれいなやり方なんて教わったことがないから、正しいのかどうか自信がなかった。
「知っていますよ、ミスター・ポッター。今日はあなたに会いに来たのですから」
マクゴナガルは2人の子どもを見比べてから、少しの間咎めるようにペチュニアの方を見た。
ペチュニアはあまり目を合わせたがらなかった。
「お手紙でいただいた質問から話しましょう。入学に必要な品物は、ダイアゴン横丁で買い揃えるのをお勧めします」
「ダイアゴン横丁?」
「魔法使いに必要なものが何でも売ってある場所ですよ。特に杖はオリバンダーの店のものにするのがいいでしょう」
「……でも僕、お金がなくて」
「お金のことを心配する必要はありませんよ、ミスター・ポッター」
マクゴナガルは一瞬だけ懐かしいものを見るような目をした。
「あなたのご両親はすばらしい魔法使いでしたから」
ハリーには言いたいことがわからなかったが、今は信じるほかなかった。いずれにせよ、ダーズリー家からは1ペニーも出ないのだ。
「ダイアゴン横丁への行き方がわからないでしょうから、後日迎えをよこします。準備や手配は
「……いえ、なにも」
「私から質問してもいいですか?」
すかさずダリアが口を開いた。
誰の目から見てもかわいらしい、完璧な笑顔だった。
「構いませんよ、ミス・ダーズリー」
「ダイアゴン横丁には誰でも行くことができるのでしょうか? たとえば、私とか」
「マグルであっても来ることはできますよ。ただし魔法使いの案内が必要ですが」
「すみません、マグルとは何でしょう?」
「失礼。魔法を使わない人のことを、私たちはマグルと呼ぶのです」
「……そうなんですね」
ダリアの笑顔は崩れなかった。
「でしたら、私もダイアゴン横丁に同行してよいでしょうか? なにせ
「その許可を求める相手は私ではありませんよ、ミス・ダーズリー」
マクゴナガルはハリーの方へ視線をやった。
「先生のおっしゃるとおりです。失礼いたしました」
ダリアは一旦引き下がったが、これで終わらせる気はまったくないようだった。
「もう一つ、うかがっても?」
「勿論です」
「その……お手紙のことなんですけれど。私に入学の案内が来なかったのは、魔法に向いてないからですか?」
はじめてダリアが笑顔を崩した。
少なくともハリーには、不安で自信を失っている表情にしか見えなかった。
「残念ですが、ホグワーツに入学できるのは魔法使いだけです」
「でも私、魔法を使うためならたくさん練習できます。勉強もたくさんします。今の学校では成績優秀者に選ばれたこともあるんですよ」
「ミス・ダーズリー。熱意と魔法の才能は、残念ながら同じものではありませんよ」
マクゴナガルは気の毒そうな目をした。
ダリアはもう口を挟まなかった。
これ以上質問が出てこないことを確認したマクゴナガルは、7月31日に迎えをよこすと告げて帰っていった。
すぐさまハリーはダリアに詰め寄られた。
「あたしをダイアゴン横丁とやらに連れていきなさい。当然、断らないわよね」
「うん……いいよ。どんな場所か僕も知らないけど」
「よろしい」
ダリアは満足そうに鼻息を吐いた。
「あの、ダリア」
ハリーはおずおずと口を開いた。
どうしても、尋ねずにはいられなかった。
「どうして僕によくしてくれるの? てっきりきみは僕を嫌ってるんだとばかり」
「そうね」
ダリアは人差し指を立ててあごに当てた。
「あたし、あなたのことを悪い人だと思ってたの。だってパパもママもあなたのことをいじめるもの。でも最近、そうじゃないって気づいたわ」
「あー……それは、どうも」
「そもそも、どう接したらいいのかも分からなかったし」
だからといって無視するのもどうなんだろう。ハリーは思ったが、言わないでおいた。
「つまり、これからは仲良くできるのかな」
「どうかしら」
ダリアはほほえんだ。
「あたし、あなたのこと嫌いになったもの」
目だけが笑っていなかった。