Angel Beats Children Dissolved   作:セリカ イツミ

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Angel Beats Children Dissolved 13

データ解析の終わる予定の日。

 ノックをしてゲストハウスの扉を開けると、すでに全員揃っていた。

 どうやら、俺が最後だったらしい。

「いらっしゃい。待ってたわよ」

 気分よく爽やな声を返してくれたのは、ステラだった。

 エプロンをして昼飯の準備をしていたんだろう。

 その隣には手伝いをしている衣織もいる。

「待たせたみたいで悪かったな。先に飯にしようぜ。腹が減った」

「調子のええ奴や。玲次は何もしてへんのに」

「今からやろうと思ってんだ。今日は何にするんだ?」

「もう出来てるよ。今日はデミグラスソースのオムライスね」

「やったー! マゴちゃん卵系すきー!」

「あたしも好きです!」

「じゃあ、先にご飯にしよっか」

 店にでも入ったような気分になる。

 ステラがシェフのような手際のよさでご飯に綺麗に卵を巻いて行き、衣織がソースをかけて盛り付ける。2人の息の合った身のこなしは、見ていて壮観だった。

 食事が終わると、いつものようにお茶とお菓子が用意された。

「じゃあデータの解析結果が出ましたので、あたしから説明しますね。」

 以前使用したタブレットをテーブル中央に置いて説明を始める。

「残念ですが今回解析したデータの中には、天使や神の存在に関するデータは見当たりませんでした。」

「じゃあ“立華 奏”は、いったい何者なんだ? 本人も天使じゃないって言ってたぞ?」

「立華さん自身のプロフィールはPC内に入ってましたが、普通の人のプロフィールと同じくらいで特に真新しい情報はありませんでした」

「結局消えることや、消えた後どうなるかも分からずじまいか?」

香住は、申し訳なさそうに首を縦にふる。

「大体、本当に人間が消えたりするのか? 見たこともないから、胡散臭く感じるんだが?」

「それは、私が保証するわ。」

ステラの固い声が返って来た。

「マジかよ……痛みとかあるのか? 生きている時は注射でも叫んでいたクチなんだが」

「痛みは……無いと思う。一瞬で、音も立てず、それこそ跡形も残らないわ」

「……それは、俺以外の全員が見た事有るのか?」

 無言で一度づつ頷いて返事をする。

「どうすりゃいいんだ? 何も新しい情報が無いんじゃ、今回はくたびれ儲けってヤツか?」

「そんな事はありません。まったく収穫がなかったわけではないです。こっちの戦線の資料の中に気になるドキュメントがありました」

 ディスプレイを2回タップをすると、文字で埋めつくされた内容の把握しづらい画面が表示された。

「このドキュメントは、かつて戦線にいた人の日記です。当時はまだギルドが存在せず、地下施設の施工作業をしていた時の日記のようです」

「ギルドって言うと、一昨日話してたアレか?」

「そうね。現在ギルドと呼ばれる地下の洞窟自体は元からあったらしいの。そこの奥に兵器開発の工場と研究施設を建造したのが今のギルド。この日記見てくれる?」

 タブレットをピンチアウトして文字を拡大する。

――今日はたくさん運んだから、お姉さんがほめてくれた。親方には、いつもおそいって怒られる。でもいいやつだから、ゆるしてやっている。

「こいつは……子供が書いたのか? これがどうしたんだ?」

「その項目の最後のところ見てください」

――迷子になって、すごくこわかった。親方がさがしに来てくれて、ブンなぐられた。とてもとても大きな穴がある、こわいところがあった。親方にいうと、落ちたら助けられないから、もう行くなって言われた。

「これがどうしたんだ? 元から穴があったんなら、そんな場所があってもおかしくないだろう?」

「もちろんです。でも戦線では今まで、危険なので封鎖して近づかないようにしていたエリアあるらしいんです。次に天使エリアから回収したデータを見てください」

 一度切り替えると違うデータが表示された。

「これは一度消去されたデータを復元したもので、作成者は不明です。ここでは時間が定義されてないので、本来あるはずのタイムスタンプもありませんでした」

――図書館にある本の中に、誰かが残したメモが挟んであった。

  第六十六番隧道。不可能。

  心当たりの無い二つの単語に私の胸は踊った。

  此処より帰る、何かの手がかりかも知れない。

  故郷に残した両親と兄弟を思ひ浮かべ、途端涙が流れた。

  国の為、皆の為に空へと向かひ、忠義の大道を果たした事に後悔はない。

  しかし、枕元に立つだけで構わない。父上母上を一目見たい。

  不忠の臣といはれても故郷に帰りたい。

  早速、辺りの者に隧道について尋ねたが、誰も知る物は居なかった。

  学び舎を離れた山中に不審な穴を見つけたが、降りる術を持たず断念する。

  後日、同志を率いて向かおうと思ふ。

「こいつは……?」

 日本語にしては古い言葉遣いの文章だ。しかし、なんとか解読できるところからすると、江戸時代とかそんな時代の人ではなさそうだ。おそらく大戦中……空というところから考えるなら、太平洋戦争か……? そんな大昔の人まで、ここに来ていたとは。死んでしまった今では、どこか他人事だとは思えない。

「当初この資料はギルドの事を指していて、さほど重要では無いと判断され誰かに消去されたんだと思います。ですが、この第66番隧道とは封鎖された場所の事を指している可能性は考えられます」

「その、“スイドウ”って何のことなの?」

 勉強熱心なステラでも、隧道の意味は知らなかったようだ。

「平たく言えば、トンネルってことだ。戦線は何故なにも調査しなかったんだ?」

「内部分裂の原因にもなるし、完全な死の原因となる天使を撃破を優先したまでよ。天使を倒した後であれば、調査なんていくらでもできるしね」

 後顧の憂いを絶つ事を優先しただけってことか。戦線全員を納得させるには十分な理由だろう。それに戦線が団結している理由は、一人では立ち向かえない天使の撃破だ。

「ところで、どうしてこの場所は封鎖されている?」

「知らんのやったら、教えたろ」

 聴き手に回っていた、衣織が会話に参加する。

「お前、知っているのか?」

「ちょい前に戦線の人に進入禁止の場所があるって聞いて、見つからんように潜入したことがあんねん。底の見えんくらいの深い穴やったわ。何かの間違いで落ちたら、きっと助からんくらいな。穴に沿って下に向かう通路もあるけれど、普通は一人で行きたいとは思わんわ」

 助からないという言葉が印象的だった。

 普通は、死んで終わりだ。

 地面に激突して死ぬ。あるいは、手前の崖にバウンドして死んでしまうケースもあるだろう。

 しかし、この場所だとそうはいかない。

 死なないという事は、誰にも助けられず穴の底で存在し続ける。

 常識を超えたこの場所ならば、永遠に落ち続ける可能性も十分あり得るだろう。食い物さえ食べられず。極限の状態で心の整理も叶うはずが無い。消える事も望めない。

 その、ギルドという施設も戦線という協力者がいる組織があったから建設できたのだろう。生き埋めになって救助出来る者がいるのと、いないのでは大違いだ。

 死なないとは言っても、無敵というわけにはいかないようだ。

「でも、そこに一体何があるっていうんだ?」

「わからないです。でも一度、調査する必要があると思います」

「じゃあ、どうする? 落ちてそのまま放置なんてやめてくれよ」

「せっかく、だから落ちてみたら? 楽しいかもよ?」

「ステラが一人で行くらしいぞ、俺は寝て待ってるわ」

「酷いわね。冗談よ」

「発信機を用意しました。ここから常時位置情報を確認できます。30kmまでは正確に分かります」

「地球の半径は6400kmくらいだったぞ? 全然足りないんだが?」

「心配しすぎやろ。どこやったらいけるの?」

「中止だな。他の場所にしよう」

「レイジ! カッコわるいぞ!」

「じゃあマゴちゃん、お前が行ってこい! 紐付けて落としてやらぁ!」

「ヒドイっ!」

「可哀想ですっ!」

「冗談だ……わかってるから。行けるところまでは行かせて貰うが、ヤバそうだったら引き返すからな。あと、最低もう1人ついて来て欲しい。」

「あたしがいくわ」

 手を挙げたのは衣織だった。

「ステラは夜、戦線のオペレーションに参加すんねん。ステラの代わりに一緒に行くわ」

「じゃあ決まりね。戦線の人とギルドに行くからついて来て」

「今日と明日の動きを整理します」

 香住がタブレットを操作すると、全員分スケジュールを入力できる画面が表示された。

「戦線での活動ですので、私は同行できません。ここで皆さんをサポートしますので頑張ってください。皆さんには以前の作戦で使用したイヤホンと今回はマイクもお渡しします」

「カイチュウデントウも持ってけヨっ!」

「皆さんは、この後1500にヘッドクオーターで集合して戦線の人達とギルドに向かって下さい。ギルドにて物資を補給し、ローウェルはオペレーションの為にこちらに戻ってきます」

「ステラは、引退したんじゃないのか?」

「陽動部隊からは外れたけど、オペレーションには組み込まれてるの。それに、あまり単独で動くと疑われるわ。今となっては陽動部隊にいたのも、こちらとしてはアリバイを作る為に都合がよかったわ」

「ライブ見た全員が証人ってか? 黒い女だな」

「演奏したかったし、楽しかったのは本当よ。うまく噛み合っただけ。それに戦線では、戦線に賛同しない人を見つけて、勧誘することも兼ねてるの。戦線は叛乱を防げるし、私たちは協力者が増える。誰も損しないわ」

「よくやるよ……。悪いな香住。続けてくれ」

「はい。衣織さんと玲次さんは、ギルドに残って隧道に向かってください」

「一つ提案があんねんけど、あそこに行くには朝方日が昇ってからの方がいいと思う」

「そうね。そのほうが少しは楽になるかもしれないわね」

「なにか不都合でもあるのか?」

「あんな場所うまいこと説明できんわ。目的地に着くまで楽しみにしとき。場所はあたしが案内したるから安心しい」

「分かりました。ではギルドで一泊して朝方二人で目的地に向かって内部を調査してください。以上が一通りの流れです」

「そういえば、衣織は一般人扱いだろ? 同行して怪しまれないのか?」

「ゆりと日向には話しておくわ。他の人には体験入隊ってことにして貰いましょう。ついでに宿泊場所の手配も済ませておくから」

「抜かりなさそうだな。じゃあ行ってくるか!」

「では、みなさんにマイクとイヤホンをお渡しします。マイクは以前と違って、周波数の調整も済んで安全に通信できます。用意が済み次第1500にヘッドクオーターにむかってください。それでは最後にマゴちゃんから号令お願いします」

「カイ!サンっ!!」

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