辺境貴族の俺と婚約した黒幕公爵家の令嬢が可愛すぎた件   作:平成オワリ

14 / 14
最高のご褒美

「ルーンちゃんに口止めされてて……」

「俺は二人きりのデートだと思って、楽しみにしてたのに……」

「あ、う。実は私も、二人きりの方が……」

「ちょっと⁉ 二人して私を邪魔者扱いするのはさすがに酷くない⁉」

 

 会ったのはこの間の学園以来だが、やはりツッコミのキレがいい。

 

 本来の立場であれば、こんな風に弄るのは良くない。

 

 だがいちおう俺も辺境伯家の一員になるため、ギリギリ許されるだろう。

 

 ――あと、ルーン様は性格が良いからな。

 

 エクリア様が気を許した友人だし、ちょっとくらいの粗相は許してくれると思う。

 

「というか、なにを聞きたいんですか? 別に隠すようなことはないんですけど」

 

 王宮の出来事のことだろうか?

 

 ルーン様相手に隠すような情報はないはずだが。

 

 そもそも、緘口令が敷かれているわけでもないしな。

 

「全部」

「……え?」

「一から十まで全部」

 

 言葉は短いのに、圧が凄い。

 

 美人の笑顔というのもまた、プレッシャーをかける要因になっている。

 

「……淑女たるもの、もう少しお淑やかに。お節介も推奨しませんよ」

「シャイン家の家訓を教えてあげる。情報を制するものがお金を制す、よ。つまりなんでも気になったことは深掘りしなさいってこと!」

 

 それっぽく諭してみたが、こうも自信満々に言われては、言い返せない。

 

 というかシャイン家の家訓、本当にそれでいいんですか?

 

「まあ、あまり面白い話はできないと思いますけど……」

「いいのいいの。裏取りするだけだから。エクリアに聞いても、アクセル様が格好良かったです! の一点張りでねぇ」

「ルーンちゃん! 私そんなこと言ってないよ!」

「え? 色んな言い方してたけど、結局そういう意味でしか捉えられなかったけど」

「うぅぅぅ……!」

 

 本当に、仲いいなぁ。

 

 とりあえず、辺境伯と戦って認めて貰ったこと。

 

 そして正式にエクリア様の婚約者になったことを、少しだけ話を盛って説明し……。

 

「まさか本当にゼクト様に認められるなんてね! すごいじゃない!」

「どうもです」

 

 どうやら俺の話は満足してくれたらしい。

 

 俺も良かった良かったと内心でホッと、していると――。

 

「よし! そんなアンタにご褒美をあげるわ」

「ご褒美?」

 

 なんだろう。大鉱山を持ってるシャイン家のご令嬢だから、宝石の一つでもくれたりとか?

 

「私の友人にしてあげる!」

「……わーい」

「心がこもってないわね……」

「そんなことありませんよ?」

 

 ただ期待とちょっと違っただけだ。

 

「この恩恵がどれくらい凄いか、教えてあげるわ」

 

 ふふん、と自信ありげに笑いながら、指を立てる。

 

「まず一つ、私のことはルーンと呼び捨てにしていいってこと。もちろんパーティーとかでもね」

「む……それは」

 

 パーティーでも、か。

 それはたしかに凄い。

 

 彼女の提案は個人間ではなく、家と家で強固な繋がりがある証明にしよう、というもの。

 

 大々的にシャイン家のご令嬢と友人であることを宣伝できるのは、他の貴族と繋がりのない俺からすれば、ありがた過ぎる話だった。

 

「そして二つ目。こっちはもっと凄いわよ」

「……も、もっと?」

 

 しかもまだ上のメリットがあるらしい。

 緊張し、喉が鳴る。

 

「エクリアのことも呼び捨てで呼ぶ権利をあげる! 女友達と対等に話してるのに、婚約者に敬語ってわけにはいかないでしょ?」

「ルーン! 君は最高の友人だ!」

「掌返しありがとう。それじゃあこれからは、対等の友人ってことでよろしく!」

 

 ガシッとルーンの手を握る

 

 空気読めすぎるぞこのお嬢!

 切っ掛けが掴めなくて困ってたんだ。

 

 こういうのは本当に大事だし、マジでありがたい!

 

 ちなみに権利云々はノリの話だ。

 

「……仲良くなってくれてよかった、でいいのかな?」

 

 当のエクリア本人はよくわかっていないようで、首を傾げている。

 

「エクリア、他人事だと思ってない?」

「え?」

「もちろん貴方も、様付けなしで呼ぶのよ」

「えぇっ⁉」

 

 そのことに気付いたからか、ビックリしたように背筋が伸びる。

 

「む、無理……」

「無理じゃないの。だってこのままだと、呼び方に差が出ちゃうじゃない」

「だけど……」

 

 チラチラこちらを見て、様子を窺ってくる。

 

 もちろん俺としては呼び捨てで構わないし、ルーンみたいに気軽に付き合ってくれる方が嬉しい。

 

 だけど、彼女が困るならまた話は別だ。

 

「エクリア様。無理しなくていいですよ」

「アクセル様……?」

「ちょっと、アンタまで敬語じゃ意味ないじゃない」

「ルーンもちょっと落ち着いてくれって。提案は嬉しいし、さっきは喜んだけど、エクリア様が困るのは本意じゃないんだ」

 

 実際、敬語に関しては追々で良いと思う。

 元々の気質というか、性格もあるからな。

 

「実はテンション高くしてたけど、ルーンに対してもちょっと無理してたりする」

「む……」

「つい最近まで子爵家の三男。しかも学園に通えなかったから他の貴族と交流もなかった男だぞ、俺は」

 

 強気な性格に反して、友人想いで優しいのは、これまでの会話でわかっていた。

 

 苦笑しながら説明すると、ルーンも納得してくれる。

 

「……たしかに、ちょっと性急すぎた――」

「あの!」

「どうしました?」

 

 ルーンの声を遮って、エクリア様が声を出す。

 

 どこか落ち着きのない様子。

 

 なんだろう? と思って彼女の言葉を待ってみると、ゆっくり口を開いた。

 

「……もしアクセル様が嫌じゃなかったら、敬語をなくして話して頂けた方が嬉しいです。私はまだ、難しいですけど……」

「えっと……」

 

 思わずルーンを見るが、付き合いの長い彼女も驚いた顔をして、わからないと首を振る。

 

「だめ、ですか?」

「……!」

 

 上目遣いで、ちょっと潤んだ瞳。

 緊張しているのがよくわかり、それが保護欲をそそる。

 

「駄目じゃないです」

「敬語敬語」

 

 ルーンはニヤニヤしてて、楽しそうだなぁ。

 

 友人の恋路を温かく見守ってる優しい人、とでも思っておこう。

 

「駄目じゃないよ、エクリア」

「良かった……」

 

 エクリアはホッとしたように、胸に手を当てて笑顔を見せてくれる。

 

 その後すぐ、また照れ照れと擬音が聞こえてきそうな感じで、視線をそわそわさせた。

 

 なんだこの可愛い生き物は……。

 

 この子が本当に俺の婚約者でいいのか?

 

 みんなで囲って、保護するべきなのでは?

 

 普段アホなことを考えてるとシュシュが突っ込んでくれるが、今日はツッコミ不在だ。

 

 ルーンがやってくれたらいいが、そこまでの信頼関係は残念ながらまだない。

 

 このまま脱線してしまいそうになっていると、扉がノックされる。

 

 どうやら料理が到着したらしい。

 

「料理も来たことだし、食べましょうか。エクリア、アクセル。二人はもっと、お互いのこと知らないと駄目だからね」

「じゃあ学園でのエクリアについて、色々話してくれよ」

「いいわよ。エクリアが恥ずかしがって、話さなそうなことまで全部話してあげる!」

「ルーンちゃん、怒るよ?」

「ごめんて」

 

 友人とご飯を食べる、なんて今までほとんど経験したことがなかった。

 

 今までの俺では考えられないほど、楽しい食事に、つい笑みがこぼれてしまう。

 

「それじゃあ、二人の婚約を祝して――」

「「「乾杯」」」

 

 カツン、とグラスをぶつけて、食事を始める。

 

 今まで食べたどんな料理よりも、美味しかった。

 

「そういえば、アクセル様はお父様の王宮政務室に入られると聞きました」

「そうなんです! ずっと憧れてる場所だったので、今から楽しみで!」

 

 宰相が選んだ王国の最強エリート集団。

 楽しみで楽しみで仕方がなかった。

 

「へぇ……あの……」

「あの?」

「なんでもないわ。アンタに相応しいところだし、楽しんできなさい」

 

 意味深な言い方が、少し気になったが……悪い意味ではなさそうだ。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 そして翌日。

 

 王宮政務室に案内された俺は、めちゃくちゃテンションが上がることになる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

特任騎士のオレの仕事は、暴れる王女サマを見ていることです(作者:月待 紫雲)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

戦闘狂のエルゼ王女は今日も無双する。オレは見てれば良いという楽な仕事。▼王女が倒した魔物はオレが倒したことになり、オレの騎士としての評価が上がっていく。▼今朝もオレの魔物討伐のことが新聞に載っていた。▼そんな全然――戦ってないのに。▼……え? 剣の指南役? 王女様の? オレが??▼※カクヨム、小説家になろうにも投稿しております


総合評価:4176/評価:8.49/連載:46話/更新日時:2026年10月15日(木) 07:15 小説情報

精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる(作者:モナカパウマン)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

カードゲーム最高!▼全てがアニメみたいにカードゲームで回ればいいのに……そんな風に思って、日々を過ごし、気がついたらカードアニメみたいな世界に転生していた。だが問題があった。この世界においてSSRカードの証左である精霊たちが一切懐いてくれないのである。▼しかし構わない。▼俺は一人で成り上がってみせる。▼元よりカードゲームに精霊なんて、無粋なのだ。


総合評価:5302/評価:7.69/連載:16話/更新日時:2026年10月15日(木) 21:00 小説情報

自分を傲慢悪役貴族だと思い込んでいる一般平民、努力してない天才を演じるため死ぬほど努力する(作者:ちんこ良い肉)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

 ウルスラグナ=ウースウーラは、名門貴族ウースウーラ家の血を引く、傲慢にして怠惰な天才――を自称している。▼ 努力するなど絶対にしない。魔術も剣術も「この程度できて当然」と圧倒的な実力を見せつけ、学園総合序列一位の実力をこれでもかと見せつける。そのあまりに傲慢な振る舞いから、周囲には「才能だけで頂点に立った嫌な貴族」として嫌われていた。▼ だが、その実態はま…


総合評価:8883/評価:8.74/連載:13話/更新日時:2026年10月06日(火) 20:54 小説情報

転生先のゲーム世界でアバズレヒロインが清楚堕ちしてる件(作者:図画工作で使うトイレットペーパーの芯)(オリジナル:ファンタジー/コメディ)

※なお、主人公は最早あり得ない寝取られルートにずっと怯えている模様。


総合評価:11589/評価:8.79/連載:16話/更新日時:2026年10月09日(金) 11:15 小説情報

おせいそうすほそ系TSヒーラーは、生きているだけで偉いと思う(作者:うすひら)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

TS転生者のクリスはおせいそうすほそヒーラーだ。▼冒険者としての実力は確かで、他にも色々と特技を持っている。▼しかし本人は冒険者らしいことをほとんどせず、ギルドでだらけたり教師をしたり、運び込まれた急患を治癒したりして過ごしていた。▼全ては彼女の信条が「生きているだけで偉い」の一言に尽きるがために。▼そんな彼女に性癖を破壊されたり、実力に惹かれるものは数しれ…


総合評価:10840/評価:8.78/連載:11話/更新日時:2026年09月26日(土) 18:15 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>