恭介と音也   作:ラーキキ

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長くなってしまいましたが、終わらせることができました。ここまで読んでくださった方本当に感謝御礼申し上げます。音也のキャラが難しいですハイ。


コネクト

 音也の声により屋上出入り口に身を隠していたものが姿を現す。

 そこには青髪の少女さやかの姿であった。

 

「さ、さやか?!なんでここに?」

「そ、それは...恭介のことが心配でついてきたの!」

 

 顔を少し赤くしながら答えるさやか。

 

「そんなわざわざついてこなくてもよかったのに」

「あんな変な人に連れていかれて心配しないわけないでしょ!あんなにやつれていたのになんか妙にテンションが高い不審者のせいで恭介が大変な目に合ってないか心配したんだから!!!」

「気遣いはとても嬉しいんだけど、音也さんのことを悪く言うのはさすがのさやかでも見過ごせないよ。この人は後ろ向きな僕を変えてくれた人だからあんまり言うと怒るよ」

「なッ...!恭介いつの間にこの人とそんな仲良くなったのよ!」

「やめろ、俺のために争うんじゃない。おい青髪もう少し成長したら付き合ってやるからまずは落ち着け」

「音也さんが入ると事態が悪化するんでひとまず僕に任せてください」

 

 少し辛辣な物言いの恭介だが、それは音也のナンパ癖を見抜いてのことである。この二人(音也とさやか)が会話すると絶対によくない方向に行くだろうという謎の直感を信じ、とりあえずさやかを何とかなだめるのであった。

 

「落ち着いた?」

「まぁ、若干納得はいってないけど」

「さやかは人を決めつける節があるから気を付けたほうがいいよ」

「恭介のくせにちょっと生意気だな~」

「おっと、惚気はそこまでだ。これ以上は他所でやるんだな」

「別に惚気というわけでは...」

 

 また話がそれていく気がした恭介はさっさと聞きたいことを言ってしまうことにした。

 

「そうだ、いつからさやかはここにいたの?」

「ええーっと、あの不審者がバイオリンを弾いてる時くらいかな、会話の内容はよく聞こえなかったけど」

「さやか...不審者じゃなくて音也さんね...」

 恭介が少し呆れたように言う。

「ほう、てことはお前もこの音也様の貴重で偉大な生演奏を聴けたわけか。お前は相当なラッキーガールだ。こんな経験二度とできないからな相当運がいいぞ自信をもて。俺の演奏は一曲10億ドルはくだらないからな」

「なにが一曲10億ドルよ、恭介の演奏のほうがよっっっっっぽど価値があるんだから!!」

 

 またしてもよくない雰囲気が漂い始め頭を抱える恭介。さやかと音也ってもしかして滅茶苦茶相性悪いのではと考え始めたが今こんなこと考えたことで事態が解決するわけないためなんとかこの場を諫める為の案を考える。自分を音也ほど口達者ではないため言葉が思い浮かばない。というかどんだけ言葉を投げかけても絶対に音也によって変な方向に向かうことが予想できるためさらに頭を抱える。

 

(一体どうすれば良いんだこの状況...というかこれ何割か音也さんが悪いよね絶対)

 

 そうこうしている内に音也が口を開く。

 

「そう言われると、俺も気になってきたな恭介の演奏。一体どんな音色を奏でるのか気になって夜も寝れないくらいには気になってきたな」

 

 意外な言葉であった。予想外の言葉だったので思わず面食らってしまう

 

「えぇ...。弾けたとしても雑音みたいな音しか出せませんよ。片腕使えないんで弦を押さえられないし」

「いや、弾いてもらおう。雑音でもなんでもいい、お前の音楽が聴きたい」

 

 腕をケガしてから初めて言われた音楽を聴きたいという言葉。それは恭介にとってその言葉だけで涙が出そうなほど嬉しかった。こんな自分になってしまっても聞きたいと言ってくれる人がいることにまた救われたような気がした。今思えば、ずっとそばに聞きたいと言ってくれる人がいたのにそれを無視し続けてしまった。自分のことだけに夢中になりすぎていて気遣ってくれる周りを無視してしまっていた。恭介はようやく身近で支えてくれた存在に気付くことができたのかもしれない。

 

(そうか...さやか、君はずっと傍にいてくれたんだね.......。今まで気づくことができなくてごめん。こんな不甲斐ない僕を許してくれ)

 

 恭介の頬が一瞬煌めく。

 

「そこまで言うなら演奏しますよ。バイオリン貸してください」

「それはだめだ」

 

 まさかの返答である。あれだけ駄々をこねていた張本人が断るなんて誰が予測できただろうか。

 

「なんでですか!あなたが言い始めたんじゃないですか!」

「こいつはブラッディ・ローズと言ってな世界に一つしかない究極のバイオリンなんだ。それを簡単に他人に貸すわけないだろう」

「それじゃあ演奏できないんですけど」

「家からバイオリン持ってこれないのか」

「結構時間かかりますよ」

 

 このままでは埒があかないので恭介は腹を括った。

 

「お願いします!絶対に丁寧に扱うのでそのバイオリンで演奏させてください!」

 

 恭介は全力で頭を下げた。あまりの勢いに音也は面食らっていた、そしてさやかは音也をとてつもなく冷酷な目で睨んでいた。

 

「ここまでしてるんだから貸したらどうですか」

「仕方がない、そこまでするなら貸してやる。だがぜっっっったいに丁寧に扱えよ。壊したら弁償なんてもんじゃないからな」

 

 とてつもなく渋々といった形でバイオリンを差し出す音也。それを今までにないくらいに繊細に受け取る恭介。動作一つするたびに音也が気色の悪い声を出していたような気がするがもう気にしないことにした。

 気を取り直してバイオリンを構える。左手が使えないのであくまでバイオリンを支えるためのものとして役割を与える。

 

「それでは弾かせてもらいます。音也さん、そして......さやか」

 

 軽く深呼吸を息を整える。音也は見定めるように恭介に目線を向け、さやかは緊張で息を飲む。

 演奏が始まる。長い間バイオリンを弾けなかったためブランクが生じたのと弦を押さえることができないのも相まってノイズのような音が混じる。しかしそんなことお構いなしに演奏を続ける。今できる演奏を、今の気持ちを、後悔も、悲しみも、喜びも、うれしさも、今までの歩みを全部を音にのせて音色を作る。昔のように圧倒的な演奏はできない。音也さんのような生きてる音色を作ることはできない。さやかが聞きたがっていたような演奏もできない。それでも諦めず自分を信じて右手を動かす。不思議と今の音色に抵抗はなかった、不快感も感じない。特別にすごい演奏をしているわけじゃない。むしろ他の人が聞いたら耳をふさぎたくなるような演奏ではあるだろう。しかし恭介には不思議とこの演奏が心地よかった。

 

(あぁ、なんて演奏だ。今までよりも酷いものなのに安心感がある。まるでケガする前の当たり前だった日常が戻ってきたみたいな、そんな感じの安心感が僕を包んでいる。あぁ、今はただこの演奏があたたかい)

 

 今の恭介は笑顔に満ちていた。ただただ優しい柔和な笑顔が彼を満たしている。

 

「恭介、すごい満足そうな顔してる」

「これが恭介の演奏か、優しい音色をしているな」

 

 さやかは夢中で弾いている恭介に見惚れ、音也は演奏に評価をくだす。どのくらい時間がたったのか、ほんとはそんなに時間が経っていないのかもしれないが恭介の演奏はついに終わりを迎える。満足そうに弾き切りしばらく感傷に浸る恭介。そんな恭介に音也が話しかける。

 

「確かに酷い演奏だ。弦がギイギイいってたし音色も滅茶苦茶だ」

「恭介はブランクあるし腕もケガしてるんだから仕方ないでしょ。でも私はきれいな音色だったと思いますけどね」

「だが、心がこもっていた。お前の音楽を奏でたいという熱い気持ちがこもっていたな。そうだな、穏やかでありながら今までのすべてをぶつけるって気概を感じたぞ。お前の今までの歩みとこれからの決意、それがさっきの演奏にはのっていた」

「そうでしょ、恭介はすごいんだから!」

「なんでお前が誇らしそうにしているんだ」

 

 まるで自分事のように誇っているさやかを見て、自然と笑みがこぼれる。今までに無い達成感と充実感が満ち溢れあんなに思い悩んでいたことが嘘のように気分が舞い上がっている。

 

(そうか、これが本当の音楽なんだ。今の演奏こそが僕が弾きたかった音楽なんだ)

 

 恭介は音楽の本質を掴めたような気がし、本当の意味で音楽を理解したのだった。そしてまたさやかと音也が言い争っている様子を見て何度目か分からないため息が出る。これでは先程の余韻が台無しである。しかしそんな様子が微笑ましく恭介には見えた。着実にしっかりと一歩ずつ恭介の歩みは再開している。前のように失ったものにいつまでも手を伸ばしている彼はもういない。

 

「あのー、今度は音也さんが惚気てるんですか?そういうのは他所でやれってさっき言ってたじゃないですか」

「誰がこんなガキと惚気るというんだ。言っておくが俺はロリコンじゃないからな。俺は大人な女性がタイプなんだ、ガキに惚れるわけがないだろう」

「さっきからガキってうるさいですよ!少なくともあなたよりは大人な自信はありますよ」

「そんなことよりも恭介、お前さっきよりも結構良い顔になってきたじゃないか。その顔なら将来モテるぞ、あとは女性の扱い方を学べば完璧だ。どうだ、教えてやろうか?」

「ご遠慮します」

 

 その時、さやかを見てふと恭介の脳内に妙案が浮かぶ。

 

「そうだ、さやかちょっと手伝ってほしい事があるんだけど」

「なに?私にできることならなんでもするよ」

「ちょっとこっちに来て」

 

 恭介はさやかを呼び寄せる。そして後ろに立つように指示する。

 

「もうちょっと近づいて欲しいかな」

「えぇッ!!それはちょっと...いや...うん、わかった」

 

 さやかは動揺したが、恭介を待たせるわけにはいかないので早急に覚悟を決める。

 さやかが距離を詰めると目と鼻の先に恭介の背中がきた。想い人の背中が間近にくることでさやかは鼓動が早まるのを感じた。正直さやかにとっては気が気ではない状況であった。

 

「さやか、ちょっとネックのほうを持ってほしいな、バイオリン持つみたいな感じで」

「えぇっと、こここ、こんな感じ?」

 

 顔を紅潮させながらも恭介の指示に従う。常に想い人が超至近距離にいる状況にドキドキを何とか隠して平静を保ち周りにばれていないことを祈る。が、神は非情かすでにその祈りは砕けていたりする。

 

「.........ふw」

 

 さやかの様子を見てある程度を察した音也は鼻で笑ったのであった。

 

「そんな感じで大丈夫だよ」

 

 そんなさやかの心情なんてつゆ知らずさやかにバイオリンを持たせた。さしずめ左の腕だけ二人場織状態である。

 

「で、これからどうするの?」

「さやかに僕の腕の代わりになってもらおうかと思ってね。なんか不思議といける気しかしないし」

「ほう、これまた奇策を思いついたな」

「わ、私が、恭介の腕のか、代わり!?無理だよぉ」

「大丈夫だよ、さやかはぼくの指示通りに指を動かせば良いだけだよ」

「でもぉ...」

「大丈夫!僕を信じて!」

 

 なんだか若干音也っぽくなってきた恭介であるが、さやかに手取り足取り指示をだし弦を押さえさせる。弓を操作するのは恭介のためバイオリンとしての音を出すことはできたが音色は壊滅的だったのは言うまでもない。ちなみにこの時さやかは想い人の腕になっているという興奮と弦の操作で手一杯だったのと好きな人を近くで感じることができる充実感で意識が飛びかけていた。

 

「...念のため聞くが、青髪は本当にお前の彼女じゃないんだな?」

「...?そうですけど」

「はぁ、お前は音楽よりも女心を学んだほうが良いかもな」

「なんでそうなるんですか」

 

 音也は恭介のあまりの鈍感ぶりに本日初めてのため息がでた。あまりにも鈍すぎて引っぱたきなるほど頭を抱えた。

 

「もう満足だろう。さぁブラッディ・ローズを返せ」

「そうですね、貸してくれてありがとうございました。おかげで前に進むことができました」

「前に進んだのはお前の力だ、俺は何もしていない。感謝ならそこの青髪とお前自身にしとけ」

「いや音也さんが力を貸してくれなかったら危なかったです。ほんとに感謝してます」

「ならいつかまたお前の演奏聞かせろ、万全な状態でな。礼なんてそれでいい」

「はい!いつか絶対に音也さんをうならせる演奏を聴かせます」

「そうか、それは楽しみだ」

 

 恭介は自信満々に言い放つ。それに対し音也はいつもの余裕たっぷりな態度で返した。昨日あんなに負のオーラを漂わせていた人とは思えないほどの変わりよう。それを見て音也はもう大丈夫だろうと考えた。さやかもまた恭介が元気になって安心していた。

 

「その様子じゃもう安心だな。強いて言えば女性の扱い方くらいしか不安なところはないな。よかったら教えてやるぞ?」

「そこは本当にダイジョブですご遠慮願いたいです」

「失礼なやつだ。せっかくこの音也様が教えてやるというのに」

 

 そうして音也はバイオリンをケースにしまい、屋上出入り口へと足を運ぶ。

 

「もう行っちゃうんですか」

「ああ、もう用は済んだからな」

「じゃあ最後に、また演奏聞かせてくださいね!」

「お前がもう少し立派になったら考えてやる」

 

 出入り口付近で足が止まる。そして恭介のほうを向き

 

「じゃあな、上条恭介」

「はい!本当にありがとうございました。音也さん」

 

 こうして音也は病院を後にした。最初あったときはただのお調子者の変な人かと思っていたが話していくうちにすっごい自意識過剰な人ではあるが音楽をこよなく愛しているまさしく偉大な人だなと認識を改めた。彼がいなかったら自分は一体どうなっていたのかと恭介は考える。きっと立ち直ることができず腐ってしまっていただろう。これからはもう迷わない。ただひたすらに自分の道を歩き続けること、そしてそれを音楽にのせていくことを決意したのであった。そしてより一層音楽というものがすきになった。

 音也が去りさやかと二人きりになった恭介はさやかのほうへと体をまわし

 

「さやか、いつも支えてくれてありがとう。そして酷いこと言ってごめん」

「ちょっと、なに謝ってんのさ。私だって恭介の気持ち考えずに色々しちゃったから私のほうが謝らないとだよ。

ごめんね恭介」

 

 二人はお互いに今までの非礼を謝罪する。しかしどこか空気は軽い。そうして少し時間が経つと二人とも笑みがこぼれ始めた。

 

「ふふ、さやかまで思いつめる必要ないのに」

「恭介にお返しだよその言葉」

 

 暖かい時間が流れる。それはきっと彼が新しい道を歩みだした証なのかもしれない。ひとしきり話した後、彼らも出入り口へと歩き出す。

 

「ねぇ、恭介」

「なに?」

「せっかくだし、手、つないであげるよ」

「いいよ、自分で歩けるよ」

「...あの人の言う通り、恭介はもっと乙女心を学んだほうがいいよ」

「さやかまで何を言うんだ」

「とにかく、手、出して」

 

 そういうとさやかは強引に恭介と手を繋ぐ。

 そうして彼らは病室へと戻っていった。

 




完結!!初めての作品ですがなんとか書き切れてよかった。本当に唐突に思いついたことで意外にもバイオリンという共通点でいけるやんとなったためあとは勢いに任せました。書いている内に音也の魔女退治なんかも書きたくなってきたり。ちなみにこの音也は転生したのかドランの時の門をくぐったのかは皆様のご想像にお任せします。特にそういうのは考えていないので。
 改めまして、ここまで読んでくださり本当に感謝御礼を申し上げます。
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