蛇足書いてるわこいつセンスね~くらいの気持ちで読んでいただければと思います。
焦燥 • もう嫌だ
見滝原の街を一人重い足取りで歩く青い髪の少女。
名を美樹さやか。彼女は今、肉体的にも精神的にも限界を向かえていた。幼馴染みの恭介の腕を治したいという願いで魔法少女になったものの、魔法少女の現実や恭介と仁美の関係、そして先輩の魔法少女の話を聞かずに突っ走った結果その先輩を死なせてしまうという失態をしでかすといったことがあり、彼女は失意のそこにいた。
「体が...重い ...。それにすごいフラフラする...。」
上手く動かない体を無理矢理に動かす。
「おっと、転びかけちゃった。色々ありすぎて疲れが溜まってるんだな...。恭介のことも魔法少女のことも家に帰ってから考えよう.......」
足を引きずる。
ただ疲れが溜まっているだけだと言い聞かせて。
(私のせいでマミさんが死んじゃった...私の...せいで...)
鮮明に蘇るあの時の記憶。
憎たらしいあいつも必死に止めていたのに。
足手まといが嫌で何とか挽回しようとした結果がこれだ。
あの時の魔女は他の魔女とは違うって周りが言っていたのに。
何回も再生される。目の前で魔女に食べられる先輩の姿。
あの時、素直に言うことを聞いていれば。私がもっと強ければ、そんなタラレバが頭の中を反芻する。
(もう嫌だ、何が正義の魔法少女だ!人を守るどころか死なせてんじゃん...。)
そもそも魔法少女なったのが間違いだったのだと、彼女は反省する。そもそも恭介は腕の怪我なんてとっくに気にしていなかったのだ。あの人のおかげで立ち直ったではないか。あの日以降腕を見ながら"音也さんに負けないくらいの演奏をするんだー"って前向きに足を進めていたじゃないか。
なのに、"やっぱり恭介には万全な状態で演奏をしてほしい"という身勝手な理由で恭介の腕を勝手に治してしまった。確かにキュゥべえが色々となにか言ってきたこともあった。
"あんな状態でバイオリンを弾くことなんて出来ない。このままでは君が求めている演奏を弾くことは二度とないだろう"
とか
"確かに彼は今は怪我を気にしていない、しかしいつかは限界が来るだろう。その時、彼は音楽の道そのものを否定して生きていくことになるかもしれない。そうなればまた全てに鬱憤を溜めて生活することになり立ち直る前と同じかそれ以上に酷いことになるだろう"
みたいなことを沢山言っていたきがする。それでも恭介がそんなことになるわけないって信じてキュゥべえの誘いは無視した。信じた、信じたはずだった。しかし心のどこかで恭介の前のような演奏を望んでしまっていた。また前のようになるんじゃないかと不安になってしまった。また、少し不便そうに生活している恭介を見てやっぱり腕を治したいと思ってしまった。
そんな弱さに負けてキュゥべえと契約してしまった。今回の事態もそんな身勝手な自分への報いなんだ、とさやかは心中を後悔の念に染め上げる。
そこへ一人の男が近づく。マルチストライプ柄の半袖シャツと黒のタック入りのスラックスを着た、20代くらいのミディアムレイヤーヘアのバイオリンケースを持っている男。
さやかには見覚えがあった。あの日恭介と話していた変な人。ムカつく話し方ではあるがバイオリンは上手い不審者。恭介となにかあった人という認識であるが恭介を立ち直らせてくれた人でもある。
そうあの日恭介に多大なる影響を与えた男、紅音也である。
「お前は...いつぞやの青髪じゃないか。なにしてんだこんなところで。ナンパ待ちか?」
「はぁ...青髪じゃないです、美樹さやかです。はぁ...はぁ...、家に...帰ってる...途中なんで...気にしないでください...いつかの不審者さん」
疲れからか息が上がる。上手く喋れない。
「不審者じゃない紅音也という神聖な名があるのだ。これを機に覚えておけ。というかそんな状態で家に帰るのか、絶対やめておいた方が良いぞ」
「はぁ...ちょっと...今、疲れてるので...ほっといて...ください」
「いいか、お前が今行くべき場所は家じゃない病院だ。そんな姿で家に帰ってみろ親御さんひっくり返るなんてもんじゃないぞ。大人しく病院へ行け」
「今は...あなたの相手を...している...体力...ないんで...本当に...ほっといて...ください」
さやかは以前に音也と絡んだ際、異様に疲れたような記憶がありそのことから早く音也から解放されたかった。
「お前自分の姿をわかって言っているのか?ホントにヤバイぞ今のお前。悪いことは言わん、とっとと病院に行け」
「もう!ほんっとに...!ほっといて...!ください...!」
ただ自分をからかっているだけなのだろう、もしくは魔女との戦いでの傷を見て言っているだけなのか、さやかはそう判断し早々に会話を切り上げる。疲れも相まってイライラが押さえられずに怒鳴ってしまう。
さやかはこのままでは更に体力を無駄にするだけだと感じ鈍い体に鞭打って走る。
「おい!待て!そんな体で無理をするな!」
「うるさい!!」
体が重いとかフラフラするとかそういう不調を全部無視して走る。後ろから音也が迫ってきていたためまるでネズミのように人混みに紛れながら道をクネクネと敢えて道を曲がりながら走る。家からは少し遠くなってしまうが、後で休憩を取ればいいかと考えとにかく走る。
「くそ!あのガキ!せっかくこの音也様が心配してやったというのに」
見滝原の土地勘がまだないことや人混みに紛れてしまったせいで音也はあっという間にさやかを見失う。夕方になっていたことや繁華街だったために親子連れや定時で上がったのであろうサラリーマンなどで人がごった返している。その中で小柄な中学生の少女を見つけることは困難であった。
「これじゃあ見つけるのは無理だな。大人しく他の場所に移るとするか」
音也は少し焦っていた。普段子どもの心配なんて全くしない音也ではあるがさやかの容態は異常そのもの、なんであんな状態になるまで放っておいたのか親はなにしてんだ、と憤りを覚える程に彼女が大変な状態であることを感じた。
「あれは相当ヤバイな、恭介が見たら確実に泡吹いてぶっ倒れるぞ。たく、この時代の親はここまで子どもに関心がないものなのか?とにかく早いとこ見つけ出してとっとと病院に連れていかんとな」
普段は女性を見たら誰もが見逃す程の速度でナンパする彼だが今はそうもいってられない。ファンガイアだのなんだのに相対することが多かった彼だから普通にすることが出来たが、他の人が見たら確実にトラウマになっているだろうと予測できる出来るほどに彼女の状態は酷い。特に恭介が見たら...想像したくもないことが起きてしまうだろう。
土地勘は無いが足を止めることはない。とにかく街を走り回る。同時にあんなボロボロの状態でよくもまぁあんなに走れたものだと感心している音也であった。
どれくらい駆け回っただろうか。あれからかなり走っていたため流石に息が上がってきた音也。子どもの心配なんてするもんじゃないがさっすがにあれをほっとくのもなぁーという気持ちを抱えたままさやかを探していると、またしても見たことある顔を発見する。いつぞやか前に病院で色々と教えてやった灰色髪の少し端正な顔立ちをした片腕バイオリニストの上条恭介
であった。
「久しぶりだな、恭介」
「あなたは...音也さん!お久しぶりです!こんなところでお会いできるとは思いもしませんでしたよ!」
思ってもみなかった再開に感動する恭介であったが今の音也は悠長に話が出来る状況ではない。
「積もった話は色々あるだろうが今はそんなことも出来そうにない状況なんでな、じゃあな」
「そうなんですね...。そうだ!それ手伝わせてください。あの時の恩返しがしたいんです」
「いや、ガキはお家に帰って寝る時間だ。さっさと家に帰れ」
そう言った直後あることを思い出す音也。
「お前あの青髪とは仲良かったよな?どこにいるかわかるか?」
「さやかですか?奇遇ですね、僕もさやかに用があるんですけど連絡がつかなかったので探しているんです」
「そうかわかった、じゃあな」
「あ、待ってください!」
そう言って去っていこうとする音也を呼び止める恭介。
「なんだ」
「さやかに、なにかあったんですか」
眼光を鋭く研ぎ澄ませる恭介。
「あぁ、正直言ってかなりやばい」
いつもの享楽的な態度はなりを潜め少し重苦しく発する
「......ッ!」
「なんで生きてるのか不思議なくらいだ。なのにあいつは気づいていない。あいつもあいつで鈍すぎるだろ」
「なんだって!い、今さやかはどこにいるんですか!」
「落ち着け、だから俺も探しているんだろ。さっき会ったんだが逃げられてしまってな。俺の忠告を無視するとは、まったく可愛げのないやつだ」
「そんな...じゃあ、どうすれば......」
かなりのショックを受けている恭介。今まで自分を支えてきてくれた幼馴染みが今危険な状態でありしかも連絡もつかない行方もわからないとなれば、当然の反応ともいえる。
「そういえばアイツ家に帰るとか言ってたな。恭介アイツの家分かるか?」
「分かりますよ。案内します」
「いや案内はいい。場所さえ教えてくれれば後は俺に任せろ」
いつもの調子で宣言する音也だが恭介はそれ許さない。
「僕もついていきます。さやかはずっと僕を支えてくれた存在なんだ。そのさやかが危ない目にあっているのにそれを無視して見殺しにするようなことなんて出来ない!だから僕も行きます。たとえあなたがなにを言ってもね」
音也の目を真っ直ぐ見つめる恭介。恭介の目はいつもの優しいものではなく絶対にさやかを助けるという強い意思のこもった熱い目をしていた。
なにを言っても無駄だろうと判断した音也は、仕方なくつれていくことにした。
「はぁ、仕方がないな。だったら案内を頼むぞ。この音也様が珍しく折れてやったんだ感謝しろよ」
「ありがとうございます。さやかの家ならこの道を真っ直ぐ行けば着きます。先を急ぎましょう」
前会ったときよりも男らしさが格段に上がった恭介の姿に音也はどことなく嬉しさを覚えるのだった。
「前より随分男らしくなったな、そんなお前にここで一つ女性の扱い方を教えてやる」
「今そんなこと言ってる場合ですか!」
「まぁ聞け、女性の扱い方その一」
「手短にお願いしますよ」
こんな時になに言ってるんだと呆れる恭介であったが諦めて聞くことにした。
「相手がどんな姿になっても、受け止めろ、受け入れろ、そして...愛せ、それだけだ」
その言葉が妙に頭に反響して焼き付いていく感覚を覚えた。同時に嫌な予感が加速していくことを実感した恭介であった。
タイトルをキバとまどマギを融合した感じにしたかったけど難しいですね。2、3話で終われればなと考えています。結構強引な展開ですが暖かく見守ってくださると幸いです。