転生したら名家の四男だったんだが、姉貴はもしかしたらドアマットヒロインなのかもしれない 作:千里亭希遊
あの企画、オレは頭数合わせに急遽呼ばれたらしかった。
新人にとって良いアピールの機会ではある、ってことで。
はじめ、芸能人を中心として男女三人ずつが集められていた。
番組企画の主旨は離島での半サバイバル生活を一週間生配信するというもの。そして後に撮れ高をまとめたものがテレビで放送されるんだ。
しかし突然、女性ゲストが一人増えることになった。
それでオレにもお鉢が回ってきた次第。
当初は男女ペアの三組がそれぞれで活動する様子を中継するはずが、総勢八人となり色々と手狭になる。
よって配信ルームを海と山の4:4に分けた。
ロケ地をひとつ増やすなんてなかなかのヤケクソ采配だけど、太いスポンサーが複数いるおかげでできたことなんだろう。
そして多分、その増えた女性ゲストっていうのは、スポンサーのどこかがねじ込んだんだ。
プロモーションとして、顔合わせとグループ分けを兼ねた打ち合わせの様子が配信された。
▼男性ゲスト
・井上
・赤松
・
・
オレは当時まだスタントの仕事が主だった。
役者としては、通りすがりの名も無き外国人がせいぜいだった。
この閉鎖的な皇国において、無名の金髪碧眼で多少彫り深め──その上よく見れば虹彩異色症──というのは、オーディションに落ちやすいらしかった。
国内作品の登場人物はみんな黒髪黒目が暗黙の前提だもんな……。
でもこのロケで何かの好印象でも与えられたのか、今の名のついた役者の仕事を貰えたんだ。
▼女性ゲスト
・
・
・立花
・
まず目を引いたのは、半サバイバル企画で芸能デビューという異色な令嬢。
でも本人は『いかにもお姫様』な容姿と甘ったるい雰囲気で、イメージが合わなすぎる。頭が疑問符で埋め尽くされた。
でも、人を見かけで判断するべきじゃない。実は生活力高いのかもしれない。
グループ分けとロケ地はくじ引きで決まった。
▼離島
紫月海円、鷹咲馨介、iNORi、燈花
▼山村
井上高尚、赤松峻、三峯梓、立花凛花
そういやこの企画、カップルを生んだこともちらほらあると聞く。それを薄っすらウリにしてるトコすらある。
だからパートナーのいない男女を呼んで、ペアにする方向に行くんだろう。
でもオレの目的はひとつ。野外活動なんてワクワクな行事を、楽しめるだけ楽しむ。
今は恋愛だのより、仕事に打ち込みたいしな。
「今回、ロケ地が別れ配信ルームが二つになったため、これまでになかった要素を取り入れます」
ディレクターが鷹揚に言った。何故かどこか得意そうだ。
「配信プラットフォームのランキング集計方式に準拠して、両者でポイントを競ってもらいます」
その宣言で一同思案げに黙り込んだ。
「勝利したグループには、スポンサーの皆様方より──」
豪華な景品がこれでもかと挙げられた。
さすが太いスポンサーがいくつもついてるだけある。
それだけ人気を得てきた企画ってことなんだろうけど。
プロデューサーが鼻高くしてるのはこのせいか、なんて思ってたら。
「あの……えっと……じゃあ、負けたグループには、何もないんですか?」
おずおずとした様子の、可愛らしくもどこか毒のある声。
皆思わずそちらを見遣る。
立花凛花。
あの異色な令嬢が、肩を縮めながら、大きな瞳をぱちぱちと瞬かせている。
「うん? 負けたら当然、景品なしだよ。参加賞はナシ」
プロデューサーが少しの困惑を滲ませながらも、努めて優しげに言った。
「あっ、えっと……! すみ、すみません! こういう番組って、罰ゲームとか……あるんじゃないかって、怖くて……」
そう言ってきゅっと目を瞑り手を組んで、彼女はますます肩を縮めた。
こういう様子に庇護欲とかをそそられる人も一定数いるんだろうなと、ぼんやり眺める。
一瞬固まっていたプロデューサーは、もう一瞬で考え込んで、うんと大きく頷いた。
「あっはっは! いいねぇそれ! 罰ゲーム!」
ぱちり、ぱちり、とゆっくり拍手さえしている。
そして彼はふっと姿勢を正し、ニヤリと笑った。
「負けたチームには、放送日にスタジオでゲテモノを食べてもらいましょう」
全員がその場で固まった。
「えっ!? ええ!? そんなあ!」
立花凛花はいかにも衝撃を受けた様子で顔を覆った。
泣き出したように見える。
いや、全員泣きたいだろ。
……あんたが言わなければ罰ゲームなんてなかったよな?
これは、わざとか?
……いや、全員をよく知ってる訳じゃないが、このグループ分けに偏りはないように思う。
自分が負けるかもしれないのに、わざと罰ゲームがつくよう仕向けるなんて……ない、よな?
お嬢様が罰ゲームなんて、したい訳ないよな?
お嬢様。
まさか、金の力で勝ちを確信してる?
いや、親父たちはそんなヤラセ番組に出資なんてしないしオレを出さない。
我が家──
だから、立花凛花が天然愚か者なだけ。
……の、はず。
現場は、あんまりいい雰囲気にならないかもしれない。
オレは小さくため息をついた。