ある錬金術師の話   作:U-G

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幕間 発見された手記より

 __月__日

 

 

 ここに来てから初めての日記だ。忙しさに追われ息をつく暇も無いほどだったが、ようやくペンを握れる。だが書くべき事が多すぎてどの事を書いたらいいのかわからない。とにかく毎日が患者との戦いだ。大きな怪我、小さな怪我。そして治療を受けずに出て行く人たち。覚悟していたとはいえ、いざ目の前で拒絶されるとつらい物がある。

 協力してくれる人が増えたのはありがたいが、まだまだ人も物も足りない。薬が足りなかったせいで満足に助けられなかった人もいる。罵倒されるのがつらくないわけじゃないが、助けられなかったのはもっとつらい。そんな状況がここに来てからは毎日だ。

 患者は増え続け、物は減り続ける。エッジさんからの物資も頼れなくなってきてしまった。今は協力し理解してくれる人たちがいるのが唯一の救いだ。

 

 戦場はどんどん酷くなる一方のようだ。運ばれてくる患者も初めは屈強な若い男性ばかりだったのが、次第に年齢層が広がって老人や少年と言って差し支えない年代も運ばれてくるようになった。前線に近い所にいた人が言うには、国家錬金術師が動員されてからさらに激化したそうだ。まるで魔法みたいな、ウソのような手を使ってくるのだとか。

 何も無い所が爆発したり火の海になる。顔の肉を剥ぎ取っていく敵がいる。家や壁から武器が生え襲ってくる。撃っても死なない兵がいる。山のような壁を作り出し地形を変える。

 耳を疑いたくなるような話ばかりだ。どこまでが本当なのかはわからないが、患者が増えているのは事実だ。だが、撃っても死なないというのは少しだけ気になる。どういう原理かはわからないが、こっちは少ない薬をやりくりして必死に診療所の体裁を保って、なんとか死者を出さないようにしているというのに。どうやった結果の『死なない』なのか、興味はあるがそれ以上に恐ろしい。

 そういえば以前、中央(セントラル)の病院に錬金術で施術する腕のいい医者がいるという話を聞いた覚えがある。風の噂では国家錬金術師を目指し退職したらしいが、まさかそんなはずは無いだろう。仮にそうだとしても元医者がこんな戦場の最前線に出てくるものなのだろうか。

 何にせよまだまだ患者は増え続けていくだろう。国軍がどこまでやるつもりかはわからないが、私達がいることで少しでもイシュヴァールの人々の支えになれればと思う。叶うならこの内乱が最小の被害で終わってくれるのが一番だ。ウィンリィとの約束も守れるし言うこと無しだ。

 

 明日からはもっと忙しくなるに違いない。薬や麻酔をなんとか調達しなければ。包帯や止血帯も新しいのを作らないといけない。

 やる事が山積みだ。




感想、誤字の指摘等お待ちしております。

あと実写版『鋼の錬金術師』観に行きました。
活動報告にて、ネタバレだらけの感想を投稿したので興味がある方はどうぞお読みください。
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