「どうじゃ!?母上について何か分かったか!?」
俺が戻ってくると九重が詰め寄って聞いてきた。一部、真実を隠して説明するしかないな。
「ああ、犯人と八坂の現在の状況が分かった。とりあえず無事だ」
「そ、そうか……。それは良かった」
九重が安心したように息を吐いた。俺が帰ってくるまでずっと緊張していたのだろう。
「それで母上を攫った犯人は誰なのじゃ?」
「禍の団の英雄派だ」
「さっき母上は無事だと言ったが具体的にどんな扱いを受けているのじゃ?ご飯はちゃんと食べておるのか?」
「…………」
堂々としている予定だったが思わず目線を逸らしてしまった。さすがの俺でもこれは動揺してしまう。
多分、今までの人生の中で二番目に動揺している。一番目はもちろんルフェイと初めて夜の営みをした次の日だ。
「……何故、目線を逸らすのじゃ?まさか母上が無事というのは嘘で酷い目に合っておるのか?」
「いや、それはない。八坂は本当に元気だ」
むしろ元気過ぎるほどだ。拉致られて相手を誘惑するなんて、どんだけ肝が座っているんだって話だ。
それとも英雄派のノリが軽すぎてビビってないだけか?
「……本当はどうなのじゃ?」
九重が今度はルフェイに目線を向けて聞いた。
「……ええ、元気ですよ。有り得ないほどに」
ルフェイも俺と同じように目線を逸らす。
だろうな。この情報を九重に教えられる奴がいたら、それは幼女を苛めて楽しむ外道ぐらいだろう。
「……そこまで言うなら信じるのじゃ」
言葉とは裏腹に九重の目には疑いの色が見える。気持ちは分かるが、ここは信じてもらうしかない。
「それよりも母上は助けられるのか?」
「今日は無理だけどな。でも、修学旅行が終わるまでには助けてやる」
「何でだ?助けられるなら、すぐに助けるべきだ。それとも準備が必要なのか?」
イッセーが会話に割って入ってきた。九重と話しているのに邪魔するなよ。
「そういう訳じゃない。ただ特別な事情があるんだよ」
「どんな事情だよ?」
「大人の事情だ」
大人の事情って便利な言葉だよな。大抵のことはコレで誤魔化せる。
イッセーはこれ以上聞いても無駄だと分かったのか黙った。
「にしても毎回、霧識はそんな情報をどこから手に入れるんだ?」
今度はゼノヴィアが質問してきた。
「そんなに難しいことじゃない。英雄派内に俺に情報を流してくれる奴がいるだけだ」
ジャンヌのせいで本当に重要な情報以外は俺にただ漏れだ。
俺の言葉にゼノヴィアが感心したように返事する。
「なるほど。そんなところにも女がいたのか。本当、何人いるだろうな。気になるところだ」
「別にそういう訳じゃないぞ」
まぁ、性別は確かに女だけど。
でも男にも情報を流してくれる奴はいる。たまにフリードをパシリに使った時に色々と愚痴をこぼすからな。主にゲオルクのことだが。
他に質問もないみたいだし、俺は九重の頭を撫でながら宣言する。
「安心しろ。お前の母親は絶対に俺が助けてやるから」
「本当か?本当に母親を助けてくれるのだな?」
「ああ、約束する。俺は可愛い女の子との約束は破らないんだよ。命に代えても九重の母親は助ける」
俺が助けなくてもどうにかなりそうな気がするが、そこは気にしない。
「そうか。お主は怪しい奴じゃが、何故かその言葉は信じられるのじゃ」
九重がそう言って安心したように微笑んだ。
九重と分かれた俺達はホテルに戻ってきた。そして今は夕食を終えて、部屋の大きなベッドの上でルフェイに膝枕されながらクイズ番組を見ている。
今ごろアーシアはイッセーに夜這いしているだろうか。
「あ、そろそろ時間ですね」
テレビがCMに入ったところでルフェイがそう呟いた。
「ん?何か用事でもあるのか?」
「はい。実はゼノヴィアさんに呼ばれていて」
ゼノヴィアに?どういうことだ?
アーシアの夜這いを成功させるために一番厄介なゼノヴィアの行動パターンを調べたが、今は俺が見ている番組と同じものを部屋で見ているはずだ。毎週楽しみにしていたから間違いない。
番組の時間に合わせてアーシアの夜這い時間も決めた。
それにゼノヴィアがルフェイに用事と言うのも、よく分からない。普段からそんなに話す関係じゃないし。
まぁ、ルフェイがゼノヴィアを引き連れてくれるならアーシアの夜這いに支障は出ないけど。
「行ってくるのは良いけど早く戻ってこいよ」
「分かっています。霧識さんには罰ゲームをしないといけませんからね」
ルフェイが笑顔でそう言うと、俺にキスをしてから部屋を出た。
よく考えたら、今日のルフェイは上機嫌だし罰ゲーム関係なく俺は限界まで搾り取られるんじゃないだろうか。
夜は長いし覚悟しておかないとな。
それよりもルフェイがいなくなって暇だし何をしようか。
……ルフェイがいつ帰ってくるか分からない状態で何かしてすれ違うのも嫌だな。のんびりテレビでも見ておくか。
十分ぐらいテレビを見ているとコンコンと扉をノックする音が聞こえた。
ルフェイが帰ってきたのか?……いや、違うか。ルフェイなら扉をノックする理由がない。
俺はベッドから立ち上がって扉を開ける。
「え、え~と……こんばんわ」
そこにいたのは何故か緊張した様子のイリナだった。しかも髪を下ろしている。
「何か用か?」
「その……ちょっと話があって」
イリナが人差し指と人差し指を合わせながら上目遣いで言ってきた。
可愛いな。ルフェイとの約束がなかったら今すぐ押し倒していたところだ。
「じゃあ、上がっていけ。今はルフェイもいないし話ぐらい聞くぞ」
このまま追い返すのも失礼だし、部屋に上げるぐらいなら問題ないだろ。
部屋に入るとイリナは周りを見渡した。
「うわぁ、私達の部屋も豪華だけど、この部屋は更に豪華だね」
「そりゃ、スウィートルームだからな」
適当に会話しながらイリナをベッドに座らせて、俺はテレビを消す。それから近くにある椅子に座った。
「で、俺に話って何だ?まさか愛の告白でもしに来たのか?」
「あ、愛っ!?そういうわけじゃ!……いや、違うなくもないのかな?えーと……」
顔を赤くしてテンパるイリナ。
あれ?適当に言っただけなのに正解か?
まぁ、よく考えたらこのシチュエーションで一番可能性が高いのは告白か。
と言うか今日イリナの様子がおかしかったのは、これが理由か。
「とりあえずお茶を入れるから、それを飲んで落ち着け」
「だ、大丈夫!話だけしたら、すぐに帰るから!」
俺が立ち上がった瞬間、イリナにとめられた。本人がいらないと言う以上、お茶を入れても仕方ないので座る。
それからイリナは深呼吸して落ち着くと本題に入った。
「前に部室で二人っきりだった時に霧識くん、私に告白したじゃない?」
『可愛い』と言った記憶はあるが『付き合ってください』と言った記憶はないな。
まぁ、あそこまでしたら同じようものか。多分、イリナが逃げなかったから、もっと直接的なことを言っていただろうし。
「……それで今日はその返事をしようと思って来たの」
雰囲気的には返事というより告白にしか思えないんだが。
それとも時間を置いた後での返事ってのはこんな感じなのか?俺は経験がないから分からない。と言うか、告白をしたことがない。されたことは、かなりあるけど。
「で、その前に二つ聞きたいんだけど」
「俺に答えられる範囲なら何でも答える」
「じゃあ、一つ目。霧識くんって今、何人と付き合ってるの?」
難しい質問だな。いや、俺の答えは決まっている。
だが間違いなく周りの認識とは答えがずれているだろう。
まぁ、周りなんか気にせず俺の答えを言うか。
「ルフェイ、レイヴェル、小猫の三人だ」
「え、そうなの?黒歌さんと怜奈さんとも、そのエ……そういう行為しているんでしょ?それにオーフィスちゃんともよくデートしているし」
やっぱり周りから見たらそういう風に見えるのか。レイナーレに関しては自分から性奴隷だって公言しているのに。
「黒歌は体だけの関係、怜奈は俺の性奴隷だ。オーフィスは……まぁ、妹とか娘みたいな感じだな」
オーフィスに関する答えが難しいな。妹は花蓮だけだし、娘と言うのも何か違う気がする。
緊張しているのかイリナがまた顔を赤くしながら俯いたが、口ごもりながら何とか二つ目の質問を口にした。
「……え~と、じゃあ、二つ目。霧識くんって私のこと、好きなの?」
「好きだ。そうじゃなかったら、あんなことは言わない」
俺は即答する。
これに関しては嘘じゃない。興味のない相手には嘘でも口説いたりしない。
仮にイリナに興味がなかったら天使を堕とす計画は別の天使でやっていただろう。
「そ、そうなの……」
イリナが照れながら安心したような表情をする。そして意を決したかのように次の発言した。
「じゃあ、私とも付き合ってくれるかな?」
返事はまさかのOKだった。いや、今までのイリナの反応からして予想外ではないのだけど。
それでも時間を置いてからの返事は何となく断れるイメージがあった。
「俺は良いけど、イリナはそれで良いのか?イッセーのことが好きだったんだろ?」
「それは……そうなんだけど。でも、昔から一緒にいて安心できたのは霧識くんなんだよね。それに今は霧識くんのことが好きなの。……いや、もしかしたら昔からそうだったかも」
そう言えば前から『本当にイッセーのことが好きなのか?』って言うシーンがあったな。
て言うか、そんなことはどうでもいい。何かドキドキしてきたんだが。
いつもと違い髪をおろしているせいか色っぽく見えるし、何より完全に恋する乙女の表情をしている。破壊力は抜群だ。
マジでこのまま抱きたいどころだが、今は我慢しよう。
「OK。イリナも他の三人と同様に愛して幸せにすることを誓う」
「本当?」
「ああ。俺は可愛い女の子には嘘をつかない」
イリナは俺の言葉を聞くと幸せそうな表情になった。
「だが、付き合う前に条件……と言うかお願いがある」
「……お願い?」
「実は修学旅行中はルフェイしか見ない、とルフェイと約束していてな。だからデートしたりイチャイチャしたりするのは修学旅行が終わってからになる。それで良いか?」
さすがに修学旅行中からイリナとイチャイチャし始めたら、どれだけ怒られることか。考えただけでも恐ろしい。
「もしかして今日、私に構ってくれなかったのってそれが理由?」
「そうだ」
「良かった……。実はね、さっき霧識くんが私のことを好きだって言ってくれるまで不安だったんだよ。もしかしたら嫌われたんじゃないか、って」
本当に不安だったのかイリナが涙目になる。
ルフェイ達もそうだが何で俺のことをこんなに好きなってくれるのだろうか?自分で言うのも何だが俺は性格が悪いのに。
俺は気付いたら立ち上がってイリナの頭を撫でていた。
「じゃあ、付き合うのは修学旅行が終わってからね」
イリナが涙を拭うとそう言った。
「そうだな」
イリナまで増えると色々と大変なことになりそうだな。趣味はやめるつもりはないし。今まで以上に同時進行でいくか。
「そうだ。私も一つお願いがあるの?」
「何だ?」
俺が聞くと、急にイリナが恥ずかしそうに顔を赤めて俯いた。
「えーと……そのね、エッチなことはもうちょっと待ってほしいの」
「ん?どういうことだ?待って何かあるのか?」
俺の最初の目的はイリナを堕とすことだったから、このお願いを聞く理由はないのだが。でも、下手なことしてイリナを傷付けるのも嫌だし聞いておくか。
「実は今、ミカエル様にエッチなことをしても堕天しない方法を相談しているの」
ミカエルがノリノリになりそうな話題だな。て言うか、そんなことを考えることが堕ちる理由になりそうなんだが。
考えるということは行為のことを意識するということなのだから。まぁ、ミカエルには常識は通じないか。
それに天使がエッチなことをしても堕天しないという方法には興味がある。堕とすよりも、こっちの方が面白そうだ。
まぁ、方法が見付からなかったら堕とすけど。
「分かった。その方法が分かるまでエッチはなしだ。でも、デートぐらいなら問題ないだろ?」
「うん」
イリナが笑顔でそう返事した。
さて、デートプランはどうするか。また暇な時にでも考えておくか。
「そう言えば何で髪をおろしているんだ?」
「本で男は女性のいつもと違う姿に弱い、って書いてあったからな」
イリナが自分の髪を撫でながら言った。
確かにギャップで綺麗に見えるが、個人的にはいつもの可愛いイリナの方が好みだな。まぁ、たまにはこういうのも良いかもしれないが。
「あ、そろそろ私達のクラスが入浴の時間だ。そろそろ戻るね」
そう言うとイリナはベッドから立ち上がった。そして、そのまま俺の首に手を回す。
「へ?いきなり何をんっ!」
俺が台詞を言い終わる前にイリナが唇で俺の唇を塞いできた。つまり、俺は今イリナにキスされている。
そしてキスをやめるとイリナは頬を赤らめながらも笑顔で扉に方に移動する。
「じゃあ、待たね、ダーリン」
イリナはウインクしながらそう言うと部屋から出ていった。
何故にダーリン?
主人公は今までヤってから付き合ってたから、何気に告白から付き合うというのは初めてです。
本来はこれが普通なんですけどね。
ちなみにゼノヴィアがルフェイを呼び出したのは、主人公とイリナを二人っきりにするためです。
まぁ、他にも目的はあるけど、それは次回書きます。
後、物凄く今更な感じがしますがタグにハーレムを追加しました。
では感想待ってます。