今までと違って様子見とかはなし。初手で殺す。俺は認識できないようにした祓魔弾を父親の心臓に目掛けて発射する。
「っ!?」
また弾丸が逸れた。
馬鹿な!あの北欧の悪神ロキでも避けれなかった攻撃だぞ。
「ん?今、何したんだ?」
父親が俺の様子を見て不思議そうな表情をする。
俺の攻撃を認識できていないのか。何かしたことには気付いているようだが。
そういや『忍法運命崩し』は運がどうとか言っていたな。つまり相手の攻撃を認識していなくても能力を発揮するのか。本当に厄介だ。
遠距離攻撃は完全に封じられたことになるわけか。……いや、まだ手はある。
俺は認識できないようにしてレプリカ神器の一つ『
この神器は伸び縮みするだけのシンプルな槍。そしてシンプルが故にユーグリットが完璧に複製した神器だ。
ちなみに俺がこれを持っているのは好きなアニメの影響の槍の練習をしたかったからだ。
これなら離れた距離からでも攻撃できるはず。
「何か俺の攻略法でも思い付いたか?」
「お前程度の攻略法なんか……いくらでもある!」
台詞を言い終わると同時に槍を伸ばして父親の眼球を目掛けて攻撃する。
それを父親は軽く首を横にずらすことで避けた。槍が後ろの民家のブロック塀を貫く。
「……は?」
もうそれしか言葉が出なかった。
適当に動いて避けたのならまだ分かる。だが今の父親の動きは違った。認識できないはずの攻撃を予測して動いていた。
俺が構えているのだから攻撃するのは分かるだろうが、何でタイミングまで分かった?
「ふむ。見えないはずの攻撃を何で避けられたか、って顔をしているな。良いだろう。妹じゃないが特別に教えてやろう。それは妹愛だ。……まぁ、半分ほど嘘だが」
半分だけかよ。妹愛がどういう風に戦闘に影響するのかは謎だが、この父親なら本当に影響しそうだから怖い。
「俺は忍者だからな。観察力には自信があるんだよ。それでお前を観察して攻撃のタイミングを予想しただけだ。まぁ、念のために避けただけなんだが、今の攻撃は『忍法運命崩し』の影響を受けていないな。その距離からどうやって攻撃したんだ?」
ああ、なるほど。俺がいつもしていることをやられた訳か。屈辱的な話だ。
俺がイラついてらしくない行動をしたせいだな。とりあえず落ち着け、俺。そうじゃないと、この男には勝てない。
一旦、槍を元の長さに戻す。そして槍を認識できる状態にする。
「何だ、急に槍が現れたが」
「……急に、じゃない。この槍は最初からあった」
「ああ、なるほど。教会を裏切る前に噂で聞いたことがある。確か霧識の神器は認識を操るものだったな。それでさっきまで槍を認識できないようにしていたのか」
俺の神器の能力まで噂になっているのか。ちょっと目立ちすぎたか?
まぁ、バレたところで困るような能力じゃないから良いけど。
「でも、何でいきなり槍を見せたんだ?妹が関係しているのは分かるんだが」
「関係していない」
こいつはこの世の事象の全てに妹が関係していると思っているのか?
「単純に普段通りの戦闘スタイルに戻しただけだ」
元々、俺は戦闘中に自分の神器を多用したりしない。神器も俺の演出の一つでしかないからな。
ガッキィンッ!
急に上の方から激しく剣と剣がぶつかる音がした。見てみると花蓮と母親が目でギリギリ追えるスピードで屋根の上を移動しながら斬りあっていた。
見たところスピードは花蓮の方が上だが、母親の方が優位に戦いを進めている。経験や技術の差がハッキリと出ている感じだ。
「おー、俺達の妹は派手にやっているな」
俺達の妹って……。花蓮を自分の娘じゃなくて、俺の妹と認識しているのか?
どんだけ妹に拘るんだよ。
「じゃあ、そろそろ俺も攻撃しようか」
そう言うと父親の後ろに色々な種類の武器が現れる。剣や槍、斧など何でもアリだ。あ、武器の一つに見覚えがある。
ジークが持っている魔剣バルムンクだ。あんなものまで投影しているのか。
「いくぞ、雑種」
大量の武器が一斉に俺に向かって襲いかかってくる。
「それは正義の味方じゃなくて英雄王の攻撃方法だろぉぉぉぉっ!」
俺は大声でツッコみながら攻撃を避ける。これ、マジでヤバい。一個一個の攻撃力が凄い。
さすがに英雄王に比べたら武器の数が少ないけど避けるのが大変だ。
て言うか、息子に向かって雑種とか言うな。
そうだ、ルフェイは大丈夫か!?ルフェイがこの戦いの巻き添えを食らったら大変だぞ。
「…………」
ルフェイはゴッくんを召喚してアンと一緒に薄い本を読んでいた。
恐らくアンは影男を送ってから戻ってきたのだろう。だが、そんなことはどうでいい。問題は本の中身だ。
「おい、それはお前が書いた俺と曹操のカップリングの本じゃねぇか!何てものをルフェイに読ませてんだ!」
前に俺も読まされたが、その時に破いてトイレに流したはずだ。当たり前と言えば当たり前だけどコピーをとっていたのか。
「だ、大丈夫です!」
ルフェイが顔を赤らめながらもハッキリとそう言った。
全く意味が分からないが俺は大丈夫じゃない!ルフェイを変な方向に染めるな!
「何をそんなに騒いでいるんだ?」
父親が攻撃を続けながら聞いてきた。
質問するなら攻撃をやめてくれ。精神的にも肉体的にも疲れる。
「いや、彼女が自分を題材にしたBL本を読んでいたら焦るだろ」
「そうか?」
「……お前も妹が自分を題材にしたBL本を読んでいたら嫌だろ?」
「妹が喜んでくれるなら、それだけで俺も嬉しいから問題ない」
ハッキリと断言する父親。
妹愛が深すぎる。ここまでくると真っ直ぐなのか歪んでいるのかさえも分からない。
ただ人間としておかしいことだけは分かる。
「……何が起きてグワッ!」
フリードが起きた瞬間に攻撃の巻き添えで剣がお尻に刺さってまた気絶する。
うわぁ、激しく出血してる。さすがの俺でも同情するな。
これはまたアンが妄想を……と思ったが特に反応していない。どういうことだ?
「おい、アン。フリードがお尻から激しく出血しているが妄想しないのか?」
「別にするところはないと思いますが……。それとも剣を擬人化しろ、ということですか?さすがにその域には達していないです」
アンが不思議そうに首を傾げながら言う。
お前の基準が分からねぇよ。俺の場合は肩から少し出血しただけでも妄想していたのに。
何かさっきから全ての会話が理解できない。俺は異世界にでも来たのだろうか?
「て言うか、ルフェイをつれて早く飛べ!戦闘に巻き込まれるぞ!」
「え?私の心配をしてくれるんですか……」
アンがわざとらしく照れたように体をモジモジさせる。
普段なら気にしないが、この追い込まれた状況でされるとイラッとするな。
「誰もお前の心配なんかしていない。しているのはルフェイの心配だけだ」
「私もここにいます!霧識さんの格好いいところを見たいですから!」
ルフェイが力強くそう言った。
普段なら嬉しいところだが、今は信じられない。さっきまで俺じゃなくてBL本を見ていただろ。
「いや、駄目だ。アンと一緒に逃げろ」
正直、彼女が戦場でBL本を読んでいるという事実を受け入れるのは時間がかかりそうだ。まぁ、それでも可愛いから問題ないけど。
とりあえず後でレイナーレをお仕置きしてフリードを苛めよう。
「安心しろ。その二人には攻撃しないように気を付けているから」
父親が不意にそんなことを言った。
「どういうことだ?お前は妹にしか興味がないんじゃないのか?」
「ああ、そうだ。もし可愛い女の子を傷付けたら妹に怒られるからな。それだけはゴメンだ」
父親が体を震わせる。
……そんなに怖いのか。まぁ、獣みたいな女だし想像は出来るけど。
それにしてもマズイな。一応、避けながら攻撃を観察しているが癖が全く分からない。
行動に無駄な癖を意図的に消している感じだ。シスコンとは言え、さすが忍者。こんな派手な攻撃をしていても隙を作らない。
まぁ、それだけでなく余裕があるというのも理由の一つだろうが。その証拠に俺はまだ攻撃を食らっていない。手加減しているのだろう。ムカつく話だ。
「げっ」
しまった!
足を滑らせてしまった。このままだったら串刺しになるぞ。体勢を立て直そうとするが間に合わない。
当たると思った瞬間、謎の衝撃波が俺に向かってきていた剣を吹き飛ばした。
いきなり何だ?出所を見てみると母親が花蓮に向かって離れたところから剣を振るたびに謎の衝撃波が出ていた。
……あれは何?聖剣の波動ではなさそうだし。
「……なぁ、お前の妹のあの攻撃は何だ?」
「何ってただの斬撃だろ」
父親が一旦、攻撃をやめて「何を当たり前のことを聞いているんだ?」といった表情で言う。
いや、おかしいだろ。魔法や魔力を使わずに剣技のみで斬撃を飛ばすとか。どこの海賊狩りだよ。
て言うか、俺の両親は本当に人間か?規格外すぎるだろ。
「イテテッ……。さっきから何だよ、ってまたかよ!」
復活したフリードが飛ぶ斬撃の巻き添えを食らってまた気絶した。
幻想殺しよりも運が悪いんじゃないか?いや、これだけの攻撃を食らっても無事なんだから逆に運が良いのか?
まだお尻に剣が刺さっているけど。
まぁ、フリードはどうでもいい。問題は俺の両親をどう倒すかだ。花蓮の方もそろそろ限界が近そうだ。
このまま観察しても何か分かるとは思えない。
……こうなったら俺の禁手を使うしかないか。
両親の技は全てが他作品ネタになっています。場合によってはオリジナルを出す可能性もありますが、今のところは思い付いていません。
両親の最終兵器は多分誰も想像できないようなものになっています。
では感想待ってます。