ハイスクールD×D 日常謳歌のファントム   作:二重世界

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チャイルドパニック3

「あれ、霧識の奴はいないのか」

 

アザゼルが部屋を見渡してから言う。一瞬、部屋に乱雑する子供用の衣装を見て怪訝な顔をしたが特にツッコんではこない。

そして次に小さくなった俺を不思議そうに見る。

 

「ところで、その可愛い女の子はどうしたんだ?……まさか霧識が拉致ってきたんじゃねぇだろうな。犯罪だぞ」

 

去年の夏休みに俺を拉致ったお前が言うな。

……ていうか、アザゼルのこのリアクション。もしかしてバレてないのか?

って、よく考えたら当たり前か。アザゼルは昔の俺を知らないんだ。

その状態で今の俺を見ても気付くはずがない。見た目の性別からして違うからな。本当に性別が変わったわけじゃないが。

特に焦る必要はなかったな。後はレイナーレ辺りが余計なことを言わないように気を付ければ大丈夫そうだ。

 

「この子は近所に住んでいる霧識さんの友達で今日は遊びに来ているんです。後、今、霧識さんがいないのは次の衣装を取り入っているからです」

 

ルフェイが即興で適当な言い訳をする。

正直、後半は微妙だが助かった。さすがルフェイ。

 

「幼女を家に連れ込んで着せ替え人形にしているのかよ。相変わらずだな」

 

頭に手を当てて呆れたようにアザゼルが呟く。

どういう意味だよ。俺がそんなことするわけないだろ。

幼女を着せ替え人形にするのは仕事で撮影をする時だけだ。

 

「まぁ、いい。別に急ぎの用事でもないしな。霧識が戻ってきたら後で連絡するように言っておいてくれ」

 

「分かりました。伝えておきます」

 

ルフェイが幸せな時間を邪魔されたからか早く帰れオーラを出しながら雑に返事をすると、アザゼルは一瞬イヤらしくニヤッと笑ったかと思うとスマホで俺を撮影してから扉を閉めて部屋を出ていった。

あの野郎、気付いてやがったのか!早くスマホを破壊しないと!アザゼルのことだから写真を他の奴等にもばら撒くぞ!

俺はすぐに部屋を飛び出してアザゼルを追い掛ける。そして走って逃げようとしているアザゼルを後ろから祓魔弾で射撃。的確にアザゼルが手に持っているスマホを狙う。

アザゼルは俺の攻撃を読んでいたのか手を下にずらして弾丸を避けた。

 

「ちっ!」

 

「残念だったな!焦っているお前ならピンポイントでスマホを狙ってくることは容易に予想できる!」

 

何でこんな時だけ頭の回転が早いんだよ、この総督は。

しかも俺の弱味を握れたからか妙にイキイキとした表情をしているのがイラつく。

俺はもう一丁、祓魔弾を取り出して思いっきり乱射する。狭い廊下でこれは避けられないだろ。

 

「おいおい、危なねぇな」

 

アザゼルは言葉とは裏腹に余裕そうな表情でジャンプして勢いよく階段を飛び降りる。

逃がすかよ。

俺は影のレプリカ神器を使いアザゼルの影から手を出して、着地直後に足を引っ掻けてコケさせる。

 

「イテッ!いきなり何だ!?」

 

何が起こったのか把握できずにアザゼルが驚いている。アザゼルにはレプリカ神器のことを教えていないから理解できないのは当たり前だが。

俺は祓魔弾をしまうとムラマサを体の中から出す。そして階段から飛び降りて落下する勢いを利用してアザゼルに斬りかかるが、アザゼルは光の槍で俺の斬撃を防ぐ。

今のは決まったと思ったんだがな。腐っても堕天使の総督ということか。

アザゼルは俺を力ずくで押し返すと即座に体勢を立て直して文句を言ってきた。

 

「今、本気で俺のことを斬るつもりだっただろ!?」

 

「当たり前だ!お前、撮った写真をばら撒くつもりだろ!?」

 

写真をばら蒔かれるくれるならアザゼルを殺して全てを闇に葬る。

アザゼルの死については適当に曹操あたりに罪を押し付ければ問題ないだろ。その後のグリゴリはシェムハザさんが総督になれば今まで以上に成果を出せるはずだ。

 

「それこそ当たり前だ!お前は俺の書いた話を番組にしてお茶の間に放送しているんだぞ!これぐらいの仕返しはしないと気が済まない!」

 

何とも器の小さい奴だな。過ぎたことを気にして。

それに子供に人気があるんだから良いだろ。

むしろ、俺のおかげで金が入ってくるんだから感謝してほしいぐらいだ。

 

『ふぁー、人が気持ちよく寝ていたのに何、騒いでいるのよ……?』

 

頭の中で眠そうにしながら文句を言ってくるムラマサの声が聞こえてきた。

いや、お前は人じゃなくて刀だから。後、刀って寝るのかよ。

衝撃の事実だ。

俺への日頃の不満が爆発したのか更に文句を言い続けるアザゼルを無視してムラマサに話かける。

 

『ちょっと色々あってな。今から堕天使総督の血を吸わせてやるから我慢しろ』

 

『え?少し前に斬ったばかりなのにまた斬れるの!?……まぁ、欲を言えば人間の血の方が良いんだけどね』

 

一言余計だ。

 

『ていうか、今気付いたんだけど主のそのキュートな姿は何!?私が暇すぎて気持ちよく爆睡している間に何があったの!?』

 

気付くの遅いな。起きた瞬間に気付けよ。

それとも変化が大きすぎて逆に気付かなかったというヤツだろうか?

 

『撫でていい!?後、血を吸ってもいい!?』

 

『血を吸うのは駄目だ。それより、どうやって撫でるんだよ?擬人化でもするのか?』

 

『私に擬人化なんて能力はないけどね。でも、人を斬って斬りまくって成長すれば、そのうち擬人化も出来るようになるはず。……多分。出来たら良いな……。中から主の楽しそうな姿を見ているだけって退屈だし。主、たまにしか相手してくれないし』

 

最後は消え入るような寂しそうな声で言った。

確信があるんじゃなくて、ただの願望かよ。

……でも、何か可愛そうになってきたな。いつもそんな気持ちだったのか。今度からはもっと構ってやろう。

退屈の辛さは俺が一番知っているからな。

だが、それは後回しだ。今はアザゼルを抹殺しないと。

 

「……ん?ていうか、よく考えたらアザゼルは何で俺だって気付いたんだ?俺のこの姿のことは知らないはずなのに」

 

「ああ、それか。女共のテンションの高さを見たらすぐに分かる。いくら可愛い幼女がいたからって、あいつらが霧識やヴァーリみたいにテンションが上がるとは思えないからな。だから幼女の正体は魔法か何かで小さくなった霧識だと思ったわけだ。後、写真を撮ったのは本当に本人かどうか確認する意味もあった。写真を撮られて即座に反応したら本当だと確定だ」

 

本当に余計な時だけ頭が働く酔っ払い野郎だな。

こいつは危険すぎる。今、始末するべきだ。

そうじゃないといつか後悔することになる。

 

だが、この時、俺は失念していた。普通、幼女(本当は体も中身も男だがそこは気にしない)と中年オヤジが言い争いをしているのを見られたら問答無用でアザゼルが犯罪者扱いだ。

でも、この家に限って言えば違う。この状況を見られて困るのは俺だ。

この家にはアザゼル以外にも厄介な敵がいるからな。

 

「騒がしいけど何かあったの?」

 

リビングの扉を開けてだらしない格好をしたジャンヌが登場した。その後ろには花蓮の姿もある。

最悪なタイミングで最悪な奴等が現れやがった!

焦っているせいで会話を認識できないようにするのを忘れていたせいだ。俺としたことがこんな古典的なミスをするのは。

どうする!?早く作戦をまとめないと。アザゼルが二人に「お、良いところに現れたな」とか言って仲間に引き入れようとしているし。

こうなったら取り引きでジャンヌと花蓮を仲間にするか。

いや、無理だ。この状況でジャンヌが取り引きに応じるとは思えない。

こうなったら花蓮を仲間にするしかない。花蓮ならある程度の損害は出るだろうが条件次第では協力してくれるはず。

よし、これで行こう、そう思った瞬間、新たな最悪な敵と救いの女神が同時に現れた。

 

「何を騒いでいるんだ?」

 

「……霧識?」

 

露骨に不機嫌そうなヴァーリとドーナツを食べながら不思議そうに首を傾げて俺を見ているオーフィスが階段から降りてきた。

ヴァーリの野郎、お菓子を餌にしてオーフィスを釣りやがったのか。

でも、それだけでオーフィスがヴァーリについていくとは思えない。オーフィスには普段からヴァーリには出来るだけ近付くな、って教えているからな。

どんな方法を使ったんだ、ロリコン野郎。

 

後、オーフィスは何で俺のことに気付いているんだ?龍神ともなるとオーラ的なもので判断できるのだろうか?

 

……いや、今の問題はそこじゃない。問題はロリコンをどうするかだ。

今の俺の見た目を利用して味方にするか?……絶対に嫌だ。取り返しのつかないことになるような気がする。

 

「だ、誰だ、この可愛い幼女は……」

 

俺に気付いたヴァーリが驚愕の表情をする。何かイラッとするな。

すぐに排除しよう。少し過激になってもヴァーリなら大丈夫だろう。

俺は困ったような表情をして目線を逸らす。

 

「どうかしたか?」

 

ヴァーリが若干、息を荒げながら心配するような口調で話かけてきた。完全に犯罪者だ。

後、少しは謎の幼女がいることを不審に思えよ。

俺はそのまま不用心に近付いてきたヴァーリの腹に拳をぶつける。

 

「バァンッ!」

 

俺がそう言うと腹が爆発してヴァーリは気絶した。

俺が使ったのはユーグリットがつい最近完成させたヘラクレスの神器『巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)』のレプリカ。攻撃と同時に相手を爆破させる能力だ。

オリジナルと比べれば威力は落ちるけど油断していたところに完全に決まればヴァーリといえどただでは済まない。

 

「ちっ!」

 

アザゼルの野郎、今の騒ぎの間に逃げようとしてやがる。

逃がすか!

俺は影に手を突っ込んでアザゼルの足を掴む。

 

「またかよ!」

 

俺はこけているアザゼルを無視してどこへともなく声を発する。

 

「淫乱メイド、ヴァーリを治療するついでに記憶を消しておいてくれ」

 

「かしこまりました、ご主人様」

 

気付いたら俺の後ろに立っていたレイナーレがヴァーリに近付くとそのまま担ぎ上げる。

いるとは思っていたが本当にいるとは……。

レイナーレは一体何者なのだろう。中級堕天使でこのスキルの高さは有り得ない。俺の教育にここまでの効果があるとも思えない。もしかしたら一番の謎はレイナーレかもしれない。

 

「ところでご主人様……」

 

レイナーレが期待するような目で俺を見てくる。

何が言いたいのか丸わかりだな。

 

「ああ、分かった。後でお仕置きでも何でも一つだけ言うことを聞いてやるから頼む」

 

「了解しました」

 

そう言うとレイナーレは嬉しそうな顔でヴァーリを運んでいった。

これで一人片付いた。次はアザゼルだ。

 

「……ヴァーリの野郎をどうするつもりなんだ?」

 

俺がアザゼルの方を向くと、アザゼルは今のやり取りに恐怖を覚えたのか冷や汗を流しながら質問してきた。

立ち上がって足は一歩下げてすでに逃げる準備をしている。だが俺にスマホを渡すつもりはなさそうだ。

意地になっているのか。

俺は肩をすくめながら軽い調子で答える。

 

「さぁ?アザゼルも同じ体験をしたら分かるかもしれないぞ。ただし全てが終わったころには忘れているかもしれないがな」

 

俺は一歩進んでアザゼルを威圧する。

するとジャンヌも少し怯えた表情をするが、花蓮は余裕そうだ。

俺が自分に何か酷いことをするわけがないと確信しているのだろう。まぁ、実際口止め程度で他には何もするつもりはないが。

そして更に一歩進んだところで急にオーフィスが俺の頭を撫でてきた。

どうでもいいけど、オーフィスの方が俺よりも背が高いって違和感があるな。

 

「……え~と、何を?」

 

「霧識が疲れているようだから。こうすると疲れが取れる」

 

オーフィスの優しさに思わず泣きそうになったが我慢する。

今は敵を排除する方が先だ。

 

「そうか。だったらアザゼルが持っているスマホを破壊してくれないか。多少……いや、かなり強引でも構わない。後でいくらでも撫でてやるから頼む」

 

正直、オーフィスの良心につけこむようで罪悪感があるが手段を選んでいられる状況じゃない。

アザゼルの方を見ると冷や汗の量が増えている。さすがにオーフィスが参戦したらアザゼルに勝ち目はないからな。

 

「いや」

 

「……え、何で?」

 

オーフィスに断られるのは予想外なんだが。

何か嫌われるようなことをしたか?

物凄く不安になっているとオーフィスが少し頬を赤くしながら言った。

 

「……撫でるのは駄目。撫でさせてほしい」

 

「……OK。いくらでも好きなだけ撫でていいぞ」

 

「分かった」

 

そう言うとオーフィスはアザゼルに向かって突撃する。

 

「ちょ、オーフィスはさすがに卑怯だろ!?」

 

「じゃあね。私、録りためておいた深夜アニメを見ないといけないから」

 

狼狽するアザゼルを尻目にジャンヌは涼しい顔でリビングに戻っていく。

逃げやがったか。まぁ、いい。ジャンヌは後回しだ。

 

「何、逃げてんだ!?さっき『霧識の苦痛に歪む顔が見れるなら』って言っていただろ!?」

 

いい性格してやがるな、ジャンヌ。顔が苦痛に歪むのはお前だ。

 

その後、オーフィスの協力のおかげでアザゼルのスマホを破壊することに成功。アザゼルとジャンヌの記憶から俺の小さくなった姿に関することは消去した。これで世界は平和だ。

そして今は――。

 

「お兄ちゃん、本当に可愛い。ねぇ、私のことをお姉ちゃんって呼んでくれない?」

 

「……可愛い」

 

部屋で花蓮に前から抱き付かれながら頬擦りされて、後ろからはオーフィスに頭を撫でられている。

何、この状況は?

ていうか、いつになったら俺は元の姿に戻れるのだろうか?

 




次回は遂にロスヴァイセに春が?
そしてリゼヴィムも登場します。

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