「ハァー……」
今、俺はグリゴリの研究所に来ているのだが中に入って早々、頭を押さえて溜め息を吐いていた。
「ふざけるな、サハリエル!俺に何をする気だ!?」
「別に心配する必要はないのだ。むしろ気持ちよくなるのだ」
手術台に貼り付けにされているコカビエルに瓶底のような眼鏡をかけて髪がボサボサな男――サハリエルが注射を構えながら不気味な笑みを浮かべて迫っていた。
やっぱりここには録な奴がいないな。
とりあえず事情を確認するためにサハリエルに話かける。
「何やってんだ?」
「あ、七瀬くん。久し振りなのだ。今はコカビエルで新薬の実験をしているところなのだ」
「新薬?」
何か面白そうな気配がしたので新薬の詳しい説明を聞く。
「……さすがにそれは酷すぎないか?」
サハリエルが今からコカビエルに注射しようしていた中身を聞いて引いてしまった。
俺でも仲間に使うのには躊躇する内容だ。そんなのは死んでもいいような実験体に使えよ。
「そうだが?でもコカビエルみたいな強靭な肉体を持っている奴でないと薬の効力に耐えられないだよ」
「確かにそれはそうだが。でもコカビエルは今から俺が実験に使うんだ。死なれると困る」
「ちょっと待て!説明の内容は理解できなかったが今の注射は死ぬようなものだったのか!?」
俺の発言を聞いたコカビエルが文句を言いながら暴れるが拘束が解ける気配はない。
堕天使幹部の腕力に耐えるってどんだけ頑丈なんだよ。
「そういや、どうやってコカビエルを拘束したんだ?コカビエルが大人しく言うことを聞くとは思えないが 」
「ああ、それだが。仕事が終わって休憩している時に飲んでいた飲み物に強力な睡眠薬を入れただよ。どんな動物でも一発でダウンだ」
「…………」
コカビエルに人権はないのだろうか?
いや、コカビエルは堕天使だから人権はないな。だったら、これから俺の実験でボロボロになっても仕方ないな。
「無視してないで俺の質問に答えろ!」
「うるさいだよ。コカビエルの実力から考えると死ぬと言っても精々、五回に一回程度。死なない確率の方が高いだよ」
「五回に一回だったら充分たけぇよ!ロシアンルーレットと同じ確率じゃねぇか!早く俺を解放しやがれ!そんな危険な薬の実験体にはならないぞ!」
「大丈夫大丈夫。仮に当たってもすぐに解毒薬を注入すれば死なないだよ」
「そんな実験前の解毒薬の効果なんて信用できるか!」
コカビエルが更に激しく暴れるがやはり拘束は解けない。
何故、こんな扱いを受けてもコカビエルはグリゴリを裏切らないのだろうか?本当、コカビエルは良い奴だよな。
そしてそんなコカビエルの優しさに漬け込むとはグリゴリの科学者達は酷い連中だ。
俺ならそんなことはしない。相手が嫌がろうと無理矢理するだけだ。
「ところでサハリエル。先に俺の実験をさせてくれないか?俺の方は元気な状態じゃないと困るんだが」
「そういえば、さっきも実験をするとか言っていただな。今日は何をするだ?」
「俺が設計したマオウガーversion3だ。今日、試作機が完成したという話を聞いてな」
アザゼルが開発したマオウガーを俺が趣味と実用性を考慮して更に強力にするために設計したものだ。
残念ながらversion2は能力が高いながらも燃費の悪さからボツ。version3はその欠点を克服。
能力を出来るだけ維持した状態で燃費を最大限よくしたものだ。
とはいえ、まだ開発段階。成功したわけではない。
今日の試作機の実験でより完成に近付くことだろう。そのためにもコカビエルに死なれては困る。
「あー、その話だが。じゃあ、仕方ないのだ。新薬の実験はそっちの実験が終わってからするだ」
「悪いな。お詫びに後でサハリエルの実験の方も手伝うわ」
でも本当に助かった。今日、実験できなかったら後のスケジュールがまとめてずれるからな。
まぁ、別に急ぐ必要はないけど、完成したら小猫に見せる約束をしたから早めに完成させたい。
「おい、待ちやがれ!マオウガーは前に俺が壊しただろ!新しく作りやがったのか!?」
「マオウガーは何回壊されようと不死鳥のように蘇る。コカビエルがいくら頑張ろうが無駄だ」
「だったらお前らを皆殺しにしてやる!それでマオウガーはもう復活しないだろ!」
いや、お前、そんなことしたらオーフィスとかに殺されるから意味ないぞ。
ていうか、それ以前に俺がコカビエルに殺されるという前提が有り得ないのだが。まぁ、アザゼルぐらいは殺してくれてもいいけど。
「ところで、コカビエル。さっきからずっと叫んでいるけど喉が疲れてないか?のど飴あるけど、いるか?」
「誰のせいで叫んでいると思っているんだ!?俺の喉を心配するぐらいなら早く開放しろ!」
俺的にはすぐに開放しても良いけど。実験が終わった後なら。
俺は未だ文句を叫び続けているコカビエルを無視してサハリエルの実験に付き合っていた部下に話かける。
「ちょっとコカビエルを実験室の方に運ぶから手伝ってくれ」
サハリエルの部下は暴れるコカビエルの様子を見て怯えていたが、軽い交渉をして説得に成功。二人でコカビエルを実験室まで運んだ。
マオウガーversion3の開発責任者と実験の打ち合わせをした後、俺は実験の準備が終わるまでの時間潰しとして休憩室でコーヒーを飲んでいた。
実験開始までまだ時間があるな。別に何か他にすることもないし準備の方を手伝おうかな。
そんなことを考えていると急に女性の声が聞こえてきた。
「あれ、霧識くんじゃない。こんなところで何してるの?」
何だ、ベネムネか。
ベネムネは見た目はクールビューティーなのに口調が軽い堕天使幹部で書記長をしている。
ちなみに俺の初めての相手でもある。
あの時は驚いた。アザゼルの改造手術が終わって疲れていたせいで眠ってしまって、目が覚めたら知らない女性が俺の上に股がっていたのだから。
抵抗したのだが、抵抗されると余計に興奮するらしく結局、無理矢理童貞を卒業させられることになった。軽くトラウマになりそうな出来事だ。
まぁ、その後も何回かヤって色々と手ほどきを受けることになるのだが。何か俺のことを気に入ったらしく強引にヤらされた。
「見て分かるだろ?コーヒーを飲んでいるんだよ」
「ふーん、暇なの。……一発ヤってく?」
ベネムネが仕事帰りのサラリーマンの『一杯どう?』みたいな軽い調子で誘ってきたのはSMプレイだ。
未成年を軽々しくSMプレイに誘うなよ。バラキエルといいレイナーレといい堕天使はSMプレイが好きすぎる。
ついでに言うとベネムネはSでもMでもどっちでもいける。俺がS専門なので、俺とヤる時はベネムネは必然的にMになるが。
「断る。数十分後には実験があるんだよ」
「じゃあ、それまでは暇なんでしょ?少しでいいから付き合ってよ。私もちょうど暇だし」
「俺は別に暇じゃないんだが」
俺の言い訳も空しくベネムネに腕を引っ張られて強引に立たされた。
これは適当に付き合った方が早く終わりそうだな。俺は飲みかけだったコーヒーを一気に飲み干すと空き缶をゴミ箱に放り投げる。
「さて、ついたわ」
そう言うとベネムネは拷問室(という名前のSMプレイ専門部屋)の前で止まった。
「そろそろ腕を離してくれないか?」
「ああ、そう言えばそうだったわね」
俺に言われて思い出したかのようにベネムネは俺の腕を離した。
そして俺は普段通りの表情(嫌そうな顔をするとベネムネが興奮して時間までに終わらない可能性があるからだ)で扉を開ける。
「いいっ!いいぞぉぉぉぉ、朱乃!そこ!そこだぁぁぁぁ!」
「本当、卑しい豚ですわね。気持ち悪い」
「もっとだ!もっと俺を攻めてくれぇぇぇぇ!」
バタンッ!
俺は即座に扉を閉める。
見てはいけないものを見てしまった。今すぐ忘れたい。
「あらら。先約がいたのね」
俺は戸惑っているが、ベネムネは平然とした顔をしている。
「……え~と、今の何?」
「何、って親子のスキンシップでしょ?」
いやいや、おかしいだろ!親子のスキンシップでSMプレイって!
……いや、妹と一線を越えている俺が言うことでもないか。でも俺は兄妹で、あっちは親子。
俺の方が年齢が近い分、まだノーマルだな。
ていうか、何で姫島朱乃がここにいるんだよ。親とディープな関係を築く前にイッセーを誘惑する方法でも考えろ。
「じゃあ、私達も参加しよっか?」
「しねぇよ!ヤるなら別の場所にしろ!」
中年のオッサンが娘に鞭で叩かれて興奮している姿なんて見たくない。本人達は幸せかもしれないが、外から見たら気持ち悪いだけだ。
特に俺は無類の可愛いもの好き。醜いものは嫌いだ。まぁ、面白ければ別だが。
それよりも今のを見て全く気にしていないベネムネがおかしい。
「でも移動すると短い時間が更に減るし。……そうだ!ここでヤればいいんだ!外でするのも開放感があって気持ち良いし」
ベネムネが手をポンッと叩いて『良いこと思い付いた』みたいな顔をする。
露出SMプレイとかレベルが高すぎるだろ。俺は嫌だぞ。
まぁ、ここの連中ならヤっていても気にしないだろうが。むしろ参加してきそうだ。
その後、録な提案が出なかったのと実験開始の時間が近付いてきたので思わず逃亡。
実験が終わった後にしつこく絡まられるかな、と思っていたが酒に付き合うだけで終わった。
どうやら本当に暇潰しとして誘っただけで、そこまで本気ではなかったらしい。まぁ、始まったら本気になっていただろうが。
次回は主人公が女体化する話です。
では感想待ってます。