「……本当にこんなところに住んでいるのか?」
クリフォト関連の話し合いのためにつれてきたシャルバがプレハブ小屋を見て怪訝な顔をする。
確かにイメージと合わないのは分かるが。でも見た目はただの大きいプレハブ小屋だが中は意外と快適なんだぞ。
ネットも繋がるし。俺が作ったわけじゃないから回線をどこから持ってきたか知らないけど。
「後、向こうにいた魔獣は何だ?」
シャルバが後ろの方に視線を向けながら聞いてくる。
フェンリル達のことか。最近ヒュドラを追加したけど、あいつも面白くて格好いい。それに毒には色々な使い方があるから俺の遊びの幅が広がる。そういや毒の武器は持ってなかったし作るのも面白いかもしれない。
次は何にするかな。まだ翼を持っている奴がいないし鳥類の魔獣を探すか。
「俺のペットだよ。可愛いだろ?」
俺が扉を開けながら冗談っぽく言うと、シャルバが「……本気で言っているのか」といった表情で俺を見ながらついてくる。
これはフェンリル達が可愛いと言ったことか、フェンリル達をペットにしていることなのか、どっちに対しての意味なのだろう?多分、両方だろうが。
でもフェンリル達が可愛いのは本当だぞ。女の子や人形みたいに分かりやすい可愛さとは違うが、それでも可愛いものは可愛い。
プレハブ小屋の中に入って目的の部屋に前についたところでドアを開ける。
「…………」
部屋の中に広がっていた光景を見てシャルバが顔を引き攣らせながら絶句する。
いるのは必死に漫画を書いているリゼヴィムにニヤニヤ顔で鼻歌を歌っているユーグリット。
チェスで勝負している曹操とジャンヌ、それを観戦している花蓮。そして椅子に座って楽しそうに漫画を読んでいるゴスロリの女性と部屋の端に無表情で立っている黒いコートを着た長身の男性だ。
今回は禍の団全体の意思の確認も目的の一つなのでクリフォト以外のメンバーも来ている。
う~ん、さすがにこの人数だと手狭だな。かなり広めに作らせたとはいえ元々一人用だから仕方ないといえば仕方ないけど。
今度、フリードに十万ほど渡して増築させるか。一応、必要経費は別に出す予定だ。
ていうか、呼んだ覚えのない奴も来ているんだが。何でいるんだよ?
「……私は新しい禍の団の方針を決める会議をするといって呼ばれた気がするんだが?」
「そうだが。それがどうした?」
「これが本当に禍の団のメンバーなのか?私にはただの仲良しグループにしか見えないんだが」
「仲が良いことは良いことだろ。連携は重要だぞ」
まぁ、こいつらが連携を取れるとは思えないが。
曹操以外は何よりも自分の欲望を優先する奴しかいないからな。ユーグリットは姉が関わらなければ常識人だけど、裏方限定だから動きが制限されているし。
何、こいつら。個々の能力は高いけどチームとしては欠点だらけだな。
「……ところでリゼヴィムは何をしているんだ?私が前に会った時とは雰囲気がまるで別人だが」
「漫画を書いているんだよ。新人賞を目指すとか言っていたな」
「新人賞というのは何だ?」
「漫画は知っているか?」
「ああ。名前ぐらいは聞いたことがある」
俺の質問にシャルバが頷く。
シャルバが漫画を知っているとは意外だな。そういうのには興味がないだろうから知らないと思っていた。
「確か人間の娯楽の一つだろ?」
「そう。で、新人賞というのは簡単に言うと漫画のコンテストで入賞したら貰える賞のことだ。リゼヴィムは前に『俺は漫画で天下を取る!』とも言っていた」
「…………」
シャルバは何を言っているのか一瞬分からなかったようだが、少しすると頭を抱えて「真の魔王の誇りが……」とブツブツ呟き出した。何か大変そうだな……。
その気持ちも分からないではないが。俺も最初にリゼヴィムからこの話を聞いた時はビックリしたし。
何でもとある人気漫画の影響らしいが。前魔王の息子の新しい生きる目的が世界征服とかじゃなくて新人賞というのは何とも平和な話だ。
まぁ、ネタ探しだとか言って積極的に各勢力への嫌がらせをしてくれるから俺的には助かっているけど。
リゼヴィムの漫画は人間と比べたら遥かに経験抱負だから話は悪くないんだが、絵が何とも言えない。絵させ上達すれば入賞する可能性もあるが、今のままだと微妙だな。
ちなみに俺は中学の時に取ったことがある。
「あ、お兄ちゃん!」
花蓮が俺に気付くと笑顔で近寄ってきた。そのまま抱き付いて頬擦りまで開始される。
とりあえず頭を撫でてると花蓮は「えへへ……」と幸せそうに笑う。
うん、俺の妹は今日も可愛いな。
その様子を見たシャルバが不思議そうにしている。
「その女は誰だ?見覚えがないが」
「俺の世界一可愛い妹だ」
「……お前、妹とかいたのか」
「ああ、いたよ。俺と違って頭は少し残念だが腕が立つ妹がな。後、俺と同じで厄介だから気を付けておけよ」
俺がそう言うと、シャルバは警戒を強める。正確に言うならリゼヴィムのせいで緩んでいたのが元に戻ったって感じだ。
警戒するだけ無駄だと思うがな。花蓮はいつでも想像の斜め上を行く。良い意味でも悪い意味でも。
「それより呼んでもいないのに何で花蓮がいるんだ?」
「アンちゃんのところに遊びに行っていたら曹操がお兄ちゃんに会うって聞いてついてきたの」
……お前の所属はどこだよ。教会所属のはずなのに英雄派と一緒にいる時間の方が多くないか?
まぁ、所属がこかイマイチ分からないのは俺も同じだけど。一応、グリゴリ所属なのにアザゼルよりも魔王達との方が仲良いし。むしろアザゼルは敵と言った方が正しいかもしれない。
ていうか、英雄派?俺は不意に思い付いた最悪の可能性を確認するために部屋を見渡す。
「……まさか両親まで来ていたりしないよな?」
「ん?来てないよ?今はヨーロッパの方に旅行に行っているからね」
「ほっ……」
思わず安堵の溜め息を吐く。
もし俺の両親がいたら即戦闘していたから助かった。さすがにこの戦力で負けるとは思えないが、倒せるとも思えない。あいつら、逃げるのは得意だからな……。
「あー、また負けた!」
急にジャンヌが頭を抱えて大声で叫ぶ。
いきなり何だよ。少しビビっただろ。
「どうかしたか?」
「あ、キーくん!聞いてよ!曹操が意地悪して私に勝たせてくれないの!」
知るか。
大体、俺と違って曹操がわざと負けたりとかするわけないだろ。
「ちゃんとハンデはやっているだろ。先手を譲った上でルークもなしにしているんだ。これ以上、どうしろと言うんだ?」
「曹操はキングとポーンだけ!」
「断る」
曹操がジャンヌの提案を一蹴する。
さすがにそれは無理だろ。どうやったら勝てるんだよ?
一方的な虐殺にしかならないぞ。
「うぅ……、こうなったらキーくんが――」
「断る」
「まだ何も言ってないよ!?」
聞かなくても分かる。どうせ俺が代わりに戦って曹操を倒してくれ、って言うんだろ。
チェスなら勝つ自信はあるが面倒臭い。というより曹操と戦うなら将棋の方が面白い。
「ところで何でジャンヌもいるんだ?花蓮と同じで呼んでいないはずだが」
「暇だったから遊びに来ただけ」
そういや前にジャンヌに働かせるためにここを紹介したんだったな。
嫌な偶然もあったものだ。
「ていうか、曹操も何で普通に裏切り者のジャンヌと遊んでいるんだよ?」
「気にしていないからな。元々、裏で俺達の情報を売っていた女のことなど」
あれ、バレてたの?
ちゃんとバレないように気を使っていたのに。相変わらず油断の出来ない男だな、曹操は。
まぁ、ジャンヌがミスっただけの可能性もあるが。
「それよりあの男は誰だ?見たことのない奴だが」
曹操が目線を部屋の端に移しながら聞いてくる。
まだ自己紹介もしてなかったのかよ。ちゃんとしとけ、って言っておいたのに。無口な男だな。
「クロウの旦那、皆に紹介するから来てくれ」
長身の男は頷くと俺の隣に移動する。右が金で左が黒のオッドアイが特徴的だ。
どうでもいいけどオッドアイって格好いい。俺もしようかな。
リゼヴィムとユーグリットはこっちに視線を向けないが、すでに知っているので無視して紹介を開始する。
「こいつはクロウ・クルワッハ。『
「「「――っ!?」」」
花蓮以外の話を聞いていた連中が驚愕する。
花蓮だけは興味ないのか俺に抱き付いたままだ。俺としては嬉しいんだが、そろそろ離れてくれないか?
「本物なのか!?」
「本物だ」
動揺しているシャルバにクロウの旦那が端的に答える。……テンションの差が凄いな。
次に曹操がクロウの旦那に質問する。
「キリスト教の介入により現地民の信仰が薄れて滅んだんじゃなかったのか?」
「別に滅んではいない。キリスト教の介入が煩わしくてかの地を去ったのは事実だが」
その後は修行と見聞を兼ねて人間界や冥界を見て回っていたらしい。おかげでかなり俗世に染まっている。
俺がクロウ・クルワッハが生きているという噂を聞いて探してみたんだが、最初に会ったのがラーメン屋だからな。伝説の邪龍との邂逅にしては雰囲気が無さすぎる。
で、俺がラーメンを奢って色々と話しているうちに仲良くなって今に至るというわけだ。別に家の方に連れて行っても良かったんだが、クロウの旦那の場合はこっちの方が面白いことになりそうなのでテロリストとして活躍してもらうことにした。
後、ヴァーリといきなり殺し合いをされても困るし。
「私はドラゴンよりもあっちのオバサンの方が気になるんだけど?」
花蓮がゴスロリの女の方を見ながら空気を読まずにそう言う。
花蓮の発言を聞いたゴスロリの女が「は?」と青筋を立てる。……また面倒臭そうなことになってきたな。
今回はシャルバがメインのはずなのに影が薄いです。
後、無理だと思っていたけどクロウ・クルワッハを出せました。
次回はゴスロリの女の正体が明らかになります。まぁ、分かっているとは思いますが。
では感想待ってます。