「霧識さん、そろそろ起きてください」
「んー」
俺はルフェイに体を揺すられて目を覚ます。もう朝か。早いな。
「もうちょっと寝てても良いだろ?」
「駄目です。皆、一緒に食べないと料理を作ってくれる人に迷惑をかけてしまいます」
フェニックス家の使用人もそれが仕事なんだから気にしなくても良いと思うが。それに遅れたら自分で作るから料理人には迷惑をかけない。
て言うか、眠い。予想以上にルフェイが頑張るからほとんど寝れていない。今日から仕事があるけどどうしよう。
「チュ」
「っ!?」
ルフェイがいきなり俺にキスをしてきた。激しいものではなく口と口が軽く当たっただけの優しいものだ。だが、それが妙に気持ち良い。一瞬で眠気が吹っ飛んでしまった。
「これで目が覚めま……どうしたんですか?顔を赤くして」
「いやいや、何でもない!それより早く服を着るぞ!」
俺は誤魔化すようにして服を着始める。
俺は今回が初めての思春期なガキとは違って経験豊富。それなのにルフェイと一晩ヤっただけで、ここまで意識するとは完全に予想外だ。童貞を捨てる時でも、ここまでドキドキしなかったぞ。
心臓がバクバクうるさい。静かにしやがれ。
「?」
ルフェイが俺の様子を見て不思議そうにしながらも服を着始める。
頼むから気にしないでくれ!もうすぐしたら、いつも通りになるから!
「そういや、お義兄さんはどうするかな」
とりあえず俺は別の話をする。何か話をして誤魔化さないとおかしくなりそうだ。
「それは言わなければバレませんよ」
「いや、今回のことはそうだけど。でも、帰ってからはどうするんだ?夜の営みが出来ないぞ」
もうヤってしまったんだ。開き直っていくしかない。て言うか、俺の理性がもつ気がしない。
「それは霧識さんの神器を使えば良いんじゃないですか?」
「それは難しい。俺の神器は俺が意識していないと使えない。つまり行為に集中してしまえば能力が解除してしまう可能性がある」
実際に昨日も音が外に漏れないように神器を使っていたが気付いたら能力が解除されていた。いつ解除されたかは分からないけど、結構早く解除されていたような気がする。
それに他の小細工だとした時点で怪しまれてしまう。
「まぁ、手加減すれば出来ないこともないが、それは嫌だしな」
「それは私も嫌です。でも、どうしたら……」
困っている表情のルフェイも可愛い。正直、このまま押し倒したい願望があるが今は我慢しよう。
「まぁ、まだ時間はあるんだ。ゆっくり考えよう」
「そうですね。少なくとも冥界にいる間は兄に会わないんですから、その間に考えましょう」
まぁ、本当は一つ対処法があるんだが。しかし、それは非常に難しい。普段の俺なら何もせずに諦めてしまうほどの難易度だ。俺は面白いことなら努力を惜しまないが、最初から出来ないことが分かっていることは絶対にしない。
だが、今回は珍しく俺らしくなく頑張ってみるか。
コンコン
服を着終わったところで扉がノックされた。
「起きてますか?」
この声はミラか。朝食の時間だから俺達を呼びに来たんだな。
「ああ、今着替えが終わったから、すぐに出る」
返事をすると俺達は部屋を出る。そしてミラに案内されてダイニングに向かう。昨日の夕食も同じ場所で食べたのだから、わざわざ案内なんていらないんだが。
「あら、霧識さんにルフェイさん。おはようございます」
通路の途中でレイヴェルに会う。
「おはよう、レイヴェル」
「おはようございます」
俺達もレイヴェルに挨拶を返す。
「ところでルフェイさん。何故、そんなにぎこちない歩き方をしている上に嬉しそうな顔をしているんですの?」」
レイヴェルがルフェイを見て不思議に聞く。まぁ、ルフェイは今回が初めてで慣れてないから、かなり腰にきているみたいだ。
ミラは質問はしなかったが、最初から不審そうにルフェイを見ていた。
「それに昨日、二人の部屋を訪ねた時は何故か扉が開きませんでしたし。何をしていたんですの?」
昨日の夜にレイヴェルが来ていたのか。ルフェイがしたのは扉のロックだけだから、音は聞こえるはずなのに気付かなかった。それだけ俺も夢中になっていたということか。
て言うか、レイヴェルには俺達がヤっている声は聞こえなかったのか?ルフェイは結構大きな喘ぎ声を出していたはずだが。それとも意外と神器が長持ちしていたのか?
「男女が密室で二人っきり。ヤることは決まっています」
何故か勝ち誇った顔で言うルフェイ。
「……。えーと、それは……つまり男女の夜の営み的な何かなんですの……?」
ワンテンポ遅れてルフェイの言葉の意味を理解したレイヴェルが顔を赤くしてモジモジしながら小声で聞いてきた。言葉を濁したような喋り方だが、全く濁しきれてないな。
にしても、これは何とかしないといけない。こんな気まずい雰囲気のままお世話になるのは嫌だ。
朝食後、俺は出掛けるためにルフェイと一緒に玄関に向かっていた。
「今日はどこにデートに行くんですか?」
「デートはまた今度だ。今日は木場のところに行く」
まぁ、目的は木場じゃなくて一緒に修行している師匠の方だが。
「まさか私とのデートよりも男に会うことを優先するなんて……。私は悲しいです」
ルフェイが涙を流して悲しそうに言う。これは演技だな。
「そんなわけないだろ。俺にそんな特殊な趣味はない。それに俺に嘘が通じると思うなよ」
「さすが霧識さん。レイナーレさんに男は女の涙に弱いって聞いたんですが、この程度の嘘泣きには騙されませんか」
どんだけルフェイに入れ知恵してんだよ、レイナーレ。俺よりもレイナーレの方が先にお義兄さんに殺されるような気がしてきたぞ。
まぁ、レイナーレの入れ知恵は間違ってないが。実際、昨日はかなりテンパったし。
「確か木場さんって聖魔剣使いでしたよね。何しに行くんですか?霧識さんなら小猫ちゃんに会いにいくと思ったんですが」
「最初はそのつもりだったんだけどな。事情が変わったんだよ」
別に小猫と約束していたわけじゃないし後回しにしても大丈夫だろ。
「木場祐斗に会いに行くのか?」
声が聞こえた場所を見てみると、そこにはライザーの『騎士』カーラマインがいた。確かレーティングゲームの時に木場と一騎討ちして負けたんだったな。
「そうだが。それがどうした?」
「私も連れていってほしい。と言うよりも、最初から木場祐斗に会わせてくれ、と頼む予定だったんだ」
え?もしかして、そう言うことか?俺としては木場がモテるのは嬉しい。何故なら、俺の身の危険が減るからだ。
木場の意識をイッセーに集中させているが、それでも木場の視線がたまに怖い。
「実は前に戦った時に木場祐斗には剣士として通じるものがあってな。もう一度、戦ってみたかったんだ。それに聖魔剣というのも気になる。……どうした?何か落ち込んでいるようだが?」
「……気にするな」
最初から分かっていたさ。そんなオチだということは。
レイヴェルもカーラマインは剣のことしか頭にない剣馬鹿だと言っていたしな。
「よしよし。大丈夫ですよ」
レイヴェルが俺の頭を優しく撫でてきた。いつもとは立場が逆だが、これは良いものだな。物凄く気持ち良い。ルフェイやオーフィスがいつも俺にねだってくるのも理解できる。後で、またしてもらおう。
「じゃあ、行くか」
俺が復活したところで三人で木場のいる場所に向かう。
「ふむ、ここか」
アザゼルに事前に聞いておいた木場が師匠と修行しているというグレモリーの別荘についた。
イッセーは山でドラゴンとサバイバルをしているらしいが、木場は良い場所で修行しているんだな。
「よぉ、木場」
俺はちょうど汗を拭きながら休憩していた木場に話かける。
「あれ?霧識くん、何故、ここに?」
「お前の師匠に少し話があってな。後、サインを貰いに来た」
「そうなんだ。お師匠様なら別荘の中にいるよ」
師匠は別荘の中で休憩中か。
「ところで、後ろの二人は?カーラマインと知らない子だね」
「カーラマインは木場に会いに来たんだ。もう一人はルフェイ。俺の連れだ」
「初めまして、ルフェイと言います」
ルフェイがペコリと木場に挨拶する。正直、ルフェイを他の男に会わせたくないんだが木場なら安心だ。木場はホモだからな。
「初めまして、木場祐斗です」
木場がルフェイと握手しようと手を差し出してきた。俺はそれを見てルフェイを抱き締めるようにしながら、木場から距離を取らせた。
「どうしたんだい?」
木場が俺の行動を見て不思議そうにする。俺も自分の行動が不思議だよ。
「……気にするな」
そう言うと木場は更に不思議そうに俺を見る。
まぁ、いつもの俺らしくないからな。落ち着いたと思っていたが、まだ動揺しているらしい。
「心配しなくても私が霧識さん以外を好きになることはありませんよ」
ルフェイが俺を慰めるように言う。何かまたドキドキしてきた。今はルフェイに抱き付いているからバレないか心配だ。
「分かっているから大丈夫だ」
頭では大丈夫だと分かっていても体が勝手に動いてしまった。
何か立場が逆転しつつあるような気がする。それはそれで気持ち良いが男のプライドを守るために避けないといけない。俺は気丈に振る舞う。
「お客が来ているようですね」
声が聞こえた場所を見てみると羽織をした男が別荘から出てきていた。
この男こそ今回の俺の目的。サーゼクスの『騎士』にして新撰組一番隊隊長、沖田総司だ。
何か前回の話を書いている時に急に沖田が重要なキャラになりました。まぁ、そこら辺の話は次回ですが。
では感想待ってます。