事情の説明が終わったところで急にイリナが立ち上がって祈りのポーズをした。するとイリナの体が輝き、背中から白い翼が生えた。
「……もしかして天使化したのか?」
「そうだよ、霧識くん」
話には聞いていたけど初めて見た。イリナが皆に天使化について説明する。俺はミカエルに夏休みに会った時に聞いたから小猫を撫でることに集中する。
確かセラフが悪魔や堕天使の技術を転用して可能にしたんだったな。それで四大セラフ、他のセラフメンバーを合わせた十名がAからクイーンまでトランプに倣った配置で『
つまり『
裏でジョーカーなんて呼ばれる強い奴もいそうだ。
「イリナはどの札なんだ?」
「私はAよ!ふふふ、ミカエル様のエース天使として光栄な配下をいただいたのよ!」
イリナが嬉しそうに左手の甲にある『A』の文字を見せてきた。
ミカエルのエースか。それは凄いな。
「ところで花蓮も天使なのか?」
「いや、私は違うよ。オファーはあったけど断ったわ」
「何故?」
まぁ、聞かなくても分かるが一応聞くか。
「そりゃ、お兄ちゃんと子作りするために決まってるでしょ。天使になったら子作りできないからね」
天使にならなくても俺にやる気がないから子作りは無理だけどな。
まぁ、天使になっても花蓮ならすぐ堕ちるだろうから、ならなくて正解だと思うけど。
「……そんな理由で断ったのかよ」
イッセーが呆れたように花蓮に言った。
「え?何?急に話かけないでくれる。気持ち悪いんだけど。このケダモノ」
急に雰囲気が変わって汚物を見るような目でイッセーを見ている花蓮。別人にしか見えないんだが。
「そんな冷たい目で罵倒されるようなこと俺は言ったか!?」
更に花蓮の目が冷たくなる。イッセーが少し涙目になっている。
「ハハ。花蓮ちゃんは興味がない相手にはいつもあんな感じだからね」
イリナが苦笑しながら説明してくれる。
興味がある相手とない相手で対応が変わるのは俺と同じということか。
アーシアがいつものようにイッセーを慰めるために頭を撫でる。
「大丈夫ですよ。私はイッセーさんがケダモノでも大好きですから」
「アーシアも俺のことをケダモノだと思っているんだ!」
倒れ込んで本格的に泣き始めるイッセー。イッセーは間違いなくケダモノだ。
「え?え?どうしたんですか、イッセーさん?」
そんなイッセーの様子を見てアーシアが戸惑っている。
時として善意は悪意よりも人を傷付けるという良い例だな。いや、悪い例か。
「そんな調子で男の友達とかいるのか?」
「ん?いるよ。よくデュリオくんと一緒に美味しいものを食べに行くし」
「デュリオくん?」
どこかで聞いたことあるような名前だな。どこで聞いたんだっけ?
「デュリオ・ジェズアルド。最強のエクソシストと呼ばれ二番目に強い神滅具『
アザゼルが説明してくれた。
なるほど。だから聞き覚えがあったのか。俺はまだ会ったことがないな。
「そう、正解。さすが堕天使の親玉さん。よく知ってるね」
堕天使総督に対して軽いな。まぁ、人のことは言えないけど。
「そんな凄い奴と知り合いなのか」
「うん。デュリオくんが私がよく行く店の常連でね。それで知り合ったの。あのお店、美味しいんだよねぇ……」
花蓮が料理のことを思い出しているのかヨダレを垂らしながら言った。
教会、全く関係ないな。
「よく一緒に訓練もしているんだけどデュリオくん強くてね。全然勝てないんだよね。……ん?訓練?良いこと思い付いた」
花蓮の良いこと思い付いた、は嫌な予感しかない。
「ねぇ、お兄ちゃん。私と勝負しない?」
花蓮が無駄に俺に顔を近付けて言った。
若干、唇を突き出しているように見えるが気のせいだろ。
「……勝負?」
「そう、勝負。私とお兄ちゃんで模擬戦をするの。剣を交えれば相手のことが分かるって言うでしょ?それでお兄ちゃんに私のことを分かってもらうの」
模擬戦か。まぁ、悪くないな。俺も夏休みの沖田師匠との特訓の成果を試したいし。
それに花蓮の実力を把握するいい機会だ。
「OK。受けてたつ」
前にゼノヴィアに授業した場所で俺と花蓮は対峙している。
部室にいたメンバー全員がついてきたのでギャラリーが多い。
「じゃあ、行くよ、お兄ちゃん」
そう言うと花蓮は異空間から見覚えのある一本の聖剣を取り出した。
「それはエクスカリバーか?」
「そう、正解。さすがお兄ちゃん。これは『
天閃の聖剣か。前にフリードが使っていたヤツだな。
今度は俺が異空間から一本の聖剣『
「んじゃ、勝負開始といくか」
俺と花蓮はお互いにエクスカリバーを構えて戦闘態勢に入る。
今回は神器なしで戦うか。
「ねぇ、霧識くん。前にゼノヴィアと戦った時みたいに授業とかはやらないの?」
いきなりイリナが余計なことを聞いてきた。
「え?何?授業?もしかして真夜中の個人授業とか?」
予想通り花蓮が目を輝かせて食い付いてきた。
だから言わなかったのに。
「いや、花蓮は母親やデュリオくんとやらと訓練していたんだろ?駆け引きならともかく戦闘シロートの俺に教られることは何もないぞ」
むしろ戦闘については俺が教えてほしいくらいだ。
「だからベッドの中での戦闘方法を」
「後で本を貸してやるから自分で勉強しろ」
「私は何でも実践で覚えるタイプだから本を読んでも無駄なんだよね」
そんなことを自信満々に言うな。
う~ん、どうしたものか。
「じゃあ、私が負けたらお兄ちゃんが補習授業をして?」
「何で負けた方が得してんだよ」
「お兄ちゃんが勝ったら私を自由にしていいよ」
「だったら教会に帰れ」
「それは無理」
自由にしていいんじゃなかったのかよ。何かレイナーレを相手にしている時に似ているな。
「そうだ。俺が勝ったらデュリオくんを紹介してくれよ」
最強のエクソシスト。それだけでも会う価値がある。
「うん、いいよ。その代わり私が勝ったら夜の補習授業をしてね」
「本番なしなら良いぞ」
俺の言葉を聞いて花蓮がまた腕を組んで悩む。その仕草、よくするな。
「う~ん、残念だけど仕方ないね。楽しみは後にとっておくことにするよ」
「よし、取り引き成立。バトル開始。……っ!?」
バトルを開始したと同時に花蓮の姿が消えた。どこに行った!?
「上か!?」
俺はギリギリのところで花蓮に気付いて上から降り下ろされる攻撃を防ぐことに成功した。
「まさか私の初撃が防がれるとは。単純な戦闘は弱いって聞いてたんだけど」
「俺も成長してるんだよ」
今のは沖田師匠との修行がなかったら負けていたな。天閃の性能を計算に入れても速すぎる。
「じゃあ、次の攻撃いくよ」
花蓮は距離を取ったと思ったら、すぐに突進してきて連続で攻撃を仕掛けてくる。
攻撃自体は単純だから防ぐことは出来るけど反撃できない。
「私の速さは教会の戦士の中でも五本の指に入るほど。それに天閃の聖剣が加われば私のスピードはママやデュリオくんをも越える!」
RPGで言えばパラメーターをスピードに全振りしたみたいイメージだな。中途半端にバランスの良い奴よりも一つを極めた奴の方が厄介だ。夢幻で幻を作る暇もない。
こうなったら沖田師匠との修行の成果を使うしかない。
俺は花蓮の攻撃を防ぐと同時に左手で懐から光の剣を取り出して反撃する。
「え!?」
花蓮は俺の予想外の反撃に驚きながらギリギリ回避する。
「今のは決まったと思ったんだけどな。残念だ」
俺は右手にエクスカリバーを左手に光の剣を構えながら花蓮の方を向く。
「……え~と、お兄ちゃんの武器ってエクスカリバーだけじゃなかったの?」
「誰がそんなことを言ったんだ?他にも祓魔弾とか持ってるぞ」
他にも隠し玉はあるけどな。俺はお義兄さんを倒す為に本気で努力したんだから。
まぁ、今は家を分けることで上手くいってるから倒す必要あるのか?とか思ってるけど。まぁ、バレた時のためにも準備は必要だ。
「そして俺から距離を取ったな、花蓮」
俺は夢幻の力で大量の幻を作り出す。
「しまった!……でも、問題ないよ。私のスピードで全部斬るまで」
そう言うと花蓮は突っ込んできて言葉通りに幻を斬っていく。
さっきよりもスピードが上がっている。これはマズイ。
そして遂に花蓮が幻を全て斬って本体である俺に辿り着いて首筋にエクスカリバーを突き付けてきた。
「これで私の勝ちだね、お兄ちゃん」
「それはどうかな?」
花蓮の首筋にもエクスカリバーから突き付けられている。
「え?いつの間に?」
「幻を無双して良い気になってるから気付かないんだ」
「……もしかして、わざとやられていたの?」
「そう、正解だ。さすが俺の妹」
花蓮が単純で助かった。まぁ、後少し花蓮のスピードが速かったら俺が負けていたけど。
俺と花蓮は同時にエクスカリバーを引っ込める。
「ふぅー、引き分けだな」
「賭けはどうする?私的には両方叶える方向で良いと思うんだけど」
「却下。両方叶えない方向だ」
俺の場合は別に花蓮に頼む必要がないからな。
「ぶぅー、お兄ちゃんはケチだね。こうなったら夜中にベッドに痛い!」
「やめろ」
俺は花蓮が最後まで言い切る前にチョップした。
ただでさえお義兄さんに気を遣っているのに、これからは花蓮にも気を遣わないといけないのか。大変だな。
いや、花蓮を言い訳に部屋のセキュリティを強化すればお義兄さんを出し抜くことも出来るか。
模擬戦なので二人共、本気は出していません。二人の奥の手はまた別の機会に書きます。
では感想待ってます。