イリナが顔を真っ赤にしながら走り去った後、することもないのでルフェイとせんべいを食べていると、どんどん部員が集まってきた。
そして今は修学旅行の話で盛り上がっている。リアス・グレモリーが京都好きらしい。正直、どうでもいい。
俺が気になっているのは別のことだ。
段ボール箱に入りながらゲームをしているギャスパーが明らかに俺から視線を逸らしている。
体育祭の日の夜から、ずっとこの調子だ。俺としては仲良くしたいんだが中々上手くいかない。
花蓮とは普通に話しているのに。心が折れそうだ。
そして、もう一つは頬を赤らめながらちょくちょく俺を見ているイリナだ。俺がイリナに視線を向けるとすぐに目を逸らす。
水道でひたすら顔を洗っているところをゼノヴィアに見付かって強制連行されたらしい。
何故、顔を洗っていたのだろうか?謎だ。
とりあえず今はギャスパーだな。イリナはもう少し時間を置いた方が良い。
「おーい、ギャスパー。お菓子でも食べないか?」
「ヒィィッ!いいですぅぅぅっ!」
俺が近付くとギャスパーはゲームを置いて怯えながら体を隠すようにする。
「良いのか。じゃあ、ほれ」
俺はギャスパーにお菓子を差し出す。
「そういう意味じゃないですよ!また甘い言葉を言って僕に変なことをするつもりなんですね!?」
「しねぇよ。俺が可愛い男の娘の嫌がることをするわけないだろ?」
大体、甘い言葉を言ったのは俺じゃなくて小猫だ。
「嘘です!だって僕が嫌だって言ってもやめなかったじゃないんですか!?」
「だって口では嫌がっていても気持ち良さそうにしていたじゃないか」
仮にギャスパーが本気で嫌がっていたとしても途中で止められた自信はないけどな。
だってギャスパーの怯えながらも何かを期待している表情が俺の嗜虐心をくすぐる上に物凄く可愛かったのだから。
もう性別とか関係ない。あの表情を見て我慢できる奴がいたら見てみたい。もしそんな奴がいたら、そいつは間違いなく精神が壊れている。もしくは目が見えない奴だ。
「いや……それは、その……」
ギャスパーが口に手を当てて顔を赤らめながらモジモジしている。
ヤバイ。物凄く可愛い。鼻血が出そうだ。
気付いたら小猫が隣にいて鼻血を流していた。
「……小猫ちゃん、どうして鼻血を流しているの?」
「ギャーくんが悪い」
「何で僕が!?」
「確かにギャスパーが悪いな」
「先輩まで何言ってるんですか!?僕、何もしてませんよ!」
いやいや、可愛いはそれだけで罪なんだ。ギャスパーはそれを理解するべきだ。
「というわけでギャーくん、今夜は一緒に寝よう」
「……何がというわけで、何だ?」
全く話に脈絡がないじゃないか。
しかもアプローチが直接的すぎる。よく俺の前でそこまでハッキリと言えたな。
「……何ですか、霧識先輩。先輩は他の女を抱くのに、私には他の男に抱かれるなって独占欲丸出しの発言をする気ですか?」
「それはしないけど……」
本当はしたいけど。でも小猫が言うように俺は他の女も抱いているからハッキリ駄目とは言いづらい。
いや、俺なら気にせずハッキリ言うな。そんなの我慢できるわけがない。
だがギャスパーは例外だ。むしろ歓迎する。
もちろん部屋は盗撮させてもらう。
おっと想像しただけで鼻血が。
「どうぞ」
「どうも」
小猫がティッシュを差し出てきたので俺は受け取るとそれで鼻を塞ぐ。
ギャスパーといると鼻血が出過ぎて困るな。そのうち出血多量で死ぬかも。
「……え~と、小猫ちゃん。目が何か本気なんだけど変なことはしないよね?」
「大丈夫、ギャーくん。変なことなんてしないよ。するのは気持ち良いことだから」
完全に犯罪者の言い分だ。
「いやぁぁぁっ!絶対に何かするつもりでしょぉぉぉっ!」
またギャスパーが時間を止めて逃げようとしたので俺は瞬時にポケットからギャスパーの目を封じる特別製の眼鏡を取り出してかける。
「ちょ、何するんですか!?」
「いや、逃げようとしたから」
俺はあの夜、ギャスパーには例外的に嫌がらせをしようと決めた。だってギャスパーは弄られている時の方が輝いているのだから。
さっきの台詞と矛盾するようだが、あっちの方が嘘だ。俺は昼休みにイリナが言ったように基本的に嘘つきなのだ。
「それにギャスパーは何を言っているんだ?」
「……な、何がですか?」
ギャスパーが警戒心丸出しで俺に聞いてきた。
「男ならこんな可愛い女の子に誘われて嫌がるなんて有り得ない。本当に玉、ついてんのか?」
「ついてますよ!見たじゃないですか!?」
確かに見たな。でも男というよりふたなりの女の子にしか見えなかった。
いや、ちゃんと調べてギャスパーが男だということは分かっているが。
「だったら、ここで男らしいところを見せるんだ。そうすれば俺も小猫もギャスパーに性的な嫌がらせをすることがなくなる……かもしれない」
最後はボソッとギャスパーに聞こえないように言った。
仮にギャスパーが男らしいところを見せたとしても見た目が可愛いという事実は変わらないから嫌がらせは続くだろう。
「……本当ですね?本当に僕が小猫ちゃんを相手にして男らしいところを見せれば嫌がらせをしなくなるんですね?」
ギャスパーが少し考えてからそう返事した。
「ああ、約束する」
「……私も」
話を聞いていたルフェイとレイヴェルが後ろから疑うような視線を向けてきている気がするが気のせいだ。
「……分かりました。では今夜、二人に僕の男らしいところを見せてあげます!」
よし、チョロい。俺は心の中でガッツポーズをする。
後、見るのは二人じゃないけどな。まぁ、それは言う必要ないだろ。
「今、学園祭の話をしているのだけど霧識くんは何をする予定なの?」
急にリアス・グレモリーが話かけてきた。恐らく言葉の裏には『今度は何を企んでいるの?』という意味が隠されているだろう。
「学園祭は個人出店するつもりだ」
「個人出店?そんなの出来たかしら。聞いたことがないのだけど」
「無理だ。だから現在、会長と交渉している」
意外と会長が手強くて手こずっている。会長には写真が通じないからな。会長にも好きな人がいれば簡単に事が進むのに。
最終兵器はあるが出来れば使いたくない。
「ちなみに内容は『勝負の館』を予定している。ジャンルは何でもいいから俺に勝てば金券一万円分をプレゼント。生徒以外の人も参加できるようになっている」
生徒で俺に勝てる可能性があるのは小猫のゲームと会長のチェスぐらいしか思い付かない。
もちろん勝負内容は一般の生徒に見られても困らないものに限る。
当日は勝負三昧で楽しいことになりそうだ。間違いなく匙は挑戦してくるだろうし弄って遊ぼう。
これは何としても交渉を成立させないといけない。
部活終了後、俺は家でゴルフゲームをしている。
小猫と花蓮は英雄派のメンバーがこの町を襲撃してきたので、そっちの対処に向かっている。
ちなみにヴァーリ達は別のところを襲撃している英雄派の相手をしており、黒歌はそれに付き合っている。
だから俺以外で部屋にいるのはルフェイ、レイヴェル、オーフィス、レイナーレの四人だ。
「ところで霧識さん、皆さんのお手伝いをせずにゲームなんかしていて良いんですの?」
俺の膝の上に乗って真正面から抱き付いているレイヴェルが今さらな質問をしてきた。
前に黒歌がゲームで勝った人は次のゲームが終わるまで俺に何でもし放題という提案をしてから、毎回そのルールでやっている。
それでさっきのゲームでレイヴェルが勝ったから俺に真正面から抱き付いている。ルフェイは後ろから好きだがレイヴェルは前からが好きらしい。ただ二人とも俺の体を舐めてくる。というより現在進行形で俺の首元を舐めている。
気持ち良いけどゲームに集中できなくて困っている。
「今日の相手は影男だからな。アイツには会いたくない」
あいつ、俺が曹操と喋ってると凄い睨んでくるからな。本当、やりづらい。
ちなみに影男が来ることは昨日、ジャンヌと電話した時に聞いた。俺を倒すのが目的らしい。だから俺は今、ここにいる。
にしても相変わらず情報が筒抜けだ。まぁ、本当に重要なことは言わないけど。
「相手の人と知り合いなんですの?」
「俺が前に禍の団の協力者のふりをして内部から色々と弄って遊んでいたのは知っているだろ?」
「……後半は知らなかったですわ」
レイヴェルが呆れたように言う。
後半の方が重要なんだが。
「まぁ、その時に知り合ったんだよ」
「その人はどんな人なんですの?」
「影を操る神器を所有していて結構厄介な奴だ」
性格も合わせてな。
でも、あいつの神器は面白い。神器のデータは取ってあるしユーグリットにでも頼んでレプリカを作ろうかな。
「ところで、ご主人様。その人が来ることを何故、知っていたんですか?」
レイナーレが嫌らしい笑みを浮かべて言ってきた。
この野郎、余計なことを言いやがって。
あ、しまった。動揺したせいでボールがバンカーに。
「……どうして知っていたんですの?」
何故か胸を押し付けて首元を更に激しく舐めながら質問してきた。
そんなことされたらゲームどころじゃなくなるからやめてほしい。ここにはオーフィスもいるんだぞ。
「いや、え~と……その」
「……また女ですの?」
俺が答えに戸惑っているとレイヴェルがそう言った。
何故、毎回そこを疑われなければいけない。
ただ、こんな状況だから精神を落ち着かせようと頑張っているだけなのに。
「大丈夫だ。そいつはショタコンの可愛いもの好きでな。趣味が合うから仲良くしているだけだ」
「でも、前にホテルに誘われていましたよね?」
レイナーレが更に火に油を注ぐようなことを言う。
「てめぇ……、何が目的だ?」
「ご主人様に苛められるのも良いですが、たまにはご主人様を困らせるのも面白いと思いまして」
また新しい性癖に目覚めてやがる。
進化する変態に俺はどう対応すればいいんだ。
「……で、ホテルに行ったんですの?」
「行ってない。それよりも面白いものがあったからな」
あの時はジャンヌなんかよりも帝釈天と仲良くなることを優先していたからな。
「まぁ、いいですわ」
「っ!?」
レイヴェルが俺から体を離したかと思うと、いきなり俺の頭をもってキスしてきた。
「毎回、嫉妬するのも疲れますし。私が他の女性よりも霧識さんにとって忘れない存在になれば問題ありませんわ」
いや、俺がレイヴェルを忘れることは有り得ないが。
て言うか、この流れは。
「レイヴェル様だけズルいです。ここは私もご主人様にキスします」
「では私も」
「我も」
予想通り他の三人も参加してきた。
おい、オーフィス。次はお前の番だぞ。
って言っても聞かないだろうな。
ハァー、ゲームどころじゃなくなったな。だが一番ツラいのはそこじゃない。
オーフィスがいるから我慢しなければならないところだ。我慢できるかな。
ギャスパーがより大変なことになってきました。彼が最終的にどうなるのか心配です。
では感想待ってます。