「継承者の敵よ、気をつけよ……。」
マルフォイさんが反芻する。
「驚いたよ。グリフィンドール生のなかにスリザリンの継承者がいるなんて」
とハリーさんのほうを見た。
「これは違うんだ」とハリーさんが弁解するが、フィルチ先生がその騒ぎをききつけてやってきた。
「わたしの猫だ! わたしの猫だ! ミセス・ノリスに何が起こったというんだ?」
そうだ。
文字のある壁に吊り下げられている猫は、フィルチ先生の愛猫、ミセス・ノリスだった。
その後、先生はハリーさんに対して「殺してやる!」と叫び、それを、やってきたマクゴナガル先生とダンブルドア先生がいさめ、ハリーさんたち三人とフィルチ先生を連れてどこかへ移動していった。
「秘密の部屋ってなに?」
「恐怖を解き放つ、サラザール・スリザリンの遺産だよ」
サラザール・スリザリン。
ホグワーツ創設者の一人。
ということは、スリザリンの継承者とは、厳密にはサラザール・スリザリンの継承者ということだろうか?
‐‐‐
あんなことがあっても、ハリーさんは動じなかった。
クィディッチの試合では、
ニンバス2001を持つスリザリン生たちと互角以上に渡り合った。
マルフォイさんと競り合いながら、互いにシーカーとしてスニッチを取り合っている。
やはり、箒に乗るマルフォイさんは美しかった。
途中から、マルフォイさんがこちらを見た。
目が合って、
息を吸った。
このときから、マルフォイさんの動きが見違えて変わった。
もとよりハリーさんよりも優れた箒に乗っていたが、どこかその速度に体が馴れず危なっかしかった彼女の動きが洗練されたものに変わる。
でも、ハリーさんも負けていない。
互いに渦を巻くようにジャイロ回転のように軌道を描いたり、壁スレスレでつま先を横断幕にこすりながらカーブしたり、ブラッジャーを体を曲げて躱したりしながら、競り合っていた。
会場のほとんどの人たちの目が、マルフォイさんとハリーさんに向けられていた。それぐらい、劇的で縦横無尽だった。
だが、最後にスニッチを取ったのは、ハリーさんだった。
地面スレスレでスニッチを拾ったのだ。
速度がニンバス2000を上回っていたマルフォイさんは、そんな近くまで地面に降りることはできなかった。それが差を分けたと思う。
試合が終了したあと、マルフォイさんのもとへ行った。
汚れているからとハグを断られたが、気にせず抱きついた。
正直、見ていてヒヤヒヤしたのだ。
クィディッチはかなり危ないスポーツ。マルフォイさんがその道を選ぶなら止めることはできないが、それでもやはりこうやって無事を喜ぶことはしたかった。
「なんだか勝った気がしないよな」
「そうだね」
ロンさんとハリーさんたちが、微妙そうな顔をして通り過ぎた。
‐‐‐
その日、コリン・クリービーというグリフィンドールの少女が、石像になった。
彼女のことは覚えている。マルフォイさんが呪文をかけられたときにそれを撮ろうとしていた1年生だ。
月曜日の朝、
大広間は噂話でもちきりだった。
コリン・クリービーはスリザリンの継承者に襲われたのだと、皆もっぱらその話ばかりしている。
継承者の魔の手が生徒にも及んだということで、一部の生徒は怯えてしまっている。
ネビルさんなどは、まさにその一例だった。
なぜか玉ねぎを頭に巻いて、手には何かしらの水晶、何かしらの生物の尻尾を握っている。
古代の時代の祭司みたいだ。
誰かがネビルさんに、「君は純血なのだから襲われるはずはない」と言った。
「スリザリンの継承者は、きっと、純血でないものを狙っているんだ」
マルフォイさんがそう教えてくれた。
純血。
家系図のなかに、
脈々たる魔法族のみの一族であること。
サラザール・スリザリンが広めた思想だ。
「だから、純血である私たちは大丈夫だろうね」
そういってマルフォイさんがボクの頭を撫でた。
なぜか横にいたゴイルさんもボクの頭を撫でた。
‐‐‐
魔法薬の授業。
いつもマルフォイさんが加点されてハリーさんやロンさんたちが減点されるこの授業で、
不思議なことが起こった。
ゴイルさんの鍋が爆発したのだ。
その日は膨れ薬という魔法薬を調合する授業で、
花火のようなものがゴイルさんの調合していた鍋に入ったかと思うと、爆発した。
マルフォイさんはすでに参考書などを大事そうに抱えて伏せていた。
ボクは近くにいたパンジーさんをローブで覆った。
いつかのマルフォイさんがやっていたことだ。
爆発はとんでもなかった。
でも、その殆どは、鍋の前に座っていたゴイルさんの、その蓋をせんばかりの巨乳にぶちあたった。
それでも隙間から飛んだしぶきが教室中に舞い、降り注いだ。
ゴイルさんは反射的に顔を袖で覆ったようだ。
だけれど、他の生徒たちは阿鼻叫喚の地獄絵図になっていた。
鼻が膨れてしまった子、ほっぺたが膨れてしまった子、唇が膨れて話せなくなった子。
何も被害がないハリーさんが、なんとなくいじわるそうな表情をしているのが見えた。
もしかしたら、ハリーさんが主犯者なのかもしれない。
ネビルさんはピエロのように鼻を膨らませてしまっていたが、むしろ可愛かった。
「静まれ! 静まらんか!」
スネイプ先生がかっこよくそう言って、あたりを鎮める。
「薬を浴びた者は『ぺしゃんこ薬』をやるからここへ来い。誰の仕業か判明した暁には……私が、間違いなくそやつを退学にさせてやる」
かっこいい。
ボクもああいう雰囲気の出せるクールな大人になりたいものだ。
みんなが並んで、スネイプ先生からぺしゃんこ薬を処方してもらった。
ただでさえ巨乳だったゴイルさんは膨れ薬によって爆乳どころではないサイズと化し、
ボクの頭の上に胸を乗せていた。
ハリーさんが怪訝な瞳でボクたちを見ているのがわかった。
‐‐‐
最近、マルフォイさんがボクのベッドに入ってこなくなった。
どうやら、自分のベッドで勉強をしているらしい。
クィディッチでは負けてしまったから、勉学で挽回しようということだろうか?
「マルフォイがいないなら、私たちが入っても問題ないわけだな」
という理論で、
ボクのベッドには、
マルフォイさんではなく、クラッブさんとゴイルさんがいる。
「あ、えっと、…………」
「大丈夫、何もしないから」
「そうだ、何もしない」
三人いると、さすがに狭い。
川の字で寝るのは難しそうだった。
「こうすればいい」
と、
ゴイルさんが横になった状態でボクを抱きしめる。
その後ろから、クラッブさんが抱きしめる。
ボクは二人にサンドされてしまっていた。
顔と後頭部を、二人の大きな胸で圧迫されている。
胸で窒息する。
もごもご、と抵抗するが、非力なボクでは彼女たちを押しのけることなどできないし、ベッドから落ちてしまうことを考えると、強く抵抗する気もおきなかった。
「今日私の胸乗せられて幸せそうだったよな」
と、ゴイルさんが言う。
バレていたようだった。
ぎゅううう、と背中に回した手を引かれ、強く抱きしめられる。
ボクのお腹に手を回しているクラッブさんも同じように抱きしめてくる。
身動きがとれないくらいガチガチに挟まれている状態なのに、頭を動かせば前からも後ろからもふにふにと柔らかな感触が伝わってくる。
ゴイルさんの甘い香りにつつまれて、どうにかなってしまいそうだった。
もぞ、とゴイルさんが足を動かす。
そのつま先で、ボクのつま先をゆっくりと撫でた。
「子ども何人欲しい?」
「何人欲しー?」
前後から、
声が、胸ごしに頭に響く。
もしかしたらボクは、猛獣たちの棲まう檻のなかに入れられてしまったのかもしれないと思った。
ふいに、
足を動かしていたゴイルさんが、バランスを崩す。
ベッドから転げ落ちそうになったゴイルさんを、ボクが彼女の腰に手を回してなんとかこちら側に引き戻す。
すると、ゴイルさんはさらに足を絡め、ボクの髪に顔をうずめてきた。
五感すべてを占領され、
ボクはゆっくりと瞼をおろした。