TSうすほそ占い師は若者の未来を歪めながら、末吉程度に生きていく 作:うううらららららら
この世界に転生してからしばらく、私は冒険者をしてきた。
異世界で特に後ろ盾を持たない人間が生活するには、冒険者が一番なのは異世界モノの定番だ。
幸いにも転生によってチートを手にした私は、特に不自由無く冒険者をすることができた。
女になったせいで色々と面倒は発声したけど、それをどうにかすることも難しくはない。
むしろ、美しい容姿と若い肉体はそれだけで幸運だったと言えるだろう。
ただまぁ数年たっても年を取る様子がなかったことは驚きだったが。
どうやら私は、人間ではない何かに転生してしまったらしい。
そんな私だが、何年も冒険者をしていると貯蓄が溜まってくる。
すると、働く意欲という奴が薄れていってしまうわけだ。
少なくとも私は、働かず生きていけるなら働きたくない。
それは至って自然な思考だろう。
ただ、その上で私は
冒険者をする上で、私はお金だけでなくそこそこの名声も求めていたのだ。
人には承認欲求というものがあって、私だってそれは持っている。
さりとて、目立ちすぎるのは望む所じゃない、
ちょうどいい塩梅を見定めて、ほどほどに生きる。
それが私の信条だ。
そうだな、あえて私の力になぞらえて言うなら「末吉」程度の生き方がいい。
あまり”良すぎる”結果ではないが、かといって最悪では決してない、そのくらいの生き方。
そして私は、人の本質を見通す力を持っている。
私は冒険者としてある程度の金を貯めて、不自由無く暮らせるようになったことで、道楽に生きると決めた。
だからそんな末吉程度の生き方に、この力を使うことにしたのだ。
要するに──占い師なんていうものになったのである。
★
占いにおいて、重要なのは相手に占いを信じさせることだ。
そのうえでやはり、見た目というのは非常に大事。
その点私は、見た目がいいから大変お得だ。
少し着飾るだけで、如何にもと言った雰囲気の占い師になれる。
いわゆるうすほそに分類される細い身体に、透き通るようなプラチナブロンド。
顔立ちは人形のようだが、目元を隠して笑うとどこか妖艶にも見える。
そこにフードを含めたテンプレ占い師衣装を組み合わせたのが、今の私だ。
何とも似合っているというか、それっぽいというか。
声をかけた相手に”胡散臭い”と思わせることには成功している。
「──もし」
「んひゅえっ!?」
今日も今日とて、眼の前を横切った未来ある若者に声をかける。
長い長いうさみみがへにょっとしている、黒髪の幼げな獣人少女だ。
騎士服とそこそこ立派な鉄の鎧。
それでいて腰に銅の冒険者証を付けていることから、騎士見習いが社会勉強のために冒険者となったパターンかな。
よくあるやつだ。
「そこのお方──貴方には、輝かしい未来が待っています」
「へ、へう……」
「ですが、道を間違ってしまえば、その未来は永劫訪れないでしょう──」
「ひえぅっ!」
どこかもったいぶったような言い方。
占い師を初めてから身につけた喋り方だ。
素はもう少し軽いんだけど、占い師をし続けているうちに素も侵食されてしまっていた。
さて、私に声をかけられた騎士見習いの少女は、怯えた様子でこちらを見ている。
「そう驚かないでください。何も私は貴方を陥れようとしているわけではありません」
「で、でも……し、知らない人に声をかけられたら、つ、ついていっちゃいけないって言わました!」
「でしたら、そこでお話を聞いてくださるだけでも結構です。私はただ、貴方の未来を占っているだけなのですから──」
「う、占い師……さん? なの?」
ええ、とにっこり微笑んで頷く。
今回の相手は、警戒しているように見えて世間知らずなのが透けて見える。
おそらくそこそこいいところのお嬢様。
騙すのは……おっと、話を聞いてもらうのは簡単だ。
「ええ。それにお代も結構です。ただ、私の言葉を未来への礎の一つとしていただきたいだけ──」
「そ、それくらいなら……」
かかった!
いやなんというか、これは流石に騙されやすすぎだと思うけどね。
多分本来なら、お目付け役がいるんだろうけど、一人でいるところに私が目をつけてしまったわけだ。
やれやれ、最初に声をかけたのが私でよかったね。
私はやっていることはともかく、ここから先は本当にただの親切なんだから。
無責任な、という言葉が付随するけど。
「──貴方には、素晴らしい魔術の才が眠っています」
「えっ!?」
「意外ですか? 今まで、魔術を習ってこなかったのですね」
さて、私の目には彼女の中に渦巻く大量の魔力が
更にはなんとなーくだが、彼女が感覚で何でもこなしてしまえる器用さがあることも。
おそらくはそれで剣士としても才覚を発揮しているのだろうが、これだけの魔力量を持つなら本領は魔術師だ。
いいところの生まれなのに魔術を習っていないのは、おそらく家のせい。
「だ、だって……わ、私のイストール家は代々騎士の家系だから……魔術なんて習う必要なかったし……」
「なるほど。ですが──確かに貴方には魔術の才能があります」
「……だとしても、わ、私は騎士になりたい! 剣をふるい、我が家の誇りを守りたい!」
どうやら、騙されやすい性質のようだけど、意思は強いようだ。
いいね、そういうのは嫌いじゃない。
これはこの世界に転生してから身についた嗜好なのだけど、私は純粋な強者より強い意志を持って逆境に抗う弱者のほうが好きだ。
そしてそんな人物が、大成してただ強いだけの人間を打ち負かしてほしいと思っている。
彼女には、その素質があるようだ。
まあ、弱者というには才気がだいぶ溢れてるけどね。
「別に、騎士が魔術を使っちゃいけない決まりなんてないでしょう? 魔術は杖や詠唱を伴わずとも、使うことができるのですよ?」
「えっ?」
「私のあとに続いて口にしてみてください。これは簡単な光を生み出す魔術です。それを──今からあなたが使って見せるのですよ」
「あ、あ、えっと」
「使うときに、身体を強化するよう魔力を放出することを忘れずに」
私に言われるがまま、少女は手を前にかざす。
いいですよ、と優しく微笑んで見せてからそっと言葉を紡ぐ。
「光よ、形を得よ」
「ひ、光よ、形を得よ!」
すると、二人の指先に小さな光が灯った。
時刻は夕刻、煌々とあかりは周囲を照らし、少女の顔を輝かせる。
「わ、わあ!」
「どうです? 次は先ほど魔術を発動した時に感じた魔力の流れを、言葉を使わずに再現してみてくださいな」
「は、はい!」
詠唱はあくまで魔術の発動サポートだ。
本人がその制御方法を理解していれば、なくても魔術は発動する。
そこに彼女の素質が加われば──
「で、できた!」
「ふふ、素晴らしいですね──」
成功させるのは非常に簡単だ。
何より彼女は本人がやる気になればなるほど、才覚が発揮される性質らしい。
普段の彼女はかなり弱気で、そのせいで才覚を発揮できずさらに自己評価が低くなる。
しかし今は私がしっかり自信をつけさせているから、失敗はありえない。
「さあ、道は拓かれました。あとはあなたの意思次第。どうか、虚ろなる道に迷いませんよう」
「あ、ありがとうございました!」
うんうん、これで完璧だ。
いやぁ今回もいい仕事をしたぜ。
と思っていると──
「あなた、ラピアお嬢様に何をしているのですかああああああ!」
不意に、侍従らしき少女が飛び込んできた。
燃えるような赤い髪に、メイド服の上から騎士の鎧を身につけたような格好。
勝気で小柄なウサミミ少女とは対照的に色々豊満な少女である。
で、その少女は私にこういった。
「また幼い子をたぶらかしれるのですか、ミシェル・レガルタ!」
あーーーーーー……私が昔占った誰かなのか、この子。
……誰だろう。
イヤね、占い師を始めてから数年。
気が向いたら若者に未来を指し示してきたわけだけど、余りに数が多すぎて、正直全員は覚えられません!
ごめん。
口に出したら殴られても文句言えないので黙ってます。
ちなみにミシェルが私の名前。
私は気づいたら人外うすほそになってたけど、そのときどうしてか自分をミシェル・レガルタという名前だと認識していたのだ。
前世の名前を名乗るとミスマッチなので、この名前を使わせてもらっている。
「ふふふふ……そう怒らないでください。彼女の未来は、すでに明るいものになって居ますよ」
「
「お、落ち着いて、落ち着いてファリナ! わ、私なにも変なことはされてないよ!」
「アレキサンダーはオリハルコンランクの冒険者! ニーナは魔術大学で講師! 私に至ってはスラムの孤児からラピア様の従者に取り立てていただきました!」
「……それ、何か問題あるの? ファリナ?」
えーと……アレキサンダーはあのアレキサンダーか。
ニーナは多分、パン屋の娘さんかな?
で、この子はえーっと……ああ、
はえー随分と大きくなったなあ。
で、私としてもみんな随分と出世したと思うけど、何が問題なんだろう。
「……休みが、取れません」
あ……
「あまりに早い速度で出世してしまったせいで、我々は休みを取る方法を学べませんでした。お嬢様……その女は危険です。このままではお嬢様が過労で倒れてしまいます!」
「え、えと……頑張りすぎなければ、そんなに問題ない……よね?」
「………………はい」
あ、うん。
──こうして、私は今日も若者を導いていたら、懐かしい人物に再会した。
果たしてこの再開は、末吉を望む私の人生に、どんな変化を見せてくるのかな?
まあ、若者の成長を見守りつつ、ほどほどに生きれればそれでいいや。
犯罪系占い師が適当に生きるお話。