仙術を用いての治療は一進一退の様相だったが、小猫の通話を耳にした瞬間に気持ち悪い嫌な予感に苛まれた。ソーナからアーシアの神器について聞かされていたので木場の助かる見込みの算段はついたが問題は彼女の住んでいる場所だった
「(確かホームステイしてるって)」
謝られた日に桐生が口にしていたことを思い出した。転生悪魔だとしても暗い夜道を女の子だけで向かってくるのは有り得ない、ほぼ高確率で兵藤が付き添ってくるだろう
「(あいつを上げさせたくないよ~)」
今の状況を見られたら確実にトラブルが発生する。あの変態悪魔を招き入れるぐらいなら野生のアシダカグモをもてなす方がマシだ!人類の天敵である『G』を捕食する益虫で、不快害悪魔の兵藤より人気ランキングが上なのは言うまでもない
「そっちはアーシアさんが来るのを外で待っていてくれ、もし兵藤がいたら部屋の中には絶対に入れさせるな!」
「分かりました」
言葉の意味を察してくれて涙が出そうになる。部室でのやりとりを見ていたが神滅具を持っていてもヒエラルキーは小猫の方が上であることを把握していた。もし強引に入ろうとしても腹にワンパンを決めてくれれば静かになるはずだ
「助かりますよね?」
「それを今からやるんだ!」
ヒーリングスライムと意識を同調させて仙術で失った臓器の働きを代用する。初めてのことで自分でも何が出来るのか分からないが、今ある手札を最大限に利用し生命の制限時間を延ばすことに尽力していた
大粒の汗を流しながら奮闘していると呼び鈴が鳴った。宅配業者ではなく待ち望んでいた彼女だったが予想通りオマケも付随している。小猫は玄関の外へ出るとアーシアを招き入れて兵藤の行く手を遮るように腕を大きく開いた
「小猫ちゃん通してくれ!」
「駄目です!絶対に入れるなと言われました」
「アーシアがあいつに襲われたらどうするんだ!」
彼は険しい表情で詰め寄るが小猫は決してドアの前から離れようとはしなかった。その強い意志に軟派な心しか持たない兵藤は数歩だけ引いてしまうが、アーシアや木場のことが心配で堪らない
「呼んでもいないのに何で来たんですか?」
「…っ!それはアーシアだけじゃ、こんな暗い時間に1人で―――」
「タクシーを使えば問題ありませんよね」
渋滞せずに辿り着けたか微妙なラインだが夜道を駆けてくるより安心な手段である。もしアーシアに手持ちが無かったとしても、送金アプリで彼女の口座にタクシー代を与えることも問題無く行える。考えれば最短・最速の手段が存在するのに何も思いつかなかった兵藤を小猫は冷たく見つめるのであった
部屋に入ったアーシアは声を頼りに浴室へ向かった。そこにはクラスメイトの廿六木と全身をスライムに包まれた重症の木場を見て悲鳴をあげそうになったが彼女は耐えた。汗だくで呼吸の粗い轟はその姿を見て少しだけ安堵する
「…やれるよな?」
「任せてください!」
腕まくりをしてアピールをするとアーシアはスライムの中に腕を没入させて木場に触れた。彼女の持つ『聖母の微笑』が発動しボロボロで命の火が消えそうになっていた彼の顔に生気を取り戻させる。轟もありったけ力で仙術を流し込み治療は完了した
「あの、大丈夫ですか?」
「無理…ここまで頑張ったのは初めてだ」
ガス欠に陥り疲労困憊で床に座り込んでしまった。木場をスライムの中から取り出してリビングのソファに寝かせてから改めて彼の体を確認する
「あんな酷い怪我を一瞬で治すなんて、凄い神器だな」
「でも…右腕が」
欠損した部位はそのままで切断面が修復されたに過ぎなかった。アーシアの『聖母の微笑』は怪我からの回復においては無類の効果を発揮するが、完全に失った手足の再生や疲労回復といった方面は対象外であった
「いったい何があったんですか?誰がこんなことを」
「詳しいことは聞いてないけど、1年の女の子が見つけたときには倒れていたって」
暴漢に襲われたとしても木場の脚力なら並大抵の人間は追いつくのは不可能である。つまり戦わざるを得ない状況に陥っていたということだが、彼に瀕死の重症を負わせるほどの一般人がいるとは思えないので人外であることは確定する
「…聖剣」
「せいけん?」
轟は握り拳を作ってパンチのモーションをするが場違いであることに気付いた。アーシアの口から堕天使が聖剣を盗んで駒王町に潜伏していると語られ、木場は討伐に訪れた
「どっちかに出くわして返り討ちにされたのか」
「私たち悪魔は十字架や聖水といった神の加護に関わるモノや事象で痛みを受けます。聖剣で斬られれば肉体が消滅することも―――」
「手加減されたか嬲られたか好ましくない状況だな」
立ち上がろうとするが怠さと疲労感で、目まいを引き起こしてしまい倒れそうになるがアーシアは身を挺して支えてくれた。それは彼女の肩を借りる姿になってしまった
「ごめん、すぐに」
「いえ…祐斗さんのことを助けていただきありがとうございます」
彼女は轟に対して『聖母の微笑』を使った。疲労回復の効果は持ち合わせていないが今のアーシアが出来る最大限の感謝という気持ちで発動させた。しかし間の悪いことに兵藤が『赤龍帝の籠手』を顕現させてドアを殴り飛ばして土足で侵入してきた
「アーシア!だいじょぉ―――」
目の前に映る光景を見て兵藤は固まってしまった。片腕を失って寝ている木場よりも彼女に抱きつくようにもたれ掛かっている廿六木に対して考えるよりも体が先に動いた
「アーシアから離れろ!クソバケモノッ!」
籠手を纏った左手で顔面を殴り飛ばした。治療で力を使い切っていたこともあり防ぐことが出来ずにフローリングの上に転がってしまう。兵藤はアーシアのところへ駆け寄ろうとするが拒絶された
―パチン!ー
平手打ちで頬を叩かれた。突然のことで理解することが出来なかった。変態行為や覗きで学園の女の子たちから殴られたことは星の数よりも多かったのに今まで一番痛かった
「…シア、なんっ―――俺は」
問い掛けに答えることなく彼女は倒れている轟を膝枕に乗せると回復させた。近隣住民に対して説明を終えた小猫が兵藤の背後から現れて状況を把握しようとする
「アーシア!そんなバケ―――」
「廿六木さんのどこがバケモノですか?この人は祐斗さんの恩人で人間です。もし神器保有者のことをバケモノと呼ぶのなら私も同じですね」
「ちがっ…アーシアはそんな」
部室で神滅具を披露したときに彼が廿六木に対して罵った言葉に心を痛めていた。自分に対して害悪な存在を貶す姿に助けてくれたときの輝きは全く無かった。なおも近付いてくる兵藤を手で跳ね除ける
「すいません、シャツを1枚お借りできませんか」
殴れた部分が痛むのでハンガーで干されている服に人差し指を向けた。彼女はそれを手元に引き寄せると混濁する意識で微睡んでいた木場に着させて小猫にタクシーの手配を頼む
「祐斗さんの危機を救ってくれてありがとうございます。また改めてお礼を言いにきますので」
「アーシア?帰るんだな、じゃあ俺が」
「近寄らないでください
彼女の瞳に自分を救ってくれたヒーローは映らなかった。冷酷な視線は侮蔑と共に今までの関係を切り離す刃となって2人の仲を裂いた
「ちがっ…違う、違うんだ俺は…アーシアは別に」
「今までありがとうございました。廿六木君と小猫ちゃんが頑張ってくれたので私も祐斗さんの為にひと肌脱ぎます。おじさまたちには私の口で伝えますので」
目の前で昼ドラのような出来事が起きている。兵藤に殴られた彼も登場人物の一人なのだが完全に蚊帳の外である。言葉から推察すると兵藤の家から出ていって負傷中の木場のことを介助をするみたいだ!小猫がタクシーの到着を知らせるとアーシアは肩を貸して部屋から出ていった
「…シア、アーシア!待ってくれ」
ようやく状況を理解した彼は走って追いかけていくがタクシーは既に発進していた。最後まで残っていた小猫は今回の治療に関する報酬を明日届けに来ると言って消えていった。木場とアーシアは構わないけど靴で汚れた部屋の清掃は放置されたままで、ため息を深く吐いた轟はスライムを創造し足跡を吸着させながら厄日が終ることを喜んだ
よくよく考えたらライザーとのゲームをやっていないので、原作のように一誠はリアスと同居していませんね(作中で起きる可能性はゼロに等しいですが)
フリードの倒し方は思いつきました。あとは展開づくりですね
一誠のハーレムは彼の妄想の産物ですね
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
作品評価もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
明日は菊花賞、三冠馬を予祝するぞ ロブチェン
独自設定として神器・神滅具所有者は転生悪魔と同じように「言語」の壁が無くなる
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問題無い
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問題大有りだ