週休二日制が導入されたときに日本の経営者は『1日休養、1日教養』を打ち出した。自己成長と健康的な生き方の指針となったが、休日出勤の土曜日に夜勤で働いて月曜日が朝勤だったら24時間も休めないボロボロの状態で週末まで頑張らないといけない、そして駒王町には当てはまる人間がいた!
「………だる、い」
前日に担ぎ込まれた木場を助けた轟は布団の上でくたばっていた。仙術を用いた治療で今まで試したことのない延命措置を実践したことで施術した側が死に掛ける有様だった。ガンダムSEED風の表現をするなら動力源のバッテリーが切れてしまいフェイズシフトが維持できなくなった状態である
「そういえば何時に…来るんだっけ?」
小猫が治療の報酬を持ってくると口にしていたが時間までは伝えていなかった。受け取るだけなら問題ないが彼女は轟の使用していた仙術に興味を向けていた。渡すついでに尋ねてくると思われるが今日は話したくない気分である
「すまん、ちょっといいか?」
『どうした?』
腕を伸ばして枕元の置かれていたスマホを手に取ってLINEアプリのアイコンをタップすると匙の名前を押した。彼に昨日の出来事を伝えたら『看病行こうか?何が欲しい?』と返してくれたが、日曜日を野郎の看病で潰させるのは悪いので丁重に断った
「そっちの方から会長さんに報告してくれないか?連絡先知らなくて」
『いいけど本当に大丈夫か?ヤバかったら、いつでも呼んでくれ』
「ありがとう。聖剣と堕天使には気をつけろよ」
会話を切り上げるスタンプを押しあってアプリを閉じた。轟は小さい猫型魔獣を創造し栄養ドリンクやゼリー飲料を持ってくるように頼んだ
『ドララ~』
右手を上げて敬礼のようなポーズをすると与えられた任務をこなすべく魔獣は台所に向かう。それを見送った轟は枕に顔を埋めて明日の展開を想定する。匙が間違いなくソーナに伝えてくれたら生徒会室に呼び出されて事情聴取になるだろう。問題はそこにリアスたちがいるのか?
「(配慮してくれるが無視して押し通してきそうだな)」
超がつくほどのワガママ女であり自分の意見が正しいと思い込んで、木場の治療に対して頭を下げて礼を述べることは絶対にしないと断言できる。それこそ『堕天使から守ってあげるから下僕になりなさい』と言いそうだ
「(そういえば聖なるものが弱点って)」
アーシアの言葉を思い出して身の回りにある聖なるものを探したが何もなかった。入信していないのに一人暮らしの学生の部屋に十字架や聖書なんて置いてある方がおかしい、買いに行くのも面倒くさい
「(流石にアレは駄目だよな)」
担保して預かった聖遺物のある押入れに視線を向けるが持ち運びに不便なので除外した。YouTubeで聖歌を流すことも検討したが生徒会の面々にもダメージが入るのは避けたいところだ『魔獣創造』で聖なるモンスターを生み出すのも、存在させることでソーナたちに不快な思いをさせてしまう。とりあえずその件については後で考えることにした
『ドラッ!』
栄養ドリンクを受け取って任務を果たした魔獣にどら焼きを渡すとニコニコしながら封を開けて食べ始めた。それを見つめているとポストの中に厚めの封筒が投函され小さい足音が遠くに去っていくのが聞こえる。鳥の魔獣を飛ばして確認したが私服姿の小猫が部屋を一瞥したあとに人混みに消えていった
ー廿六木先輩へー
木場先輩の治療費を入れておきました。相場が分からないので部長が「贈り物は給料の3か月分」と言ってたのを思い出したのでそうしました。先輩の仙術について聞きたかったのですが別の機会にします。今日はゆっくり休んでください
封入されていたお礼の手紙に目を通して轟は眠りについた。空になった栄養ドリンクの瓶の横には直立した封筒が置かれ感謝の金額として破格の内容量であったことは語るまでもなかった
完全回復とまではいかないが日常生活を送る上では問題無く動けるようになった。やはりと言うべきかアーシアと木場は欠席し、今まで同じ屋根の下で暮らしていた兵藤は独り言をブツブツと口にしながら貧乏ゆすりが止まらず、松田と元浜の呼びかけにも反応しなかった
「(どうして…どうしてだ?何で)」
一誠は授業中も教科書やノートを開くことなく自問自答していた。アーシアは木場の住むマンションで一泊した翌日に兵藤家に戻ってくると荷物をまとめてスーツケースの中の鍵を閉めた
「アーシアちゃん、私たちはあなたの味方だから大変だったら真っ先に頼りなさい」
「はい!短い間でしたがありがとうございました」
呼び止めるつもりだった。そこで謝るつもりだったのに彼は目を閉じて寝てしまった。別に惰眠を貪っていた訳ではなく帰宅してから一睡もせずに謝罪の言葉を考えながら机に向かっていたがスタミナが尽きてしまう、昼過ぎに目覚めた一誠は木場の住む部屋に向かおうとしたが両親に止められてしまい家の外に出ることは許されなかった
「(………廿六木)」
カバンを持って教室から出ていく彼を視線で追いながら彼も立ち上がって後をつけるのであった
「大体のことは匙から聞きました。治療に尽力していただきありがとうございます」
「聖剣なんてフィクションの産物だと思ってましたが本当にあったんですね。岩に刺さった剣を抜いたら勇者にでもなれますか?」
「姉の話では北欧神話の勢力は、戦場に散った勇者を英霊としてヴァルハラへ迎え入れているみたいですが」
「…いるんだ勇者って」
生徒会に呼ばれた轟は最初にソーナと連絡先を交換した。昨日のように匙を経由し続けるのも悪いのでホットラインを繋ぐことに忌避感はなかった
「誰がやったと考えてます?」
「…誰とは?」
主語を抜いてしまったので頭上に疑問符を浮かべていた。彼は手刀を作って自身の肩口近辺をチョップをするように縦に斬るとソーナは理解した
「堕天使ですね。
「アレや会長さんは魔王の妹ですよね?対応してもらうことは出来ないんですか?」
「実は…」
ソーナはお皿を割ってしまった子供のように言いにくそうな表情で言葉を選びながら今の状況について説明してくれた。端的に言ってしまうと来たくても来れない世知辛い政治的な理由である
悪魔の管理する土地に他勢力が騒動を引き起こせば討伐・鎮圧の大義名分は立つ、しかし悪魔の世界にも派閥争いが存在し、冥界から魔王が配下を率いて事態の収拾を行えば任命責任が問われる。そしてリアスに駒王町の統治を命じたのはサーゼクス・ルシファーで彼女の兄だ
「第三者の立場で言いますけど、政治に身内の情を持ち込まないでください!」
「至極当然で返す言葉もありません」
更に魔王が駒王町を守るために聖剣を盗んだ堕天使を撃退すれば面倒な火種が残る。他の地域で同様のことが発生すれば助けに向かわなければならない、今回のことを特別扱いにしてしまうと反対勢力から唾を飛ばされるが、逆に全部助けてしまうと今度は実力を伴わない悪魔を任命した責任について是非を問われる
「つまり、殆ど何も出来ない?」
「………………はい、でも堕天使側も今回のことでコカビエルに匹敵する戦力を送ってくると」
「こかびえる?」
名前を聞いてもピンとこなかったのでスマホで検索したら指が震えた。てっきりイキったヤンキーみたいな堕天使が自身の強さをひけらかす為に、聖剣を盗んで暴れているのかと思ったが全然違った
「じゃあ教会の―――」
「失礼するわ!」
轟は詳細を尋ねようとするが生徒会室のドアが大きな音と共に開かれた。入室してきたリアスと背後にいた兵藤はソーナたちに近寄ると、彼女は腕を組んでイライラしたような表情で視線を向けていた
「何の用ですか?リアス」
「祐斗を助けてくれたことは感謝するわ、小猫の判断と貴方の治療が無かったら明日を迎えることは出来なかった。そして改めて言うけど私の眷属になりなさい!」
「お断りです」
感謝の言葉を述べたことには驚いたが再びの眷属発言にはノータイムで拒否の姿勢を貫いた
「どうして?グレモリーの庇護を受ければコカビエルからも―――」
「バケモノ呼ばわりと殴ってきて謝りもしない奴と一緒にいられると思います?あと木場が動けないから戦力を確保したい魂胆が見え透いています」
「それは…だけど」
二刀流のメジャーリーガー並みの金額を提示されたら少しだけ心は動くかもしれないが、そもそもリアスの私兵として身を捧げるつもりなど毛頭に無い、轟という存在ではなく『魔獣創造』と仙術を扱えるアクセサリーで身なりを着飾りたい輩の下で暮らすのはまっぴらごめんだ
「仕方ないわ、一誠!」
変態が拳を握って近付いてきたがヌンチャクを装備した猫型魔獣に股間を強打されうずくまってしまった。轟は更に黄色い猫型魔獣を多く創造しリアスの周りを囲むと組体操のやぐらのように彼女を包むように閉じ込めていく、そして笛を取り出した轟は勢い良く息を吹き込むと魔獣たちは一斉に十字架を切った
「あっ、ががががぁぁ!」
「リアス!」
ジャンクフードを食べていたイリナが十字架を切っていたので、聖なる行いでもダメージが与えられると思って試してみたが上手くいった。魔獣でリアスを閉じ込めるようにしたのはソーナに被害が及ばないための措置である
「すいませんでした」
オカルト研究部に連絡し現れた小猫が、倒れているリアスを担いで兵藤の足首を持って生徒会室から出ていった。ソーナはもし自分たちが轟と敵対していたら彼女と同じ運命を辿っていたと思い冷や汗を流すのであった
コカビエル戦はある程度、内容が固まってきたので頑張って執筆しようと思います
とりあえず現時点ではアーシアが兵藤家に戻ることはありません
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
作品評価もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
独自設定として神器・神滅具所有者は転生悪魔と同じように「言語」の壁が無くなる
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問題無い
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問題大有りだ