聖剣を振り回す襲撃者から見逃された轟は負傷した彼等を伴ってアパートへ向けて歩き出した。既に帰宅していた妹の華穂が傷だらけの兄を見て慌てふためくが、末っ子が無事だったことに安堵し腰が抜けたように座り込んでしまった
「すまん、お前を守る護衛なのに」
「弟を守ったカッコイイお兄ちゃんだったぞ」
ヒーリングスライムを創って匙を体内に取り込ませた。気休め程度だが傷の回復ぐらいなら自然治癒よりスライムを使った方が早く治すことが出来る。なお元悟は泣き疲れたのかソファの上で魔獣を抱き枕にして寝息を立てていた
「アイツに木場はやられたのか」
「事情は知らないが聖剣に大きな怨みがあるって聞いたが、目の前で見せびらかすように使われたら冷静さを失うもんだ」
「もしあれが会長たちを襲ったら」
眷属として主を守りたい気持ちは分かるが今は自身の体を労わってほしい、ただでさえ聖剣という悪魔にとって相性最悪な武器を振り回すので手負いの状態で対峙するのは自殺行為である。しばらく治療を続けていると匙のスマホが鳴動し、スライムに取り込まれている彼は手を動かすことは出来ないので轟に持ってもらう形で電話口に出た
『匙!どこにいますか?』
「どうしたんですか会長?」
平常心を失い切羽詰まった声が響いてきた。スピーカーモードに切り替えていないのに焦ったソーナの慟哭が聞こえてくる
『コカビエルが学園に表れました!それにフリード・セルゼンとバルパー・ガリレイに
「分かりました!すぐに」
スライムの中から無理やり飛び出した彼は片膝をついてしまった。怪我の治療自体は終わっていたが聖剣で斬りつけられたダメージまでは回復しきれていないのだ!それでも気力と根性だけで立ち上がり顔を真っ赤にさせている
「無茶するな、まだ」
「行かせてくれ、こんなところで指を咥えていられるかっ!」
忠義の二文字では許容出来ない熱意がひしひしと伝わってくる。いったい何が彼をそこまで駆り立てるのか分からないが覚悟を無碍にするほど轟は冷めた男ではない、彼は匙に肩を貸した
「俺も行く」
「いいのか?お前の魔獣が居れば心強いけど、言っちゃあなんだが部外者で関わらなくても」
返答の言葉は無かった。弟妹に戸締りをしっかり行うことを伝えるとアルミホイルで包んだお握りを渡してくれた。華穂にお礼の言葉を述べると玄関の外へ出てマッハ2で飛行する大型鳥類の魔獣に飛び乗って2人は学園へ向かった
「ヒャッハァァアアアア!!」
「ぐぅ」
「ほらほら頑張んないと残った腕も聖剣でチョンパしちゃいますよ!アッハハハ!それとも五体不満足・一本大満足になりたいんですかぁ」
校庭では片腕の木場がフリードと対峙し魔剣で応戦しているが劣勢に陥っている。その隙を見計らってゼノヴィアが自身の所有するデュランダルで斬りかかるが防がれてしまい側頭部に回し蹴りを食らってしまい意識が混濁する
「1本だけでも厄介なのに―――」
「ねぇねぇ、まだ動けますよねぇ?ここで終わりなんて言わないでくださいよぉ」
もともとエクスカリバーは1本だったが大昔の戦争で破損し、その破片を教会側が回収して錬金術によって7本の聖剣に作り直した。そしてコカビエルたちが盗み出した3本は木場たちの目の前で融合してしまいイリナが試し斬りの犠牲者になった
「シャキーン!って二刀流の聖剣ってカッコイイでしょ」
フリードの右手には3本融合の聖剣、もう片方の手には彼女が使用していた擬態の聖剣が握られている。備わった4つの能力を巧みに操って彼は狂ったように笑いながら突撃してきた
「祐斗!」
「よそ見をしている暇などないぞ!」
少し離れた場所ではリアスたちがコカビエルの放ってきたケルベロスの群れと対峙していた。冥界から連れてきた獣の攻撃を躱しながら苦戦を強いられている。自分たちの起爆剤になるはずだった赤龍帝の一誠は開始早々に空高く浮遊するコカビエルへ殴りかかったが、顔面に拳を叩き込んでも傷1つ負わすことが出来ず裏拳だけで校舎へ吹き飛ばされてしまい意識を失った
「その程度かバラキエルの娘」
「関係ありませんわ、そんなこと!」
得意とする雷撃もダメージを与えることは出来ても倒し切るにはいたらない、小猫は持ち前のフットワークを駆使してヒットアンドアウェイの戦法で耐えているが緊張の糸が切れてしまったら確実に御陀仏となってしまう
「サーゼクスが来るまで、楽しませてくれるか?リアス・グレモリー」
フリードの攻撃は苛烈で慣れない左腕の剣戟で捌いているのは日々の鍛錬で培ってきた努力によるものだが、ハンデを背負った状態で致命傷になる聖剣の攻撃を躱すのは至難の業とも呼べる苦行だった
「いいですねぇ!その顔、その反応!戦いってのは、こうでなくっちゃ!」
「僕は負ける…訳には」
「死んでいった仲間のために頑張るなんて、健気でボクチン泣けてきちゃう」
感動の涙ではなく欠伸をするアクションを披露し木場のことを苛立たせるように挑発を繰り返す。フリードはつま先で小石を浮かせると素早いモーションで蹴り飛ばした
「見くびるな!」
半身で小石を躱ながら天閃の力で加速し迫ってくるフリードへ斬りかかるが幻影だった。判断を誤った木場は硬直してしまい投げつけられた閃光弾によって視界を奪われてしまった
「うわああぁぁぁぁっ!」
叫びながら片手で魔剣を振り回す。基本を無視した滅茶苦茶な太刀筋はサランラップの芯やプラスチックの剣でチャンバラごっこをする幼児に見えた。恥も外聞もない見苦しい姿だが目の見えない状態でやれるのはこれしかなかった
ーパチパチパチパチパチパチー
しかし攻撃はやってこなかった。耳をすませると遠くから乾いた拍手の音が聞こえてきた。段々と視力が戻り瞼を開けていくとフリードが未だに倒れてうつ伏せになっているゼノヴィアを椅子にして手を叩いている
「あれぇ?もう終わりですかぁ?もっと踊ってくださいよぉ!」
「フリード!遊んでいないでさっさと片づけろ」
戦闘を見ていたバルパー・ガリレイの怒号が飛んできて露骨に嫌そうな顔をする。もう少し楽しませてくれよと言わんばかりにため息を吐きながら頭を掻いていると、混濁状態から覚醒したゼノヴィアが四肢に力を入れて暴れ馬のように跳ね上がりフリードを振り落とした
「うおおおっ、喰らいやがれええっ!」
コカビエルに吹き飛ばされていた兵藤がフリードへ目掛けて飛んできた。奴に全力の一撃を叩き込めば聖剣の脅威からは解放される。そうすればケルベロスに苦戦するリアスたちの負担を軽減することができると思っていたが、大声で叫びながら突撃をするのは悪手だった
「本当にぃ、ドラゴンはおバカちゃんですねぇ」
「ぐっ、がああっ!!」
振り落とされてバランスを崩していたが擬態の聖剣を鞭のように伸ばす。巻き付けた兵藤を視点にして体勢を立て直すと力の反動を利用して地面に叩きつけた
「ハイ、チャラバ!」
受け身がとれずのたうち回る彼を鞭化させた聖剣で引っ張り近寄らせると、フリードは踵で顔面と腹部を思いっ切り強く踏んづけたことで兵藤は完全にダウンしてしまった
「イッセー君!」
「そんな怖い顔しないでくださいよぉ、これでも感謝してるんです」
彼は懐から輝くクリスタルのようなものを取り出した。立ち上がったゼノヴィアがそれを見ると、ハッとした表情で倒れているイリナに視線を向けていた
「どうやらそっちのメスガキはご存知で、そうだよなぁこれが無いとエクスカリバーなんて怖くてあちゅかえましぇんもんね~」
「それは聖剣の因子か」
「パンパカパーン!ご名答、まぁ俺以外のやつらは途中で因子に体がついていけなくて死んじまったんだぜ!やっぱボクチンってすっごいぃぃスペシャルなんすかねぇ!」
フリードはクリスタルを真上に放り投げると融合した聖剣で粉々に砕いてしまった。それを見ていたバルパーは満足するような顔で語り出す
「被験者にはエクスカリバーを操るほどの因子はなかった。だから私は被験者から因子だけを抜き出して結晶化することに成功した。異端者として追放しながら愚か者たちは研究を続けていたみたいだが」
「なぜ僕たちの仲間を殺した!」
「おまえ達は極秘計画の実験動物にすぎん。用済みとなれば廃棄するのは当然だろう?」
真実を知った木場は嗚咽を漏らしながら膝をついて涙を零す。あの頃はずっと誰かの役に立てると信じてずっと耐えてきたのに、それなのに…それなのに
「おやおやぁ?ご丁寧に首を晒してくれるなんて素敵ですねぇ、じゃあお望み通りチョンパしちゃいましょうか!」
聖剣の力で爆発的な加速力でフリードが突撃してきた。ゼノヴィアをタックルで弾き飛ばすと振りかぶって勢い良く降ろそうとした瞬間だった
闇の向こうから地鳴りにも似た蹄の音が響いた。校庭を駆け抜ける金色の影は2人の間に割って入りフリードはバク転を絡めたバックステップで後退していく
「これは?いったい…」
突然のことで木場が呆けている。自分の目の前には絵本に出て来そうな黄金色に輝く大きな馬がいて、いななきながら前脚を高く上げると力強く地面を叩きつけて空気を振動させた
「木場!そいつに乗れ!!」
「廿六木君!これは…きみの」
「確認は後回しだ!」
上空から聞こえてきた大声に視線を向けると大きな鳥の魔獣に捕まる轟がいた。部外者なのに駆けつけてくれたことに感謝すると彼は跳躍して馬に跨った
「ヒヒィィィィンッ!!」
再び前脚を叩きつけると淡い光が木場の周囲を包み込んでいた。その光は彼の体内に取り込まれ心臓の鼓動が段々と強くなり血を巡らせていく、苛烈なまでに熱いのに母親に抱かれた赤ん坊のように安心できる懐かしい気持ちに懐かしい記憶が戻ってくる
「みんな…僕たちは最後まで一緒だ!」
光り輝いた騎士の体には失われた右腕が復活していた。彼は何度も握りを確かめて頷くと轟が創り出した馬の手綱を取って因縁を断ち切るために駆け出した
コカビエル戦に突入しました。自分が執筆すると原作の敵キャラが本編よりも強くなってる気がする。木場君が跨っている馬は分かりますよね?
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
作品評価もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
独自設定として神器・神滅具所有者は転生悪魔と同じように「言語」の壁が無くなる
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問題無い
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問題大有りだ