ゼノヴィアは2日後の夜に現れた。担保にしていた聖剣を返却してもらい迷惑料込みの金額を包んで轟に手渡すと背後にいたイリナが落ち着かない様子で部屋の中を観察していたが脇腹に肘打ちをされてしまい呻き声をあげている
「とっ…廿六木君の神器って、どんな生き物でも創れるんだよね?」
「ある程度は何でも創れるな」
「じゃあ凄いのを見せて」
「イリナ!!」
玩具を見つけた子供のように目をキラキラさせながら迫ってくる。この手のお願いは何度も頼まれてきて食傷気味で辟易している轟は頭に浮かんだ適当な存在を創造した。発生した光の中から現れた物体は椅子に座って彼女のことを見つめ
「紫藤……イナフ………」
「………っえ?」
オレンジ色のTシャツを着た青年だが後頭部が魚のようになっている。しかも喋ってたが下の名前を間違えられた。彼は机に置かれていたブラックコーヒーを飲むとむせるように咳き込んでしまい消えてしまった
「今のって…何?」
「墨汁戦隊スミレンジャーのフィッシュ竹中さんだ!まさかご存知ない?」
「知らないよ!なに墨汁戦隊スミレンジャー?そんな特撮番組いつ放送したの!?あとイナフって、下の名前間違えているんですけど!」
喚くイリナを抑えつけたゼノヴィアはため息を吐きながら彼の部屋から出ていった。なんとも締まりのない別れ方であり苦笑いを浮かべることしか出来なかった轟であった
「アーシア、どうして帰ってきてくれないんだ!」
表向きの不発弾処理の撤去が終わり駒王学園は翌週から授業が再開した。いつものように桐生へ挨拶をすると彼女はニヤニヤ笑いながら視線を兵藤の方へ向けていた
「戻るつもりはありません、祐斗さんも私のことを受け入れてくれました」
「木場の腕は治ったんだがら問題ないだろ、意地になるなって」
「近寄らないでください!」
明確な拒絶に彼は唇の端を強く噛んで真っ赤にしてしまう。最初は謝って終わるものだと思っていたが返ってきたのは希望的な妄想ではなく無残な現実だった。漫画やアニメのようにあの頃の日々に戻ることは出来ない
「離れてみて、ゆっくり考えてみたんです」
「…いったい何を?」
「兵藤さんが最低な人だということが実感したんです。欲望のために人を傷つけて罪の意識を持たない愚か者だって、学園の女の子はあなたのせいで泣いているのに何で反省しないで笑っていられるんですか?」
「でも、それは!だけどアーシアにはそんな」
「欲望のはけ口が欲しかっただけなんですよね?それにバケモノが嫌いなんですよね?」
周囲のクラスメイトが小声で話している『アーシアさんをバケモノって何?』『あんたはスケベのバケモノだろ!』と聞こえてくる。兵藤は周囲を睨みつけて近づこうとするが元浜たちによって羽交い締めにされた。流石の変態でも彼がやろうとしていることに待ったをかけた
「離せ!コイツ等は―――」
「落ち着け、暴れたところで最底辺の評価が最下層になるだけだ!」
担任の先生が入ってきたことで事態は収まりホームルームに移行したが、休み時間の度にアーシアへ近付こうとする兵藤に対して人の壁でバリケードを作り物理的に接触を断たせようとするのであった
「八方美人の逆の表現って何かしら?」
「内弁慶でいいんじゃない?まぁアイツは弁慶のようにカッコよくないけど」
「落ち武者や敗残兵の足軽の方が似合っていそうね」
兵藤がここから挽回するには宇宙から落ちてくるアクシズを1人で押し返すぐらいのことをしないと逆転するのは不可能だろう。逆シャアでは下から押し上げて軌道を逸らしていたけど逆方向から斜めに向かって押せば地球へ衝突することはないと制作に関わっていたガイナックスの偉い人が自身の番組で語っていた
放課後になり轟は1人で下校していた。コカビエルの脅威もなくなったことで匙の護衛も終わり久々のぼっち帰宅である。気分的に真っ直ぐに帰ることなく適当に町をぶらぶらしていたら
「よぉ、そこの兄ちゃん」
「ん…俺のことか?」
中年男性らしき人物が立ちはだかった。男の顔立ちは整っており見た目は三十代過ぎのオジサンという感じで、ちょいわるおやじという表現がとても似合いそうな風貌だ
「どこのどなただ?会ったことはないはずだよな」
「まぁ、俺もお前さんとは初対面だが―――なんつーかその間接的には会っているようなもんなんだが」
「煮え切らない言い方で」
轟の返答に男性はニヤリと不敵な笑みを浮かべた
「俺は堕天使『神の子を見張るもの』の頭を務めている。アザゼルだ!この前はコカビエルが色々と迷惑を掛けたな」
流石に自ら堕天使と言い張る胡散臭いオッサンを自宅の敷居を跨がせるほど心は広くない、雰囲気や空気を察したのかアザゼルは近くの喫茶店へ指を向けていた
「それで、アザゼルさんだっけ?」
「『さん』はやめてくれ、かしこまって肩の凝ることは嫌いなんで呼び捨てで構わない」
店内に殆ど客はいなくて飲み物を運んできた爺さんが新聞を持ったままカウンターの奥で寝息を立てている。アザゼルはカップのコーヒーを一気飲みしてから話し掛けてきた
「コカビエルを止めてくれたことに感謝する。あの戦争馬鹿は組織でも腫れ物扱いで、俺たちのところでも対応に困っていた」
「言い方が軽いな、そいつのせいでこっちは知り合いの腕が斬られて大騒動になったんだ」
「改めて各陣営に詫びの挨拶をするつもりだ!無論お前さんにも相応の礼をはずむ」
フランクで軽い口振りから想像すると、堕天使という種族はトップがちゃらんぽらんでも何とかなるんだと思ってしまう。面倒なことは他人に丸投げするようなタイプに見えてしまうが口には出さなかった
「お前さんのことは闘戦勝仏のジジイ猿から聞かされた。まさかこんな島国の小さな町に神滅具を持つ奴が2人もいるとは」
「ジジイ猿…師匠のことですか?」
「知り合いの喧嘩友達みたいなところだ!」
それは昨日・一昨日の話ではなく、轟がまだランドセルを背負っている頃に飲みの席で漏らしてしまったことで、アザゼルは『魔獣創造』の詳細を聞き出そうとしていたが酔っていても名前まで明かすことはなかった
「ガキの頃にジジイと出会えたことはラッキーだったな、知らないまま『魔獣創造』を使っていたら悪魔に見つかって眷属にされた可能性だってあったはずだ!」
「似たようなことが、つい最近ありました」
「まさかリアス・グレモリーか?あの傲慢で高飛車女ならやりそうなことだな」
強引な勧誘と、朱乃が電撃で失神したあとに騙し討ちをしてきた兵藤にお灸をすえたことを話すと彼は机を叩きながら爆笑していた
「バラキエルに教えたら顔を真っ赤にさせそうだ!ヴァーリの興味が赤龍帝からお前に向いたのもなんとなく分かった」
「ヴァーリって?」
「名乗らなかったのか?コカビエルを倒した白龍皇だ」
疲労困憊で意識が朦朧としていたので銀色の奴がコカビエルと対峙しているところしか覚えていなかった。その人物も神滅具を持つ者で『白龍皇の光翼』を宿し兵藤の赤龍帝とライバル関係の神器である
「ところでお前はどの陣営に身を置くつもりだ?先に言っておくが、今のままで平穏無事に暮らせると思っていたら頭が相当にハッピー野郎ってことだ!」
「その話ですか」
「堕天使側に来てくれたら俺は最高だが、孫悟空の爺さんと繋がりがあるのなら須弥山に加わった方が無難だ!帝釈天は好かねえ野郎だが話が通じない相手じゃない、お前とすれば悪魔と組むよりマシじゃないか?」
連絡先を知らないと伝えるとアザゼルは仲介役になると言い出した。彼としては孫悟空との仲は良好側なので理由をつけて『魔獣創造』について調べたい欲望が渦巻いているが、これぐらいの労力は惜しまない男である
「もし個人的に悪魔と交友を結ぶならシトリー家やアガレス家にしておけ、どちらも野心とは程遠い存在で人間に対しても割と友好的だ!ただしグレモリー家だけは選ばない方が得策だな」
「なにかあるんですか?」
「堕天使としての勘だ!」
そう言って彼はレシートを持って立ち上がり会計を済ませた。外に出て夕陽を浴びながら去り際にアザゼルは駒王学園で和平会談が行われることを教えてくれたが、轟にとって興味の無いことであったが
「(アガレスって…まさかね)」
親しい趣味仲間と同じ名前を聞いて少しだけ心がざわついてしまった
フィッシュ竹中さんのネタは物語を始めた頃から入れたかったネタです
今作のアザゼルは割とまとも枠だと思います
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
作品評価もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
独自設定として神器・神滅具所有者は転生悪魔と同じように「言語」の壁が無くなる
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問題無い
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問題大有りだ