アザゼルと邂逅を果たした轟だが日常が劇的に変化することはなかった。いつものように学園へ向かい授業を受けて桐生たちと他愛のない会話をしながら普段と同じ日々を過ごす。昼休みには木場が訪れて治療のことやフリードとの戦闘で手を貸してくれたことの礼を受けていた
「困ったことがあったらいつでも頼ってくれ!山のように返しきれない恩を受け取って何も出来ないのは恥ずかしい」
「近い―――顔が近い!」
担ぎ込まれた日に貸したTシャツを綺麗に畳んで梱包までしてくれた。話を聞くとアーシアが洗面台で汚れたところを自身の手が赤くなるまで頑張り、火傷しそうな手つきでアイロンがけまでやってくれた
「すまない、でも廿六木君に対する感謝の気持ちは溢れんばかりなんだ」
「今は気持ちだけ受け取っておく、切り札として使わせてもらうさ」
秘密兵器が秘密のまま終わるパターンもあるし、コカビエルのような人類を危機に陥れる存在が間をおかず矢継ぎ早にやってくるとは思っていない轟であった
「それで部室の雰囲気はどうなんだ?」
「まぁ…あまり良い空気じゃないね」
教室で起きた出来事を木場に伝えると乾いた笑い声を出しながら困った表情をしていた。無視はしていないがアーシアは兵藤に対して壁を作り他人行儀の対応で受け答えをしている。小猫が常に部室で飲食をしているので彼が近付こうとすれば間に立ってアーシアのことを守っている状態だ
「和平会談や夏休みには若手悪魔の集いもあるのに」
「そのことは少し前にアザゼルから聞いたけど、和平っていったい何をするんだ?」
「…っえ?堕天使トップのアザゼルが!この町に、君は会ったのかい」
見たこともない貴重な顔芸を披露していたのでスマホのカメラで収めた。あとで木場のファンに高値で売りつけてやろうと思ったが、騎士の速度で奪われてしまい写真を消されてしまった
「コカビエルが暴れたことへの謝罪をするって言ってたはずだが」
「学園や部室には来ていなかったし部長の住む屋敷へ行ったのかな?」
「あと先に伝えておくけど、俺は須弥山で師匠の庇護を受けることになった。まだ正式な手続きは結んでいないが決まったみたいなものだ」
「しゅみ?…しゅみせんって、確かアジア最大の神話勢力じゃ?君の師匠って」
少年時代に起きた初代孫悟空との出会いを教えると、再び彼は凄い顔芸をしてくれたので今度こそ消されないように保存した。木場は額からダラダラと汗を流しながら何とも言えない表情で返す言葉に困ってしまう
「ところで同棲生活ってどんな感じ?」
「そこはノーコメントにさせてもらう。僕とアーシアちゃんだけの思い出だから」
頬を赤く染めた木場を見てだいたいのことを察した轟は深く追及することをしなかった。少なくとも兵藤のところにいるより純愛なのかもしれない
なお読者の方々にはサービスでお教えするが既に2人は混浴を果たしていた。彼が右腕を失っていたときに入浴の介助をスクール水着を纏った状態で行っていたが、復活した後も引き続き一緒に湯船に浸かり背中を流してもらっている。もちろん産まれたままの姿で隠すようなことはしていない
「休みの日に呼び出して悪い」
「どうした?」
アザゼルと顔を合わせた喫茶店に呼び出された轟は角のテーブル席に座る匙を見つけると対面に座った
「LINEや学校じゃ話しにくいことか?」
「まぁ……そんなところだな」
彼の手元にはノートと筆記具が置かれ書き込んでいたのか小指の側面が真っ黒になっていた。匙は店員が持ってきたおしぼりで汚れた部分を拭いたが滲むだけで色は落ちなかった
「担当直入に聞くけど、会長や俺たちって弱いか?」
「なんだよ藪から棒に」
ことの発端は一昨日の放課後に封印されていたリアスの眷属が開放された。時期尚早と思われたが木場が禁手化をはたしエクスカリバーを破壊したことが評価されてリアスの兄であるサーゼクスが承認した形となった
「そいつは吸血鬼で時間を止める神器を持ってて、暴走の恐れがあるから閉じ込められて引きこもりになって」
「あれこれ属性がてんこ盛り過ぎて胃もたれを起こしそうなんだが、時を止める吸血鬼って3部のアレだよな?」
「まさしくアレで、漫画と違って筋肉質じゃありませんし"無駄無駄"と言って殴らないだけマシだ」
なんとなくだが言いたいことが分かった。近くにいる比較対象が大きく見えてしまい自分たちが矮小な存在だと思ってしまう。会長たちもグレモリーに負けず劣らず………ぜんぜん負けてるな!禁手化した木場を含め神器持ちが4人で回復役を備え時間まで止めてしまう。雷撃の副部長とフットワークの軽いパワー系の小猫がいる
「副会長も神器を持っていたよな?使っているのを見たことはないけど」
「ちょっと使い勝手の悪い代物で、どうしても木場や兵藤のと比べると霞んじゃって」
「それだと勝っているのは眷属の人数ぐらいだな」
その言葉を聞いて彼はテーブルに突っ伏してしまいノートが捲れながら轟の目の前に迫った。中に書かれていたのはシトリー眷属に関わる情報で性格や戦闘スタイルなど細かに記載され、赤ペンで特記事項と記された部分には空白が目立つ、レーティングゲームで勝つために何が足りないのかを自覚するためにペンを持ってノートに向き合ったが足りないものだからけになってしまい不安に苛まれていた
「実際の試合ってどんな感じなんだ?」
「これを見てくれ」
匙はスマホを取り出して動画のデータを再生した。画面に映っていたのは青色のチャイナ服を着た美少女が自身の倍以上ある敵を薙ぎ倒すシーンや、ホストのような見た目の男が相手を燃やし尽くす映像で格の違いを見せつけていた。個人技の他に眷属たちで連携し追い詰めている部分もあった
「廿六木は兵藤たちと戦ったことがあるだろ?俺たちはどう見える?」
「オブラートは?」
「包まないでくれ」
「見せてくれた映像をトップ層に位置付けると相撲なら序二段でサッカーなら5部リーグってところだな、オカ研の奴等はその1つ上のクラスで降格圏争いをするぐらいかな」
そこまで評価を押し上げているのは木場である。兵藤も神滅具を宿しているみたいだが今のところは宝の持ち腐れ感であり加点対象にはならない、時を止める吸血鬼が使い物になるのか分からないが現時点ではソーナたちより上なのは違いない
「会長が言うにはゲームはパワー勝負では決まらないって―――でも」
「奇策ってのは稀にやるから相手が策にハマる。毎回それに頼ったら効果は薄れてしまう」
「相手に考えさせることが出来たら作戦勝ちって言ってましたが」
「それは綺麗事だな!」
自力の差を補うための奇策であり万能な代物ではない、能力差を作戦でカバーするのにも限度がある。どんなに知略を尽くして頑張ってもラグビー日本代表ではニュージーランドのオールブラックスには勝てないのと同じだ
「強くなりてぇよ」
こんなところで項垂れている暇があればトレーニングをして来い!は青春ドラマの見過ぎである。匙は足りないものを見つけるためにペンを握っただけマシな部類だと思う。今の状況を顧みて将来に対して不安になることも分かる
「悪魔は人間より長生きするんだろ?積み重ねるしかないな」
「ここで愚痴るより、やらなきゃいけないことはあるのは分かって動きたいけど―――」
「分かるよその気持ちは」
いま欲しいのはアドバイスではなく共感である。答えを求めているのではなく考えたことを聞いてほしいのだ!轟はノートに視線を落としながら指を向ける
「この資料だけど頑張って作ったな、やっぱり先生の素質があるんじゃないか?」
「そう言われると恥ずかしいな」
「自分たちの弱点を把握して向き合おうとしている。同い年なのに進んでいるよ」
やったことに対して飴を与える。上から目線な言い方かもしれないが人だろうが悪魔だろうが頑張ったことを褒めれば次に繋がる。強い口調で突き放すよりも今は手を真っ黒にして時間を惜しんできたことに拍手を贈るべきなのだ
「焦って目先の勝利をもぎ取れば綻びが生まれる。プロ野球で5月から総力戦をやってるチームがリーグ優勝なんてしない」
「それも…そうか」
「誰の言葉だったかな?『1年目には種をまき、2年目には水をやり、3年目には花を咲かせましょう』ってあるんだが分かるだろ?」
「そうだな…愚痴につきあってくれて助かった」
憑き物が落ちたように彼の顔はスッキリしていた。悪魔と深く関わるつもりはないが相談相手なら時間の許す限り付き合っていこうと思う轟であった
ちょっとした日常会です。匙君も自分の現状を見て不安になると思います
でもシトリー眷属って火力不足なんですよね
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
作品評価もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
独自設定として神器・神滅具所有者は転生悪魔と同じように「言語」の壁が無くなる
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問題無い
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問題大有りだ