兵藤一誠は廿六木のことが大嫌いである。進級したときは名前が変な奴という認識だったが自分が逃亡しているときに彼とぶつかってから歯車が狂い出したかのようにマイナスの出来事が続いていった。生徒会に捕まって先生に怒られたことは運が悪かったことで納得しているが今まで女の子を隠し撮りしていたスマホが壊れてしまったのは許せなかった
「はぁ―――どうして駄目なんだよ!」
親に買い替えや修理を頼んでも許してもらえず、それどころか卒業するまでの小遣いが廃止となって正月のお年玉も渡されないことを伝えられた。理由を聞くと一誠がぶつかって彼のスマホを破損させたことに対する罰で、3年生の3月末まで受け取る予定の金銭を被害者の轟へ与えることになった
「テメェは絶対に許さねぇ!」
ムカつく野郎が自分と同じ神滅具を持っていること、正々堂々と立ち向かった木場に複数の魔獣で攻める卑怯な方法で戦い朱乃を傷つけた怒りが今の一誠を動かしている。きっと自分にも同じような方法で攻めてくるのなら接近して魔獣を創る時間を与えないようにするだけだ!
「変態犯罪者のお前に許してもらうことなんてあるのか?」
「ふざけんな!」
頭に血を上らせる一誠だが平静を取り戻すために深呼吸をした。卑怯者というのは悪口で激情させて冷静な思考を奪うというのを思い出して対処する。部長のリアスからも怒りで我を忘れることは無様だと言われたばかりだ…しかし
「ぶっ潰してやる!!ドラゴン・ショットォオオオオッ!!」
怒りの感情に身を任せるように溜めていた魔力に自身の神滅具である『赤龍帝の籠手』の力で倍加させた攻撃を放った。彼は朱乃が攻撃を受けている間にウェルシュ・ドラゴンの力を宿したガントレットを左腕に展開し準備をしていた
「―――よっと」
「避けるな卑怯者!」
「バカ正直に食らう奴なんていないだろ、大丈夫か?お前の頭」
一誠の攻撃は派手でモーションが大きく『今から攻撃します!』という宣言をしているもので、人間の身である轟でも避けることは難しくない、彼はリングの外にいるリアスに視線を向けると木場が横に立っているのを確認した。こんなことを主導する長なら不意打ちをしてくると思ったが隣にいる騎士なら止めてくれると信じた
「よそ見してんじゃねぇ!クソが」
「(さて何を創るか?)」
さっき呼び出した猫型魔獣たちは戦い方を見られているので候補から外した。朱乃に攻撃した電気ネズミは小猫に捕まってしまいケチャップを渡されて彼女に懐いてしまっている。それなら卑怯者らしい戦い方をお見せすることにした
「何かしらあれは?」
「サボテン…でしょうか」
外から2人を見つめていたリアスは轟の創り出した魔獣に対して疑問符を浮かべている。視線の先には埴輪みたいな表情で、非常口の誘導灯に描かれているピクトグラムのようなポーズをしているサボテンが複数体並んでいたが1体だけボクシングのグローブを装着していた
「サシで戦いやがれ!」
「俺はバケモノで卑怯者なんだろ?その通りにやってやるよ」
グローブを装着したサボテンが突進して一誠に抱き着いた。体表のトゲが彼の体に突き刺さり肌を傷つけていくと残りのサボテンたちも針を飛ばして攻撃してくる。自身の籠手に魔力を溜めてドラゴンショットを放つが逃げ足が速くて当てることが出来ず、再び熱い抱擁をされてしまうのであった
「離れろ!こんちきしょう」
『ココナッツアッパー』
「ぐはっ!」
なんとグローブを装着していたサボテンの魔獣が人語を喋った。一誠の顎に渾身の右アッパーを叩き込んで骨を砕きながら空中に大きく浮かばせると
『チクチクバンバン!』
「ぐああああっ!」
自身のトゲを射出して汚い声でうめきながら落下する彼にトドメを刺すのであった。リングの外にいるアーシアと小猫は戦うつもりはなくリアスは苦虫を嚙み潰したような顔で右手に魔力を集中させているが木場が制していた
「祐斗!」
「これ以上は恥の上塗りです。廿六木君は僕たちよりも強い」
諭された彼女は少しだけ思案すると右手の魔力を霧散させて腕を組み、リングに上がって轟の方へ向かって歩いてくる
「これでも弱いってか?」
「認めるしかなさそうね。しかし可愛らしい見た目で恐ろしい魔獣だなんて」
「見た目で侮るなってことだ!」
どうやらこの勝負でリアスは納得してくれたようである。追ってきた木場も安心したのか胸をなでおろして息を吐き出した
「―――だからこそグレモリー家で管理しないといけないわ、一誠!」
「…っ!」
その言葉が発せられた瞬間に倒れていた兵藤が立ち上がって轟のことを羽交い締めにした。彼女は2人が負けたときのことを想定して保険をかけていたのだ
「俺の子分としてコキ使ってやるぜ!」
コイツ等は本当にどこまでも腐っていやがる。ポケットから駒を取り出して近付いてきた
「(腐っていたら悪魔じゃなくてゾンビだな)」
「悪いようにはしないわ、一誠を見習って忠誠を誓ってくれるのなら」
「そんなのお断りだ!」
その言葉を口にした瞬間に抱き着いている兵藤に仙術を流し込んだ、師匠なら僅かな力で内部から相手を破壊することが可能だが、轟は乗り物酔いレベルの気持ち悪さを引き起こすことが限界である
「がはっ…!なんだよ、これは?」
「一誠!」
拘束が緩み彼はお辞儀をするように腰を曲げて兵藤の右足を持ち上げた。咄嗟のことでバランスを崩し受け身がとれないまま背中から落ちてしまい肺の中から空気が放出されてしまう。そして小猫に懐いていた魔獣はリアスに向かって『でんこうせっか』で突撃し『電気ショック』を与えた
「まだ続けるか?」
サボテンたちが全員に針を向け電気ネズミの魔獣はやる気十分というアクションを見せている。部長としてのプライドなのかリアスは敗北宣言を口にしなかった。木場が白旗をあげても怪しんでいたが彼は魔剣で自身の手首を切って鮮血を撒き散らしながら覚悟を伝えた
「今の僕にはこれしかできない!これで矛を収めてほしい」
ここまでされてしまうと流石に気が引けて何も出来なくなってしまう。色々と思うところはあったが彼の気持ちを汲み取って魔獣たちを消していった
「信じてくれて……あり、がと…う」
「おお…おぅ」
出血を止めることなく顔を真っ青にしながら謝ってきた。正直に言うと木場の精神や自己犠牲で表現するやり方に引いてしまう。轟は自分の上着を拾い上げて埃を払って地下から出ていこうとするが兵藤が立ち上がって呼び止めた
「待ちやがれクソ野郎!テメェをぶっ飛ばさないと―――部長たちを傷つけた奴を、俺は絶対に許さねぇ!『
再び左腕に自身の相棒を顕現させた兵藤は痛む体に鞭を打って駆け出した。木場は出血多量で動くことができずアーシアと小猫は遠くにいて間に合わない
「くたばれ!」
「やっぱお前バカだろ―――動かなければ良かったのに」
「その口を閉じやがれ!」
「…っ!、閉じてやるよ牙を立ててな」
ーガブッ!ー
その言葉を耳にした瞬間だった。下半身に鋭い痛みが走る。最初は戦闘中にサボテンの魔獣が発射してきたトゲが制服を貫いて皮膚に到達したものだと感じたが痛みの種類が全く違うものだった。何かが嚙みついたような感覚で太ももを通って足首に血が流れ白いスニーカーを赤く染めていく
「―――っえ?」
凄く…人生最大級でとても凄く嫌な予感がした。頭の中では痛む場所におおよその検討がついていたが理解したくなかった。だけどこのまま確認しないのは更にマズイと脳みそが警鐘を鳴らしている
「イッセー君?」
「一誠さん?」
同級生の2人が動かなくなった彼のことを見つめている。恥ずかしい気持ちもあったが冷や汗が止まらないので深呼吸をした兵藤はベルトを外して制服のズボンを下ろすと履いているトランクスの全面がモッコリと膨らんでいた
「…キャッ!」
顔を赤くしたアーシアが手で顔を隠して小猫は軽蔑する目で見つめている。彼の呼吸は段々と間隔が短くなり額から汗が滝のように流れていく、このままズボンを引き上げれば現実から目を背けることができるが放置することは出来ない、痛いはずなのに痛覚が麻痺を起こしているのか何も感じなかった
「(おち…おちつ、オチチチチっけ!きっとと、っきききっと違っ…違うはずだだだだ!)」
無理やり安心するように言い聞かせているが、心臓の鼓動がロックバンド並みに高速で叩かれている。確認しようとパンツのゴムに手をかけるがアーシアたちの視線に気付いたので外から見えないように上から覗き込んでみたら
「…………………………あっ!」
パンツの中に蛇がいた。18歳未満が購入してはいけないアダルトな漫画では自分の息子を蛇で表現する漫画家もいるが比喩表現ではなく本物の蛇が存在し自分の蛇に噛みついていた。目が合ってしまい何も言葉が出てこなかった
「どうしたんだイッセー君?」
木場とアーシアが近付いて10万ボルトで気を失っていた朱乃が目を覚まして同じように向かってきている。彼はようやく現実を理解した。そして
「ガァァああッああああAAAAッAGaaaaaa‼」
喉を潰し耳を塞ぎたくなるような大声でズボンを脱いだまま兵藤は地下から走り去ってしまった。残された面々はポカンとした表情で彼が上っていった階段を見つめることしか出来ず、混乱に乗じて轟も帰っていった
最後の一誠は、次話で説明文を入れるつもりですが簡単に解説すると拘束から抜けるときに足を持った瞬間に『魔獣創造』で蛇をズボンの裾から侵入させました。もし反省していれば消すつもりでしたが、木場の厚意を無駄にしたことでガブリとやりました。元ネタを知ってる人がいたら同年代です
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
作品評価もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
通常神滅具状態で虫や爬虫類も『魔獣』として括りに入れていいのか?
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問題無い!本人が魔獣と思えば創れる
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虫や爬虫類は『獣』じゃないからNGだ