その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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とある以上にグダってます
どうかご容赦を

では、どうぞ


プロローグ TO BLACK

ヒーロー、なんてものに憧れた

土壇場の危機に駆け付け、弱者を虐げる強者を倒す…そんな存在

それを解りやすく表しているのが、テレビで放送されている特撮ドラマ―――〝仮面ライダー〟だった

激しいアクションや、引き込まれる物語

そんな爽快だったり、少し悲しくなったりするようなのが、好きだった

 

むろん高校生となった今でもそういった特撮は好きだが、昔ほど熱狂しているわけでもない

けど、ある日ふと、変なことを考えてしまう

こんな風に、好きなものから熱が引いて行ってしまうことが、成長する、ということなのかなぁ、となんとなく思った

若干高校生風情が考えるのには少々哲学すぎるので、その時浩太郎はさっさとその思考を振り払った

 

ふと何気なく窓から覗き見た太陽が妙に自分を眩しく照らしていることに気がついた

その時、自分は想像もしていなかった

自分自身が、似たような力を得ることになることを

 

◇◇◇

 

梓馬(あずま)浩太郎(こうたろう)

駒王学園に通う、どこにでもいる普通の高校生だ

毎朝起きて、ご飯を食べて高校に通い、家に帰って風呂に入り寝る…そんな毎日だ

だから、今日もそんなありふれた日常を繰り返す

そんな日々を送れると、ずっと思っていた

 

その日、兵藤(ひょうどう)に呼ばれて待ち合わせ場所に足を運ぶ

待ち合わせ場所で見たのは、呼び出した本人の兵藤とその友人と・・・ひとりの女の子

 

「なんで…! なんでお前にぃぃぃっ!!」

「―――システムが反転したとしか思えない―――お前、まさか犯罪でもしたのか?」

「するわけないだろ。残念だが、これは現実だぜ元浜、松田」

 

同級生である兵藤一誠が眼の前の友人である坊主頭の松田、そして眼鏡をかけている元浜に何かを言っていた

そしてそのまま、兵藤は自分に気づくと彼にしては珍しくいい笑顔で

 

「おはよう浩太郎、突然だけどお前にも紹介するぜ、俺の彼女の夕麻(ゆうま)ちゃんだ!」

「…え? 彼女って…」

 

浩太郎が視線を向けるとそこに夕麻であろう女の子がこちらに向けて笑みを浮かべた

その笑みを見たとき―――どういう訳か背筋がゾクリとしたんだ

一瞬見えた恐怖心を軽く首を振って振り払い改めてこちらも笑顔を作って

 

「よかったじゃんか兵藤、あれだね、お前に春が来たって奴かな」

 

言って兵藤の肩を軽く叩く

そう言われると兵藤は嬉しそうに笑顔を浮かべて「おおよ!」と頷いた

兵藤は常日頃言動が割とやばい感じではあるが、そんな友人にも彼女ができたとなると素直に祝福したくなる

彼は変態ではあるが悪い奴ではないのだ

 

「…それでさ、浩太郎。友達のよしみで頼みがあるんだけど、さ」

「うん? なにさ」

「いいや、その、さ。さっそく、デートに誘おうって思ってるんだけどさ…良かったらお前の意見を聞きたくってさ」

「別に大丈夫じゃない? 心を込めてコース決めたらたとえベタなデートでもきっと笑ってくれるよ」

 

デートというのは基本的に自分自身が決めた方がいい、と浩太郎は考えている

余程のヘマをしない限り彼女は喜んでくれるとだろう

ありふれた、それでいてどこにでもあるようなデートでも、楽しくなることに変わりはない

…本当に楽しいかは本人次第だけれど

けど本当にその人のことが好きならそんなベタなデートでもきっと楽しんでくれるに違いない

大切なのは楽しむ心だと、何となく浩太郎は思っている

 

「大丈夫、大事なのは気持ちだよ。お前は変態だけど悪人じゃないからさ」

「ははっ、ありがとな浩太郎。…俺、頑張るよ!」

 

そう言って兵藤は笑顔を見せる

彼にとって夕麻という女の子は初めての彼女だ、きっと大切にするだろう

彼女も幸せものだな

…しかしなぜだろうか

どういう訳だかこの女からは妙な違和感を感じる

その時浩太郎は考えすぎだと頭を振り払い兵藤の背中を叩きながら「頑張れよ」と後を押し、その場を後にする

ちなみにそのあと、松田と元浜からナンパに行かないか、と誘われたけど丁重にお断りしておいた

 

 

あくる日、学校の帰りに、なんとなく甘いものが食べたくなった浩太郎は甘味処へと足を運んだ

最中(もなか)やようかんといったいわゆる和菓子というものをメインに販売している店舗だ

通い始めたのは最近だがそれでも結構な老舗らしい

最もこの情報も足繁く通い続けて親しくなった店員さんから聞いたものだけれど

そんなどうでもいいことを考えながらお店に入ろうとした時に出てくる人とぶつかりそうになった

 

「っと、ごめんなさい…あれ、塔城さん?」

 

鉢合わせしたのは通っている学園の後輩である塔城小猫という女の子だ

彼女は浩太郎に視線をやると言葉を紡ぐ

 

「…先輩、ようかんを買いに来たんですか?」

「そんなところだよ。塔城さんは買った帰りかな」

 

浩太郎の指摘にはい、と塔城は頷きながら

 

「部の皆さんに差し入れです」

 

そう言って手に持った袋を見せるように動かした

彼女の言う部とは、オカルト研究部という部活のことだ

なんでもその部に入部することは基本的には不可能という特殊な部活動だ

そんな部があるのか、と聞かれれば首をかしげるが実際あるのだから返答に困るものだ

彼女は袋を下ろしながら

 

「…ここのお店を教えてくれた先輩には感謝しています。ここのようかんは本当に美味しいです」

「そう言ってくれると紹介した甲斐があるね。…えっと、今後ともご贔屓に?」

「それは先輩の言うセリフじゃないと思います」

「はは…だよね」

 

今まであまり接点はなかったがひょんなことから和菓子という共通ワードで時たま言葉を交わす仲にはなった

といっても内容は基本的にどこの和菓子が美味しかったか、とか安さを追求するならどんなお店か、とかそんなんばっかだ

そして冷静に考えるとそれは年頃の男女の会話の内容にしては変ではないか、と思われるかもしれないが楽しいので全く問題ありません

 

「あまり皆さんをお待たせすると悪いので、そろそろ戻ります。先輩、また」

「あぁ、また」

 

短い別れの挨拶を交わし、歩いていく彼女の背中を見送りながら改めて浩太郎は和菓子屋の出入り口へと足を運んだ

帰り際、待ちきれず開けて取り出したようかんは変わらない味だった

 

 

そうしたある日、学校へ行くと少しばかり血相を変えた友人、兵藤一誠から変な質問を聞かされた

内容は至極単純、〝天野夕麻〟を覚えているか、というものだった

 

「…急に何言ってんだよ兵藤」

「や、やっぱりお前も覚えてないのか?」

「覚えてるに決まってるじゃんか。お前が初めて出来た彼女だろう?」

「!! お、覚えてるのか!? 浩太郎は!?」

 

…本当にどうしたというのだろうか

少し前に兵藤本人から紹介されたのに

浩太郎の言葉を聞いた彼は自分を落ち着かせるように、そして少し周りを見渡しながら僅かに声のボリュームを下げた

 

「…誰も覚えてないんだよ、夕麻ちゃんのこと」

「…は?」

 

耳を疑った

という疑うしかできないじゃないか、唐突にそんなことを言われても

 

「本当なんだ。松田と元浜に聞いても、覚えてないって…」

「…二人がお前をからかってるって可能性は」

「ない。…アイツ等が嘘をついてるように見えなかった」

 

本人がそういうのならおそらくそうなのだろう

しかし実際そういった経験などないから何とも言えないが、兵藤の心中は穏やかではないだろう

つい数日前までは存在していた人物が存在していない、と言われれば

念のため兵藤は彼女の来ていた制服を頼りにその学校の在校生に彼女のことを聞いてみたがやはり答えは〝知らない〟という返事だったようだ

 

「…どのみち、今は何とも言えないな。ごめん兵藤、力になれそうにない」

「いいや、大丈夫だよ。お前が覚えてたってことだけでも、幾分か楽になったからさ」

 

そう言ってわずかに笑顔を作る彼の顔は少しばかり疲れているように見えた

そんな友人の力に慣れないことが少しばかり心苦しかった

 

 

「…むぅ」

 

その日の昼休み

兵藤から聞かれたことを自分なりに頭の中で考える

…が、自分で考えたところで答えなど生まれるはずもなく、はっきり言ってイミのない自問自答に変わり無い

そもそもそんな現象ありえないと思いたい、ファンタジーやメルヘンなんかじゃあるまいし

 

「どうしたんです? 先輩」

 

そんな感じで考え事をしていると後ろから声をかけられる

声の正体は塔城小猫だった

 

「いいや、ちょっと考え事だよ。友達が悩んでてさ」

「友達?」

「あぁ、兵藤一誠。知ってるだろう? この学園じゃ悪い方向に有名だけど」

「えぇ。…正直あまりいい印象はないです」

 

うん、それは正しい反応だ、と浩太郎は心の中で頷いた

 

「まぁ確かにあいつは変態だけど、決して悪い奴じゃないんだ。…変態だけど」

「目を逸らさないでください先輩」

 

日頃の行いがアレなので完全にフォローすることはできない

とりあえずアイツは悪人ではない、ということが伝わっていればいいとしよう

 

「ところでどんなことで悩んでいたんです?」

「え? えっと…」

 

この時浩太郎は彼女にこの悩みを喋るかどうか考えた

といってもこんな話をしても基本的には笑い話になってしまうのだが

それでも思考に行き詰まっていた浩太郎は少し言葉を濁しながら何となくこのことを口にした

 

「…実は、さ」

 

 

塔城小猫は浩太郎の話を聞いて内心、驚いていた

彼が話していたことは要所こそぼやかしているものの、部長から聞いた堕天使が最近行った記憶の消去と一致していたからだ

同時に、梓馬浩太郎という人物に関して僅かばかりに疑念が生まれる

 

彼は一体何者なのか

 

他の一般生徒の記憶は操作されているのに、どうしてこの人だけは覚えているのだろう

堕天使の関係者? いいや、ならここにいる理由がわからない

それ以前に、友達のことを真剣に考えている彼の表情に嘘偽りは見られない

…念のため、このことは部長に報告しておくべきか

 

「…塔城さん?」

「え?」

「…どうしたの? 急に黙り込んで」

 

考え事をしていたらいつの間にか無言になってしまっていた

 

「い、いえ。やっぱり信じられないと思います。そんな話」

「そう、だよなぁ…。それが普通だし」

 

とりあえず言葉を濁すことにする

浩太郎を騙す感じになってしまい少し良心がいたんだが、確証が取れるまでは自分たちのことは告げられないと判断したからだ

 

「ごめんね、変なこと聞いて。時間も時間だし、そろそろ俺は戻るよ」

「は、はい。ではまた」

 

歩いていく梓馬浩太郎の背中を見ながら塔城はなんとなく窓の外を見た

雲はゆっくりと動いているが、妙な不安を駆り立てるものがあった

 

 

放課後

今日に限っては特にすることもなかったので、一直線に家へと帰る事にする

帰るとき、兵藤にAV鑑賞会を松田の家でやるんだがこないか、と誘われたがこれも丁重にお断りしておいた

…ていうかなんでアイツ等はあんなにエロに対してオープンなんだろうか

松田と元浜はともかくとして、兵藤は黙ってさえいれば間違いなくそこそこかっこいいと思うのだが、発言で全てをぶっ壊している

 

…まぁ駒王に入ったのもハーレムを作りたいなんて動機なのだから、もうその時点で兵藤への好感度は下がりきっているのかもしれない

上がることはあるのだろうか

何回も言っているとは思うが、あいつは悪い奴じゃないんだよ、本当に

初対面だった自分に対して気さくに話しかけてきたり、困ってる人をほっとけないところとか、普段のエロい発言からは考えられない行動を普通にやっているのだ

彼に足りないのはおそらく〝自重〟だろう

それさえあればせめて女子の人と普通に話せる位はできるはずだろうに

 

そんな他愛もないことを考えていると、いつの間にか窓の外は暗くなっており、時間帯も夜へと変わっていた

夜、といえば最近兵藤からもう一つ変な話を聞いた

これはごく最近、というか、彼からみんなの記憶から天野夕麻のことが消えた時かららしいのだが、どうも最近の兵藤は夜になると最高にハイな状態になるらしいのだ

言っていることはよくわからないと思うが、わかりやすく言うと妙に高揚した気分になるらしい

…なんだか兵藤が人間じゃないモノへとなっているような気がしてならない

思えばそれに比例するかのように朝のアイツは妙にテンションが沈んでいる感じだった

松田や元浜が机の前に乗せたエロDVDを目の当たりにしても全くテンションが上がっていなかった

また、その光景を見た女子が思いっきり引いていたが、彼らは全く意に介した様子ではなかった

だからそれが原因なのだと何故気づいていないのだろうか、と一人で考えても特に伝わることはないので、この思考は早々に切り上げることにする

 

「…ちょっと、外でも散歩しようかな」

 

不意に思い立ったそんな考え

現在時刻は夜十時、正直男子高校生といえばこれからの時間帯だ

無論、明日が休みならまだ起きてゲームでもしているのだが残念ながら明日もまた学校だ

しかしなんでか知らないが布団に横になってても一向に寝付けない

とりあえず公園あたりまで行けばいい運動になるだろう、と考えた

軽く防寒着を羽織って一階でテレビを見ていた両親に少し散歩してくる、と告げて玄関へと歩いていき靴を履いて外へと足を踏み出した

キラリと黒い宵闇の中に星が瞬いている

昨日と変わらない、ごく普通な夜だ

軽く背伸びをし、調子を整えると浩太郎は公園に向かって歩きだした

 

その行動が―――己の運命を決定付けると知らずに

 

 

兵藤一誠は全速力で走っていた

否、正確にいえば逃げていた

その男はスーツを着た男ではあったが、纏う空気が自分の知るモノと全く異質なものだ

あそこまで明確に自分に向けられた敵意から、咄嗟に兵藤は逃亡を選択した

 

男から発せられる言葉は意味不明なものばかりだ

主は誰だ、とか縄張りとか、とてもこのご時世に使用するような言葉じゃない

がむしゃらに走り続けておよそ十五分前後

兵藤一誠は記憶に新しい場所へとたどり着いていた

 

その場所は公園だ

 

そうだ、よく夢に見る

自分はここで天野夕麻とデートで来て、そして―――彼女に殺されたんだ

完全に無意識だったはずだ、意図してここに来ることは―――

 

「逃がすと思うか。…下級悪魔はこれだから」

 

耳に聞こえたその声に、ゾクリとした感覚を覚えつつ―――彼はゆっくり振り返る

そこにいたのは黒い翼を生やし、スーツを着込んだ男

 

「貴様の属している主の名を言え。…いいや、その困惑している様から見ると、はぐれか?」

 

何やら自己完結したようだ―――いいや、そんなことどうでもいい

そんな状況だというのに、兵藤は夢の中の出来事を思い出していた

一番最後―――〝死んでくれない?〟との言葉とともに、彼女の背中から翼が生えて―――そして、殺される

 

「消える素振りも、他のやつの気配もなし。…状況から判断するに、お前ははぐれか。なら―――殺しても問題あるまい」

 

とても平和とは似つかわしくない言葉を発する目の前の男

そして男は手をかざしてくる―――目的は、兵藤だ

耳鳴りとともに、男の手に光のようなものが集まってくる

そしてその光は、槍のようなものを形作った

 

(―――殺される!?)

 

そう思った時だった

 

「…何してんだ、兵藤」

 

知人の声が、耳に聞こえた

 

 

「何してんだ、兵藤」

 

ジョギングがてら軽く小走りで公園付近まで走ってきていた

そこで公園で、意味不明な光景を目の当たりにした

スーツを着込んだ羽根付きの男と、少し怯えている様子の兵藤

スーツの男の手には何やら光のようなのが収束されており、なんだか鋭いような気もする

 

「…」

 

ぐるり、とスーツの男がこちらに向かって視線を動かした

男の視線に会った瞬間―――再びゾクリと自分の背筋を貫くような感覚が襲う

これは…そうだ、天野夕麻と初めて出会い、その微笑みを見たときと同じ感覚だ

 

「…うかつだった。まさか人間が来るとは」

「―――え、っと。来ちゃまずかったですかね…?」

 

頬を伝う汗が冷たい

そうはっきりと感じられるほどに自分の感覚は研ぎ澄まされていた

 

「―――いいや」

 

その言葉の次の瞬間

男の手に持っていた光が、自分の腹を貫いた

自分でその光を認識したとき、そこでようやく、自分の腹に何かが刺さっていたのだと理解した

 

「君に恨みはないが…この場に居合わせた不運を呪え」

 

意味がわからない

思考をする前に自分の体が地面に倒れる

ドクドクと自分の体から赤い液体が流れていく

駆けつけた兵藤が自分の名を叫んでいる

 

(…死ぬ…?)

 

呆気なさすぎる

そもそも、状況がまったくもって理解できていない

何が、なんで、どうして

 

朦朧とする意識の中、ふと、自分の知り合いである後輩の表情がぼんやりと浮かんできた

普段無表情で、何を考えているかわからない、あの後輩

 

(…会えなくなるのは、ヤダな)

 

こんな時、特撮とかならヒーローが駆けつけてきて助けてくれるのだろうけど、これは現実

そんなことは起こりえない

 

どこか自分の体が熱くなるような感覚を覚えながら、浩太郎は意識を手放した

 

 

「次は貴様だ」

 

浩太郎を殺した目の前の男は今度こそ兵藤に向かってその槍を放とうと光を集める

…友達が殺されて、自分も殺されそうな目に遭って、今日は本当に何なんだ、と声を張り上げたくなった

しかしその声は別の形となって口に出る

 

「ぐ、ああぁ!?」

 

それはうめき声、という形で

相手が放った光の槍が確実に兵藤の身体を貫いたからだ

まるで刺された場所をジリジリとそのまま焼かれているような感覚

おそらく半田ゴテなどで体に触れられたらこんな感じになるだろう

コツリ、と男の足音が聞こえてくる

 

「…なかなかしぶとい。なら、もう一撃放とう。これで―――」

 

不意に男の声が止まった

痛みに耐え切れず、涙まで流しているが、それでもなんとか兵藤は目を開けた

男は兵藤の後ろ―――浩太郎が倒れていた場所を睨んでいる

 

「―――何者だ」

 

呟くように男は言った

何を言っているのだろうか、どうにか兵藤は浩太郎が倒れている方向へと視線を向ける

視線の先に、浩太郎はいなかった

代わりに〝立っている〟のは、黒い色をした、〝バッタ〟のような外見の男だった

 

「…まさか、貴様も神器(セイクリッドギア)を? いいや、あんなものは…!」

 

信じられない、といった様子でスーツの男は身構える

それに対してバッタの男は

 

「―――ハァァァ…!」

 

そんな獣のような、虫のような声で返答した

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