後今回はすごく中途半端なところで切ってます
申し訳ない
誤字脱字等見かけましたら報告ください
ではどうぞ
先に駆け出したゼットオーを追うように、浩太郎と小猫も駆け出した
駆けながら、浩太郎もその身を変える
「変身ッ!」
ポーズを簡略化し、瞬時にその身をBLACKへと変える
とりあえずイヌの方へとブラックは足を突き出した
体にBLACKの蹴りをもらったイヌの怪人は大きく仰け反り、そこに更に小猫の追撃が入る
その隣ではゼットオーがネコの怪人の攻撃をさばき、自分の拳で戦っている姿が見えた
気にはなるが、まずは目の前の戦いの集中しようと決めた
生身の小猫が敵と戦いのは危険が伴う、自分が前に出て守らなければ
「はぁっ!」
再度跳躍して力を込めてパンチを顔面に叩き込む
イヌ怪人は叩き込まれる寸前に手でその一撃を防御し、直撃だけは免れていた
しかしその防御行動で僅かな時間ではあるが、腹部に大きな隙が生まれた
その腹めがけて、小猫が身をかがめ拳を突き出す
突き出された拳は直撃、体制を整えるためにイヌ怪人は後ろへ後ずさる
「…両手の爪に気をつけないといけませんね」
小猫のつぶやきにBLACKは頷いた
口の牙は使用できるかはわからないが、少なくとも両腕の爪には警戒しておいて損はなさそうだ
BLACKはまだ問題ないが、生身の小猫が引っかかれたら大変だ
それに、早く彼を開放してあげなければいけない
本来、こういう役目は木場の方が適任なんだろうが、彼は今ここにいない
BLACKはちらりと小猫を見やり、目配せをする
それに気づいた小猫は小さく頷き、それを確認したと同時、BLACKが走り出す
その後ろを少し遅れて小猫が追従する
迎撃するべく、懸念していた通りに両腕の爪を光らせ、迎撃態勢に入った
真っ直ぐこちらに向かって突き出されたその爪をBLACKはあえて受ける
「ぐっ!」
僅かに走る胸部の痛み
その痛みに耐えつつ、BLACKは半ば強引にその爪を握った
そしてもう片方の手に力を込めて、その爪を叩き折る
ベキン! と音を立てて地面へと爪の残骸が落ちていった
同時にBLACKは身をかがめ、さらにパンチを打ち込む
腹を押さえ後ろに下がるイヌ怪人へ、先ほど身をかがめたBLACKを飛び越えて、さらに小猫が飛び蹴りを叩き込んだ
服装的にスカートの中が見えてしまう蹴り方ではあるが、BLACKには位置的に見られていないから問題ない、はず
着地と同時に小猫は後方のBLACKに向かって叫んだ
「浩太郎さんッ!」
「わかった!」
BLACKは立ち上がり、体制を立て直そうとしているイヌ怪人へと向かって両拳を胸の前で打ち付ける
打ち付けると同時、腰のバイタルチャージャーに宿る宝石が光を放ち、イヌ怪人の視界を奪う
「キングストーンフラッシュッ!」
視界を奪われ、両目を押さえるイヌ怪人に、BLACKは拳を力強く握り締め、両手を開き跳躍した
もう一度力を込め、全力の拳を打ち込む
「ライダーパンチッ!」
真っ直ぐ伸ばしたその拳は確かにイヌの怪人を捉えた
しかし自分の力が足りないからか、はたまた打ちどころが悪かったのか、それとも単純にタフなのか、イヌの怪人は倒れなかった
それならば、とさらにBLACKはもう一度跳躍し、今度は足を突き出した
「ライダーキックッ!」
まっすぐ突き出されたその足は確実にイヌの怪人の顔面を捉えた
先のパンチで体制を崩されていたイヌ怪人はそれを耐える術はなく、そのまま大きく吹き飛んだ
地面をゴロゴロと転がり、ぴたりと転がるのが収まった瞬間、イヌの怪人は爆発した
柄にもなく、それを見てBLACKは見えない位置で〝安らかに〟と思いながら十字を切った
自分は聖職者などではないが、もし悪魔である小猫がこの十字によりダメージを負うかもしれない、という考えからだ
そも聖職者以前に、犠牲者を弔っても、罰は当たらないだろう
BLACKの隣に小猫が走り寄ってくる
「…終わった、んですか?」
「あぁ。…そうだ、彼女は」
◇
BLACKがイヌの怪人を倒した時、ゼットオーはネコの怪人を蹴り飛ばし、改めて身構えていた
あちらは終わったようだ、こちらも終わらせなければなるまい
突き出されたネコの爪をかわしつつ、腹部にゼットオーは膝蹴りを叩き込み、そのまま足を伸ばして、更に腹部を蹴っ飛ばす
豪快に吹っ飛びゴロゴロと転がるネコの怪人に向かって、ゼットオーは軽く全身に力を込めて走り出し、跳躍した
そのまま先のBLACKと同じように足を突き出す
力の込められたその足先は、真っ直ぐにネコ怪人へと伸びていく
しかし若干ながら狙いは逸れ、キックは胸部へと直撃した
どうやら撃破には至らなかったようだ
ネコ怪人は胸部を抑えながら、逃げるようにこの場を去っていった
その背中を、仮面の下でゼットオーは歯がゆそうな表情をする
「望月さん」
ふとゼットオーの背後から声をかけられる
声をかけてきてくれたのは変身を解いた浩太郎と彼の友人である塔城小猫だ
「…お話、伺ってもいいですか?」
「えぇ、約束だしね」
その言葉にゼットオーは変身を解除し、小さく笑みを作って答えた
◇
本当なら、今の時間帯は浩太郎の自宅に戻り、小猫とアーシアを交えてトランプでもするつもりだった
しかし、状況は変わり今現在浩太郎と小猫は適当にカフェに立ち寄り、そこで望月翔子の話を聞いている最中だった
そしてその内容から、彼女もまた木場に負けず劣らずの過去だった
聖剣使いになるべく、木場と同じように鍛えられ、彼とは励まし励まされの関係だったそうだ
しかし賢明に努力していた末に待っていたのは〝処分〟の二文字
突きつけられた言葉を理解する前に、パルパー・ガリレイは毒ガスを撒き散らした
研究施設からなんとか逃げ出した時、木場とはいつの間にかはぐれてしまったらしい
当然だ、お互い生き延びるのに必死だったのだ
周りのことなど見えなかった
ここまでは大まか木場と一緒だった
しかし決定的に違うのは、ここからだ
彼女は、毒に蝕まれ一度命を落としてしまったのだ
死に瀕してしまった彼女を救ったのは、モチヅキという男性だった
彼はイタリア在中の化学者であり、たまたま気晴らしに表に出ていたら彼女を見つけたらしい
しかし見つけたとき彼女は既に虫の息であり、なんとか家に運び込んできたものの、自分の体を蝕んでいた毒により、その命を落としてしまう
だが、モチヅキは最後の望みとして、非人道的な事と理解しつつも、彼女に改造手術を施した
結果、なんとか彼女は蘇った
「最初は力加減が難しくてコップとか皿とか割っちゃってたけどね。今ははぐれ悪魔とかを狩ってることを仕事にしているわ。かっこいい言い方するなら、デビルハンターってやつね」
一通り話し終えた彼女は笑いながら注文したパフェをもくもくと食べ始める
彼女もまた、相当に重い過去を背負っていた
明るい雰囲気のままパフェを食べ続ける彼女にかける言葉が見つからず、浩太郎と小猫はお互い顔を見合わせてしまった
「私ね」
不意に彼女が口を開いた
彼女はスプーンでクリームをすくいながらつぶやくように
「…あの子には、自由に生きてもらいたいって、思ってたんだ。私みたいな流浪より、アイツはグレモリーに拾われて、、名前を貰って、居場所もできた。聖剣の関係者への恨み辛みは、わからないでもないけど、ね」
「…望月さんは、復讐したいとは思わないのか?」
「思ったことはあるわ。人生を捻じ曲げた忌むべき対象だもの」
彼女は小さく笑みを浮かべスプーンの上に乗ったクリームを舐めるように口に含んだ
そのあとで、どこか憂いを帯びたような表情になり、先ほど口に含んだスプーンを指先で軽く弄ぶ
「だけど、私の方は時間が解決してしまった。モチヅキ博士たちとの暮らしで、犠牲になってしまったみんなのためにも、強く生きようって思ったから」
〝…嫌な女よね〟と言いながら再度彼女はパフェに向かってスプーンを伸ばす
木場は、聖剣なんか、と言い切れなかった
望月は、聖剣なんか、と言い切った
二人の違いは、こだわるか、ふっきるかのどちらかだった
いつしか彼女はパフェを食べ終え、ごちそうさま、と両手を合わせていた
すると彼女はペーパーナプキンに自前の筆ペンを取り出してサラサラと何かを書いていた
「…筆ペンて」
「久しぶりに見ました」
「あら。案外書きやすいのよ? 最も、慣れるまではだいぶしんどいけど」
かなり使い込んだに違いない
す、と差し出されたナプキンにはめちゃくちゃ達筆な字が並んでいた
書かれていたのは彼女の電話番号とメールアドレスだった
「それ、見ての通りだけど私の連絡先。しばらくはここにいるから、とりあえずよろしくね?」
言いながら彼女は席から立ち上がり、千円をテーブルに置いた
「私でよかったら、力になるわ」
「祐斗先輩には会わなくていいんですか?」
「今は遠慮しておくわ。…向こうは、そんな気分じゃないでしょうし」
そう言って彼女はゆっくりと出口に向かって歩きだす
そんな彼女の背中を、浩太郎と小猫の二人は見送ることしかできなかった
◇◇◇
それから数日が経った
実働は兵藤、小猫、匙の三人に任せて、浩太郎自身はリアスたちを誤魔化す役目を買って出た
しかし早くも疑惑の眼差しを向けられ頓挫寸前である
教室にて自分の机にっ突っ伏してはぁ、と息を吐く
兵藤たちも兵藤たちで、ゼノヴィアから貰った〝魔の力を抑える神父の服〟を着込んで街を歩いて探しているらしいが、こちらも進展は無し
「なぁ、浩太郎」
「うん?」
「例のボウリングとカラオケの会合のことだよ。お前とアーシアちゃんは来るんだろう?」
そういえばそんな約束をしていたっけか、と浩太郎は思い出す
兵藤を含めた変態三人、木場、小猫、アーシア、そして桐生と浩太郎のメンバーで休みの日に遊ぼうぜ、という話になっていたのだ
個人的に驚いたのは小猫だ
断れるんじゃないか、とも思ったが意外にも乗り気だったのがびっくりだ
そして問題なのは木場である
既に話はつけてある、ということだが、このままではとてもじゃないがそんな気分にはなれない
どうでもいいが元浜と松田両名はものすごいテンションが上がっている
どんだけ女に飢えていたんだ彼らは
「なんだか憂鬱げだね? 梓馬くん」
「? なんだ、桐生ちゃん」
声をかけられたので身を起こし、首をコキリとならしながら声のした方へと視線を移す
そこにいたのは桐生藍華というメガネ女子だった
以前にもいったが、彼女は兵藤一誠が悪魔になる以前の変態(今も変態だが)の頃から普通に話をしている女性の友人の一人だ
「ふふ。それともみんなと一緒に遊べるから、それが楽しみになってきたのかな?」
「小学生か。…いや、楽しみではあるけど」
そういえば最近そんな遊びをしていない
最も、そんな暇もなかった、と言ってしまえばおしまいなのだが
「そうだ、結局木場くんは来るのかな?」
「…わからん。でも来させるよ。兵藤と一緒に説得してみる」
などといっては見たものの、言葉などは届かないだろう
彼自身が、聖剣に見切りを付けない限り、最悪ここを去ってしまう未来も見える
それだけは阻止したい
◇◇◇
放課後
聖剣探しに赴く一行を見送りつつ、本日もリアスとソーナを注意を引こうと画作する
単純に勉強を教えてください、というシンプルすぎるこの提案に、二人は普通に快諾してくれた
―――余談ではあるが、この際浩太郎は生徒会メンバーとも顔を合わせている
場所はオカルト研究部の部室
そこで勉強を教えてもらっているのだが
さすがに連日ともなると二人の視線が若干ジト目になっているような気がしてならない
というか、たぶんこれバレているのではなかろうか
それでも黙ってくれているのは情けなのか、それとも待ってくれているのか
「そ、ソーナさん。ここのなんですけど」
「ん。どれですか?」
とりあえず場を濁すためにわからないところを聞く
同時に〝なぜこちらに聞いてくれないのよ〟的な視線を送っているリアスが視界に入ってきた
…あとで何らかの問を聞いておこうか、そう思った時だ
ゾワリ、と体がまるで警告するかのように悪寒が疾ったからだ
浩太郎が気づけるほどのことだ
この二人が気づかないわけはない
「…本当は、ちゃんとみんなから聞こうと思っていたけれど」
徐にリアスは低い声音で呟いた
それに合わせるかのようにソーナもすくっ、と立ち上がり
「現場に行くまでに、〝お話〟を聞かせてもらえますか?」
笑ってるけど笑ってない
変に取り繕ったら確実に未来はないような気さえする
観念した浩太郎は素直に全部吐くことにした
心の中で、ごめん、兵藤と謝りながら
◇◇◇
場所と時間を遡る
こちらは兵藤たち実働組の面々だ
ゼノヴィアから貰った神父の服やシスターの服を着込み歩き回っていたが一向にフリードが現れる気配は今のところない
せっかく浩太郎がごまかしてくれているのだから、なんかしらの結果は掴まねば、と思っていた
一応、念のため、という保険の意味を込めて、小猫は行動する前、望月翔子へとメールを打っておいた
いつ来るかはわからないが、ともかくこちらに向かってくれているはずだが、と思っていた時だ
不意に、殺気のようなものを肌で感じた
一瞬勘違いかなにかか、とも思ったが、違う
どこからこの殺気は飛んできている…? そう思考を、巡らせた瞬間だ
「上だ!」
木場が叫んだ
彼の叫びに合わせ、皆が上を向いたとき、件のフリードが剣を振りかぶって急襲を仕掛けてきていた
「ご加護あれ!」
しかしその剣は木場が抜き放った剣に阻まれる
「フリード!」
「おんや。その声はイッセイくんっ!! お元気そうでなにより! 殺し甲斐あるねぇ!」
愛も変わらずの様子で全然安心できない
彼の持つのが聖剣エクスカリバーであることに間違いはないだろう
各々来ていた服を脱ぎ捨て、普段通りの制服となる
「ブーステッドギア!」
<ブースト!>
言いながら兵藤が
今回の作戦における彼の役目は補助だ、力を倍増し、それを譲渡できるその力をどう生かすかにかかっている
「伸びろ!」
匙の手元からなにか黒いラインが伸びていった
彼の手の甲にはトカゲのような顔が装着されており、伸びているもの正体は舌のようだ
「あん!? ウゼェ!」
聖剣で薙ごうとするが、それは軌道を変え、下へとおちる
舌はフリードの足に絡みつき、そのまま巻き付いた
彼はなんとか斬ろうとするが、まるでその舌は実体がないかのように擦りぬける
「木場! 今だ、存分にやっちまえ!」
「ありがたい!」
どうやら先にフリードの足を止めることに専念したようだ
…変態ではあるが、頭は少し冴えているかもしれない
その隙をついて、木場が二刀の魔剣で攻め立てる
「ち、複数の魔剣所持、〝
ぶん、と振るわれたひと振りのエクスカリバー
その一太刀で、木場が持っている魔剣の両方があっけなく折れてしまった
思わず兵藤が叫ぶ
「木場ぁ!」
「死にな!」
「させっかよぉ!」
木場を刺し貫こうとしていたフリードの体が不意に何かに引っ張られたように体勢を崩す
引っ張った正体は匙が伸ばしたいた黒いラインだ
同時にその黒いラインは光輝き、匙の方へと流れていくようにも見える
「! 吸収する気か!」
「〝
彼もまた、所有者だったのだ
「ドラゴン系か! くそ、忌々しい! 最初はクソだが、成長性バツギュんだからよぉ! ああクソまじでクソうぜぇ!!」
「祐斗先輩! とにかく、先に彼から倒しましょう、このままこの神父を放置できません!」
「―――確かに、小猫ちゃんの言うとおりだね」
改めて魔剣を生み出す木場
確かにここでこの神父を倒せば後が楽になるだろう
匙の力で弱体化している今がチャンスだ
そんなときだ
フリードの後方から飛び出してくる人影があった
それはネコの姿をした化物だ
「!」
「あれ…は!」
「な、なんだありゃあ!?」
すかさず木場は後ろへ飛び退き、その襲撃を回避する
兵藤の驚きを耳にしながら、小猫は思い出していた
それは以前イヌの怪人と一緒にこちらを襲撃してきた怪人の片割れだ
イヌの方は浩太郎と協力して撃破できたのだが、ネコの方は撤退していたのか
「っと! コイツは…。て、ことは」
フリードは呟きながら己の後ろを振り向いた
その視線の先には神父の格好をしている初老の男性が居た
それを確認したフリードは名を口にする
「やっぱり。パルパーのじいさんかよ」
そしてその言葉に、今度は全員が困惑した
名前だけは聞いていたが、姿は知らなかったのだ
「―――パルパー・ガリレイ…!!」
憎しみを込めた声色で、木場はその名を呼んだ
その言葉に、ガリレイは「いかにも」と肯定した
どうやらコイツが木場の仇で間違いなさそうだ
「いかにも。私はパルパー・ガリレイだ」
男―――ガリレイはそれに肯定する
ガリレイはフリードへと視線をやって
「何をしている。貴様に渡した因子をもっと有効に活用したまえ。体に流れる因子をできるだけ剣に込めろ。さすればさらに聖剣の切れ味は増していく」
「なっほど。…こうか、そぅらよぉ!」
フリードの持つ聖剣が輝きを放っていく
そして振るわれたその聖剣に匙の
「戦略的撤退ってやつだ! あばよ、次に会うときは盛大に殺し合おうぜ!」
「逃がさないっ!!」
捨て台詞を吐き捨てるフリードに、兵藤の横から凄まじい速度で駆け抜けていく人影があった
振るわれたその人影の聖剣を、フリードは己の聖剣で受け止める
その人影は、ゼノヴィアだ
「やっほー、イッセーくん」
「い、イリナ!」
彼女に続いてイリナも駆けつけていた
「反逆の徒め、神の名の元に断罪してくれる…!」
「は! 俺の前で神の名前なんて出すんじゃねぇよ、このダボが!」
ゼノヴィアと切り結ぶ最中、フリードは徐に懐に手を突っ込み、光の玉みたいなものを取り出した
逃亡用のアイテムだ
「撤退だじいさん。報告しに行くぜ」
「致し方ないな」
「じゃあな! クソ連合どもが!」
言い捨てながらフリードが地面へとその球体を投げつける
閃光とともに、一行の視界を奪った
視界が回復した時にはその場にはもうフリードとガリレイの姿はなく、その場にはネコの怪人だけだ
「追うぞ、イリナ!」
「うん、行こう!」
ゼノヴィアとイリナはそれぞれ頷き合い、その場を駆け出した
道中、ネコ怪人の妨害があったが、手に持つ獲物で捌き、その場を後にする
「逃がすか、パルパー・ガリレイ!」
木場も同様に二人の後を追って、体制を崩しているネコ怪人を越えてそのまま走っていってしまった
「あ、おい木場! あーもう、俺たちも、コイツを倒して―――」
そう兵藤が口に出した瞬間だ
再度自分たちの背後から何かが跳躍して現れてきた
現れたそれはまっすぐ足を突き出し、蹴りの体制を取った
一直線にそれは飛び、ネコの怪人へと直撃する
「な、なんだ!? てか、誰だ兵藤、知り合いか!?」
「わ、わからん! でも、なんだろう…浩太郎に、似てる気がする…」
色は全く違う緑色ではあったが、赤い複眼といったところは浩太郎の変身するBLACKとそっくりだ
驚く兵藤と匙とは対照的に、小猫だけは落ち着いていた様子だった
もしかして彼女はあの緑色の人物のことを知っているのだろうか
「ごめん、小猫ちゃん。すっかり遅れちゃったわ」
「大丈夫です、望月さん」
「こ、小猫ちゃん!? 知り合いなのか!?」
兵藤の問い掛けに小猫はうん、と頷いた
緑色の人影は小猫にそう言うと相対するネコ怪人へと駆け出していく
戦いに迷いはなく、以前戦った経験も相まって、終始優位に立っていた
やがて彼…、いや、彼女は腹部に拳を打ち込んで、そのまま空中へと投げつけた
そのまま再度己の拳に力を込め、思い切り落下してくるネコ怪人に叩き込んだ
一瞬の沈黙のあと、どぉん!と爆発する
思わず匙と兵藤、小猫の三人は爆風から身を守るために手で自分の顔を覆い隠した
やがって爆心地から歩いてくるのは緑色の人物だ
そいつは一行の前へと歩いていき、変身を解く
「お、女の人!?」
「小猫ちゃんの知り合い?」
驚く兵藤を横目に小猫は頷いた
それを聞いてなるほど、と一人納得した彼女は自分の名前を名乗る
「私は望月翔子。よろしくね」
「お、俺は兵藤一誠っス! よ、よろしくお願いします!」
「匙元士郎といいます、ど、どうもよろしく願います」
カンタンな自己紹介を交わし、思い出したように望月が手を叩いた
それと同時に、再度背後に気配を感じた
なんでだろうか、振り向きたくない欲求が出る
「そうだ、ここに来る途中さ、浩太郎くんに会ったんだけど」
「浩太郎さんに?」
「うん。もうすぐ来ると思うけど…」
「―――これは、困ったものね」
背後から聞こえてきたその声色に、匙はビクゥ、と体を震わせる
聞いたことのある声色だ
その人が来ている、ということは、もしかして
ゆっくりと振り返る
そこには困り顔のリアスとソーナ、そしてその後ろには苦笑いを浮かべる梓馬浩太郎の姿があった
なぜ、ここにいるのか
わかりきっている理由に、兵藤の顔は一気に青ざめた
◇◇◇
「…あなたたちね」
額に手を当てて、機嫌の良くないリアス
あのあと一行は公園へと連れて行かれ、浩太郎と何故か望月までも一緒になって噴水の前に正座させられていた
「本当に困った子です」
「か、会長…。すみません」
普段見られないソーナの表情
詰め寄られている匙の顔もまた青い
よほど怖いのだろう、しかも若干震えている
「祐斗は、そのまま追いかけたのね?」
「は、はい。ゼノヴィアとイリナも一緒だと思います。その、何かあったら連絡をしてくれると思うんですけど…」
「復讐の権化とかした祐斗が、悠長に電話してくるかしら」
彼女の言う言葉に同意する
恐らく彼は周りが見えていない、こちらに連絡をよこす可能性はゼロに近い
リアスはもう一度口を開く
「過ぎたことをとやかく言うつもりはないけど、あなたたちがしたことは悪魔全体に影響を及ぼすものなのよ? それはわかっているわね?」
「はい」「…はい」
小猫と兵藤は同時に頷いた
っていうか、そんなことは百も承知だろう
だが、ことの大きさを理解していなかっただけで
「部長、すみませんでした」
「ごめんなさい、部長…」
兵藤と小猫はそれぞれ深々と頭を下げる
リアスはそれを見て、小さく息を吐いた
「…まぁ、今回は大目に見るわ、ソーナ」
「えぇ、コウタロウくんに免じて、今回だけは許してあげましょう」
二人の言葉に匙、兵藤、小猫の三人はえ? と顔をあげた
同時に、視線が浩太郎へと映る
「ここに来る道中、ことの経緯は浩太郎から全部聞いたわ。そのあとにね、みんなを責めないであげてください、って言われたの。ただ、友達思いなだけなんです、ってね」
リアスが微笑んだ
その微笑みは、自分たちがよく見る優しい微笑みだった
「使い魔たちを祐斗の探索に行かせたわ。見つけ次第みんなで迎えに行くわよ。これからは、その時に決めるわ」
『はい』
リアスの言葉に兵藤と小猫は返事を返す
その返事を聞いた後、今度は視線を別の人物に移した
「…それで話は変わるけど、貴方は? あ、もう立って大丈夫よ」
「? 私? 私は望月翔子。貴女はリアス・グレモリー、さん?」
今更とも言える名の確認
望月という女性の問いに、リアスは頷いた
望月は兵藤らと一緒に立ち上がり膝に付いた砂を払いながら
「え、えぇ。そうだけど。もう一回聞くけど、貴女は?」
「え? だから望月―――」
「名前は聞いたわ。私は何者かって聞いてるの」
「何者か、と聞かれると、ちょっと返答に困るわ。…聖剣計画の、生き残り、って言えば、信じてくれる?」
その言葉に、空気が凍った
まさか木場以外に生き残りがいるとは思わなかったからだ
「…詳しく聞いてもいいかしら」
◇
ファミレスで浩太郎と小猫がした話を、今リアスに話している最中
遠目から見ている浩太郎に、兵藤が声をかけてきた
「浩太郎、その、いろいろありがとうな。面倒かけて、さ」
「気にすんな。やりたいからやっただけだよ」
「私からも、感謝します。…本当にありがとうございました」
「…別に、どうってことないから」
立て続けに謝辞を述べられるとさすがに恥ずかしいものがある
やがて話が終わったのか、望月がこちらに歩いてきた
「話は終わったんですか?」
「えぇ。リアスさんいい人ね。ホント、祐斗もいい人に拾われたわ」
「そう言われると、少し照れるわね」
望月の後ろからリアスが歩いてきながら言葉を発する
その隣ではソーナと匙もいた
「リアスさん、祐斗のこと、よろしくね」
「えぇ。祐斗は私の眷属だもの。見捨てるなんてことはしないわ」
「それを聞いて安心した。…浩太郎くん、小猫ちゃん、何かあったら連絡よろしく。すぐ駆けつけるわ」
そう二人に言い残し、望月はその場をあとにした
彼女の背中を見送りながらリアスは小さく言葉を発する
「世界って、意外に狭いのかしら…」
「かもしれないですね」
その言葉に小さく笑んでソーナも頷く
ふと時間を確認したリアスが、浩太郎たちの方に向き直って
「今日はもう解散ね」
その言葉を皮切りに、公園にいた一行はそれぞれ帰路へついた
リアスと兵藤、そしてソーナと匙とは途中で別れ、今現在は小猫と道を歩いている
…今日一日はいろいろと大きな出来事が起きすぎた
イベント目白押し、といったところだろうか
「結局、トランプ出来ませんでしたね」
「まぁ仕方ないよ。今日はね」
小猫はアーシアとのトランプを楽しみにしていたのか、ちょっとしょんぼりとしている
なんだか猫みたいで可愛いな、と思ったのは内緒だ
やがて分かれ道に行き付き、そこで小猫とも別れ、また明日、と言い合いながら自分の家へと歩いていく
自分の家へとついたとき、出迎えてくれたのはアーシアだった
ドアを開けた瞬間「お帰りなさい」と笑顔とともに迎えてくれたときは天使かとも思ったほどだった
―――そして、事態が動いたのは、皆が寝静まった深夜だった