その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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今回からヴァンパイア
普段より短いですが、そして相変わらずですがご容赦を

つまらないものではありますが、少しでもお楽しみ頂けたのならこれ幸いです

ではどうぞ

※誤字脱字等見かけましたらご報告ください


停止教室のヴァンパイア
18


深夜帯のことである

梓馬浩太郎は時間を確認し、そっと布団から抜け出し、動きやすい服装に着替えた

なぜ着替えたかというと、自分自身を鍛えるためだ

広さや人気の少なさも相まって、最近はこの公園が浩太郎の特訓場所になりつつある

 

「…メリディさん、お願いします」

<最近熱心ね。いいわよ、相手になってあげる>

 

キングストーンから声が発せられ、浩太郎の体から球体が飛び出し、彼の前にその姿を形作る

そこに現れたのは長い黒髪を持つ、先代のブラックサン〝メリーディエース・ルークス〟が現れた

浩太郎がRXへと覚醒して以降、メリディとは普通に会話ができるようになっていた

それで時折こうして現界してもらい、トレーニングの相手をしてくれているのだ

その場で拳を握り構えをとり、メリディがBLACKへと変身する

メリディに合わせるように浩太郎も構えをとり、RXへとその身を変身させる

 

「さぁ―――行くわよ」

「お願いします」

 

そうお互いに言い合って、二人の黒い戦士は地面を駆け出した

 

 

ある日の深夜

梓馬浩太郎は兵藤と一緒に依頼者の元へと向かっていた

兵藤は自転車、浩太郎は屋根から屋根を飛び移って移動するという忍者的移動法だ

それにしても最近アーシアが甘えてくる比率が上がってきていると思う

のんびり居間でひなたぼっこしつつ眠っていたらいつの間にか彼女がとなりでぐっすりしていた

起きて部屋で寝なさい、と注意すると「だっこ…」とか言ってくるのだ

天使か己は、と何度思ったか

それとは逆に浩太郎がほかの女子と話しているとちょっぴり頬を膨らませることも少なくない

何でだろうか、イマイチわからない浩太郎だった

 

「よー、悪魔くんとその友人、今日も呼んですまないな」

 

連日、兵藤を指名しているのは目の前にいるチョイワル系の男だ

顔はまぁイケメンといったいいだろう、成人男性なら確実にモテるといってもいい

しかしこの男、正直自分でも言うのはなんだが大変しょうもないことを要求してくる

昨日はパンを買ってこい、というパシリ、その前は釣りに連れ出されたし、さらに前は人生ゲームのボードゲームをプレイした(楽しかった)

とはいえ悪魔の仕事は依頼者の願いを叶え対価をもらうことにある(故に浩太郎は兵藤の仕事を見学してました)

 

「今日はゲームでもやらないか。対戦格闘ゲームを買ってきたんだが、相手がいなくてな」

 

だったらなんで買ったんだよ、と突っ込みたいが彼が持っていたゲームソフトは既に浩太郎が所持しているゲームソフトだ

兵藤は一瞬嫌そうな顔をしたが直ぐに頭を振り払い

 

「はい、喜んで」

 

と依頼人に言っていた

ちなみに確かに要求してくる依頼としてはこの男はしょうもないが、こちらにくれる対価が想像以上にすごいものだったのだ

高そうな絵画、宝石に金塊など、あんなしょぼい願いに対しては高すぎる報酬だ

故に―――浩太郎は内心でこの男のことを疑っていた

絵画は百歩譲って入手可能かもしれないが、宝石はまだしも、金塊などをただの人間が調達できるわけがないのだ

ゲームをセットし、起動させる

 

「兵藤、先手は俺が貰っていいか?」

「え? いいけど…」

 

兵藤に断りを入れ、依頼人の隣に座り、コントローラーを握る

その際、依頼人が

 

「アーケードコントローラーもあるが、どうする?」

 

そんなものまで買ったのかあんたは、と突っ込みたい気持ちを抑え、浩太郎はこのままでいいとその提案を突っぱねた

高校生にゲームを買う金はあってもアケコンなんて買う金がないからだ

 

「浩太郎、こういうゲーム強いですよ?」

「ほぉ、そいつは楽しみだ。こちとら、初心者だからな、軽く頼む」

 

しかしそれは無理な相談である

どんな相手にも全力で向かい、油断せずが浩太郎の心情だ

例えそれがゲームでも、現実の戦いでも、それは変わることはない

それぞれがキャラを選び、ステージを選んで戦いが始まる時、浩太郎は依頼人の男に向かって呟いた

 

「…それで、あんた何者です?」

「何者、とは?」

「とぼけないでください。たかが人間に、あんな金塊や宝石、用意できるわけがない。金塊なんてドラマでもなかなか見ないインゴットだ。こんなんを用意できるのは、限られる」

 

浩太郎の言葉に驚く兵藤、同時に浩太郎の付近に移動し、いつでも戦えるようにわずかながら身構えた

対する依頼人がニヒルな笑みを浮かべたあと

 

「はっはっは。さすが、今代のブラックサン、といったところか」

 

男はそう言ったあと、バサァ、と彼の背中から十二枚の翼が展開する

画面を見て、操作しながら男は言った

 

「アゼザル。堕天使どもの頭をしている。よろしくな、赤龍帝の兵藤一誠に、ブラックサンの梓馬浩太郎」

 

自己紹介をする堕天使―――アゼザル

また面倒くさそうな事件が起ころうとしていた

 

ちなみに、格闘ゲームの方は浩太郎が勝った

割と肉薄してていい戦いだった

 

 

紅髪の主、リアス・グレモリーははっきりと怒りを顔に出していた

兵藤の主人で浩太郎の属しているオカルト研究部の部長、駒王のお姉さまとしても頼れる女性だ

今現在、兵藤を膝枕しており、それに若干兵藤もにやけている

 

「…確かに三すくみのトップ会談がこの街で行われるといえど、堕天使の総督が縄張りに侵入し、尚且つ営業妨害をしてたなんて…!」

 

リアスはまるでどこぞの右京さんのごとく全身をプルプル震わせて怒りを表しており、完全におこである

何日か前にここで起きた事件は悪魔、堕天使、天使の三すくみに多少ながらも影響を起こしており、結果一回集まって話し合おう、ということになったのだ

そして我々オカルト研究部はそれに関わってしまいその会談に同席して報告しなければならないという

そんななか、兵藤の契約相手としてアゼザルが接触してきた

素性を気配を隠し、堂々とこっちに接近してきたのだ

お茶目では済まされない

 

「―――しかも、私の可愛いイッセーに手を出そうだなんて…! きっとイッセーが赤龍帝の篭手を所持しているから接近してきたんだわ。…はたまた、浩太郎が内包しているキングストーンを狙って…? どちらにしても万死に値するわ…!」

 

兵藤の頭を撫でながらリアスは呟いた

リアスは眷属悪魔を大切に思う人だ、自分の所有物を誰かに傷つけられたり、触れられることをひどく嫌っている

…浩太郎はリアスの眷属悪魔ではないが、思ってくれていたことは少し嬉しかった

しかし基本的には彼女は兵藤を一番に思っているので、そういう話には過敏なのだ

だが当のイッセー本人はその情愛を主と下僕、という感じでしか捉えていないだろう

まぁそう思うのも無理はない

なにせ兵藤自身、手痛い振られ方をしており、無意識に女性を遠ざけているきらいがある

さすがにそれを本人にそれを言うことはしないが、いつか克服してくれることを願っている

 

「…やっぱ、俺の神器(セイクリッドギア)を狙ってきたのかな、アゼザルは」

 

ふと兵藤がそう不安を口にしていた

そういえばアゼザルは神器(セイクリッドギア)コレクターと聞く

事前にその話を聞いているとそう思ってしまうのも無理はないだろう

 

「確かに、アゼザルは神器(セイクリッドギア)に造詣が深いって聞いてるね。さらに、有能な神器(セイクリッドギア)所有者を集めているとも聞く。…だけど、大丈夫だよ」

 

木場はなんかかっこいい表情で兵藤を見て、言葉を続けた

 

「僕が、君を守るからね」

「木場、兵藤が反応に困っているぞ」

 

なんかボーイズにラブりそうなことを木場が言い始めた

兵藤もなんか嬉し戸惑っている表情だ

っていうか真顔でそんなことを言われたらさすがに引く

 

「真剣に言うに決まってるよ。イッセーくんは僕を助けてくれた、大事な仲間だ。その中にはもちろん、浩太郎くんも入ってるからね。仲間を守れなくて騎士は名乗れないよ」

 

嫌いじゃないわ

しかし浩太郎にはボーイズにラブる趣味などない

あくまで普通の友人として末永くお付き合いしたい

 

「けどどうしたものかしら。向こうの動きがわからない以上、こっちも動きにくいわ。…相手が相手だし、下手に接することもできないわね」

「―――アゼザルは昔から、ああいう男だよ」

 

不意にこの場に誰でもない声色が聞こえてきた

部室のみんながその声の方へ振り向くと、紅髪の男がそこに立っている

リアス・グレモリーの兄〝サーゼクス・ルシファー〟がいたのだ

ふと周りを見ると朱乃らがその場に跪き、兵藤とアーシアだけが対応に困っていた

新顔であるゼノヴィアも疑問符を浮かべている

これは自分もやったほうがいいのだろうか

とりあえず挨拶はしておこう、と思った浩太郎は立ち上がり

 

「どうもです、サーゼクスさん」

「こ、コウタロウ!?」

 

驚いた様子でリアスが言葉を発する

仮にも目の前にいるのは魔王、さすがにこれはフランクすぎただろうか

対するサーゼクスはははは、と笑い飛ばして「構わないよ」と快く許してくれた

そして今気づいたがよく見るとその背後にはグレイフィアが控えていた

 

「くつろいでくれたまえ、今日はプライベートだ」

 

サーゼクスが皆にかしこまらないで大丈夫、ということを皆に伝え、それに習い、立ち上がった

部屋を見渡しつつ、サーゼクスは口を動かした

 

「やぁ、我が妹よ。しかしこの部屋は殺風景だ。年頃の子達が集まるのは、いささか魔法陣だけというのはどうかな?」

 

今ではすっかり慣れてしまったが、そういえばこの部室は魔法陣だらけというこの部屋ははっきり言って変だろう

いや、変だ

怪訝そうにリアスが聞いた

 

「お、お兄さま、なぜこちらに?」

「何を言ってるんだ、授業参観が近いのだろう。私も参加しようと思ってね是が非でも妹が勉学に励む姿を間近で痛いのだよ」

 

そう言ってサーゼクスは懐から授業参観のプリントを取り出した

プリントを見て思い出したが、そう言えばもうすぐ授業参観がある

残念ながら浩太郎の両親は共働きの上、二人共休みが取れず、参観には来れないのだ

父も母も、アーシアの授業風景を見たかった、と言っていたがこればかりは仕方がない

 

「…グレイフィアね、伝えたのは」

「はい。報告はグレモリー眷属を任されている私のもとへ届きます。無論、サーゼクス様の〝女王〟でもありますので、主へと報告もしました」

 

それを聞いてリアスははぁ、とため息を吐く

何やら乗り気じゃないようだ、まぁ流石に恥ずかしいのだろうか

 

「妹の晴れ舞台だしね。たとえ魔王職が激務であろうと休暇を入れてでも、参加したいのだよ。安心していい、父上もちゃんとお越しになる」

 

あのダンディなお方も来るのか、とひとり浩太郎は思う

 

「そ、そうではなく! 魔王ともあろうお方が、仕事をほっぽって一悪魔を特別扱いするべきではありませんわ!」

「いやいや、これも仕事でもあるんだよ。実は例の会談を、ここで執り行うことになってね。会場の下見に来たんだよ」

 

その言葉に部室の全員が驚く

まさかそんな大事な会談に、この学園が使われるとは思わなかったからだ

 

「! ここで、本当に?」

「あぁ。この学園とは、どうやら色々と縁があるようだ。妹であるリアスに、赤龍帝、聖魔剣使いに、デュランダル使い、魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹、そして、伝説のブラックサンが所属し、コカビエルと白龍皇が襲来してきた。これは、偶然では片付けられないよ。そのうねりを加速度的に増しているが、兵藤くんと梓馬くんだと、思うのだけど」

 

サーゼクスは兵藤と浩太郎、二人に視線を送ってくる

以前にもこんな眼光で貫かれた、あれはフェニックスとのレーティングゲームの時だろうか

兵藤は少し緊張しているようだ

まぁ相手は魔王だし仕方ないだろう

 

「貴方が魔王殿か。初めまして、ゼノヴィアというものだ」

 

会話に入ってきたのは新人悪魔のゼノヴィアだ

一見ごく普通の少女だが、その実聖剣デュランダルの使い手で、リアスのもう一人の〝騎士〟である

 

「ごきげんよう。私はサーゼクス・ルシファー。報告は聞いているよ。しかし我が妹の眷属になるとは、最初に聞いたときは驚いたよ」

「私も大胆なことをしたと思っている。今まで葬ってきた側になるとはな。…うん、そうだ、なんで悪魔になったんだろうか…」

 

そして彼女は悩み始め、自問自答を始めた

時たま大胆不敵なくせにそのあとで後悔している姿をよく見ている

 

「ははは。妹の眷属は楽しくて賑やかだね。どうか妹を支えてあげて欲しい。よろしくお願いするよ」

「魔王ルシファーにそこまで言われては、後には引けない。やれるところまでやらせてもらうよ」

「ありがとう」

 

ゼノヴィアの言葉を聞いて微笑みながら言葉を紡いだ

その微笑みを見たゼノヴィアも、少しだけ頬を染める

 

「さて、これ以上は話しても仕方がないな。今日はここらあたりで解散としよう」

 

サーゼクスの声で、ひとまずその場はお開きとなった

ちなみに、サーゼクスは兵藤の家に泊まる事になったようだ

確かに彼の家にはリアスもいるし、ちょうどいいだろう

 

 

本日は日曜日で、学校はお休みだ

しかしやることがあるので、休日登校だ

玄関を出ると待っている小猫と合流し、三人で学校へと向かう

適当に駄弁りながら歩いていると、一人の女性と合流する

 

「おはよう、三人とも」

 

ゼノヴィアだ

彼女は浩太郎や兵藤宅付近のマンションで一人暮らしをしている

悪魔となった彼女はもうヴァチカンに戻れない

故にこの街で住むことになったのだが、旧校舎は嫌だったようで、マンションを借りることになった

そのマンションも悪魔の息が掛かっている場所らしく、近所なのは友人であるアーシアに気兼ねなく訪ねてこれるようにである

どうでもいいが雨の日に傘をさしていたらとても驚いていた事を覚えている

なんかあちらでは傘をささないらしい

風邪ひかないのだろうか、いや、あっちはきっと神に祈ってれば風邪なんて引きませんとか本気で思ってそうだ

これが文化の違いか

 

「アーシア、宿題は済んでいるか?」

「はい。ゼノヴィアさんは?」

「私は日本語でわからないところがあってね。よかったら教えてくれないか?」

「お任せ下さい! …けど、漢字はちょっと…」

「それは私もだ。…日本人とはすごいな、こんな複雑な文字を覚えるのだから」

 

日本語になれている浩太郎や小猫はそういう実感はわかないが、外国の方から見たら日本語はとても難しいらしい

なんだかんだですごいのだ、日本とは

そんな雑談をしている二人は、たちまち学校の人気者になった

なんでも静のアーシア、動のゼノヴィアなんて呼ばれたりしている

 

ちなみになぜ、休日なのに登校しているか、というと今日はオカルト研究部限定のプール開きだったりしている

我々オカルト研究部はプールの清掃を生徒会から任せられていた

一番最初に使用していい、ということを条件にその清掃をリアスは快諾、部員一行はプールの掃除をしたのだ

横を歩く小猫がふと、浩太郎の袖をくいくいと引っ張った

 

「? どうした?」

「い、いえ。あとでいいのですけど、お願いがあるんです」

 

わずかに顔を俯かせながら若干頬を染めながら彼女は言った

その言葉に浩太郎は首をかしげながら、一行はそのまま駒王学園へと向かっていった

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