その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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二回目
うまくできてるかは不安です
こんな自分の文で楽しんでいただけるのなら幸いです

ではどうぞ


旧校舎のディアボロス


バッタ男が跳躍する

視線の先にいるのは、スーツを着込んだ男だ

バッタ男は片手で手刀を作り一気に縦に振り下ろす

なんとか一撃を回避し、男は反撃としてバッタ男の腹を蹴り飛ばして距離を離す

バッタ男は僅かに腹を抑えて隙を見せた

その隙を見逃さまい、と男は再び光の槍を形成し、それをそのままバッタ男に向かって投げつける

槍はそのまままっすぐ飛んで突き刺さる―――そう確信していた

しかしその想像はもろくも瓦解することとなる

 

ヒュン! と振るった手刀一撃で、あろう事かその光の槍を破壊したのだ

馬鹿な、と思った

 

光は悪魔にとって猛毒なのだ

そう考えると目の前のバッタ男は悪魔ではないというのか

スーツの男は歯噛みをしてもう一撃槍を投げようとしたその時だった

 

「そこまでにしてもらえるかしら」

 

凛、とした声だった

 

赤い髪の色をした女性が兵藤の横から歩いていく

後ろ姿でも理解できる

 

「…その赤い髪。グレモリー家のものか」

「リアス・グレモリーよ。…それ以上私の縄張りで争うのなら、容赦しないわ」

 

リアスと名乗った女はジロリ、とスーツの男とバッタ男へと視線を交わす

そしてリアスは言葉を口にした

 

「…ところで、そちらの男…? はあなたの知り合い?」

「まさか。むしろ、私も知りたいところだ」

 

会話の話題となったバッタの男は唐突に糸が切れたようにその場に倒れ伏した

それと同時に、バッタ男の姿が梓馬浩太郎へと戻る

その姿を見てリアスは驚いた

つい最近小猫から報告のあった人物だったからだ

 

「…その男については言及しないが、そちらの眷属については詫びよう。下僕の放し飼いは感心しないぞ、いつまた私のようなものに狩られるやもしれん」

 

その言葉にリアスは少し咳払いをした後

 

「…ご忠告ありがとう。この街は私の管轄。邪魔をしたら、その時は―――」

「そのセリフ、そのまま返そう。グレモリーの次期当主。我が名はドーナシーク。再び会うことがないよう願う」

 

ドーナシークはそう言って背中から黒い翼を羽ばたかす

空へと飛翔したその男は一度だけリアスと兵藤を一瞥するとそのまま夜空へと消えていった

 

(…危機は、去ったのか?)

 

倒れている浩太郎には申し訳ないけれど、一度安堵してしまうと一気に疲れがこみ上げてくる

そのまま兵藤は眠るように気を失ってしまった

ドサリ、と倒れた音を聞いてリアスは兵藤の元へと近づいた

そして気を失っていることを確認すると、今度は別の方向で倒れている浩太郎を見た

 

「…外傷としては浩太郎(かれ)の方が少ないわ。危険なのは兵藤一誠(かれ)の方…。私の思いつく方法じゃ、これしか―――」

 

完全に意識を失う直前、兵藤一誠が聞いた最後の言葉だった

 

 

梓馬浩太郎の意識は覚醒する

目覚めた視線の先には見知った天井

棚には購入した特撮ドラマ〝仮面ライダー〟のDVD、そしてついでに漫画本

うん、いつもどおりの見慣れた風景だ

 

昨日のことはなんだったんだろうか

正直今でもよくわからない 

っていうか、あれ? と浩太郎は考えた

 

(…俺、昨日家に帰った時の記憶がない)

 

昨晩家を出るときテレビを見てた両親に挨拶して外に出たのは覚えてる

そしてたまたま寄った公園で知人である兵藤とその近くにいたスーツ姿の変な男と会ったことも覚えてる

更にその男から何かを投げられてそいつが自分の腹に突き刺さったのも覚えている…しかし、思い出せるのはそこまでだ

…夢でも見たのだろうか

 

「…うん、大丈夫」

 

そう自分に言い聞かせ、浩太郎はベッドから身体を起き上がらせる

来ている寝巻きに手をかけ、て早くそれを脱ぎ捨てると駒王の制服へと袖を通していく

…どうしてだろうか、窓から差し込んでくる太陽が今日は妙に心地いい

この太陽の光を浴びているとなんだか壁でもぶち壊せそうな気さえしてくる

試しに部屋の壁でも殴ってみようか…いいや、やめておこう

朝から迷惑が掛かってしまう

 

「浩太郎ー! お母さんたちもう行くからー!」

「ちゃんと朝ごはん食べていくんだぞー」

 

下から聞こえてくるのは両親の声

うちの両親は共働きだ

早くに家を出て、夕刻くらいに帰ってくる

その分朝はゆっくりできないが、夕食の時間帯は家族でゆっくりできるから問題ない

 

「うんー! わかってるよ、父さん、母さん! 行ってらっしゃーい!」

 

いつも通り見送りの言葉を呼びかけて、浩太郎は一階へと降りていく

リビングへと顔を出すとテーブルに今日の朝食であろうトーストがラップに包んでおいてあった

既にジャムが塗ってあり、あとは冷蔵庫から牛乳でも取り出して、それと一緒に食べるだけだ

浩太郎は包んでいるラップをとって冷蔵庫から牛乳を取りそれをカップに注いだ

一通り食べ終え、それを流し台に置き、軽く皿を洗って置いておく

 

「…さって、行くか」

 

いろいろ思うところはあるが、今はそれを考えるのはやめておく

椅子に置いてあるカバンを取り玄関へと行き靴を履いて家を出た

…やっぱり今日の太陽の光は一段と強い気がする

そんなことを考えながら浩太郎は学校へと歩き始めた

 

 

その日の朝の登校

今目の前の視線にはいつもと違う光景が広がっていた

その光景とはこの駒王学園のアイドルとも呼ばれている女性、リアス・グレモリーと一緒に兵藤一誠が並んで歩いていたからだ

 

方や学校のアイドル、方や学校の変態

彼らを見る視線が厳しくなるのは当然だ

「なんでお姉様があんな変態と!?」とか「なぜあのような下品な男と…」と口々に呟く同じ駒王の女生徒たち

おまけにその光景をみた女生徒の中には気絶した人までいるくらいだ

そんな二人に向かって浩太郎は歩いていき、そのまま短く挨拶をする

 

「おはようございます、グレモリー先輩、兵藤」

「あ、っと、おはよう、浩太郎」

「あら、おはよう。よかったわ、貴方も元気そうね」

「…え?」

 

リアスの言葉に疑問を抱くが、その言葉を聞き返すタイミングを逃してしまい、そのままリアスと兵藤の後ろをついていく形になる

玄関付近へとたどり着くとリアスは振り向き

 

「あとで使いを出すわ。放課後にまた会いましょう」

 

そう言って彼女は微笑んだ後、自分の教室へと歩いて行った

彼女の背中を見送りながら、不意に兵藤が浩太郎に問いかけた

 

「…使いって、何なんだろうな」

「いや、俺に聞かれても」

 

わかるはずもない

悶々と考えながら兵藤が教室のドアを開き中に入っていく

先に入った兵藤の後を追うようにドアに入ると、案の定兵藤に好奇の視線が注がれる

当然だ、あの駒王が誇るお嬢様と一緒に歩いているとなればそりゃあ注目の的になるだろう

 

「どういうことだイッセー! 俺たちはつい昨日までモテない同盟の一員だったはずだ!」

「とりあえず理由を聞こうか。イッセー、俺たちと分かれてから何があった?」

 

兵藤にそう言いよる悪友二人に兵藤は一瞬戸惑いながらも、逡巡の後、笑みを作った

そして力強く彼は言った

 

「―――お前ら、生乳を見たことがあるか?」

 

開口一番これである

 

 

放課後

 

「どうも」

 

言葉とともにこの教室に入ってきたのは木場祐斗

この学校一のイケメンと言っても過言ではないだろう男子生徒だ

クラスは違うが、同学年だ

廊下、教室各所からキャーキャーと歓声が湧いている

 

「…ご要件は?」

 

不満そうにしている兵藤に変わって浩太郎が彼に言葉を投げる

 

「リアス・グレモリー先輩の使いで来たんだ」

 

その言葉で浩太郎と兵藤の視線が合わさった

朝、リアスが言っていた使いとは彼のことだったのか

 

「わかった、俺たちはどうすればいい? アンタと一緒に行けばいいのか?」

「うん、お願いできるかな?」

「問題ない。…行こう、兵藤」

「あぁ」

 

兵藤に促すと彼は頷いて席から立った

瞬間、女子たちの悲鳴がこだまする

 

「木場くんと兵藤が一緒に歩くなんて!」

「汚れてしまうわ! 木場くん! ただでさえ梓馬くんが汚れてしまったのに!」

 

どういうことだそれは

 

「木場くん×兵藤なんて!」

「いいえ、実は梓馬くん×木場くんかもしれないわ!」

 

…どうやらこの学校には腐った連中が多いらしい

なんだろう、薄いブックのネタにされてしまっているのだろうか

そう考えると怖い

嫌なことは考えないことにする

ちなみに兵藤に対しては彼の悪友である元浜と松田が兵藤に対して何かを言っていたが浩太郎はスルーすることにした

 

 

木場に案内されて歩いてきたのは校舎の裏手だ

その場所には旧校舎と呼ばれる今は使われていない建物がある

まあ昔は使用されていたのだが、現在は七不思議があるくらい不気味な感じの建物と化している

…古いだけでそこまでボロくもないのだが

 

「ここに部長がいるんだよ」

「部長?」

 

兵藤が聞き返す

部長、ということは彼は何かに所属しているのだろうか

謎は深まるばかりだが、それは彼と一緒に行けばその部長とやらに会えるだろう

二階の木造校舎を進んでさらに階段を上り、更に奥に進む

意外にも廊下は綺麗で使用されていない教室も塵一つ見当たらない

こういった古いのにお約束の蜘蛛の糸もない

定期的に掃除しているのだろうか

やがて木場の足が止まる

どうやら目的地へと付いたみたいだ

 

「…オカルト研究部?」

 

あれ、聞いたことがあるぞ

この部活は確か塔城小猫が所属している部活ではなかったか?

 

「部長、彼らを連れてきました」

 

扉の前で木場が確認を取る

すると中から「えぇ、入ってちょうだい」と声が聞こえた

どうやら部長は中にいるようだ

木場が扉を開けて中に入る

続けて兵藤とともに浩太郎も中に入って、その内装に驚いた

床や、壁、そして天井など、いたるところになんかよくわからない文字が書かれており、さらには中央にはそれらしい魔法陣まで描かれている

 

(…い、意外と本格的なんだな)

 

その時思った素直な感想だった

デスクもいくつか存在しており、ソファーも数台置いてある

そのうちの一つのソファーに誰かが座っている

塔城小猫だ

 

「…どうも、先輩」

 

浩太郎の視線に気がついたのか、普段通りの表情で小猫は挨拶する

それに釣られ、浩太郎も短く彼女に返答した

 

「どうも、塔城さん」

「え!? お、お前、小猫ちゃんと知り合いなのか!?」

 

何やら血相を変えたように兵藤が浩太郎に問いかけた

 

「あぁ、ちょっと、ね」

「ま、マジか! いつの間に小猫ちゃんと…!」

 

そう言った後、少し考えるように俯きつつ何やらいろいろつぶやき始めた

それを見て木場はどことなく苦笑いを浮かべており、小猫は変わらず再びようかんをもぐもぐと食べ始めた

すると部屋の奥からシャー、という水の流れる音が聞こえてきた

 

(…室内でシャワーの音?)

 

よく見るとその奥にはシャワーカーテンが見えた

そしてそのカーテンには陰影…形から察するにその体は女性のものだ

ていうかなんで室内にシャワーなんてあるんだ、ハイカラすぎる部室だな、と浩太郎は改めて思う

キュ、と水をを止める音が聞こえた後、また別の声が聞こえた

 

「部長、これを」

「ありがとう、朱乃」

 

どうやら奥で着替えているようだ

すると何かを思い出したのか、唐突に兵藤の顔が赤くなった

…完全に何やら下心丸出しのような表情だ

 

「―――いやらしい顔」

 

バッサリとぶった切る小猫の呟き

浩太郎ははぁ、とため息を吐く

そうこうしているうちにシャー、とカーテンが開きそこから女性が現れた

まだ乾ききっていない紅い髪が何とも言えない妖艶さを醸し出している

彼女はこちらを見て微笑んだ

 

「ごめんなさい、昨夜、イッセーの家にお泊りして、シャワーを浴びてなかったから、今流していたところなの」

 

また一般女性が聞いたら卒倒しそうなことをさらりと言ってのけた

というか昨日何があったんだ、兵藤よ、と思わざるを得ない

当然、浩太郎も泊まっていたことは流石に知らなかったので、内心は驚いている

 

そしてもう一人の女性がその姿を現す

その女性は…姫島朱乃

長い美しい日本人特有のその黒い髪をポニーテールに束ね、いつも笑顔を浮かべているリアスと並ぶもうひとりのお嬢様

なんでも〝駒王の二大お姉様〟なんて及ばれているくらいだ

 

「あらあら。初めまして、姫島朱乃と申します。どうぞお見知りおきを」

「こ、これはどうも、兵藤一誠です! そ、その、はじめましてっ!」

「梓馬浩太郎です。えっと、…よろしくお願いします」

 

流石に駒王の二大お姉様が前にいると言葉を選んでしまう

兵藤と浩太郎の二人が挨拶をしたのを確認するとリアスは「うん」と頷いて

 

「これでみんな揃ったわね。兵藤一誠…いいえ、イッセー」

「は、はいっ」

「そして…コウタロウ」

「は、はぁ」

 

唐突に名前を呼ばれ、そんな言葉を返してしまう

…変に上ずっていなかっただろうか

 

「私たち、オカルト研究部は二人を歓迎するわ―――悪魔としてね」

 

―――どうやらまた、一波乱起きそうだ

 

 

「粗茶ですが」

「あ、ありがとうございます」

 

ソファに座る二人の前に朱乃が自身がいれたお茶を振舞った

器に触れてみると結構熱かったので軽く息を吹きかけて冷ました後、浩太郎は一口飲み込む

 

「美味しいです」

「あら、ありがとうございます」

 

そう言って笑みを浮かべる朱乃

…正直に言ってその笑顔の奥が見えないのが少々怖いと感じてしまった

ソファに座るとき、浩太郎はなんとなく小猫の隣に座った

この面子の中で自分が(強いて言うなら)一番親しい友人だったから、なんとなくで彼女の隣を選んだのだが、特に何も言われなかったのでこのまま話を聞くことにした

 

そしてみんなの視線が浩太郎と兵藤と行き来する

…流石にそんなに視線を感じると、緊張してくる

 

「まず先に、単刀直入に言うわ。私たちは悪魔なの」

 

ド直球だった

 

「信じられないって顔ね。けど仕方ないわ。あなたたちも昨夜、黒い羽の男を見たでしょう?」

 

そういえば、と浩太郎は思い出す

と言ってもその後すぐに浩太郎は刺されてしまい、気を失っていたのだけれど

 

「あれは堕天使。元々は神に仕えていたけれど、邪な感情をもって地獄に落ちてしまった存在…私たち悪魔の敵よ」

「堕天使、ですか。…普通ならそんなアホな、と一蹴してしまいそうな話ですね」

 

浩太郎の言葉に兵藤が頷いた

そりゃあいきなりこんな話をされて信じろなんて言われても信じることなんかできない

アホくさ、と切り捨てるのが普通の感性だ

 

「悪魔と堕天使は遥か昔から争っているの。冥界…人間界で言うところの〝地獄〟の覇権を巡ってね。悪魔と堕天使で地獄の領土は今二分割しているの。悪魔は人間と契約してもらい代価をいただき、力を蓄える。堕天使は人間を操りつつ、悪魔を滅ぼそうとしている。これに、神の命を受け、悪魔と堕天使を問答無用に排除しに来る天使も含めると三すくみ…。それは大昔から繰り広げられてるの」

「セ、先輩。いくらなんでも、それは一般男子高校生である俺たちには高難易度な話ですよ。っていうか、オカルト研究部ってこういうことなんですか?」

「いいえ、オカルト研究部は仮の姿よ。私の趣味、本当は私たち悪魔の集まりなのよ」

 

仮にこれが趣味と仮定すると本当にいい趣味していますね、と突っ込みたくなる

そして彼女は呟く

 

「―――天野夕麻」

 

その言葉を聞いたとき、兵藤の肩がビクリと震えた

今まで一切多言していない単語を、この女性はどうして知っているのだろうか

 

「あの日、あなたは彼女と―――」

「今ここでその話をするのなら、俺はアンタを怒らないといけなくなる」

 

いつの間に、浩太郎がそう呟いていた

当然だ、その話題を今一番出されたくないのは兵藤自身だ

そんな彼のトラウマを抉るような真似をされたなら、彼女の評価を落とさざるを得ない

 

「―――ごめんなさい。けど、これから話す内容を説明するには、必要なことだったの」

 

そう言ってリアスはス、と一枚の写真をテーブルに置いた

そこには、黒い羽を生やした件の天野夕麻が写っている

 

「…彼女は堕天使、昨夜、あなたを襲った男と同じ存在よ」

「! そ、それって、夕麻ちゃんが、その、堕天使ってことですか?」

 

リアスは続ける

 

「この堕天使は、ある目的のため、あなたと接触した。そして目的を果たしたから、あなたの周りから自分に関する記憶を消去した」

「…目的?」

 

浩太郎の呟きに彼女は頷き

 

「えぇ、あなたを殺すため」

 

ゆっくりと視線を兵藤に合わせ、告げた

 

「な、んだそれ!? なんで、俺が!?」

「そうです、こいつは確かに変態で擁護のしようもないくらいエロいやつですけど、殺されるようなことなんかしていないはずです!」

「先輩、それフォローになってません」

 

若干リアスも苦笑いである

しかし事実は事実だ

 

「ん、ん。落ち着いて二人共。仕方ない…というよりも、運がなかった、としか言えないわ」

「う、運がなかったって…!」

「待ってください、殺されたって言ってますけど、元に兵藤は生きてるじゃないですか」

「彼女があなたに近づいた本当の目的は、あなたの体にとある物騒な物を調べるため。そして時間をかけて確定したの。あなたが神器(セイクリッドギア)を宿す存在だと」

「…神器(セイクリッドギア)?」

 

なんだろうか、それは

疑問に思っていると木場が口を開いた

 

神器(セイクリッドギア)とは、特定の人に宿る規格外の力なんだ。例えると歴史上の人物の多くが、その神器(セイクリッドギア)所有者とも言われているんだよ」

「現在でも、神器(セイクリッドギア)を宿す人はいるんですよ? 世界的に活躍している方々も、その体に神器(セイクリッドギア)を宿しているんです」

 

木場の説明に朱乃が続く

それに続くようにリアスが発した

 

「大体の神器(セイクリッドギア)は、基本的に人間社会じゃ機能しないものばかり。だけど、中には悪魔や堕天使の存在を脅かすほどの力を持った神器(セイクリッドギア)があるの」

 

「待ってください」

 

彼女の説明に浩太郎が待ったをかける

この話の流れからすると、おそらくその神器(セイクリッドギア)を、兵藤は宿しているのだろう

だけどもう一つ、気になることがある

 

「…なんで、俺は呼ばれたんです?」

「アナタも持っているからよ。神器(セイクリッドギア)を。…いえ、アナタの場合は私でもよくわからないのだけれど。…イッセー、左手を上にかざして、ちょっと立ってもらえるかしら。コウタロウは立つだけで大丈夫よ」

 

「?」

 

兵藤と浩太郎が目を合わす

言われるままに兵藤は一度左手を上にかざし、その場に立ち上がる

兵藤につられるように、浩太郎も立ち上がった

 

「目を閉じて、二人が一番強いと思う存在を心の中で思い浮かべて」

 

一番強い存在?

浩太郎の中でぱっと思いついたのは、かつて放送されていた特撮ドラマ〝仮面ライダーアギト〟のアナザーアギトが思い浮かんだ

正確に言えば、個人的にカッコイイ、と思ったやつなのだが

 

「思い浮かべた? じゃあそれを想像して、その人物が一番強く見える姿を思い浮かべて」

 

浩太郎の心の中ではアナザーアギトの変身者が変身する際に取るポーズを思い浮かべた

隣の兵藤は何を思い浮かべているのだろうか

 

「そして、さっき思い浮かべた一番強く見える姿を真似するの。強く、ね」

 

真似る?

…つまりそれは全力で変身ポーズをやれ、ということなのだろうか

マジでか、確かに自宅でひとりでいるときなんかにはごくたまにやってはいるが、さすがにそれを人が見てる前でやるのは少し抵抗が有る

 

「ほら、早く」

 

リアスが急かす

浩太郎がまだ迷っていると先に吹っ切ったのか、兵藤が動いた

 

「―――かめ〇め波ッ!!」

 

どうやら彼が思い浮かべていたのは国民的漫画の主人公の姿だったらしい

バッと開いて両手が上下になって、それを突き出したポーズ、間違いなくかめは〇波だ

 

「さぁ、目を開けてちょうだい。魔力が漂ってるこの空間でなら、容易に神器(セイクリッドギア)も発現できるハズ」

 

兵藤が目をおそるおそるといった様子で目を開ける

瞬間、カッ! と彼の左腕が輝き始めた

その光は少しづつ形を作っていき彼の左手には、赤い色の篭手が装着されていた

例えるなら鬼の篭手的な

手の甲の丸い部分には宝石…というか宝玉のようなものがはめ込まれている

 

「な、なんじゃあこりゃあ!!」

 

兵藤が叫んだ

そりゃそうだ、いきなり自分の左手に特撮で使いそうな篭手が装備されりゃ誰だって驚く

 

「さ、アナタも」

 

友人が先に吹っ切ったのだからこちらも漢を見せねばなるまい

浩太郎は左手を挙げ、右手を腰だめに構えた後に、

 

「…変身…!」

 

その両手を己の腹の前で交差させた

そして、先ほどの兵藤の時と同じように、浩太郎の体が輝き始める

全身!? と内心浩太郎はちょっとビビっている

自分も兵藤みたいに一部分のみの変化だろうと思っていたからだ

やがてその光が収まったとき、全員の視線が集中する

浩太郎自身も、己の身体の変化に興味が湧き、少し右手を見てみた

 

その視線の先には少しグロテスクな手がある

 

「…は?」

「これは…すごいわね」

「想像以上ですわ」

 

口々にリアスと朱乃がそう呟く

口には出していないが、木場もどこか驚いている様子だ

戸惑う浩太郎に小猫がどこからか、手鏡を持ってきて彼に手渡した

渡された鏡を除いて再び浩太郎は驚く

 

「―――なっ!?」

 

そこに写っていたのは、想像もできないようなバッタのような顔をした自分だった

一体全体何がどうなってるんだろうか、一気に色々なことが起こりすぎてて混乱しそうだ

 

「そ、その姿って…昨日…」

「昨日? 兵藤、俺昨日この姿になってたのか?」

 

全く記憶がない

 

「イッセーの言ってることは事実よ。どうその姿になったのかは私もわからないけど…私が駆けつけた時には、男の堕天使と戦ってたわ」

「ま、マジですか」

 

昨日気を失ってからそんなことが起きていたのか

ていうか戦ってたって…未だに信じられない

―――ていうかこの姿から戻れないのだろうか

試しに戻れと思い切り自分の中で念じてみる

すると一瞬輝いた後、元の姿…いわば人間体に戻っていた

 

「こほん。…話を戻すけど、それが神器(セイクリッドギア)。一度発現できれば、あとは自由に己の意思で発現できるわ」

 

そうリアスに言われ、先ほどの、バッタ男(仮名)の姿を思い浮かべる

どうしてだろう、なんだかあの姿からもう一個上があるような気がした

しかし今考えても無駄なので浩太郎はその思考を放棄する

 

「…ということは、やっぱり兵藤は死んだんですね」

「えぇ、瀕死の中、彼は私を呼んだの。この紙からね」

 

そう言って彼女が見せたのは一枚のチラシ

そこには〝アナタの願いを叶えます〟なんて謳い文句がと一緒にこの部室の床の魔法陣が書かれている

 

「人間に化けた私たちの使い魔がその日たまたま繁華街でこのチラシを配っていたの。それをイッセーが手にして、死の間際に私を呼んだ。よっぽど願いが強かったのね。普通なら眷属の朱乃達が呼ばれているはずなのに」

 

…どうやら兵藤は兵藤でいろいろ大変だったようだ

そして同時に、天野夕麻という女性に少しばかり怒りを覚える

確かに兵藤はエロくて、変態で、嫌われているかもしれない

だけど、彼女とのデートを楽しみにしていたあの笑顔は、本当に大切にしようと決意している顔だった

平たく言うなれば、彼女は兵藤を裏切ったのだ

彼の心に、トラウマを植え付けて

 

「召喚された私はあなたを見て、神器(セイクリッドギア)のせいで堕天使に害されたと察した。問題はここからよ。あなたは死ぬ寸前だった。光の槍に貫かれば悪魔でなくても即死、そこで私は、イッセーを救うことを選んだの」

「じゃ、じゃあ、俺って先輩のおかげで、生きていられるんですか?」

「悪魔としてね。…イッセー、あなたは私、リアス・グレモリーの眷属として生まれ変わったの。私の、下僕として」

 

刹那、バッと幸太郎以外からの人物から背中に翼が生えた

コウモリの羽のような、そんな翼

少し遅れて、兵藤の背中からも翼が生えた

…どうやら本格に人間をやめたようだ

 

「改めて紹介するわ二人共。祐斗」

 

リアスに名を呼ばれ、木場祐斗が兵藤と浩太郎に向かって笑顔を作る

 

「木場祐斗。ふたりと同じ二年生で、悪魔です」

「一年の塔城小猫です。よろしくお願いします。…先輩も、改めてよろしくです。悪魔です」

 

そう言って小猫は浩太郎に向かって軽く一礼をしたのち、今度は兵藤に向かって礼をする

 

「三年の姫島朱乃ですわ。オカルト研究部の副部長も兼任しています。よろしくお願いしますね。…これでも、悪魔ですわ。ふふ」

 

そう言って深々と頭を下げる朱乃

そして最後に―――

 

「そして私が、彼らの主―――悪魔、グレモリー家のリアスよ。爵位は公爵。よろしくね、イッセー、コウタロウ」

 

一通り、自己紹介が終わると、改めて兵藤と目を合わせた

いつの間にやら、平凡と生きてきた毎日が、音を立てて崩れたようだ




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