その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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いつもどおりですがご容赦を
ではではどうぞ


※誤字脱字等見かけましたら報告ください


22

時間帯は深夜

 

「…さて、行くわよ」

 

部室に集まったのはオカルト研究部の面々

本日はついに三大勢力の会談の日である

会場は駒王学園の新校舎にある職員会議室、今日は休日で集まる時間帯は深夜

もうすでに各陣営のトップは新校舎で待機しているらしい

また、この学園全体は強力な結界に包まれ、誰も中には入れなくなっているらしい、またその逆も然りである

結界の外では、三陣営の軍勢が取り囲んでいる

様子を見てきた木場が言うには「一触即発だったよ」とのこと

もし何かあったらこの場で全面戦争になるだろう

そんなわけで、リアスらはこの部屋を後にしようとするが

 

「ぶ、部長! みなさぁぁぁん!」

 

ダンボールから声が聞こえた

当然ながらそこに入っているのはギャスパーだ

 

「…ごめんなさい、今日の会談はとても大事なものだから、時間停止の神器(セイクリッドギア)を持っている貴方は参加できないのよ」

 

とリアスは優しく告げる

あれから頑張ってトレーニングを続けてきたがまだ完全制御とは言い切れない

もし間違いで時間を止めてしまったらエライ事になる

というわけで彼は留守番である

 

「コウタロウ、頼んでいいかしら」

「大丈夫ですよ、終わるまでゲームでもしてますから」

 

ちなみに浩太郎もまた留守番である

ありえないとは思うが、浩太郎は頭の中でシャドームーンに言われた言葉が妙に頭をよぎったのだ

〝面倒な奴ら〟とはなんなのか

もし自分が敵ならば誰を狙うのか

よく考えた結果、時間を止められるギャスパーを手中に収めてくるのでは? と考えた結果浩太郎は留守番を進言したのだ

それにもしうっかり時間を止められても浩太郎なら影響を受けないし、適任でもあるのだ

本来なら、コカビエルを打倒した人物として会談に参加したほうがいいのかもしれないのだが

 

「ギャスパー、菓子とかもあるからそれつまみながら遊んで待ってようぜ」

「は、はいぃぃぃ…」

 

おとなしくギャスパーは返事する

それを見て、兵藤は笑みを浮かべて

 

「よし、大丈夫そうだな。浩太郎、頼むぜ?」

「俺の心配するより、お前は失言とかしないよーに注意しろよ?」

「うっせ、わかってるって」

 

そう兵藤と言葉を交わすと、部屋を後にするオカルト研究部を見送った

室内に残ったのは、浩太郎とダンボールだ

 

「…ギャスパー?」

「は、はい?」

 

浩太郎は適当にお菓子を取り出し、お茶のペットボトルを手に、改めてどっかりと腰を下ろした

ダンボールの中からひょっこりと顔を出したギャスパーに向かって手招きして

 

「お茶でも飲んで、話でもしようやぁ」

「い、言い方が怖いですぅ」

「冗談だよ、ほら、まずなにして遊ぶ?」

 

 

そんなわけで、浩太郎とギャスパーは二人で携帯ゲームに勤しんでいる

まずやり始めたのは神速連撃で有名な神を食べるゲームである

自分の画面に写っているキャラを動かし、ボタンを押してキャラの前にいる敵を攻撃していく

 

「あ、ギャスパーそっち行った」

「うぇ!? もうこっちにいるのにぃ」

「悪い悪い、俺もそっち行くから耐えててくれ」

 

浩太郎のキャラが相手しているサソリ野郎がギャスパーが相手してるワンコの方へ行ってしまった

このゲームは乱戦が割としんどく、集まると本当に面倒くさい

雪の寺でのサル四体は地獄だった

バースト前によく物語を終わらせることができたな、と今更ながら自分でも思う

 

次に手を出したのは格闘ゲーム

以前アザゼルと戦ったゲームの移植版だ

割とシリーズも続いており、その度に少しづつキャラも増えてきており、海外にもプレイしているユーザーもいるほどだ

 

「…コマンドが難しいです」

「そこは慣れだな。なんだ、どれが入力できない?」

「えっと、この、昇龍…こまんど? って奴が難しいです」

「そいつか。それは前歩きしながら波動拳を意識すると成功しやすいぞ」

 

もっとも偉そうに言っているが全国で比べたら浩太郎なんか下手くその極みである

世界は広いということを思い知らされた

 

「…どうすれば」

 

不意にゲームの手を止めたギャスパーが呟いた

その言葉に浩太郎は耳を傾ける

 

「どうすれば、僕は僕の神器(セイクリッドギア)を扱えるようになるんでしょうか」

「…そいつは分かんないな。手っ取り早く扱えるようになるには、アザゼルさんが言っていたように、兵藤の血液を飲むことだけど…嫌なんだろ?」

「当然です! 友達の血なんて…吸えませんよ…! ただでさえ自分の力が怖いのに…!」

「ならそれでいい」

 

浩太郎はポンと優しく彼の頭に手を置いて、わしゃわしゃと撫で回した

突然のことにギャスパーは戸惑いながらもその撫でりを受け入れている

 

「誰も強要はしないさ、自分のペースで行けばいい。日々の積み重ねが大事なんだぜ。ほら、昔から言うだろ? 継続は力なり、ってな」

「浩太郎さん…」

「ほら、一通り操作は覚えたか? 早速戦おうぜ」

「はい、けど手加減してくださいよ?」

「あぁ、一番使い慣れてないキャラを使ってやるよ」

 

そう言ってキャラを選ぼうとした時だった

コンコン、と不意に扉がノックされたのである

続けて女の人のような声が聞こえた

 

「申し訳ありません。梓馬浩太郎様はこちらでしょうか」

 

浩太郎は携帯ゲーム機を床に置き、ギャスパーに断りを入れ扉の前に出て行った

目の前にいたのは前髪で目元を隠した女性だった

彼女は言う

 

「すみません、アザゼルさまがお呼びです」

「アザゼルさんが?」

「えぇ、なんでもコカビエルを打倒した時の状況を詳しく聞きたい、と」

 

そういう事情なら仕方がない

浩太郎は一旦ギャスパーのところに戻り、少し出かけてくることを伝えると彼は笑顔でそれを承諾してくれた

さっさと状況を説明して帰ってこなければ

 

部室の外へと出たとき、女性が何かを唱え始めた

 

「? 新校舎には別に魔法陣なんて使わなくても…」

「いえいえ。お気になさらず」

 

そのときは特に疑問なんぞ持たなかった

しかしその思考は一瞬で破棄することになる

完全に今その時だけは、警告の言葉を忘れていたのだから

 

◇◇◇

 

魔法陣から出てきた場所は新校舎ではなかった

っていうか、どこなのだろうか、ここは

少なくとも、ここはこの駒王の結界の中だ、ということは肌でわかった

しかし場所は結構遠い位置にある

 

「あ、あの、場所間違ってませんか?」

「あら。間違っていませんよ」

 

女は続ける

顔をこちらに向けて、歪に口を歪ませて

 

「貴方はここで死ぬのですから」

 

女のその言葉で、今ようやく理解した

しかし気づいたときには、浩太郎は黒い服をまとった魔術師のような連中に取り囲まれていたのだ

しまった、と痛感する

何のために留守番を買いでたのだ、これでは意味がないではないか

 

「ブラックサン! たとえ貴方が強大な力を持つとも、圧倒的数の前にはいずれ力尽きる!」

「クソが、目的はなんだ!」

 

続々と魔法陣から現れる術者から放たれる魔法弾をなんとか避けながら、浩太郎は自分を案内してきた女に聞いた

しかし女は

 

「これから死ぬ貴様に答える必要なんてないわ! あっははは!」

 

ち、と舌を打つ

よくよく見てみれば、あいつら人間じゃないのか?

黒いローブに身を包んでいるが、そいつらから悪魔の気配も天使の気配も、堕天使の気配も感じられない

流石に真人間相手に仮面ライダーに変身することなどできない、だが受身のままではやられるのはこっちだ

まっすぐ放たれた魔法弾を跳躍で回避しつつ、その身を変身させる

 

「変身ッ!」

 

一瞬の輝きのあと、RXへと姿を変えた彼はこちらに向かって突っ込んでくる魔術師を捌いていく

しかし相手は人間、骨は折っても、命までは奪わないようにしなくては

魔力の帯びた刃を手刀で叩き切り、思い切り相手の脛を蹴り砕く

さらに相手の持つ杖を両断し、攻撃の手も奪う

これで再起不能にはなるはずだ

しかし問題は相手の数だ

この結界は外からも内からも干渉できないのに、蛆虫みたいに魔法陣から湧き出てくる

これは推測ではあるが―――こちら側に内通者がいる可能性が高い

よほど今の平和な世界を砕きたいと見える

その思考でわずかながら動きの止まったRXに夥しい数の魔法弾が襲いかかってくる

 

「くそ、お前らの相手なんかしてる暇ないってのに!」

 

今旧校舎にはギャスパーしかいない

襲撃をかけるなら絶好の機会なのだ、こんな奴らにかまけていてはギャスパーが危ない

意を決したように拳を握ったその時だ

己の後方から、RXの眼前にいる魔術師たちをなぎ払うように緑色の光線が飛んできたのだ

焼き払ったそれらを一瞬一瞥し、RXは後方を向いた

そこにいるのは、二人の男性だった

その二人には、会ったことがある

 

「お、お前は…!」

「不甲斐ないなRX。まんまと分断されてしまうとは」

「起きてしまった事は仕方ありません。…いけない、この感覚は」

 

ビルゲニアが呟いたその時、一瞬体を妙な感覚が襲った

それはギャスパーと初めて会ったときに体験したそれを酷似していた

 

「…落ちてしまったか」

「落ちた、って、まさか!」

 

その言葉にビルゲニアが頷く

 

「えぇ、ギャスパーくんが敵の手に落ちてしまったようです」

 

その言葉を聞いて、歯を食いしばる

何をしていたんだ、俺は

ブラックサンが聞いて呆れる

 

「悔やむ暇はないぞRX」

 

シャドームーン人間体が前に出る

その隣には、同じくビルゲニアの人間体

 

「そう言えば、人間の時の名前を名乗ってませんでしたね」

「え?」

「どうも、ビルゲニア改め、正瑛ミヤノです、よろしく」

 

こちらに向かって放たれる魔法弾を軽く片手で防ぎながら、アイドル宜しくビルゲニア、もといミヤノがウインクする

 

「影山月彦。縮めて影月とでも呼ぶがいい」

 

その隣で両手から先のような緑色の怪光線を発射し、無尽蔵に湧き上がる魔術師を焼き払っていく

影月はその後こちらを見やり

 

「先に行け、RX」

「…え、いいのかよ?」

「あぁ、構わんさ。仲間が心配だろう? 先にそっちを助けに行くといい」

 

そう言って、ほんのわずかに彼は口元に笑みを浮かべる

RXは一瞬迷う、がギャスパーや、新校舎にいるリアスたちの安否が気になるのも事実だ

ここは影月の言葉に頷くことにした

 

「わかった。後ついでに」

「うん?」

「俺の名前は、梓馬浩太郎だ、影月」

「―――ふ、わかった。だからさっさと行け、浩太郎」

 

影月の言葉を聞いて、RXは踵を返し、旧校舎の方へと走り始めた

 

「そうだ浩太郎、こいつを貴様にくれてやろう」

 

走っていくRXを呼び止めて、影月は何かをRXに向かって投擲した

投げられたそれを掴み、RXはそれを見る

渡されたソイツは赤い刀身をした、金色の持ち手をしたひと振りの剣だ

 

「コイツは?」

「サタンサーベル。キングストーンを身に宿す者のみが使用できる聖剣だ」

 

聖剣? と聞いて思い浮かべたのは木場やゼノヴィアの使っている剣だ

それと同じ感じなのだろうか

 

「けど、なんでこいつを俺に…」

「餞別のようなものだ。ほら急げ、間に合わなくなるぞ」

 

そう言われ、本来の目的をRXは思い出す

色々と聞きたいことがあったが、RXは改めて走り出した

徐々に遠くなっていく足音を聞きながら、影月は改めて魔術師たちの方を見た

浩太郎を連れてきた女が口を開く

 

「…シャドームーン、なぜお前がブラックサンに手を貸すの? 貴方と彼は宿敵同士のはずではなくて?」

「時代は変わったのだ。お前は何も学んでいないのか、先の戦争で」

 

そう答えると女の表情が怒りに染まる

影月はふん、と鼻で笑いながらゆっくりと歩き始めた

魔術師たちの耳にはいつの間にか、カシャン、というような音が聞こえてきたいた

それはゆっくりと銀色の鎧を纏い始めている影月から発せされたものだ

 

「これ以上話すことはない。私は浩太郎…ブラックサンほど優しくないぞ? 死にたくなければ―――」

 

やがてその鎧は全身を纏い、緑色の複眼が魔術師を捉えた

彼の隣では同じように鎧を纏い、盾と剣を携えた男が敵を見る

シャドームーンは告げた

 

「せいぜいあがけ」

 

呟き、シャドームーンはその両手に長短一対の剣を生み出し、目の前の敵に向かって身構えた

 

◇◇◇

 

目的地はギャスパーのいる旧校舎だ

リアスたちオカルト研究部の面々も心配だが、そちらにはサーゼクスとかもいる

動向はわからないが、危ないことはないはずだ

道中、当然ながら敵であろう魔術師たちがこちらに向かって邪魔をしてくる

しかしRXはシャドームーンから譲られたサタンサーベルを盾にし、その魔力弾を跳ね返し活路を開いていく

 

「…この剣すごいな」

 

思ったことを口にしながら再度RXは走り出す

やっとの思いでついたが、案の定そこには見張りが何人もいた

その時、新校舎の方で大きな爆発が聞こえてきた

 

「なんだ!?」

 

新校舎の方で何かがあったのだろうか

今から新校舎の方に行くことも考えたが、RXは近場を選んだ

仮にもあそこにはサーゼクスやミカエル、アザゼルといったトップ陣営がいるのだ、そうそう容易く倒されはしないだろう

RXは見張りを這っ倒し、校舎の入口に手をかけた

しかし何らかの魔術がかけられて、封印されているのか、開かない

どうしたものか、と一瞬考え、不意に今持っているサタンサーベルを見やった

もしかしたらこの程度の封印、余裕で断ち切れるのではないのだろうか

一歩引いたRXはまっすぐその剣を振りおろした

バキン! という擬音と共に、封印が砕かれ、旧校舎への扉が開いた

 

「よし、あとは…」

 

ギャスパーを見つけ出して、救出する

それが当面の目標だ

問題はどこにいるか、だが

 

「何者だ、貴様!」

 

しかし校内にも普通に敵が蔓延っていた

予想ができていなかったわけではないが、面倒くさい

仕方がない、急所を外しながら、ぶった切るしかない

こちらに向けて放たられる魔法弾を斬り裂きながら相手の一人に接近し、袈裟に斬る

すると奥の方からバキン! と誰かが誰かを殴るような音が聞こえていた

敵か、と身構えながらゆっくりとRXはサタンサーベルを構えにじり寄っていく

だが目の前にいるのは見知った人物だった

 

「…兵藤?」

「こ、浩太郎!?」

「よかった…貴方は無事だったのね」

 

RXの前にいたのはリアスと兵藤の二人だった

構えを解いて、RXは浩太郎へと姿を戻す

まず最初に行ったのはリアスへの謝罪だ

 

「すいません、リアスさん。留守番を買って出た挙句この体たらく。…なんて言えばいいか」

「大丈夫よ。それよりも、今はギャスパーの救出を優先しましょう。二人共、行くわよ」

「はい!」「了解です」

 

偶然にもリアスと兵藤と合流できた浩太郎は、そのまま部室へと向かった

扉の前に見張りが何人かいたが、兵藤と共に殴りつけて、無力化する

そして相手の虚を突くべく、派手に扉をぶっ壊して、その際に出る煙をスモークがわりにしてわずかながらに視界を奪う

 

「何事だ!?」

 

敵の一人がそんなことを言い終わるやいなや、兵藤の左拳のストレートがヒットする

ここに現れた悪魔御一行を見て、何人かの表情が驚きの色へと変わった

 

「馬鹿な、転移は封じていたはずだ!」

 

驚く敵を尻目に、浩太郎は室内中央へと視線を移す

そこには拘束されたギャスパーがいた

彼は椅子に縄で括りつけられており、完全に身動きを封じられていた

 

「ギャスパー…良かったわ、無事だったのね」

「部長‥・、僕は、僕はもう嫌です…!」

 

帰ってきたのは彼の泣き声

ギャスパーは続ける

 

「僕なんか死んだほうがいいんです。この目のせいで、僕は誰とも仲良くなれない、友達だって。迷惑かけてばかりで、臆病者の僕なんか…死んだほうが―――」

「それ以上の言葉は言うなギャスパー」

 

ボロボロと涙を流しながら言葉を吐き出すギャスパーの言葉を遮ったのは、浩太郎だった

彼の言葉に、リアスも続ける

 

「バカなこと言わないで。言ったわよね、私は貴方を眷属に転生させたとき、自分が満足できる生き方を見つけなさい、と」

「見つかりっこありませんよ…迷惑かけてまで、生きる価値なんか…」

「私はあなたの主なの! やっと解放させることができたのに、見捨てるなんてできないわ!」

 

しかしそんなリアスの言葉も敵の言葉によって遮られる

よく見ればこいつら全員女だ

そう言えばここに来るまでに切り捨ててきた奴らも女性だった気がする

どうでもいいけど

 

「愚かね、あなたたち。こんな危ないハーフヴァンパイアを普通に使うだなんて。バカじゃないの? 旧魔王派の言うとおり、グレモリー一族は情愛深く力が強いくせに、頭が悪いって」

 

その言葉を発すると女はクスクスと笑いだす

それに合わせてほかの女性も笑い始めた

やがて一人がこちらに侮蔑的な視線を送ってきて

 

「早いとこ洗脳でもして道具にすればもっと有効的に使えるのに。なに? それをしないのは、仲良しこよしで下僕を扱う気なのかしら」

 

あまりに好き勝手言う彼女たちに頭にきたのか、兵藤が拳を作って殴りかかろうとする、がそれをリアスが止めた

それに少し納得が言っていない様子の兵藤だったが、リアスは小さく微笑んだ

 

「…私は、自分の眷属(なかま)を大切にする」

 

リアスはそう冷静に返していた

それに少しムッときたのか敵の魔術師が魔力弾を放ってきた

しかしそれがリアスに届くことはなかった

なぜなら浩太郎の持っているサタンサーベルがその魔力球を防いだのだ

 

「生意気ね。それに、悪魔のくせに美しいのが気に食わないわ。グレモリーの娘」

「女の嫉妬は醜いぜ? アバズレが」

 

少しからかいを込めてそんなことを言うと目に見えて女の顔が歪む

そして彼女はギャスパーの首元に刃を突きつけて

 

「動けばこの子が死ぬわ。少し遊びましょうよ」

 

女は手を突き出し、もう一発撃ってくる

今度は兵藤がリアスの前に立ち、籠手でその一撃を防ぐことに成功した

着弾位置から察するに、顔を狙ったのだ

嫉妬にも程がある

リアスは兵藤の肩に手を置いて、彼の前に出る

 

「ギャスパー、たくさん私に迷惑をかけてちょうだい。私も何度も貴方を叱ってあげる。絶対に貴方を手放したりなんかしないわ!」

 

毅然としたリアスの言葉に、浩太郎は微笑んだ

 

「ぶ、部長…僕は! …僕は…!!」

 

涙を流すギャスパー

それは悲しみでも、恐怖からでもない

心からの嬉しさからだ

 

「―――ギャスパーァァァァァァ!!」

 

涙に濡れるギャスパーを後押しするように、兵藤が叫んだ

室内にも響き渡る彼の声には、思いと心と、優しさが篭っていた

 

「逃げるな、恐るな! 俺も、浩太郎も、部長も、朱乃さんも、小猫ちゃんも、木場もアーシアもゼノヴィアも! みんな仲間で友達だ! お前を見捨てたりなんかしない! 仲間はずれになんかするもんかよぉぉぉぉぉ!」

 

雄叫びとともに兵藤は赤龍帝の篭手を左手に装着する

 

「部長、〝女王〟に昇格します!」

「えぇ!」

 

リアスが頷き、兵藤が兵士から女王へとプロモーションする

 

「アスカロォン!」

<ブレード!>

 

聞いたことのない音声とともに、篭手から剣が出現する

敵の魔術師たちが警戒するが、思惑とは別に、兵藤はその剣の先を自分の右手のひらに向けた

彼は己の手を自らの剣で少し斬る

右手から血が流れ、剣先に血液が付着した

 

「イッセー?」

「安心してください部長、これは、ギャスパーへのプレゼントなんです!」

「プレゼント、って、お前まさか」

「あぁ、お前の考えてる通りだぜ浩太郎!」

 

兵藤が叫び、その剣先をギャスパーの方へと突き出した

反動で彼の剣先に付着している血液が飛び散り、ギャスパーの口元付近へと

 

「あとは自分から立たなきゃ始まらないぜ! 女の子に活を入れてもらったら、あとは立ち上がれ! お前も、男なんだろ!? 見せてみろ、ギャスパーぁぁぁぁぁ!!」

 

兵藤の言葉に、ギャスパーは強く頷き、舌先で口元についた兵藤の血液を舐めとった

彼が兵藤の血を口にした瞬間、部室内の空気が一変した

同時に、浩太郎とギャスパー以外の時が停止する

 

「…浩太郎さん」

「―――あぁ、行け、ギャスパー!」

「はい!」

 

浩太郎の叫びに呼応し、椅子に縛られていたギャスパーが大勢へのコウモリへとその身を変える

やがて時の止まっていた感覚は消え、他の人物もぎゃスパーが座っていた椅子へと視線を向けた

 

「い、いない!?」

「馬鹿な、さっきまで確かにここに!?」

 

敵の魔術師たちも彼が突然消えたことに驚きの声をあげる

やがて彼女らが室内全体に視線を向けると、パタパタと飛び回るコウモリの姿があった

紅い瞳をした、コウモリだ

 

「変化したか、おのれ、吸血鬼!」

 

魔術師たちはコウモリの群れに向けて魔力球を放とうとする、が、不意に何かに体が引っ張られて行動が阻害された

よく見ると魔術師の影から黒い手が伸びていた、それも一つではない、無数にだ

 

「吸血鬼の能力!?」

 

抵抗として魔力球を撃つが、影は霧散するだけで意味がない

その間にも手は伸びていき、魔術師の身体を噛んでいく

 

「吸血する気か!?」

「いや、魔力も吸い出している!?」

「…あれが、ギャスパーの本当の力ってやつですか?」

 

苦戦している魔術師たちを尻目に、浩太郎がリアスに問うた

リアスは頷き

 

「イッセーの血を飲んだことで、解放されたようね」

「マジですか! すげーなギャスパー!」

「く、ならば!」

 

魔術師の一人がこちらに向けて魔力球を飛ばしてくる

浩太郎がふたりの盾になるべくサタンサーベルを身構えた時だ

放たれた魔力球は全て空中で停止していた

 

<無駄ですよ。動きはぜんぶ見えています>

 

室内に響くギャスパーの声

紅い瞳を輝かせ、コウモリが魔力球を睨みつけていた

どうやらコウモリの視線を介して神器(セイクリッドギア)を発動させているようだ

完璧に使いこなしている

不意に、魔術師の一人が恐れをなしてこの場から逃げ出そうとしていた

 

「逃がすか!」

 

浩太郎は魔術師が着ているローブの裾にサタンサーベルを投擲し、地面に裾ごと突き刺し縫い付け、その動きを封じる

律儀にローブなんか着ていることが仇になったようだ

しかし普通に脱げば簡単に脱出できてしまうので、早いとこ動きを止めなければ

 

「ギャスパー!」

<はい!>

 

浩太郎の叫びに呼応し、コウモリが紅い瞳を輝かせる

一瞬の閃光の後、この部屋にいるすべての敵魔術師を止めていく

 

<イッセー先輩!>

「任せろ!」

 

返事をして兵藤は駆け出し、魔術師の体にタッチしていく

なんだろう、何をするつもりなのだろうか

タッチし終えると兵藤は部屋の中央に行き、なんか無駄に洗練されたポーズをとり叫んだ

 

洋服(ドレス)崩壊(ブレイク)!」

「? どれす?」

 

刹那、魔術師達の着ていた衣服が吹っ飛んだ

思考が停止した

っていうか、なんだこれは

なんで我が友人は妙に勝ち誇った顔をしているのか

一瞬でも格好いいと思った俺が馬鹿だったのか、兵藤はどんな時でも兵藤だった

 

「やっぱり俺たちが組めば無敵だぜギャスパー!」

<はい!!>

「はいじゃないだろ!」

 

浩太郎が突っ込む

一歩間違えば犯罪スレスレである

っというか犯罪だ

リアスが嘆息しながら兵藤をペチりと小突き、「そうじゃないでしょ」と叱っていた

友人として、これからの兵藤の未来が心配でならなかった




太陽と月が普通に共闘するような世界があってもいいと思うんだ
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