その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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今回はいつも以上にクソです(いつもクソですが
おまけにだいたい原作通りなので読まんでも多分理解できます
それでもダイジョーブだよ!という方はお付き合いください

ではどうぞ


23

「ところでドライグ、オーフィスってなんだ?」

 

素っ裸の魔術師たちを適当にロープで縛り上げている最中、兵藤がそんなことを口にした

オーフィス? 誰だろうかそれは

 

<オーフィス。懐かしい名だ>

「誰だそいつは」

 

浩太郎の言葉にドライグが答える

 

<ドラゴン族最強のものだ>

「ドライグやあの白いのよりも強いのか?」

<あぁ、神よりも強いからな。無限に等しい力を宿した文字通りの化物さ>

「マジかよ! お前やアルビオンよりも強い奴がいたのか!」

 

兵藤が驚きの声をあげる

おまけに話を聞くとどうやらそいつが今襲撃しているテロリストの親玉らしい

マジか、と内心驚いた

 

リアスが魔法陣を展開させ、素っ裸の魔術師たちを冥界の役所に送る

そこで逮捕され、牢屋にぶち込まれるらしい

とりあえず奴らはテロの証人だ

なんか知らんが、兵藤はキモイ笑顔を浮かべているが気にしない

 

「兵藤、手は大丈夫か?」

「あぁ、問題ないぜ。腹に風穴空いた時に比べればたいしたことないさ」

「うぇ!? イッセー先輩本当ですか!? …バイオレンスですね…」

 

悪魔になってから割とエキセントリックな毎日かも知れない

 

「兵藤の血を飲んでどうだ、ギャスパー」

「一時的に底から力が湧きました。今は元に戻ってますけど」

「なるほど、時間付きか」

 

いざという時には兵藤の血を飲ませれば十分な力になってくれるだろう

もっとも、血を飲ますのは最終手段になるが

 

「全員転送し終わったわ。三人とも、魔王様のもとへ帰るわよ」

「はい!」「はいっ」「ウス」

 

それぞれが返事をし、旧校舎の玄関までの歩いていく

その間、どういうわけかギャスパーは浩太郎と兵藤の背中に引っ付いたままだったが

インドアでも問題ないが、せめて日中くらいは普通に外を歩けるようにはなってもらいたいなぁ、と思うこのごろである

そんなわけで玄関を開け外に出た瞬間である

ドォン! とこちらの目の前に何かが墜落してきた

 

「―――この状況下で反旗か、ヴァーリ」

 

それは負傷したアザゼルだった

っていうか、その前になんて言った?

 

「そうだよ。アザゼル」

 

輝きを放ちながら降り立つ白銀の鎧

傍らには露出強な女性もいる

 

「和平が決まった瞬間に、半吸血鬼の神器(セイクリッドギア)の力を発動させて、テロを開始させる手はずでした。頃合を見てから私と白龍皇が暴れ、三大勢力のトップのうち誰かを葬ればよし、会談を壊せればそれでよかったのです」

 

…なるほど、通じていたのは白いドラゴンだったのか

 

「いやらしい視線を感じます。その子が赤龍帝ですか? ヴァーリ」

「あぁ。本当に残念な宿主なんだ」

「残念言うな! 俺だって懸命に生きてんだ!」

「しかし残念なことには同意せざるを得ない」

「浩太郎ぉぉ! お前はどっちの味方だァ!」

 

そんなやりとりを見て、女性は哀れみの視線をこちらに送ってくる

 

「なるほど、本当に残念な子みたいね。それに比べてそちらの子…私は嫌いじゃないけど?」

 

視線が浩太郎に向く

あ、チェンジで

 

「―――俺も焼きが回ったもんだ。こんな奴が身内とはな」

 

自嘲気味に笑うアザゼル

ヴァーリがマスクを収納させ、素顔を露出させる

 

「いつからだ?」

「コカビエルを本部に連れ帰る途中さ。こっちのほうがおもしろそうだかな」

 

巻き込まれたこちらとしては迷惑でしかないのだが

 

白い龍(バニシングドラゴン)がオーフィスに下るのか」

「あくまで協力するだけさ。魅力的なオファーをされてね、〝アースガルズと戦ってみないか?〟ってね」

「俺は強くなれとお前に言ったが、世界を滅ぼす要因にはなるなとも言ったはずだが?」

「関係ないさ。永遠に戦えればそれでいい」

 

話通じないこいつ

永遠に闘争を望んでいやがるのか、こいつは

 

「今回の下準備と情報の提供は彼からです。彼の本質を理解しておきながら放置するなど、らしくない。自分の首を絞めることになりましたね」

 

嘲る女性を尻目に、ヴァーリが兵藤に言った

 

「俺の本名はヴァーリ・ルシファーだ」

「…ルシファー?」

「死んだ先代魔王の血を引くものだ。俺は旧魔王との間に生まれた混血児。〝白い龍(バニシングドラゴン)〟は半分人間だから手に入れたものだ。偶然だがね。結果、ルシファーの真の血縁者でもあり、バニシングドラゴンでもある俺が生まれた。奇跡ってのはこのことだと思わないか?」

 

言って彼の背中から光の翼と一緒に悪魔の翼が生えた

どうやら言っていることは事実のようだ

 

「う、嘘…そんな…!?」

「事実だ。もし冗談みたいな存在だとしたらコイツのことさ。もっとも、現代に蘇り、更なるパワーアップを遂げたブラックサンも大概だと思うがな」

 

不意に話を振られても困る

というか、自分たちの交友関係は結構ハーフが多いな、朱乃然りギャスパー然り

 

「さて。アザゼル。覚悟を決めてもらう―――その前に」

 

女の視線が浩太郎へと向けられる

 

「ブラックサン、貴方さえよければ、こちらに寝返らない? 極上の快楽を提供してあげるけど?」

 

まさかの勧誘だった

生憎ですが戦争を起こす気は浩太郎にはないので頷く気はない

というか、貴女みたいな痴女はこちらから願い下げだ

先も言ったが、チェンジで、である

その態度にプライドが傷つけられたのか、彼女のオーラが膨れ上がる

 

「―――お前、オーフィスの野郎に何をもらった」

「世界変革のために、少々力を借りました。おかげで、貴方やブラックサンとも対等に戦えます。貴方を含め、三大総督は愚かですから」

「確かに、愚かかもしれねぇ。俺はただの神器(セイクリッドギア)マニアだ。けど、あのふたりはそこまで愚かじゃねぇと思うぜ? 少なくとも、てめぇよりはな」

「世迷言を! いいでしょう、今ここで、殺してあげましょう! 新世界創造の一歩として、堕天使総督である貴方を屠る!」

 

激高とともに放たれた大きな魔力の塊を、女性はアザゼルに向かって放つ

しかしそれは届くことはない

アザゼルの前に立った浩太郎のサタンサーベルがそれを容易く防いだからだ

彼の後ろでアザゼルが愉快そうに笑う

 

「サンキュー、ブラックサン」

「梓馬浩太郎だ。アザゼルさんよ」

「へいへい」

 

言いながら不意にアザゼルは懐から何かを取り出した

それは一本の短剣だった

 

「…なんだそりゃ」

 

この場の疑問を代表し、浩太郎が問うた

 

神器(セイクリッドギア)マニア過ぎてな。自分で作ったりすることもある。まぁほとんどがどうしようもないガラクタだがな。神器(セイクリッドギア)を開発した奴はすごいよ、尊敬する。だが甘い、〝神滅具〟と〝禁手〟なんていう世界の均衡を崩せるだけのバグを残して死んじまったんだからな。まぁだからこそ面白いんだけどよ」

「ご安心を。新世界では神器(セイクリッドギア)なんてものは作らせない。そんなものがなくても世界は機能します。やがてはオーディンにも動いてもらい、世界を変動させなくてはなりません」

 

そう言って気持ち悪い笑みを浮かべる

ただでさえ整ってないのにひどいツラだ

 

「それを聞いてますます反吐がでるな。ていうかな、俺の楽しみを奪うやつは―――消えてなくなれ」

 

アザゼルの持つ短剣が変形し始める

パーツが分かれて光が溢れていく

 

「な!? まさか、貴方は!?」

禁手化(バランスブレイク)…!!」

 

閃光

一瞬の輝きがあたりを包み込む

光が止んだ後、そこにいたのは黄金の鎧を纏った人物

まるでドラゴンのような、そんな形だ

背中から十二枚の羽を広げ、黒い翼が宙を舞う

 

「ドラゴン系統の神器(セイクリッドギア)を研究して作り上げた、俺の最高傑作…〝堕天龍(ダウンフォール)の閃光槍(ドラゴンスピア)〟、そいつの擬似的な禁手化状態…〝堕天龍(ダウンフォールドラゴン)の鎧(アナザーアーマー)〟だ」

 

ネーミングセンスやばいなあの人

人工神器(セイクリッドギア)ということはあの名前を考えた、ということでいいのだろうか

だとしたら昔相当患っていたのではないだろうか、などとすごくどうでもいい考えが浩太郎の中で生まれた

 

「アザゼル、それだけの力を持ちながら貴方は!」

「〝無限の龍神〟をバックに従えてよく言うぜ」

 

舌を打つ女のカラダはさらに青黒いオーラを身にまとった

 

「私は偉大なる真のレヴィアタンの血を引くモノ、カテレア・レヴィアタン! 忌々しい堕天使には負けはしない!」

「いいぜ、来いよ!」

「舐めるなぁ!」

 

カテレアと名乗った女は叫びながら猛スピードで駆け出した

出来事は一瞬、アザゼルの懐に飛び込み、対する彼も槍を持ちそれに対応する

刹那、カテレアの体から鮮血が舞う

よく見るとカテレアのはるか後方の方まで、アザゼルが振った槍の槍の余波で地面がえぐれてさえいる

なかなかの威力だ

 

「しかし、ただではやられません!」

 

最後の足掻きとしてカテレアは自分の左手を触手みたいに変化させ、それをアザゼルの左手に巻きつけた

女の体に変な紋様が浮かび上がる

 

「自爆式の術式!?」

 

リアスが叫ぶ

相打つつもりか、あの女

アザゼルが触手を引き剥がそうとするがなかなか離れない

 

「この状態になった私を殺そうとしても無駄です、私と繋がっている以上、私が死んでも、呪術も発動し―――」

 

女が勝ち誇ったセリフを吐こうとしたその時だ

肩をすくめたアザゼルは己の左腕ごと、その触手を断ち切った

突然の行動に驚くカテレア

 

「馬鹿な!?」

「片腕くらい、くれてやるよ」

 

驚くカテレアに向かって、浩太郎がサタンサーベルを投げつける

腹部にそれが突き刺さり、さらにアザゼルがカテレアの胸に向かって光の槍を突き刺した

彼女の体は爆発することもなく、そのまま砂糖が水に溶けるように霧散した

カテレアの確認すると同時に、アザゼルの鎧が解除される

 

「ちっ。限界か。まだ改良の余地アリか。核が無事なら、また作れる。もう少し付き合ってもらうぜ、ファーブニル」

 

そう言って手に持っている宝玉に軽くキスをしていた

ひとまずカテレアとの戦いはアザゼルに軍配が上がった

残るはヴァーリだ

 

「さて、どうする? 俺はまだヤレるぜ?」

 

そう言ってアザゼルは光の槍をその手に出現させ、ヴァーリに向かって突きつけた

 

「まだやる気か、アザゼルさん」

「なんのなんの。まだまだ片腕で十分だぜ」

 

そう言って浩太郎の問いに笑いながら言い返した

浩太郎も手に戻ってきたサタンサーベルを突きつけて、ヴァーリに言う

 

「なんなら、俺も相手になるぜ、アルビオン?」

 

しかしヴァーリはアザゼルと浩太郎を一瞥すると、兵藤に向かって問いかけた

 

「…しっかし、運命ってのは残酷だと思わないか?」

「…な、何言ってんだ?」

 

戸惑う兵藤の声にヴァーリは続ける

 

「君のことは少し調べた。父は普通のサラリーマン、母も同じ専業主婦で、たまにパートに出ている。血縁とか、先祖とかは何もかも普通で平凡、特殊な能力を持った知人とかもいない。本当に何もかも普通な一家だ」

「…何が言いたい」

 

浩太郎の問いにヴァーリは無視して言葉を続ける

 

「つまらなすぎて君がライバルなんだ、と知ったときは落胆を通り越して笑っちゃったよ。だからさ、こんな設定を考えてみたんだ」

「は、はぁ!?」

 

ヴァーリは一泊おいて

 

「君は復讐者になるんだ。俺が君の親を二人共殺そう、そうすれば実に君は面白いものになる。俺という貴重な存在に親を殺されれば君も重厚な使命を負うことになると思うんだ。どうせ君の両親は普通に生きて普通に死ぬ、実にくだらない人生だ。だから普通に死ぬより、俺という存在に殺されて死ねば、そのくだらない人生を華やかに幕を下ろすことができるんだ。だってそうだろう? どうせ死ぬなら、俺が殺せばきっとその死は意味のあるものになるからね? そうだ、そうしよう、そのほうが実に面白いよ、そうは思わないか赤龍帝!」

 

「―――殺すぞテメェ」

 

低く紡がれる兵藤の声

当たり前だ、実の両親がそんな、しょうもない自分設定で殺されれば溜まったものではないからだ

その怒りもまた、理解できるからだ

今彼は、明確な殺意を持っている

今ようやく理解した

こいつは殺しておくべきだ、間違いない

 

「確かに俺の両親は普通だよ、けどな、こんな俺をここまで育ててくれた最高の両親でもあるんだよ」

 

兵藤は左手を握りしめる

 

「なのに、なんでテメェのわけわからない都合に付き合わされて殺されなきゃならない。運命だとか、知ったことかじゃねぇんだよ」

 

兵藤ははっきりと殺意を込めて、ヴァーリに向かって叫んだ

 

「テメェだけは、絶対に許さねぇぞこのクソ野郎ぉぉぉぉぉ!!」

<ウェルシュ ドラゴンブースター!>

 

怒りに呼応し、神器(セイクリッドギア)赤いオーラに包まれる

そこには鎧を纏った兵藤の姿がそこにあった

浩太郎は初めて見る、赤龍帝の鎧だ

しかし篭手の宝玉に何やらカウントダウンのようなものが浮かんでいた

制限時間かなにかだろうか

 

「見ろ、桁違いにあがったぞ。単純明快だが、いいね、心地いい龍の波動だ」

「さっきからベラベラとわけわかんねぇことを! 言ってんじゃねぇ!」

「けど知恵が足りない、それはバカというやつだ!」

 

兵藤がヴァーリに向かって突っ込んだ

左手の篭手にアスカロンを顕現させ、下手な剣術で攻撃を仕掛ける

しかし兵藤は剣術の素人、はっきり言って当たるものではない

だが、ヴァーリは勘違いしている

相手は一人ではないのだ

 

<ヴァーリ!>

「!?」

 

空中で姿勢を変える一瞬の隙を付き、跳躍していたRXの腕がヴァーリの足を掴んでいた

アルビオンの声でハッとするがもう遅い

兵藤には申し訳ない気もするが、このまま一度地面に叩きつけて立ち位置をリセットしようと考えた

 

「甘いな!」

 

しかし振るわれたアルビオンの尾がRXの身体をなぎ飛ばす

幸いにももう片方の手でその一撃を防ぐことには成功したのでダメージはそれほどでもない

だが結構な速度で地面に叩きつけられた

仮にも白龍皇を名乗るだけある

RXが地面に叩きつけられ時間を喰っていた隙に兵藤にも一撃を叩き込んでいたようだ

 

<浩太郎、アンタは問題ないと思うけれど、一応教えておくわ、白龍皇の能力>

「能力?」

<えぇ。あいつは相手の力を半分にして、それを自分の力にする力を持っているの。まぁ要は力を奪っているの。キャパシティを超える力は背中の翼で放出することで、自分を保っているのよ>

「なるほど、自爆はないってことか」

 

そして自分にその効力は薄い、ということはキングストーンの助力あってこそなのだろう

ふと見ると兵藤に向かって、ヴァーリはいくつもの魔力球を放っていた

あんなのを何発もの受けていた流石に赤龍帝の鎧といえど耐えられない、ましてや兵藤自身はそれに慣れていないのだ

RXは自分自身の体に思い切り力を込め、全力で跳躍し、兵藤の盾になるようにその身を乗り出し、さらにサタンサーベルを身構えた

 

「こ、浩太郎!?」

「気にすんな! お前は、あのクズ野郎を殴ることだけ考えろ!」

「―――わかったッ!」

 

兵藤はそれだけ答えると、背中のブースター的所から一気に魔力をブーストさせ、RXの後ろから飛び出した

RXの後ろにいたことでわずかに体力も回復したのか、何発か被弾したが、それでもその勢いを止めない

ヴァーリはその突貫をあざ笑うように光の盾を顕現させ、それを防ごうとする

しかし、兵藤の拳はその光の盾を容易く砕き、その顔面に一撃を与えた

どうせ剣でダメージを与えられないなら、篭手に収納した状態でアスカロンの力を倍増させたのだ

それなら殴るだけでも効果は発揮する

 

「ほう? 面白いことになっているな」

 

不意に自分の隣から声が聞こえてきた

そこには立っていたのはシャドームーンだ

今は隣にいるビルゲニアの姿は見当たらない

 

「今代の赤龍帝と白龍皇の戦いか。これは見物だな?」

「なぁ、ビルゲニアはどうしたんだ」

「先に戻らせている。これ以上ここにいる意味などないからな」

 

そう言ってもう一度兵藤とヴァーリの戦いに視線を移した

兵藤がいつの間にかヴァーリに組み付いている

あれは何をしているのだろうか、ここからでは状況を理解できない

 

「白龍皇は、キャパを超えた力をその翼で放出していることは知っているな」

「あ、あぁ。さっきメリディから聞いた」

「吸い取る力と吐き出す力を両方高めたのさ。結果、処理しきれない力を奪い、それと同時に過剰なまでの力が吐き出され、白龍皇の力を停止させたのさ」

 

シャドームーンの説明は正直余り頭に入ってこなかった

だが、今現在アルビオンはオーバーヒートしている、ということはなんとなく理解できた

そして一度態勢を立て直そうとして、ヴァーリは両腕で防御しようとするが、龍殺しと呼ばれるアスカロンの力を込められた左手が難なく破壊し、その腹に一撃を打ち込んだ

その一撃が決定打になったのか、ヴァーリの鎧が砕かれた

そしてむき出しとなったその顔面(ツラ)に容赦ない一撃を叩き込む

ざまぁみろである

 

「はっはっは。今代の赤龍帝はなかなか面白いではないか。力と戦いだけを求めるガキとは大違いだ」

 

シャドームーンがさらりととんでもないことを言ってのける

それは自信の現れか、単なる言葉のあやか

しかしその佇まいから察せられるのはおそらく前者だろう

今この横の男は、ヴァーリをガキと言い放ったのだ

 

「見ろ浩太郎、面白いものが始まろうとしているぞ」

「え?」

 

シャドームーンに促され再び兵藤の方を見る

そこには兵藤の周りからとても大きな波動が巻き起こっている状況だった

 

「う、うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

何やら兵藤が叫んでいる

あの声色は、咆哮ではない、痛みによるものだ

 

「くくく。本当に今代は面白い」

 

そういったとき、いつしか兵藤の声が聞こえなくなった

状況に変化はないように見えた…いや、よく見ると兵藤の篭手に右手が白く変化している

その色はヴァーリの纏うそれと同等だ

 

「融合を果たしたのだ」

「融合?」

「あぁ。先にヴァーリの鎧を破壊したとき、一つそいつの宝玉をあいつは手に持っていた。ヴァーリにとっては何でもないような力の一部でも、赤龍帝にとっては相手の力、それを取り込もうと画作したのさ」

 

それを聞いてそうか、とRXは理解した

聖と魔が合わさった聖魔剣が生まれている、バランスが崩れているからこそできるその芸当

結構あいつも頭回るんだな、と思ったのは内緒だ

 

「―――お見事だ! 兵藤一誠、いいだろう、俺も本気を出すとしよう! 俺が勝ったら、君の周りを全て半分にしてやろう!」

「はぁ!? 何わけのわからないこと言ってんだ!」

「無知は怖いね! 知らずに死ぬのも悪くないかな!?」

<ハーフディメンション>

 

アルビオンの宝玉からそんな音声が発せられる

瞬間、手を向けた先にあった木の大きさが半分になった

物理的に半分にしたのだろうか、ドラゴンの力はよくわからない

しかしこれはさすがにマズイと判断したのか、シャドームーンも両手に剣を生み出していた

 

「手伝え浩太郎、俺一人でも問題ないが、二人のほうが早く片付く」

「わかった」

 

シャドームーンに頷き彼とともに兵藤の隣に並び立つ

同じようにやばい気配を察したのか、もう片方には片腕のないアザゼルもいた

また、シャドームーンを視界に入れたとき、アザゼルも驚いたように表情を変えたが直ぐに顔を引き締める

ちなみに、やばいとはなんとなく理解しているが、兵藤はイマイチ分かっていなかった

そんな兵藤を見て、アザゼルは軽く咳払いをしつつ、いう

 

「赤龍帝、お前にもわかりやすく説明してやる」

「お、お願いします総督! 馬鹿な俺にもわかりやすいように一つ!」

「白龍皇の能力は相手の力を半分にすることだ。つまりだ、あいつが本気になったら、リアス・グレモリーのおっぱいも半分になる」

「どうでもいいわんなこと!!」

 

そう叫んで突っ込んだのはRXこと浩太郎である

心からの叫びだった

余談ではありますが、浩太郎は美乳派です(微乳でも可

だがしかし、兵藤のことをこの時、浩太郎は見誤っていた

彼が筋金入りの〝おっぱい魔神〟だということを知っていたつもりであった

 

「―――」

「…兵藤?」

 

何故だかフリーズしているように見える

そしてそのあとでギギギ、とロボットみたいに動かしてリアスの方へと視線を動かした

その視線に少しだけ恐れおののいていた

 

「ふ」

「麸?」

 

「ふっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

聞いたことのない声量だった

っていうか、え? 何に激怒したのだ我が友人は

まさかとは思うが―――おっぱい?

 

「部長のぉ! 俺の部長のおっぱいをぉぉぉ!! 半分にするつもりかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

<ブースト! ブースト! ブースト! ブースト!>

 

今までにもない力の波動

っていうかトリガーがおっぱいでいいのか赤龍帝

それと同時に、今までに感じたことのない波動をRXは感じていた

目の前にいるのは、本当に兵藤なのか?

 

「許さない! 部長のおっぱいは俺が守ってみせる! てめぇだけは許さねぇぞヴァーリぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」

 

間違いなく兵藤一誠だ

家族<おっぱいの図式が成り立った瞬間である

なんだろう、親友を天秤にかけても彼は迷わずおっぱいに行くと思う

 

「あはははは! マジかよ、主のおっぱいが小さくなるかもしれないってだけで、ドラゴンの力が跳ね上がったぞ!」

「本当に面白いな浩太郎。お前の友人はユニークだ」

 

アザゼルとがシャドームーンが口々にいう

素直に喜びづらい、っていうか喜びたくない

そしておっぱいで覚醒した兵藤が恐ろしく強いのも喜びたくない

さっきまでの劣勢が嘘のような拳打のラッシュ、おまけに寸前に取り込んだ白龍皇の力もフルに活用し、まるでゴミ切れみたいにヴァーリを圧倒していた

そんな状況でも、ヴァーリは不敵に笑みを浮かべるだけだ

 

「…面白い、本当にな」

<ヴァーリ、やつの半減に対する解析は済んだ>

「そうか、ならもう怖くないな」

 

さすがは自分の力、対策を練るのも早い

 

「…今の彼なら、〝覇龍(ジャガーノートドライブ)〟を見せるに値するんじゃないかな」

<自重しろヴァーリ。我が力に翻弄されるのがお前の本懐か?>

 

何かを奥の手を切ろうとしたヴァーリを静かに、しかし確かな声音でアルビオンが言う

その声音には確かな怒気が孕んでいた

戸惑う兵藤との間に、不意に月をバックに誰かが間に飛び込んできた

三国の甲冑を着込んだ変な男だ

 

「迎えに来たぜ、ヴァーリ」

「美猴か。何をしに来た?」

「そいつはヒドいってもんだぜぇ、相方がピンチだってぇのにわざわざ駆けつけたのによ? 失敗したんならサッサと帰ってこいよ、観察役のお前も役目は終わった、おれっちと一緒に帰ろうや」

「そうか、もうそんな時間か」

 

何やら勝手に話し込んでいる

その光景を見て、シャドームーンがほう、と息を吐く

 

「まさか孫悟空までいるとはな。今代の世代は本当に爆笑ものだな」

「そ、孫悟空!? ど、どっちの!?」

「西遊記の方だ。アニメとは関係ない」

 

浩太郎の頭の中には猿のほうかサイヤ人か一瞬迷った

しかし、今目の前にいるのは猿の方らしい

 

「おれっちは先代とは違うんだぜぇ? 気ままに生きるのさ。名前は美猴、よろしくな、赤龍帝、そしてブラックサン」

「いずれまた戦う時も来る。そのときは、もっと強く」

 

美猴は気軽に挨拶をして、ヴァーリはそう言い残して如意棒的なデザインの武器をその手に出現させ、それを地面に突き立てた

そこを起点に黒い闇が広がり、そこにずぶずぶと二人が沈んでいった

 

「逃げた、か」

 

シャドームーンが呟く

兵藤としては追いたいだろうが、そのタイミングで赤龍帝の鎧が解除される

時間が切れたのだろう

二人が逃げ帰るのを見届けた後、シャドームーンも人間の姿に戻り、踵を返した

そんな背中にアザゼルが声をかける

 

「まさか、お前がここにいるなんてな?」

「興が乗ったまでだ。そこそこに有意義な時間だったぞ」

 

短くそう言い放って、シャドームーン…影山月彦は歩き去った

何はともあれ、戦いはひとまずの幕を下ろしたのだった




ヴァンパイア編は次回で終わり(たい
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