その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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待たせたな
今回から四日くらい連投します
終わったらいつも通りの速度よ

今回はほのぼのと日常を頑張ってみました
いつもどおりグダグダではありますがご容赦ください

誤字、脱字ありましたら報告を

ではどうぞ


25 何気ない日々

これは夏休みが近づいている、ちょっとした日常の一ページ―――

 

太陽の光を浴びて、いつものように浩太郎は目を覚ました

ちょうどいい塩梅で太陽の光が浩太郎の身体を照らし、自分の奥底から力がみなぎってくるのがわかる

浩太郎はベッドから降りて着ていた寝巻きを脱ぎ捨てて放り投げると、壁に掛けてある駒王の制服に手を伸ばす

今日もまた何気ない日々の一ページが始まるのだ

そう言えば今日はアーシアよりも早く起きることができた

いつもはアーシアに起こされるのが常となっていたが、たまにはこちらから起こしに行くのもアリかもしれない

 

そんな事を思っていた矢先だった

 

「朝ですよー、浩太郎さーん」

 

がちゃり、という音とともに浩太郎の部屋の扉が開け放たれた

え? と浩太郎がドアの方へと視線を見やる

バッチリ視線があった

現在浩太郎は着替えようとしていた

着替えようとしていれば当然寝巻きは脱ぎ捨てており、今現在浩太郎のカラダは上半身下半身両方、共に下着姿である

アーシアの顔がみるみる赤くなっていく

 

「ご、ごめんなさいぃぃぃ!」

 

そんな言葉とともにアーシアが勢いよく扉を閉めて走り去ってしまった

扉越しに聞こえる彼女の足音を聞きながら申し訳ないことしちゃったかな、と思いつつ

 

「…立場が逆な気がする」

 

まさか自分がラッキースケベされる側になるなんて思ってもいなかった

といっても別に下着姿なんか見られても困りはしないのだけれど

今度は彼女が来るのをまってあげることも考え始める浩太郎だった

 

 

「はうぅ。先程はごめんなさいですぅ…」

 

涙目になりながら謝るアーシアに浩太郎は苦笑いしつつ「大丈夫だよ」と返答する

テーブルの対面に座っている彼女は彼にそう言われるともう一度頭を下げて謝罪してきた

 

「大丈夫だって。間違いは誰にでもあるもんだよ。この失敗を活かして、次気をつければいいさ」

「は、はいぃ」

「今回は俺も悪かったしね。お互いチャラってことにして、水にながそうよ」

「こ、浩太郎さんが言うなら…」

 

丸く収まったかはわからないが、ひとまずこれでこの件はよしとしよう

一通り朝食を食べ終えた浩太郎はアーシアの食器を持って立ち上がり、台所へと向かう

そんな彼の後ろをトコトコと付いていくアーシア

これから日課である食器洗いが始まるのだ

 

「浩太郎さん、今日は私が洗います」

「そうかい? じゃあお願いするよ」

 

そんなやりとりを交わし、アーシアが水道を操作して食器を洗い始める

こうして台所で彼女の隣に立つと初めて彼女と出会った時のことを思い出す

あの時は互いに互いの言葉がわからず、携帯を通して聞かされる無機質な翻訳音声を介して会話をしていたのだっけ

懐かしい、と思うと同時、どうしてもっと早く決心しなかったのだろう、とかつての自分に憤る

もっと早く、BLACKへと変身を決意していれば、彼女は死ぬことはなかったのに

不意に気になって、浩太郎は聞いてみることにした

 

「なぁ、アーシア」

「はい? どうしました?」

「いま、幸せか?」

 

率直な疑問

自分でも馬鹿な質問したことは分かっている

だがそれでも、聞きたかった

対するアーシアの答えは一言

 

「―――はい!」

 

満面の笑みから繰り出される肯定の言葉

金の髪をたなびかせ、碧眼の双眸は瞳をとじ、満面の笑みを作り上げる

彼女は続けた

 

「確かに私は、一度命を落としてしまいました。けど、世の中にはこんなに親切な方もいるのだと実感できましたし、悪魔に転生させていただけたおかげで、部長や小猫ちゃん、朱乃さんにゼノヴィアさん、イッセーさん、木場さん…そして、なにより浩太郎さんとも出会えたんです。これを幸せと呼ぶ以外になんて呼べばいいでしょう。これ以上なんて望んだらバチが当たります」

 

友達が欲しい、とかつて彼女は願った

しかし自分に宿る神器(セイクリッドギア)のせいで崇められ、蔑まれ、迫害され、彼女の願いが叶うことはなかった

だが、今はアーシアの望んだものがここにいるのだ、彼女からしてみれば、これ以上ないほど幸せなのだろう

彼女の言葉に浩太郎は微笑み、皿を吹きながらこう返した

 

「なら、―――よかった」

 

正直言うと不安ではあった

だが、それは杞憂でしかなかったようだ

 

 

「おはよう、アーシア、浩太郎」

「おはようございます、浩太郎さん、アーシアさん」

 

浩太郎とアーシアが玄関を出ると、そこにはいつものように小猫とゼノヴィアが待ってくれていた

この二人と合流すると浩太郎は少しだけ後ろに下がり、女性陣たちの会話を見守る、というのもまた、日課だ

そしてどうでもいいが、ぶっちゃけゼノヴィアと小猫の会話が想像できない自分がいる

掻い摘んで聞くと、宿題のことや、どんな和菓子が美味しいのか、とか

意外に普通だ、と思ったのは内緒である

 

「なぁ、浩太郎」

「うん?」

 

不意にアーシアのとなりを歩くゼノヴィアから話を振られた

 

「急な話だが、浩太郎は、アンパンはどっちがいいと思う? こしあんかつぶあんか」

「こしあんだ」

 

即答

 

「なるほど、理由は?」

「ばっか、おめぇこしあんが好きなことに理由なんかないぜ。つぶあんも悪くないんだが、なんだろうな、舌触り? 的なのがこしあんの方が好きなんだ」

 

それが理由ではないのだろうか

 

「そういえば、浩太郎さんは和菓子を買うときもこしあんを優先してましたね」

「言われてみれば、浩太郎さんが買ってくるのはほとんどがこしあんです」

「そういやそうだったな、あんま意識してなかったけど」

 

最中(もなか)とか、大福とか、そうじて浩太郎は無意識にこしあん系統の奴を選んでいた気がする

かといって別につぶあんが嫌いなわけではない、むしろどっちも好きである

その中でどちらが好きかと聞かれればこしあんなだけで

 

そんなどうでもいい話をしているとやがて駒王の校門にやってきた

そこで一学年である小猫と別れ、今度は三人で教室に向かっていく

がら、と扉を開けるとまず降り注いできたのは、浩太郎に対する妬みのこもった男子の視線がちらほら

そんな視線にも慣れ、もはや日常に昇華した浩太郎はその場で近くの友人に挨拶をしつつ、自分の席へ歩いていく

 

「うぃーす、浩太郎」

「おう、おはよう兵藤」

 

自分に挨拶をしてくる数少ない男子にして、友人兵藤一誠

ちなみに彼もまた、浩太郎同様、クラス中の男子の妬みの視線を受けるものである

いや、下手をすれば浩太郎以上、それでいて学校中の嫉妬をその身に受けているのかもしれない

なにせこの学園でトップの美しさを誇るリアス・グレモリーや姫島朱乃とお近づきなのだから

 

ふと兵藤に視線をやると何かを言いたげな表情を浮かべていた

気になった浩太郎はそれを聞いてみることにする

 

「…なんだ?」

「いや、お前だけまだ〝兵藤〟って苗字呼びなんだなって思ってよ」

「あぁ、そのことか。それがどうしたのか?」

 

兵藤一誠と親しいものは、大抵親しみと呼びやすさを込めて〝イッセー〟と呼んでいる

それは松田や元浜は然り、リアスや朱乃、木場にゼノヴィア、アーシア、小猫、ギャスパーといったオカルト研究部の面々もそう呼んでいる

今現在、その愛称を無視しているのが梓馬浩太郎だ

 

「ほかのみんなも〝イッセー〟って呼んでるんだから、お前も〝イッセー〟て呼んでくれよ、なんか壁感じるじゃん」

「俺はお前に壁なんて作ってないぜ兵藤。コイツは俺のわがままみたいなもんだよ」

 

そう、浩太郎が彼のことをイッセーと呼ばないことに対して意味はない

強いて言えば、ちょっとした意地だ

他のみんながイッセーと呼ぶなら、基本的に兵藤と呼ぼう、それだけだ

兵藤本人はちぇー、と唇を尖らせているが無視

 

こんなんでも、日常の一ページなのだ

 

◇◇◇

 

「悪魔稼業、ですか?」

 

夜、オカルト研究部での活動中

浩太郎は悪魔でないので時たま兵藤の活動についていくくらいしかやっていない

しかしこの日部室に行ってみるともう兵藤はギャスパーと一緒に行ってしまったらしくほかのメンバーも既に依頼者の元に行ってしまったようなのだ

 

「えぇ。協力者である貴方にこんなこと頼むのは少し気が引けるけど…」

「そんな、大丈夫ですよ。むしろバッチこいです」

 

浩太郎はそんなリアスの申し出を快諾した

元々悪魔稼業とやらには多少ではあるが興味を抱いていた

今回リアスが仕事の誘いをしてくれたのはまたとないチャンスでもあったのだ

 

「それで、この点が付いているところが依頼者さんのご自宅なんですね?」

「えぇ。それじゃあ浩太郎、お願いできるかしら?」

 

リアスの言葉に了解です、と返事をして、浩太郎は窓から地面へと飛び降りた

普通の人間なら危険だが、浩太郎は軽く人間をやめている、問題ない

そんなわけでリアスから借りた端末を見つつ、依頼者の家へと向かうことにする

移動するスタイルはもちろん屋根から屋根へと飛び移るニンジャスタイル

アイエー、ニンジャ、ニンジャナンデ?

 

「…点滅の場所から察するに…ここ、かな?」

 

たどり着いた場所は意外と普通な自宅

二階のところの明かりがついており、まだ起きていることがわかる

浩太郎は携帯を取り出し、時間を確認する

現在夜の十時半、十分お家の方々は寝ている可能性もある

このまま玄関のインターホンならして入っては少し近隣住人の迷惑になってしまうのではないだろうか

考えた浩太郎は、その窓のところまで跳躍し、コツンコツン、とその窓をノックするように叩いた

多少ガタガタ、と動く音が聞こえたが、少ししてシャー、と外の景色を隠していたカーテンが開かれた

窓の中にいた人物は少し意外な人物たちだった

 

「…片瀬さんに、村山さん?」

 

窓を開けながら、彼女たちの声が聞こえる

 

「梓馬、くんなの…?」

「浩太郎…くん?」

 

そこには口々に驚きの声を呟く村瀬と片山、両名の姿があった

 

◇◇◇

 

片瀬と村山

双方ともに剣道部に在籍しており、汗水流して活動している姿を浩太郎もよく見かけている

それと同時に、変態三人組を追い掛け回す姿もよく見ている(あれは三人組が全面的に悪いのだが)

 

「…」

 

とりあえず上がらせてもらったが、ものすごく沈黙が気まずい

ていうか、さすがに窓からはなかったと今更ながら思う

何か、何かを喋らなければ

しかし先に話したのは左右に髪を束ねているロングヘアーの村山だった

 

「梓馬くんって、その、あ、悪魔なの?」

 

いきなり踏み込んだ質問

彼女の傍らにいる片瀬もまた、息を飲んだ様子でこちらの返答を待っている

浩太郎は答えた

 

「いや、俺は悪魔じゃないよ?」

「…だ、だよね? あはは…」

「けど、人間でもないかな」

 

浩太郎の二言目に部屋全体が凍りつく

まさかそんな言葉が飛んでくるとはさすがに予想ができなかったのだろう

しかし悪魔のチラシを見て、ここに悪魔(呼んだのは違うが)を召喚した、ということは間接的にこちら側になってしまったのだ

隠す気などない

 

「…信じてないね?」

「あ、当たり前よ! いきなりそんなこと言われたって…」

「じゃ見せるよ、証拠の代わりとして」

「え?」

 

村山と片瀬の二人がキョトンとする

そんな二人を尻目に浩太郎はポーズをだいぶ簡略化させ変身し、一時的にRXへとその姿を変えた

今度こそ二人の顔が驚愕に染まった

 

「…信じてくれた?」

 

浩太郎のその言葉に今度こそ二人は頷いた

 

 

元々、このチラシをもらったのは偶然だったらしい

たまたまその日、竹刀の修理するために道具を買いに行ったら、なんだか、そんな妙なチラシをもらったようだ

当然ながら信じる気にはなれず、怖いもの見たさも相まって、呼び出してみよう、という話になった

しかし呼んでも一向に来る気配はなく、やっぱりガセだったのかーなんて思っていた矢先、いきなり窓を叩かれた

その人物が浩太郎だったのだ

 

「…なんかよくわからなくなってきたわ…もう少し整理させて梓馬くん」

 

戸惑いまくる村瀬と片山

しかし気持ちはわからんでもない

いきなり今まで一緒だったクラスメイトから突然「わい人間やないねん」と言われてはいそうですかと頷けるわけがない

ある意味ここに呼ばれたのが兵藤とかじゃなくてよかったかもしれない

少し時間が経ち、落ち着いてきた頃合を見計らって浩太郎は問うてみた

 

「二人共、何か願い事ってある?」

「え? 願い事?」

「…いきなり言われても、ねぇ?」

 

二人は顔を見合わせてうーん、と考え込んでいる

やはり突然願いなど聞いても出てこないのだろう

っていうか、そうそう願いなんて浮かび上がるものでもないのだ

願い、というのは〝叶えてもらう〟のではなく、〝叶える〟ものだから

 

「ね、ねぇ。もし、こんなのが願いでいいなら、なんだけど」

 

不意に意見をまとめてきたのか、ショートヘアの片瀬が口を開いた

 

「そ、その、浩太郎くんと、話してみたいな、なんて…」

「―――その程度なら、対価なんていらないね」

 

断る理由などなかった

願いにはいろいろな形がある

話をしてみたい、というのも、立派な欲望で、ちゃんとした願いでもあるのだ

 

 

おそらく最初で最後の悪魔稼業は概ね好評で終わった

といっても契約をとることはできていないので、実質成功ではないのだが、アンケートに答えてくれた彼女たちの言葉の中にはもう一度呼んでみたい、と書いてくれていた

リアスの方も浩太郎は悪魔ではないので、契約の方は取れなくても大丈夫、と言ってくれた

もしかしたら、また彼女たちの家に赴くこともあるかもしれない

 

「おはよー、浩太郎くん」

「おはよう梓馬くんっ」

 

いつもどおり登校すると村瀬と片山の二人が挨拶してくれる

浩太郎もいつもどおり「おはよう」と挨拶すると、笑みを返し、彼女たちは、浩太郎と一緒に登校していたアーシアとゼノヴィアの方へと小走りで駆け寄っていった

それを見届けると、浩太郎もまた、友人である兵藤の方へと歩いていく

 

―――これが、何気ない日常の一部分

何もない時間こそが、何よりの平和な証

今年の夏休みは何するかなぁ、なんてのんびり考えながら、今日という一日を初めていく

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